固定式多重炉心大型魔導炉
[解説]
聖華暦200年代初頭、第一次聖帝戦争が勃発する。
この4年間の戦いにおける戦訓で、各地の要塞が幻装兵の装備する砲戦兵器に散々に叩かれた事例を鑑みて、アルカディア帝国とカーライル王朝・聖王国の量国ともそれに対処する必要性に迫られた。
一応215年には聖帝条約により、科学技術製の幻装兵用手持ち火器は禁じられたのだが、幻装兵に内装式の砲戦火器だけで、要塞には充分な脅威であった。
この4年間の戦いにおける戦訓で、各地の要塞が幻装兵の装備する砲戦兵器に散々に叩かれた事例を鑑みて、アルカディア帝国とカーライル王朝・聖王国の量国ともそれに対処する必要性に迫られた。
一応215年には聖帝条約により、科学技術製の幻装兵用手持ち火器は禁じられたのだが、幻装兵に内装式の砲戦火器だけで、要塞には充分な脅威であった。
ちょうど良い事に、100年代末から200年代初頭の当時、『幻装兵の魔導障壁を魔導工学をもって再現できないか』という研究が行われていた。
だがしかし、試行錯誤の末に魔導器として再現され完成したそれは、あまりにも巨大でまともな持ち運びなどできない代物であった。
当然当時の精霊機や第二世代機兵はおろか、聖華暦830年現在の機装兵にすらも搭載などできる物ではない。
しかし要塞や都市などの拠点に設置するには、充分な出来栄えであったのだ。
だがしかし、試行錯誤の末に魔導器として再現され完成したそれは、あまりにも巨大でまともな持ち運びなどできない代物であった。
当然当時の精霊機や第二世代機兵はおろか、聖華暦830年現在の機装兵にすらも搭載などできる物ではない。
しかし要塞や都市などの拠点に設置するには、充分な出来栄えであったのだ。
ここでもう1つの問題点が浮かび上がる。
それは動力源だ。
都市や要塞をまるごと防護するだけの魔導障壁は、それを発生、維持させるだけで大量のエーテル出力を必要とする。
初期の実験用器材においては、液体エーテルをそのまま魔導器のエネルギー源として用いていた。
だがこれでは、四六時中長期間魔導障壁を稼働させるには、あまりに燃費が悪すぎる。
それは動力源だ。
都市や要塞をまるごと防護するだけの魔導障壁は、それを発生、維持させるだけで大量のエーテル出力を必要とする。
初期の実験用器材においては、液体エーテルをそのまま魔導器のエネルギー源として用いていた。
だがこれでは、四六時中長期間魔導障壁を稼働させるには、あまりに燃費が悪すぎる。
そのため、機兵の動力源である心臓部、魔導炉を大型化して、都市や要塞の魔導障壁の動力源にしようという試みが為される様になったのだ。
しかしこれは当初、かなりの困難にぶつかる事となる。
まず第一に、普通機兵の魔導炉は、操手たる人間と霊的に同調してその操手が供給するエーテルを増幅する仕組みである。
だが都市や要塞には、操手は存在しない。いや、人はいるのだが、それらからエーテルを抽出するわけにもいかない。
しかしこれは当初、かなりの困難にぶつかる事となる。
まず第一に、普通機兵の魔導炉は、操手たる人間と霊的に同調してその操手が供給するエーテルを増幅する仕組みである。
だが都市や要塞には、操手は存在しない。いや、人はいるのだが、それらからエーテルを抽出するわけにもいかない。
実は、要塞内の人員からエーテルを供給させ、魔導炉を稼働させようとした試みは、実際に行われた事がある。
しかしこれは、各個人のエーテル波長や波形が異なる事により、1基の魔導炉に同調できるのは1人だけだと言う、魔導炉の根本的かつ根幹的な仕組みにより挫折した。
1人の人間が四六時中魔導炉にエーテル供給をすると、その者が容易に魔力切れを起こし、魔導炉が停止してしまうためである。
しかしこれは、各個人のエーテル波長や波形が異なる事により、1基の魔導炉に同調できるのは1人だけだと言う、魔導炉の根本的かつ根幹的な仕組みにより挫折した。
1人の人間が四六時中魔導炉にエーテル供給をすると、その者が容易に魔力切れを起こし、魔導炉が停止してしまうためである。
まあ逆に1人の人間が、複数の魔導炉に同調する事は可能なのであるが、仮に2基の魔導炉を1人の人間が稼働させたとすると、人間側の魔力の消耗も倍になり、より早く魔力切れを招くだけであった。
このため、通常のシステムでは魔導炉と、炉に同調する人間とは、1対1対応になっているのである。
このため、通常のシステムでは魔導炉と、炉に同調する人間とは、1対1対応になっているのである。
最終的には魔導炉内部のルーンによる記述を改ざんし、液体エーテルを魔導炉に注ぐ事でそれを稼働させる事にした。
なおこの技術は、後々に機兵用魔導炉にも転用され、機兵を動かす際のエーテル源を操手だけでなく、液体エーテルに切り替えたり併用したりする技術に発展して行った。
