(狼さんですよー!)
アルコール依存症を患っている
小説家志望の中年男性で、
家族には妻のウェンディと息子のダニエル(ダニー)がいる。
当面の生活費を稼ぐため、雪深い山中にある「オーバールック・ホテル」の冬期閉鎖期間中の管理人としての職を得て、
家族を引き連れて訪れたのだが、そこは呪われた土地であった。
猛吹雪により外界と隔離されたホテルで過ごす中、ジャックは徐々に狂気へ染まっていき……?
原作小説と映画版では設定の異なるキャラとなっており、
原作版では基本的に善良ではあるが自身のアルコール依存症や癇癪持ちに悩む小市民的で平凡な男性として描写され、
そんなジャックがホテルに宿る霊的な力によって狂気に陥り、家族を襲う……というのが原作のストーリー。
それに対して映画版では
中の人が中の人なので当初から上手くいかない人生に対して鬱屈とした思いを抱える気難しい男として描かれ、
ホテルの力による影響こそあるものの最終的には自ら発狂したようにも見える等、ほぼ別人レベルで違う。
特筆すべきは原作のジャックは狂って家族に襲い掛かってはいるが土壇場でホテルの魔力を意志の力で抑え込み、一人も殺害していない点。
それに対して映画では一度狂気に染まった後は元の人格に戻る事無く、作中で殺人を犯すなど大きく印象が異なる。
さらに映画版ではジャック以外の登場人物や内容にもかなりの改変が加えられているため、
ある意味原作レイプされた形になった原作者のスティーブン・キング氏は現在に至るまで映画を快く思っていない事を公言している。
特にジャックに関しては「(自分の書いたジャックは普通の男性のはずなのに)
ニコルソンのジャックは最初から狂ってるようにしか見えない」との事
*2。
それについては正直仰る通りです
が、キング氏の不満を余所に映画版は高い評価を得ると共に興行的にも大ヒット。
キューブリック作品らしい詳細な解説や説明を敢えて省いて観客の視覚に直接訴えかけるような難解で人を選ぶ作風ではあるものの、
キューブリック監督のセンスが炸裂した圧倒的なヴィジュアルと
撮影中は本気で精神的に追い詰められた役者陣の迫真の演技によって、
映画史に残る名作として人々に記憶される作品となった。
何と言っても映画版でのドアを斧で壊して、その隙間から顔を出すシーンが一際有名で、様々な作品で
パロディの題材になっている程。
ちなみにこのシーン、映像にすればおよそ2秒程度と一瞬で終わる場面なのだが、
過剰すぎるほどの完璧主義者として知られるキューブリック監督のこだわりにより、撮影に
二週間、
190テイク以上かかって引き出した迫真の狂気顔である。
準備に一年を費やした事でも有名な「血のエレベーター」
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本当に色んな所でパロられてるんです
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こうした映画版の評価に納得のいかないキング氏は自ら総監修を務めて、1997年にテレビドラマ版として再映像化。
合計4時間半の長尺になったため、ジャックの人物設定をはじめ、
映画で省かれた「輝き(ダニーが持つ超能力、タイトルの『シャイニング』とはこの事)」等の要素も原作通り描かれている。
しかし、原作再現にこだわり過ぎたために説明や会話がとにかく冗長
*3で、さらに制作費の関係か怪異の描写もややチープであった。
印象的な生け垣の迷路や双子の少女の幽霊、血のエレベーターといった原作に登場しない映画オリジナルの名場面は当然カットされた
そのため映画ファンからは「原作の再現に関してはよくできているが映像作品としての出来はキューブリック版には遠く及ばない」という評価が殆どである。
一応フォローしておくと、同年のエミー賞にノミネートされるなど全くの駄作というわけではなく、
原作小説を読み込んだ熱心なファンなどからは「こっちの方が好き」という声もそれなりにある。
