呪紋原盤記述装置(スフィアライター)
[解説]
呪紋原盤記述装置とは、機兵の頭脳たる部品、精密魔導器たる魔導制御回路(スフィア)に刻むためのルーン文字による魔力回路を、呪紋原盤に書き込むための装置である。
呪紋原盤は、基本的にはステンレス鋼の円形の薄板だ。これは複数枚で1セットになっており、1セット分を順番に重ねるとほぼ球形になる様に、各々のステンレス板の寸法が決められている。逆に言えば、ステンレスの球体をスライスした物が1セットにあたると考えても良い。
この呪紋原盤をもとにして、専任の魔導士たちが魔導制御回路の基となるエーテライト球内部に、秘儀の魔法でルーン記述を転写するのである。こうやって1個の魔導制御回路は、ようやく完成するのだ。
呪紋原盤は、基本的にはステンレス鋼の円形の薄板だ。これは複数枚で1セットになっており、1セット分を順番に重ねるとほぼ球形になる様に、各々のステンレス板の寸法が決められている。逆に言えば、ステンレスの球体をスライスした物が1セットにあたると考えても良い。
この呪紋原盤をもとにして、専任の魔導士たちが魔導制御回路の基となるエーテライト球内部に、秘儀の魔法でルーン記述を転写するのである。こうやって1個の魔導制御回路は、ようやく完成するのだ。
ちなみに呪紋原盤記述装置が開発されたのは、聖華暦600年代初頭の事である。それ以前には、手作業にて呪紋原盤を製作していたため、非常に手間と時間がかかっただけでなく同じ呪紋原盤を複製する事も難しかった。
それだけではなく、1セットの呪紋原盤からは普通、30個の魔導制御回路が作れるのだが、それだけの数を作ってしまうと呪紋原盤は摩耗や歪みが出て、壊れてしまう。使い物にならなくなった呪紋原盤は、ただのステンレス塊であり、熔かして再利用するしか無い。
それだけではなく、1セットの呪紋原盤からは普通、30個の魔導制御回路が作れるのだが、それだけの数を作ってしまうと呪紋原盤は摩耗や歪みが出て、壊れてしまう。使い物にならなくなった呪紋原盤は、ただのステンレス塊であり、熔かして再利用するしか無い。
ちなみに30個が安定して作れる様になったのは、比較的近代以降の事である。現在の機兵の黎明期である聖華暦200年代では、マスクド・スフィアという初期の魔導制御回路が用いられていた。だが当時は呪紋原盤の素材の品質が悪かった事などもあり、1セットの呪紋原盤から良くて4個、普通は1個のマスクド・スフィアしか作り出せなかった。
この頃には呪紋原盤記述装置などは影も形も無く、手作業で呪紋原盤を製作していたから、その苦労はなおさらであった事は想像に難くない。
この頃には呪紋原盤記述装置などは影も形も無く、手作業で呪紋原盤を製作していたから、その苦労はなおさらであった事は想像に難くない。
ちなみに現在主流になっている魔導制御回路、コード・スフィアを作るならば呪紋原盤1セットの枚数は32枚、最新のアーク・スフィアに至っては128枚ものステンレス板にルーンを刻み込まねばならない。手作業ではやっていられないのは当然だ。
この呪紋原盤1セットを造るためのルーン記述を編集し記録し、それをステンレス板に自動的に刻み込むのが、呪紋原盤記述装置である。
この呪紋原盤1セットを造るためのルーン記述を編集し記録し、それをステンレス板に自動的に刻み込むのが、呪紋原盤記述装置である。
[開発史]
聖華暦200年代:
前述した通りこの時代、マスクド・スフィアの呪紋原盤を製作する場合に、手作業で呪紋原盤にルーンを書いていた。書くと言うよりは、鉄筆でルーンを刻み込んでいたのだが。この場合、トチって書き損じたならばその1セット分の素材とそれにかけた労力は無駄になる。
故にその手順を自動化しようという試みは、幾度も行われていた。しかしながら基礎的な技術力の欠如により、これは実現せずにいた。
マスクド・スフィアの呪紋原盤1セットに必要なステンレス板の枚数は、2の2乗で4枚。この頃は、1セットの呪紋原盤から1個、運が良ければ最大4個のマスクド・スフィアを作り出せていた。
前述した通りこの時代、マスクド・スフィアの呪紋原盤を製作する場合に、手作業で呪紋原盤にルーンを書いていた。書くと言うよりは、鉄筆でルーンを刻み込んでいたのだが。この場合、トチって書き損じたならばその1セット分の素材とそれにかけた労力は無駄になる。
故にその手順を自動化しようという試みは、幾度も行われていた。しかしながら基礎的な技術力の欠如により、これは実現せずにいた。
マスクド・スフィアの呪紋原盤1セットに必要なステンレス板の枚数は、2の2乗で4枚。この頃は、1セットの呪紋原盤から1個、運が良ければ最大4個のマスクド・スフィアを作り出せていた。
聖華暦601年:
