機関銃

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機関銃 - (2021/12/13 (月) 12:22:08) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2010/11/16(火) 23:53:27
更新日:2024/01/06 Sat 09:49:16
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目次

概要

機関銃(マシンガン)とは、基本的にフルオート射撃を前提に運用される銃器の総称である。
要は引き金を引きっぱなしで弾を連射出来る銃の事だ。

銃としては弾丸を連続して発射するため銃身は熱や摩擦で傷むし機関部も負荷がきつい。
発射の反動で銃全体がガクガクに揺れ、弾は銃口から広がるコーン状にばらまかれる*1。わざわざ単射でもしない限り、狙って撃つ事はできない。
当然ながら安定させるための二脚や三脚は必須である。
さらに耐久性を最重要視して設計されるものの、軽量化は基本的に考慮されていないため持ち運ぶのも一苦労という代物である。

しかしそれらを犠牲にした分、大変強力な火器となっており、小銃とは比べ物にならない射程と威力、そして連射力を誇る「戦場の悪魔」として君臨している。

運用

主な運用方法は
  • ひたすらに弾をばらまき敵を一掃する
  • 連射し続け敵の移動や反撃を力ずくで抑えつける
  • 味方が進軍するときや、リロードの際に援護射撃をする
  • 敵の上陸や進行から陣地を守るかなめとなる
  • 小銃の有効射程外から敵の指揮官や砲手を狙撃する

など。数人の兵士で大部隊の足止めや掃討をおこなえるため、軍隊には必要不可欠なものである。
第一次世界大戦の頃に登場し、登場直後から死体の山を築きあげ、これによって塹壕戦、更には戦車が生まれることになった。
特に騎兵の存在価値・運用方法は大きく変化させられてしまった。

◇制圧射撃

機関銃(マシンガン)という武器を語るにあたって重要な概念が「制圧射撃」である。
敵を狙って撃つ事が難しいのに、なぜ機関銃はこんなに重要な武器なのか?

人は生命の危険が間近な所で、それを気にせず作業する事はできない。
弾が飛ぶ気配がしたり、近くで榴弾の炸裂が起きたら当然、作業を放り出して身を隠す。敵を探したり、銃を構えたり、そういった作業も放り出す*2
つまり、マシンガンのフルオートで弾をまき散らし続ける限り、直撃殺傷はできなくとも、弾が散らばる範囲の敵を全員物陰に隠れさせ、作業を中断させられる。
これが制圧射撃である。この間に味方の歩兵は移動し、敵を探し、手榴弾を投げる事ができる。
機関銃はこれが一番の仕事なのだ(短機関銃はやや仕事が違ってくるが)。

種類

一口に機関銃といってもさまざまな種類がある。
  • 重機関銃(HMG)
  • 軽機関銃(LMG)
  • 汎用機関銃(GPMG)
  • 分隊支援火器(SAW)
  • 短機関銃(SMG)
  • 個人防衛火器(PDW)
  • 機関砲

この項目ではこれらを簡単に説明する。

□重機関銃 (Heavy machine gun)

三脚や銃架を使って陣地に固定して運用する機関銃。略称は重機、HMG。
当然といえば当然だが、原初のマシンガンはこういう規模の兵器だった。台車に乗っけて馬や人力で動かす、大砲と同クラスの重量であった。これは原初のガトリング砲もそうである。
後述する「より軽い」機関銃が登場すると、「大勢でかからないと移動もままならない機関銃」が重機関銃と呼ばれるようになった。
数値的に何十kgとかいう基準があるのではなく、「最低3人は運用に割り当てないといけない」という運用側の部隊編成の手続き面から「重い」と表現されているわけだ。

大変重い(弾や交換銃身含めるとワンセット60kgとかザラ)ので数人がかりでしか運べず、射手・装弾手・銃身交換手のメンバーが必要。
昔は水冷式が主流だったが、戦場で水を確保するのが難しいため現在は空冷式が主流となっている。
WWⅠの頃に重機関銃が担当した役割は、現代では後述の汎用機関銃が担当することが多くなっている。そのため、現代では使用する弾が大口径だったり、多銃身だったりと小型化が難しいものが重機関銃として残っている。

大勢がかりでないと動かせないので、主に陣地などの防御に使用される。
航空機銃や車載機銃に転用・発展した物も見られる。
補給や運用に重しをかける重厚長大兵器だが、他にはできない超大型弾をぶちまけて車両でも陣地でもひっくり返せるという利点があるため歩兵側からの需要は途絶えない。
新型の開発の流れは途切れてしまった*3が、技術的に枯れつくした古参モデルが今でも各国で現役で生産され、鉄塊をぶちまけている。

