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ミリエリ・ストリート


概要

 ミリエリ・ストリートは、プラン・ネルヴェサーの河岸沿いに延びる商店街である。通りの幅は狭く、低層の商店建築が連なる。
ライトノベルの書肆と遊戯場が軒を連ねており、趣味に生きる人々の集う場となっている。通りの名は、オクシレイン語のmilieli「星の光」から採られた。

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歴史

 ミリエリ・ストリートの前身は、首都の庁舎群が建ち始めた頃、プラン・ネルヴェサーの河岸に並んだ倉庫の列である。荷揚げの便を求めて卸売の問屋が川沿いに集まるなか、書籍と遊戯用品を扱う業者も倉庫を借り、在庫の山を積み上げていった。共立公暦700年代に入ると、転移者の書いた原稿を訳して世に出す流れが整い、倉庫の二階を間借りした翻訳工房の看板が次々に掲げられた。問屋の荷と訳者の机が一つ屋根の下に収まったことで、刷り上がった新刊を一階で売り出す店が現れ、荷車の通り道は客の行き交う街路に姿を変えていく。原稿を持ち込む作家の多くは地球系の出身で、打ち合わせの席では共立英語が使われ続けた。通りの共通語が同じ言葉に落ち着いたのも、工房に出入りする人々の習慣が店先にまで広がった結果である。同900年代の後半には、事象災害に巻き込まれて渡ってきた転移者が相次ぎ、旧世界の娯楽を懐かしむ新顔が通りに流れ込んだ。届出だけで店を開ける市の仕組みも出店を後押しし、店の数は増減を繰り返しながら、川沿いの区画を端から端まで埋め尽くしている。

街並み

 石畳の路面を挟んで、尖塔を戴いた古い商館風の建物が肩を寄せ合い、通りの奥には市の中心部に林立する超高層の外壁が覗く。倉庫だった頃の骨組みは今も多くの建物に残っており、荷を吊り上げた梁の先には、新刊や新作を告げる旗が吊るされている。一棟を階ごとに幾つもの店が分け合う造りのため、壁面の看板は上の階に向かって積み重なり、最上階の店名は、首を反らせて見上げた先にようやく読める。文字はラテン綴りの共立英語が大半を占め、日本語圏の出身者を当て込んだ店では、カタカナの転写を小さく添える。オクシレイン語の看板も残るものの、通りの中では少数派に回った。北の端に建つ煉瓦造りの雑居ビルは、事象災害で旧世界の街区ごと運ばれてきた建物の一棟で、移築を経て通りの仲間に加わっている。店子の顔ぶれは地球系の転移者が占め、階段の踊り場に残る旧世界の掲示物を眺めに、遠方から足を運ぶ客もいる。日中には、広告幕を吊るした飛行船が川の上空をゆっくりと巡り、新作の題名を地上の人波に見せて回る。

商い

 通りの店は問屋の倉庫から生まれた経緯を今に残し、品の多くを市内の卸から直に仕入れることで、新刊を刷り上がりの翌日に並べる早さを売り物にしてきた。

書肆
 ヘリ・ノザールを扱う書肆の棚を仕切る目印は、作品の生まれた世界線である。転移者の出身世界線は人によってばらばらで、同じ題名の作品であっても、結末や登場人物の顔ぶれが持ち込んだ者の世界ごとに食い違う。棚には世界線の符号を記した札が差してあり、客は札を頼りに自分の知る版を探し出す。旧世界とともに原本が失われた作品の場合、複数の転移者が記憶を頼りに書き起こした本が並び、台詞の言い回しから章の順序に至るまで、書き手ごとの差が残された。版を何冊も買い揃えて読み比べる常連も多く、食い違う箇所に付箋を貼った本が、店の奥で回し読みされている。異世界グランドデスリミット出身の作家に倣った長い題名の流行は、装丁にも波及した。背表紙からはみ出した題名の続きを函の天面に刷る造りが定着し、平積みの山を上から覗き込んで題名を読み終える客の姿が、店先の見慣れた光景となっている。二階の翻訳工房で訳し終えた原稿は、製本を経て数日後には一階の平台に積まれる。