そしてこれは、増槽やマナ・カートの開発にも繋がって行く。
なおこの技術は、後々に機兵用魔導炉にも転用され、機兵を動かす際のエーテル源を操手だけでなく、液体エーテルに切り替えたり併用したりする技術に発展して行った。
そしてこれは、増槽やマナ・カートの開発にも繋がって行く。
第二にぶつかった問題は、より一層深刻な物であった。
当初この開発に携わった魔導士や鍛冶師たちは、単に魔導炉を大型化すれば、単純にエーテル出力も大きくなると考える。
しかし実際に大型の魔導炉を建造したところ、稼働に必要なエーテルの量は増したものの、出力されたエーテル量は機兵用魔導炉と若干の差しか無かったのだ。
当初この開発に携わった魔導士や鍛冶師たちは、単に魔導炉を大型化すれば、単純にエーテル出力も大きくなると考える。
しかし実際に大型の魔導炉を建造したところ、稼働に必要なエーテルの量は増したものの、出力されたエーテル量は機兵用魔導炉と若干の差しか無かったのだ。
つまりエーテルの増幅率は、大きい炉を製作しても逆に小さくなっているのだ。
あげくに、もっと巨大な魔導炉を建造してみたのだが、入力したエーテル量よりも出力されたエーテル量が小さくなってしまった。
出力されたエーテル量は、やはり機兵用の炉と大差なかったのである。
これでは増幅率は、マイナスだ。
あげくに、もっと巨大な魔導炉を建造してみたのだが、入力したエーテル量よりも出力されたエーテル量が小さくなってしまった。
出力されたエーテル量は、やはり機兵用の炉と大差なかったのである。
これでは増幅率は、マイナスだ。
これは炉心部のルーンの記述、魔導炉の発明者である静謐の賢者サライが最高機密として記述の変更を厳重に禁じている部分に原因がある。
魔導炉の設計は機兵サイズを基準として、若干はサイズによるエーテル出力の増減は見込めるものの、あくまでその近辺のサイズが最適解になる様になっている。
そしてそれ以上にサイズを大きくしたところで、炉が喰らう必要エーテル量はどんどん大きくなるが、出力されるエーテル量は頭打ちになるのだ。
魔導炉の設計は機兵サイズを基準として、若干はサイズによるエーテル出力の増減は見込めるものの、あくまでその近辺のサイズが最適解になる様になっている。
そしてそれ以上にサイズを大きくしたところで、炉が喰らう必要エーテル量はどんどん大きくなるが、出力されるエーテル量は頭打ちになるのだ。
最終的にこれを解決したのは、魔導士たちではなく鍛冶師たちの力技であった。
鍛冶師たちは魔導炉の炉心部を、並列に多重に設置し、大型の高出力魔導炉を完成させたのだ。
多数の炉心が並列稼働しているから、一つ二つの炉心が何がしかのトラブルで故障なり停止なりしても、他の炉心でもってカバーが効くと言う事もあり、これは24時間ずっと稼働させっぱなしのシステムとしては非常に安定性が高い代物となった。
もっとも値段も高くなり、構造が複雑化した事でのメンテナンス費用もまた高くなったが。
鍛冶師たちは魔導炉の炉心部を、並列に多重に設置し、大型の高出力魔導炉を完成させたのだ。
多数の炉心が並列稼働しているから、一つ二つの炉心が何がしかのトラブルで故障なり停止なりしても、他の炉心でもってカバーが効くと言う事もあり、これは24時間ずっと稼働させっぱなしのシステムとしては非常に安定性が高い代物となった。
もっとも値段も高くなり、構造が複雑化した事でのメンテナンス費用もまた高くなったが。
そして聖華暦830年代の今も、都市や要塞における魔導障壁の動力源には、この固定式多重炉心大型魔導炉が用いられている。
現在においては、都市や要塞の城壁上に設置されている空槍砲(ファランクス)など防衛兵器の類も、要塞などの地下に据えられているこの大型魔導炉により、エーテル供給されているのだ。
現在においては、都市や要塞の城壁上に設置されている空槍砲(ファランクス)など防衛兵器の類も、要塞などの地下に据えられているこの大型魔導炉により、エーテル供給されているのだ。
なお、近代以降は固定式多重炉心大型魔導炉を構成する炉心に、燃焼型魔導炉が用いられる事が多い、というよりも何かしら理由があってそれを使えない場合以外は、ほとんどがそうなっている。
発熱量が多く放熱が必要になる事、通常の魔導炉よりも起動が遅い事、炉心の定期的な整備が必要な事などの欠点も、都市や要塞の地下に固定式である事から、大きな問題では無かったのだ。
発熱量が多く放熱が必要になる事、通常の魔導炉よりも起動が遅い事、炉心の定期的な整備が必要な事などの欠点も、都市や要塞の地下に固定式である事から、大きな問題では無かったのだ。