ようこそ、鳴神学園小学校に
アパシー 小学校であった怖い話
- 登場作品:小学怖
- 種族:書籍(商業)・ゲーム(商業・同人)
- ジャンル:ヴィジュアルノベル
- 発売日:2014年7月24日~/2018年10月26日~
- 価格:900円(税抜)/1,000円
- 総プレイ時間:4~15時間(平均)
- 難易度:★☆☆☆☆
- 年代設定:現代
- 主な関連人物:百瀬毬絵,坂上修一《?》
- 主な関連用語:七不思議の集会,転校生
概要
『アパシー 小学校であった怖い話』とは小学館「ビッグ・コロタン」文庫より発刊された児童向け商業書籍のシリーズであり、それを元に制作されたビジュアルノベル・シリーズである。本wikiでの略称は『小学怖』。
なお、2014年に発刊されたシリーズの題名は『学校であった怖い話』だった。『小学校であった怖い話』は当初ユーザー間で膾炙していった通称である。改めてインディーズ向けゲームとしてリリースされるにあたってそのまま採用する形で正式名称となった。
タイトル通りに「
鳴神学園」初等部を舞台として、正体不明の
転校生「
あなた」に向けて小学生たちが語りを繰り広げるのが特徴である。
児童向けレーベルらしく、残虐描写は抑えられており保護者がお子様に買い与えても安心なシナリオ設計になっているものの、よくよく話の裏を読めばちゃんと大人の精読にも耐えうるえげつなさを備えている。決して子供騙しではないのだ。
章題も出だしの挨拶である「ホームルーム」を皮切りとして舞台となる初等部の一学級「六年六組」の授業風景を彷彿とさせる科目名に続く形で各話の題名が並んでいく。
実際に聞き手である転校生は同じ六年六組のクラスメートたちから先生の目をかいくぐって怖い話を教えてもらっているようだ。
巻数ごとに曜日が載ることもリアルタイムに一週間という時間が経過していくことの演出となっており、転校生に対する対応も初対面の時とそれ以降で変わってくるところなどは芸が細かいポイントである。
また、「水曜日」まで発刊された2024年現在での法則性として最後の「放課後」は「
無限廊下」や「
飴玉婆さん」といった過去の名作のオマージュとなっていることが推察できる。
ほか、現在「
アパシー・シリーズ」において主流となっている「
年代不明の現代」設定を適用した初めての作品である。
そのため、時の流れを実感させるべく読者やプレイヤーたちに高校生だった「
語り部」やシリーズの主要人物たちが人の子を持つ親となった様相を描くことになった。例としては
新堂誠の息子「
新堂大誠」や
富樫美波の弟「
富樫黎雄」などがその好例だろう。
また「
現代」の項目にも詳しいが、のちのシリーズ作品に『小学怖』のキャラと親世代のキャラが共演する機会も数多くみられ、作品の枠を越えて「六年六組」のメンバーは顔を出す。
その場合は高校生の親世代と小学生の子世代が一緒に並ぶというシナリオは避けられているが……? 今後の動向に期待したい。
くわえて「鳴神学園」が小中高大学ほか多数の教育・医療施設を併存させた巨大複合学園都市という設定を採用した初の作品でもあるため、外伝的なタイトルに反して実は相当にシリーズ中に反映させた影響は大きかったりする。
あらすじ
ここは鳴神学園初等部。怖い話が七不思議なんてくくりでは数えきれないほど語られて、不思議と恐怖が渦巻く学校です。
あの七不思議の集会がいつ開かれたなんて数えてられないけれど、そんなあの人たちも大人になって子供を持つ親になりました。
新堂くんに、荒井さん、かつての面影を持つ子もいますね。そうじゃない、新しい子たちもいますよね。
ここは「六年六組」、そんな不思議な学校で輪にかけて特殊で優秀な子たちが集う学級です。
親の因果は子に回り、罪なき子を絡め取る。けれど関係なく罪を重ねる子もいます。理不尽を、不条理を、怪異を跳ね返すのも呑みこまれてしまうのもその子次第。鳴神学園は今日も魔窟として夕闇時の恐ろしさと優しさをたたえています。
じゃあ――、そんな子たちから話を聞いて回るあなたはだあれ?