重機関銃、特に口径12.7㎜級以上の大口径タイプは射程を生かして1.5~2km先から一方的に射撃を加えたりすることもできる。
これはフォークランド紛争で実際に使われた方法で、アルゼンチン軍が塹壕の中からブローニングM2に望遠鏡のような大きさのスコープを付け、7.62mmのライフルしか装備していなかったイギリス軍を狙撃し始めたのである。
これにはイギリス軍も呆然自失。
相手は2km先から遮蔽物ごと狙撃してくるが、自分たちの銃はせいぜい600m先を狙うのが限度だったからである。
結局イギリス軍は相手を塹壕ごと、非常に高価な対戦車ミサイルで陣地ごと吹き飛ばす戦法しかとれなかった。
この戦訓から対陣地ロケット弾とアンチマテリアルライフルが開発された……と言われているが、後者に関しては俗説の域を脱していない。
ただし重機関銃による狙撃は日本軍の機関銃部隊が伝統的に得意にしていた他、朝鮮戦争やベトナム戦争でも行われており、フォークランド紛争が初の実例という訳ではない。とはいえ、とっさにそれをやられると大損害(人死に)が出るというのは現代でも脅威に変わりない。

間接照準射撃に用いられた例もあるが、歩兵支援火器の充実や通信・観測技術の改善に伴って実施する機会が無くなっている。


有名な銃器
イギリス:マキシム、ベサ
アメリカ:M1919、ブローニングM2
フランス:ホッチキス(オチキス)
オーストリア:シュワルツローゼ
ソ連:DShK38
日本:九二式重機関銃

□軽機関銃 (Light machine gun)

二脚を使って運用する機関銃で、第一次世界大戦に登場した。略称は軽機、LMG。
射手・装弾手で構成される。
第一次世界大戦が勃発するまで歩兵分隊における火力の主体は小銃だったが、
以後は軽機関銃やそこから派生した汎用機関銃に置き換わり、現在は分隊支援火器がその座に収まっている。

原初の機関銃は、強力だが簡単に移動できず、伏せ撃ちもできないなど問題が多かった。
技術の進歩とともに機構を小型軽量化でき、生まれたのが軽機関銃である。
重機と比べて射撃精度や射撃継続能力は劣るが、その分軽く、動かしやすい。
歩兵とともに進軍し援護するのが主な運用法。基本的に2人運用だが、1人で移動なら可能なくらいの無理が効くのが重要な利点。
主に攻撃用。現在は固定でも移動でも使える汎用機関銃と移動運用メインでさらに軽い分隊支援火器に分岐・発展した。

有名な銃器
イギリス:ルイス、ブレン
チェコ:ZB26
デンマーク:マドセン
日本:九六式軽機関銃、九九式軽機関銃

□汎用機関銃 (General purpose machine gun)

第一次世界大戦と第二次世界大戦の戦間期に登場した。二脚で運用すると従来の軽機関銃、三脚に据え付けると従来の重機関銃に近い運用ができる汎用性を持つ。
軽機関銃から発展したタイプで、口径は8mm以下が多い。
一部は分隊支援火器と重複している。

状況に応じてパーツを交換し、陣地防衛の際は重機関銃として三脚などで固定する。

さらに軍用車両や軍用ヘリに搭載したり、対空銃架を装備すれば空にも対応と汎用の名に恥じない働きをする。
分隊レベルの対人は分隊支援火器、対物・対空は大口径重機関銃にとって代わられつつあるが、両者の中間的な性能であり今も生き残っている。

有名な銃器
ドイツ:MG34、MG42、MG3
ベルギー:FN MAG
アメリカ:M60
フランス:AA-52
ソ連:PK
日本:62式7.62mm機関銃

□分隊支援火器 (Squad Automatic Weapon)

第二次世界大戦後に登場したタイプで、現代における軽機関銃的な存在。
「Squad Automatic Weapon」の頭文字をとった「SAW」という略称がある。
使用する弾薬の関係で汎用性に劣るものの、更なる軽量化が図られていて、基本的に一人で運用する*4
歩兵の主力火器である突撃銃と使用弾薬を共通化することで弾の補給を円滑にし、また銃・弾・反動を軽くして動きやすくしたタイプが主流*5
アサルトライフルから発展したモデルもあり、制圧力よりも射撃精度を重視する物もある。
汎用機関銃では重くて動きづらい、突撃銃では連射力が足りない…という現場の事情から、双方の歩み寄りで生まれた間の子である。

分隊の火力を簡単に上げることができ、部隊とともに素早い行動がとれる攻撃用の機関銃である。
戦闘の際はまず火力で敵を面制圧し、味方の援護をつとめる。
突撃銃全部にフルオート機能を持たせるとこれまた問題が色々起きたため、そこを補填するために生まれたという側面もある*6