アルカディア帝国にて、機装兵レギオンの開発が開始される。それと同時に、新機軸の新たな魔導制御回路、トワル・スフィアがレギオンの頭脳として生み出された。
トワル・スフィアの呪紋原盤1セットに必要なステンレス板の枚数は、2の3乗で8枚。マスクド・スフィアの倍である。しかもそれに、極めて緻密にルーン記述を刻み込まなければならない。手作業なんかでは、やっていられなかった。そこでこの年の末に完成したのが、呪紋原盤記述装置であった。
これは仕組みとしては、タイプライター式の入力部、入力した記述を確認するための表示部(これには機兵の映像盤がそのまま用いられた)、専用紙へのルーン記述を行う記録部と、専用紙からルーン記述を読み取りステンレス板に自動で刻み込む転写部より成っている。
このうち入力部は小さな机レベルのサイズで済んだのだが、表示部は機兵部品を転用したためもあり肥大化、専用紙への記録部はこれも机1つ分程度だったが、転写部の精度を実用レベルにまで高めるために装置が巨大化。全体としては小さな家一軒よりやや大きな馬鹿でかい装置となってしまったのだ。
同年中にこの呪紋原盤記述装置の設計図は、カーライル王朝・聖王国の間諜(スパイ)によって聖王国へもたらされた。
ちなみにこの頃は呪紋原盤のもとになるステンレス板の品質などが向上し、エーテライト球に転写する魔導士たちの技術も向上していたため、1セットの呪紋原盤から作り出せるトワル・スフィアの数は20~30個になっている。
アルカディア帝国にて、機装兵レギオンの開発が開始される。それと同時に、新機軸の新たな魔導制御回路、トワル・スフィアがレギオンの頭脳として生み出された。
トワル・スフィアの呪紋原盤1セットに必要なステンレス板の枚数は、2の3乗で8枚。マスクド・スフィアの倍である。しかもそれに、極めて緻密にルーン記述を刻み込まなければならない。手作業なんかでは、やっていられなかった。そこでこの年の末に完成したのが、呪紋原盤記述装置であった。
これは仕組みとしては、タイプライター式の入力部、入力した記述を確認するための表示部(これには機兵の映像盤がそのまま用いられた)、専用紙へのルーン記述を行う記録部と、専用紙からルーン記述を読み取りステンレス板に自動で刻み込む転写部より成っている。
このうち入力部は小さな机レベルのサイズで済んだのだが、表示部は機兵部品を転用したためもあり肥大化、専用紙への記録部はこれも机1つ分程度だったが、転写部の精度を実用レベルにまで高めるために装置が巨大化。全体としては小さな家一軒よりやや大きな馬鹿でかい装置となってしまったのだ。
同年中にこの呪紋原盤記述装置の設計図は、カーライル王朝・聖王国の間諜(スパイ)によって聖王国へもたらされた。
ちなみにこの頃は呪紋原盤のもとになるステンレス板の品質などが向上し、エーテライト球に転写する魔導士たちの技術も向上していたため、1セットの呪紋原盤から作り出せるトワル・スフィアの数は20~30個になっている。
聖華暦699年:
期待の新型機、機装兵ノヴレスMk-Ⅱの計画が、未だ計画段階ではあったものの立ち上がる。これに用いるための新型魔導制御回路、初期型コード・スフィアが開発される。
コード・スフィアの呪紋原盤1セットに必要なステンレス板の枚数は、当初2の4乗で16枚であったが、後に機能拡張され2の5乗で32枚となった。
なおこの頃には技術の向上によって、1セットの呪紋原盤から30個のコード・スフィアが安定的に作り出せる様になっている。
期待の新型機、機装兵ノヴレスMk-Ⅱの計画が、未だ計画段階ではあったものの立ち上がる。これに用いるための新型魔導制御回路、初期型コード・スフィアが開発される。
コード・スフィアの呪紋原盤1セットに必要なステンレス板の枚数は、当初2の4乗で16枚であったが、後に機能拡張され2の5乗で32枚となった。
なおこの頃には技術の向上によって、1セットの呪紋原盤から30個のコード・スフィアが安定的に作り出せる様になっている。
聖華暦701年:
呪紋原盤記述装置の改良が続く。だがある程度(十二畳間1室を埋め尽くすほど)の小型化が為された時点で、研究は行き詰る。
呪紋原盤記述装置の改良が続く。だがある程度(十二畳間1室を埋め尽くすほど)の小型化が為された時点で、研究は行き詰る。
聖華暦719年:
シリウス戦役終結により、様々な技術がシリウス船団より得られる事となった。このとき得られた技術を元に、メビウス・ネットワークを生み出したのが聖王国錬金学会だった。
聖王国錬金学会はこの技術を独占せず、三大国すべてに流してしまい、聖王国政庁と少々微妙な雰囲気になるのだが、それは置いておく。重要なのは、この時点でメビウス・ネットワークのクライアント端末と、呪紋原盤記述装置とが機能統合された事である。