経緯
商業書籍としては元は小学館から声がかかったことで立ち上がった企画である。
小学館側から挿絵を担当する有名ホラー漫画家も提示されたが、飯島多紀哉氏にとって『学怖』の世界観に対する理解が十分ではないという理由で代わりに飯島氏にとって知己である「日丸屋秀和」氏が担当することになったという。
ちなみに当初担当予定だったビッグネームな某氏の実力と人柄について飯島氏は以前に仕事を共にしたということもあって信頼していた。ニュアンスとしてはあくまで自身の作風と某氏の画風が噛み合わないという理由だった風に語られている。
商業書籍としては連続発刊された「月曜日」、「火曜日」の売り上げが芳しくなかったため続く「水曜日」で打ち切りとなった。
当初は「月曜日」~「金曜日」の短編からなる五作品に全編が一本の長編で構成された「土曜日」、「日曜日」の計七作品をワンシーズンとして、以降反響次第で企画を継続していくという構想だったようだ。
「土曜日」、「日曜日」はそれまでに登場した男子メンバー、女子メンバーが協力して巨大ななにかに立ち向かうのだとか。
そして『小学怖』は2011年の『最終版』を最後に「七転び八転がり」を介しての活動を休止した『学怖』の生みの親「飯島多紀哉」氏が2018年に『新生』で本格的に再始動するまでのインターバル的な作品である。
事実、連作短編の一本道ノベルゲーム『新生』に『小学怖』のメンバーが複数名を連ねている。
こちらのキャラクターデザイナーを務めたのは後続の「月曜日」も含め「むみ(現:コタチユウ)」氏である。
なお、『新生』に収録された『小学怖』側四作品は元来『小学怖』向けに用意されたプロットが日の目を見たものだという。うち「呪いの法則」は「金曜日」に収録予定で続く女子サイドの長編に向けた布石も兼ねていたと明言されている。
なお、時系列としては大きく離れるが『学怖』シリーズ初の長編と銘打たれた「危険な転校生」は『
鳴神学園七不思義』にもDLCコンテンツとして2023年10月26日から配信された。
ここでユーザーからの反響を得た飯島氏は『新生』に続くところ、同じく2018年に『月下美人の章』、『2008』、『小学怖』という三作品を分冊化して相次いでリリースするがいずれも売り上げ的には失敗に終わり、また『小学怖』に関してはキャラクターデザイナーを務めた「むみ(現:コタチユウ)」氏が制作から離れたという事情もあってゲームとしては長らく停滞を余儀なくされた。
くわえて上記三作品は三つの年代にまたがって「七不思議の集会」というキーワードが共通しており、つながりを持っていることが示唆されていた。設定や世界観にかなりズレが生じているためひとつの世界の年代史に収めるのは不可能とされるものの、大枠としてこのような歴史を辿って「七不思議の集会」を「鳴神学園」が禁止した謎を解き明かす――、という流れだったようだ。
その後、『小学怖』のメンバーは『極』や『新生2』といったほかのシリーズ作品に客演を繰り返し、合間にボイスドラマや『
動画版学怖』といったバリエーション違いで知名度を着実に高めていった。
商業的には『鳴神学園七不思議』の成功を受けて同じく商業向けへの企画が立ち上がっているようだ。正式な発売時期などについての発表はまだだが、やはりこちらも今後の動向について期待したい。
登場話早見
前述の通り、語り部やシリーズ主要人物の子弟が目立つが完全初出のキャラの方が多数を占める。
過去キャラをオマージュしたかと思しき小学生(「
御手洗吾郎」など)も多いが、彼ら彼女らと既存キャラの間については関係性が明かされていない部分も多く現時点では「もしかしたら……?」と内心で楽しむのが吉だろう。
キャラクターとしては男子たちは科学思考のロマンチストが多く、女子たちはオカルト思考のリアリストが多い傾向にあるようだ。その中でもオカルト完全否定派の「
松戸博士」に至っては従来のシリーズからすればまず現れなかったキャラといえる。
シナリオも現代科学では解き明かせないオカルト的側面が強い一方で、オカルト知識だけでは太刀打ちできないヒトコワ路線も多い。またオカルトの内容も「
黒魔術」から「
宇宙人」まで多岐に渡っている。
よって六年六組のひとりひとりではなく複数人の個性の重ね合わせ、協力が求められるシチュエーションも多い。
そのことはこの作品が理不尽に呑みこまれるだけのホラーではなく、小学生たちが手と手を取り合って悪意に立ち向かうジュブナイルでもあるということをいかんなく教えてくれるともいえるだろう。
前述の通り各曜日の末尾を占める「放課後」エピソードは、既存作のオマージュだが、けしてそのままの内容ではなく別視点だったり別解釈を持ち込み新規の名作として昇華している。親から子へ受け継がれる世代間ドラマとしても『小学怖』に注目したい。
備考
ちなみに、執筆者の飯島氏は各話に隠された意図を盛り込んでおり現在は消失しているがブログでその意図を説明している。
具体的には「月曜日」収録の「隠された人形」と「火曜日」収録の「絶対に百点取れる塾」の二例である。
これはあくまで一つの解釈に過ぎないと断られているが、一見感動的な話の裏ですべてを覆すような事態が進行していたと原作者自身の口から物語られた衝撃は計り知れないだろう。これに限らず飯島氏が裏の意図を盛り込んだ話はみられるかもしれないので、初見既読を問わず読者・プレイヤーは色々な話を注意深く読み込んでみるのもいいかもしれない。
ほかのシリーズ作品の例にもれず、『小学怖』のキャラクターデザイナーは交替によって複数人みられるが、最初の「日丸屋秀和」氏のデザインは非常に大人びたものだった。
ただし、このデザインも飯島氏は近年の小学生の早熟っぷりを勘案に入れれば許容範囲内、むしろ一つの解釈として好ましいとコメントを述べている。事実(特に女子の)早熟っぷりを題材としたシナリオもみられるため、その言葉の信憑性は高い。
関連動画
【サンプルボイス】アパシー小学校であった怖い話ボイスドラマ
関連リンク
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- とりあえず書けるところは書いときました。当初のキャラデザイナーとかブログ内容は書いていいのかわからないのでとりあえず伏せたままにしてあります。 -- 東和瞬 (2024-05-19 21:45:32)
最終更新:2024年07月28日 07:47