「何だアイツは?大急ぎでこんな島くんだりまで運んで来たんだぞ。少しは感謝ってもんをだな……」
「無差別殺人による脅迫…」
「フッ…。そんな事で我々が武力介入を止めると思っているのか?」
「何だと、ティエリア!?」
「一般人が犠牲になっとるのに、何とも思わんのか!?」
「思いません。この様な事態が起こる事も、計画の中には予測されている筈だ」
「まさか各国の諜報機関が協力してくれるとは…。良かったじゃないか…」
「良い様に使われただけです」
「だが大いなる1歩でもある……」
「…ですね」
「整備を手伝う」
「部屋に戻って休んでいろ。人の仕事を取るんじゃない」
「……わしらはもう事を始めた。後悔すら許されぬ所業だ……」
「少し急ぎます。加速Gに注意して下さい」
「年寄り扱いするな」
「フッ…。ご無礼…」
「お前らが話してる間に、あのスローネって機体調べておいたぜ」
「あのスローネって機体だが、システムや装甲は我々と同じ技術が使われていた」
「やはり同型機…」
「でも、GNドライヴが違う」
「違うって、太陽炉が?」
「機能的には同じだが、炉心部にTDブランケットが使用されていない。ドライヴ自体の活動時間は有限…。
言ってみればコイツは、“疑似太陽炉”だな……」
「ガンダム同士で戦うだなんて…下手すりゃ共倒れだぞ…!」
「アンタの事だ、予測はしとるんだろ?」
「遂にGNアームズの投入か……」
「そうしなきゃならん程状況が切迫してるんだろうよ……」
「ご苦労さん。中々の戦果だ」
「敵さんが来る前に整備を終えるぞぉ、急げよ!」
「勝手に逝くな!馬鹿野郎……ッ!」
「クリス!!」
「リヒティ!!」
「これが、オーガンダム……。初めて太陽炉を積んで、稼働した機体……」
「太陽炉は取り外して、既に機体に装着してある。だがコイツを使ってもマッチしなかった……。
エクシアの太陽炉でも、上手くいくかどうか……」
「生きていたか刹那…!これでエクシアの太陽炉が試せる……!」
「80を超えれば、安定稼働領域に入る…」
「これで、今ある全ての組み合わせは…試した事になる…」
「何故だ?何故安定しない!?何が足りないっていうんだ!?」
「あとは、エクシアの太陽炉だけか……」
「奴らが動き出す前に何とかせにゃならんというのに……!」
「よし。アジトへ戻る間に、エクシアの太陽炉のマッチングテストを行う」
「シミュレートでは、エクシアはオーガンダムの太陽炉と連動率が高かった筈だが…」
「実際に試してみなけりゃ分からんさ。トランザムと共にイオリア・シュヘンベルグから送られてきた…新たなガンダムの主機関理論。
机上の空論か、200年後の科学水準を見越しての予見か……」
「エクシアとオーガンダムのマッチングは、今迄で最高の同調指数を弾き出してはいるが…70%以上の数値が出ない。
安定領域まであと10%なんだが……」
「トランザムで強制的に起動を掛ければ……」
「馬鹿言うな!そんな事すれば、オーバーロードして最悪自爆だ!」
「ならばもう一度…システムの再点検を」
「えぇい…ッ!勿論やるさ!」
「ツインドライヴシステム……行けるか?」
「刹那!ダブルオーはまだ…!」
「トランザムを使う!」
「無茶だ!刹那、止せ!」
「トランザム…始動!」
「やりやがった…!」
「駄目です!粒子融合率…73%で停滞!」
「トランザムでも駄目か…!」
「き、起動した!二乗化のタイムラグか?!」
「ツインドライヴ…起動したは良いが、安定には程遠い。トランザムを使用するなよ!」
「了解」
「あの……。良いんですか?こんな秘密事項、僕に見せちゃって…」
「人手が足りないんだ。宇宙技師の2種免持ってるんだろう?」
「あ、まぁ…」
「それにな…“働かざる者食うべからず”ってな」
「分かりましたよ…。えっと……」
「イアンだ。イアン・ヴァスティ……」
「……イアンさん。あなたは…どうして此処にいるんですか?」
「嫌と言う程戦場を見てきて、戦争を無くしたいと思ったからだ。此処にいる連中も同じだ。
戦場の最前線へ送られた者、軍に体を改造された者、家族をテロで失った者、ゲリラに仕立て上げられた者…。
皆戦争で大切なものを失ってる。世界にはそういう現実があるんだ……」
「でも……」
「…そうさ、わしらは犯罪者だ。罰は受ける、戦争を無くしてからな」
「スメラギさん!」
「おっ!」
「サイズ合わないの。きつくて……」
「あっ…!すぐに、他の用意します!」
「わしはそのままが良いなぁ」