有名な銃器
アメリカ:M1918ブラウニング自動小銃(※先駆者的存在で、分類上は自動小銃)、M27 IAR(分隊支援火器だが、分類上は自動小銃)
ソ連:RPKシリーズ(アサルトライフルベース)
ベルギー:M249 MINIMI軽機関銃(汎用機関銃ベース)
他に、色々な突撃銃に分隊支援火器化オプションがある。キットで組み替えるだけで転用できるようになっている場合が多い(ステアー・AUGなどが代表的)。



◆ここまで↑の機関銃(重機・軽機・汎用機・分隊支援火器)はベルト給弾が基本である。
これは「メタル・リンク」という金属の輪っかで弾と弾を繋ぎ合わせたもので、
それを絡まないように折りたたんで弾薬箱に入れ、最初のスタータータブを銃に挟みこんで使用する。
これで頻繁なリロードをせずに撃ちまくることができ、機関銃の強みである継続的な連射が可能となる。
その連射を支えるために機関銃は通常のライフルの銃身よりも肉厚で丈夫なヘビーバレルを採用しており、銃身の耐熱限界を長くしている。
だがそれでも限界はすぐきて銃身が傷んでしまうため、ワンタッチで銃身を交換できるようになっている。
交換目安は200発から多くて500発ほど。
一般的に予備の銃身を何本か持ち運び、それが冷えるまでローテーションして使いまわしている。
これらが揃って初めて数百発単位での連射が可能となると言っても過言ではない。

◆ここから下↓は使う弾薬や運用の基準がそもそも違うクラスになる。
短機関銃やPDWは拳銃弾とそれを使う銃の発展型で、重機以来の機関銃とは別系統から発展してきた。
機関砲は砲カテゴリなのでもはやそういう次元ではない。



短機関銃 (Submachine gun)

第一次世界大戦中に取り回しの良い機関銃が求められて開発されたタイプ。略称はSMGなど。
初活力の低い拳銃弾を使用した事で個人携行を可能にしている。
一部は個人防衛火器と重複しており、拳銃弾を使用しない物も有る。
かつては塹壕戦や運動戦などで重宝されたが、アサルトライフルが主流となった上に軍隊にボディーアーマーが普及しため、現在は短射程・低貫通力(=二次被害が出にくい)という特性を生かせる治安維持用途が多い。
発祥の地ドイツでの名称「Maschinenpistole(機関拳銃)」からもわかるよう、本来は拳銃の延長上の武器である。

有名な銃器
ドイツ:MP18、MP40、H&K MP5
アメリカ:トンプソン、M3(グリースガン)
イギリス:ステンガン
ソ連:PPSh-41
チェコ:Vz61
イスラエル:UZI

個人防衛火器 (Personal Defense Weapon)

冷戦終結前後に登場した新しいタイプで、CQB(近接戦闘)に向いている。略称はPDW。
防弾チョッキの普及により拳銃弾では威力面で不足が生じた事から登場した。
専用弾薬を使用するなどで貫通力を高めているのが最大の特徴。
短機関銃と同様に治安維持や特殊部隊での運用が目立つ。

有名な銃器
アメリカ:M1カービン(※先駆者的存在で、分類上は自動小銃)
ベルギー:FN P90
ドイツ:H&K MP7

□機関砲

「砲」というだけあって20~57mm程度の大口径であり、威力は機関銃とは比較にならないレベル。
例えば7.62mm NATO弾は弾頭の重さが10g程度だが、ボフォース40㎜機関砲の弾頭は1㎏に迫る。
近年過激派組織(北朝鮮もやってた)が見せしめとして人に向けて発射することもあるが、跡形も残らない。

また、「銃」と「砲」の区分は曖昧で各組織によって定義が異なり、同一銃が別分類になることもある。
旧日本軍では20㎜を機関砲ということもあれば37㎜を機銃ということもあった。
一般には大型のため据付けで車載・機載・艦載されており、対人対車両、対空に用いられる。
メジャーな動作方式はやはり歩兵用と同じブローバック式などだが、特に連射速度を求める航空機関砲やCIWSなどではガトリング式、リヴォルバーカノン式など、機関砲ならではの方式が用いられることも。



余談

日本では突撃銃(アサルトライフル)や短機関銃(サブマシンガン)など、連射できるものは全て機関銃(マシンガン)と表現される傾向にある。
しかし全ての銃はそれぞれ違ったコンセプトの元に開発され、現場と開発者の努力の結晶とも言えるものである。
どうかそのことを時々で良いので思い出して欲しい。
そして全てマシンガンと一言で済ませないで欲しい。


追記・修正お願いします。

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