遊戯場
 遊戯場の一階には、闘争競技の試合を流す大型の画面が据え付けられ、仕事帰りの客が立ったまま観戦の輪を作る。贔屓の選手が勝った晩は、隣の売店から選手の名を染め抜いた手拭いが消え、翌朝には問屋の荷車が補充に駆けつける。奥に並ぶ筐体は対戦型が主流で、店ごとの最高得点が、記録を出した客の名前とともに壁の番付表に書き出される。番付の上位に名を連ねた常連は、出身を尋ねられる前に得点で顔を覚えられ、初対面の客から挑戦を受けることも多い。遊理部が考案した危険遊戯にも、筐体に収まる大きさに作り直された版が出回っている。パワーボウリングの店頭版は、球を樹脂で軽く鋳直す一方、ピンの倒れる音だけは原型の重さに寄せて仕上げられた。アポリアすごろくの卓上版では、本物の災害を呼び込む仕掛けを外し、盤上の噴出を風と物音の演出で再現する方式を採っている。いずれの版も客の入りは上々で、原型を知る転移者が手加減の効いた遊び心地に物足りなさを訴え、店主を苦笑させる場面も見られる。

仮装
 仮装の衣装を扱う店は、通りの中ほどに固まっている。売れ筋はフエル叙事詩の登場人物で、五大フエルの始祖に扮する客の多くは、自らの家系が属する氏族の装いを選ぶ。異本ごとに描写の食い違う英雄の衣装には、どの異本に拠ったかが値札に書き添えられ、同じ人物の装束が色違いで三通りも四通りも吊るされた。勇者巡礼の一行を模した旅装も根強い人気を持ち、巡礼隊が旅の証として携える旗の複製は、在庫が尽きるたびに職人の手で縫い足されてきた。地球系の転移者が懐かしむ旧世界の作品の衣装となると、型紙は書肆に並ぶ記憶起こしの本の挿絵から起こされる。拠った版の世界線によって袖の形や紋の位置が分かれるため、同じ役柄に扮した二人が通りで鉢合わせし、互いの装束を指差して版の正しさを論じ合う光景も日常の一幕となった。買った衣装に着替えて通りを歩けるよう、倉庫時代の荷捌き場を改装した着替え部屋が、通りの数か所に設けられている。

風俗

 通りに伝わる慣習の多くは、問屋と翻訳工房が同じ建物で働いた頃に端を発し、代替わりを経た今も店主の間で受け継がれている。

言葉
 通りで交わされる言葉は共立英語が主で、店員の呼び込みから値札の但し書きまで、ラテン綴りの英語が行き渡っている。共立英語は国の補助公認言語の一つに数えられ、区役所の掲示にも併記されている。転移者の持ち込んだ語法が長い歳月をかけて混ざり合った結果、通りの英語には地球の英語から意味のずれた語が多い。書肆の店先に掲げられた「FREE」の札は、通りの言葉では立ち読みの許しを指す。到着したばかりの地球系の転移者が札を見て本を抱えたまま店を出ようとし、店主に呼び止められる騒ぎは、年中繰り返されてきた。騒ぎに懲りた店の一部は、札の下にカタカナで「タチヨミ」と書き足すようになった。オクシレイン語を母語とする客にとっては、通りの全体が英語の教室にあたり、翻訳工房の訳者が閉店後に開く会話の講座も席が埋まる。講座の教本には、通りの内側だけで通じる言い回しを集めた手製の冊子が使われ、受講者の書き込みを反映してほぼ毎年改訂されている。

作法
 買い物を済ませた客に、店主が小さな返礼の品を手渡す習いは、通りのほぼ全ての店に根付いている。品は栞や紙片の挿絵が中心で、店主の手描きによるものも多い。贈られた品に返礼で応える作法はオクシレイン大衆自由国で広く重んじられており、星系を渡る勇者巡礼の一行も、国内の旅路で同じ作法を学んでいく。客の側も返礼の品を帳面に貼り集める楽しみを覚え、店ごとの図柄を揃えようと、通りを端から一軒ずつ巡る者まで現れた。店を畳んだ跡に入る新しい店主は、前の店の看板を下ろして裏返し、裏面に自分の店名を描き込むのが通りの流儀である。看板の縁から旧店名の文字が覗く店も多く、倒産から再起した店主が、向かいの店に掛かる看板の縁にかつての自分の店名を見つけ、開店祝いの品を届けに行った話も伝わる。プラン・ネルヴェサーの秋季市の期間中は、通りの商業組合が倉庫の荷捌き場を開放して即売会を催し、作家が自作の本を手売りする机が、川沿いの奥まで連なる。

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地域
最終更新:2026年10月07日 20:31

*1 作:ChatGPT