何より物語の進行に長い時間をかけられるドラマという媒体を活かして、原作のテーマである「家族愛」をしっかりと丁寧に描き切っており、
映画版とは違った趣きのある作品となっているので機会があれば視聴してみてはいかがだろうか。
それでも凶暴化するホースとか生け垣の動物のチープさは一歩間違えばギャグみたいだけど
こうしたキング氏とキューブリック氏の確執は映画『
レディ・プレイヤー1』でも取り上げられており、
物語中盤ではオーバールック・ホテルをモチーフにしたステージが舞台になっている。
自身の作品に纏わるゴタゴタをスティーヴン・スピルバーグ氏に映画化されたキング御大の心境は如何なるものだったのだろうか
スーパースティーブン・キング大戦である原作をもとにした映画版『ダークタワー』でも本作との関係は描かれており、
主人公の少年ジェイクを診察するカウンセラーの部屋にはオールバック・ホテルの写真が飾られているなど共通の世界を舞台にしている他、
ジェイクの持つ「輝き(シャイニング)」を狙って化け物達が彼を襲うなどの展開が、『シャイニング』原作を踏襲したものとなっている。
加えて同時に本作では、なぜ怪物達が「輝き」を持つ者を狙うのかという理由についても明かされている。
MUGENにおけるジャック・トランス
Shining氏による、映画版準拠の
MUGEN1.0以降専用キャラが存在。
作者名と同じで少々紛らわしいがファイル名は「the Shining」。
Kamekaze氏&Balmsold氏の
フランク・ウェストを改変したもので、海外サイト「The Mugen Multiverse」の2024年ハロウィン記念に公開された。
操作方法は改変元と同じく『
MVC』風の6ボタン方式。
イントロの一つではコスチュームチェンジをしたり、
必殺技は基本的にフランクからの踏襲だったりとほぼガワ替えキャラではあるが、
ナイフや斧を装備するオリジナル
超必殺技が追加されている他、演出・
判定が変更されている技もある等、一応の差別化が図られている。
でもキャラのイメージ的にバットやらショッピングカートやらデッキブラシやらラバーカップやらを使うのはどうなのか
また、改変元のレベルアップシステムも搭載されており、
挑発(書きかけの原稿をばら撒く)する事で狂気ゲージが上昇していき、各種技が強化される。
映画版でもストーリーの進行に伴って狂気が加速していくため、ある意味
原作再現と言えよう。
AIは並程度の強さのものがデフォルトで搭載済み。
某赤ずきんみたいな恰好をして同映画に出る双子の幽霊と銃をぶっぱなすという、AI限定と思しき超必殺技を使用してくる。
出場大会
*1
この台詞の元ネタは、米国のバラエティ番組『The Tonight Show』で司会者だったジョニー・カーソン氏が登場する前の決まり文句。
直訳すれば「ジョニーが登場!」だが、日本においてはそのまま翻訳しても意味が通じにくい事から、
直前の『三匹の子豚』ネタから繋がる形で本項冒頭のものに変更されている。
よくしゃべる狼さんだな…
過去には「お客様だよ!」だったり、原語版のニュアンスを再現しようとコメディアンのトニー谷氏の決まり文句「おコンバンハ」になっていた事もあった。
*2
実の所、「教職に就いた経験を持つ小説家志望でアルコール依存症を患い、我が子を愛しているが時に疎ましくも思っている中年男性」
というジャックのキャラクター造形におけるモデルは誰であろう作者の
スティーブン・キング氏自身
(キング氏は元々英語教師をしながら作家を志し、長年に渡ってアルコールやコカインの依存症に苦しんでいた経験を持つ)。
つまりジャックはキング氏にとって
自分自身を投影させた分身と言っても差し支えない非常に思い入れの強いキャラクターであり、
それを似ても似つかないジャック・ニコルソン氏が演じたばかりか、作品のテーマすらも大きく変更された事を考えると批判を繰り返すのもむべなるかな。
キング氏曰く映画版は
「見た目こそ綺麗だがエンジンの入っていないキャデラック」だとか。
最終更新:2025年01月28日 01:18