呪紋原盤記述装置は情報の入出力端末としての機能全てを備えており、更にはメビウス・ネットワークの情報蓄積機能が使えるのは魔導制御回路構築において非常に役立ったのだ。
なおこの頃より、呪紋原盤記述装置という名前は使われなくなる。メビウス・ネットワークの端末機と機能統合された事により、この装置はクライアント端末と呼ばれる様になった。更に技術革新により、サイズも四畳半1室を埋め尽くす程度に小型化される。
シリウス戦役終結により、様々な技術がシリウス船団より得られる事となった。このとき得られた技術を元に、メビウス・ネットワークを生み出したのが聖王国錬金学会だった。
聖王国錬金学会はこの技術を独占せず、三大国すべてに流してしまい、聖王国政庁と少々微妙な雰囲気になるのだが、それは置いておく。重要なのは、この時点でメビウス・ネットワークのクライアント端末と、呪紋原盤記述装置とが機能統合された事である。
呪紋原盤記述装置は情報の入出力端末としての機能全てを備えており、更にはメビウス・ネットワークの情報蓄積機能が使えるのは魔導制御回路構築において非常に役立ったのだ。
なおこの頃より、呪紋原盤記述装置という名前は使われなくなる。メビウス・ネットワークの端末機と機能統合された事により、この装置はクライアント端末と呼ばれる様になった。更に技術革新により、サイズも四畳半1室を埋め尽くす程度に小型化される。
聖華暦792年:
呪紋原盤記述装置は、画期的な進歩を遂げる。自由都市同盟による魔導計算機の開発と、それと呪紋原盤記述装置の機能統合である。
これによって呪紋原盤記述装置は更なる高機能を獲得し、その上で学習机1個分程度まで小型化された。
呪紋原盤記述装置は、画期的な進歩を遂げる。自由都市同盟による魔導計算機の開発と、それと呪紋原盤記述装置の機能統合である。
これによって呪紋原盤記述装置は更なる高機能を獲得し、その上で学習机1個分程度まで小型化された。
聖華暦793年:
同盟が何故か他の二国に対し、クライアント端末=呪紋原盤記述装置のライセンスを開示、売却。これによりこのクライアント端末は、帝国と聖王国にも広まる事となる。
魔導計算機はこの後も自由都市同盟主体で進歩して行く事になるのだが、呪紋原盤記述装置は魔導計算機の中の1アプリケーションソフトのプログラムとして生き残り続ける。魔導計算機と呪紋原盤プリンターこそ機能分割は為されたものの、呪紋原盤プリンターを魔導計算機に接続するだけで、どんな魔導計算機も呪紋原盤記述装置として機能するのである。
同盟が何故か他の二国に対し、クライアント端末=呪紋原盤記述装置のライセンスを開示、売却。これによりこのクライアント端末は、帝国と聖王国にも広まる事となる。
魔導計算機はこの後も自由都市同盟主体で進歩して行く事になるのだが、呪紋原盤記述装置は魔導計算機の中の1アプリケーションソフトのプログラムとして生き残り続ける。魔導計算機と呪紋原盤プリンターこそ機能分割は為されたものの、呪紋原盤プリンターを魔導計算機に接続するだけで、どんな魔導計算機も呪紋原盤記述装置として機能するのである。
聖華暦802年:
都市同盟軍研究所の助力を得たアイオライト・プロダクションが、最初のアーク・スフィアを開発する。アイオライト・プロダクションはこの技術を莫大な金額で帝国と聖王国に売却する。
アーク・スフィアの呪紋原盤1セットに必要なステンレス板の枚数は、2の7乗で128枚。
ちなみにこの時代、アーク・スフィアやコード・スフィアは1セットの呪紋原盤から30個を安定的に作り出せる。しかし技術的には行き詰っており、これ以上の数を作り出すことは困難、というよりも不可能だった。
そのためこれ以後は、魔導制御回路の量産のために1セットの呪紋原盤から作れる数を増やすのではなく、呪紋原盤記述装置によって大量に呪紋原盤を作る方向性にシフトして行った。
都市同盟軍研究所の助力を得たアイオライト・プロダクションが、最初のアーク・スフィアを開発する。アイオライト・プロダクションはこの技術を莫大な金額で帝国と聖王国に売却する。
アーク・スフィアの呪紋原盤1セットに必要なステンレス板の枚数は、2の7乗で128枚。
ちなみにこの時代、アーク・スフィアやコード・スフィアは1セットの呪紋原盤から30個を安定的に作り出せる。しかし技術的には行き詰っており、これ以上の数を作り出すことは困難、というよりも不可能だった。
そのためこれ以後は、魔導制御回路の量産のために1セットの呪紋原盤から作れる数を増やすのではなく、呪紋原盤記述装置によって大量に呪紋原盤を作る方向性にシフトして行った。