「セクハラです!パパ!」
「コイツは…!」
「これが奴らのやり方か…!」
「アロウズめ…!」
「刹那、トランザムは使うなよ?」
「了解」
「イアンさん!僕にも手伝わせて下さい!」
「…覚悟はあるんだな?」
「あの人達を守りたいんです!」
「…ッ!分かった、ついてこい!」
「はい!」
「突破されたか…!撃て!攻撃だ!」
「何してる!?撃て!」
「どうした!?早く!!」
「撃てなかったか……。良いさ、それで……」
「刹那!トランザムは使うなと言っただろうが!ツインドライヴが稼働状態にあるから良いようなものの……」
「アレルヤの奴…刹那に続いて機体をこんなにしやがって…!尚且つ彼女を連れて戻ってきただとぉ?ったく……!」
「まさかツインドライヴの粒子放出量に機体が悲鳴を上げるとは……。だが、オーライザーがあればそれもカバー出来る。
いや…現存するどのガンダムをも凌駕する機体になる……」
「おぉ、コイツか!」
「形式番号、GNR-010。機体名、オーライザーよ」
「よくやってくれた、リンダ!コイツがあれば、ダブルオーは無敵だ!」
「そうか、会うのが初めての奴もいたなぁ。わしの嫁だ!」
「リンダ・ヴァスティです」
「わ、若い……!」
「犯罪ですよ…」
「どういう意味だ?」
「冗談はそれくらいにして」
「何だよ、冗談って!?」
「アニューは凄いぞぉ。宇宙物理学、モビルスーツ工学、再生治療の権威で操船技術や料理に長け、おまけに美人だ。どうだ、なかなかの逸材だろう?」
「……これが…!イオリアが予見したツインドライヴの―――」
「―――真の力だというのか……!?」
「何てこった!ツインドライヴはわしらの想像を遥かに超えている!こりゃとんでもない代物だぞぉ……!」
「気を付けてね、ミレイナ」
「はいですぅ!」
「あなたも」
「分ぁかってるさ…!」
「イアンさん!しっかりして下さい!イアンさん!」
「あっ…。オーライザーの…調整は終わった……」
「オーライザー?」
「コイツを…ダブルオーに……」
「そんな事より、早く医務室へ…!」
「わしの事はいい……。オーライザーを…届けるんだ……。そうでないと、わしらは全員やられる……!」
「イアンさん……!」
「守るんだ…。皆を…仲間を……!」
「オーライザーは…?戦闘は?―――重力?何時の間に地上に…」
「ん?……ッ!?な…ッ、何じゃこりゃあぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッッ!!!???」
「つまり…ダブルオーライザーを起動させ、ラグランジュ3の敵を退けたものの、
アロウズが衛星兵器を使用したのを知り、そいつの破壊ミッションに突入。見事打ち倒したが敵の奇襲を受けて地球圏に落下、地上に不時着。
しかも、刹那の乗ったダブルオーライザーと逸れてしまったと…。そういう事だな?」
「その通りですぅ!!」
「最悪じゃないか!!」
「何てこった…。こんな時に、敵さんに襲われでもしたら……。んっ?」
「皆さん。食事をお持ちしました」
「わ〜いですぅ!!」
「呑気だろ、それ!!」
「イアン、アフリカタワーに着く前に、火器管制を使えるように出来る?」
「んん……。やるしかないだろ……」
「コイツを着ていけ」
「んっ?」
「頼むぞ、命を守れ……」
「……ッ!はい!」
「行けるぞぉ!」
「はい!」
「遂にあれを使ったか!ティエリア……!」
「待ち兼ねたぞぉ、リンダ!!」
「あれは完成したか!?」
「だから此処に来たのよ」
「おぉ…ッ!」
「ツインドライヴ専用にカスタマイズされた、新型GN粒子放出機関」
「2年かけて、2基しか出来ませんでしたけどね」
「時間も人も足りないから……」
「よくやってくれた……!」
「高濃度粒子領域内で、脳量子波による意識の共有を行い、戦闘空域で人々の想いを繋げる……」
「戦いを止めさせる為の機体……」
「それが…刹那の望んだガンダム。ダブルオークアンタ……!」
「クッ…!分かってる!わしらは最善を尽くすしかない…!刹那の回復も!」
「アーデさん。ミレイナは、アーデさんがどんな姿になろうとも……アーデさんが大好きです!!」
「何だとぉッ!?」
「あらあら。良かったわねぇ、素敵な彼氏が出来て」
「リンダ!!」
「フッ…」
「笑い事じゃねぇだろ!」
「クアンタで出る」
「言われなくても!」
「諦めるのはまだ早い!」
「最後の最後まで信じましょう!」
「何だ…?」
「あなた……」