アンチマテリアルライフル

登録日:2011/11/26(土) 01:31:28
更新日:2025/07/07 Mon 20:01:39
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概要

対物狙撃銃(Anti-materiel Rifle/アンチマテリア(エ)ルライフル)は主に大口径(一般には12.7mm以上)のライフルを指す。
対人狙撃に使われる7.62mmNATO弾5.56mmNATO弾に比べ、小銃としてはかなり大規模で大口径。
普通の狙撃銃よりも弾速と遠距離での精度、破壊力に優れるため、1kmを越えるような超遠距離狙撃に対応する。
威力も桁違いで、条件次第では2km先からコンクリートの壁を撃ち抜ける。約1.5km先の兵士を真っ二つに分割したこともある。



歴史

最初は対戦車ライフルとして、第一次大戦時に開発された。

当時の戦車であれば覗き穴や側背面、履帯などの脆弱部を撃ち抜くことができ、歩兵の数少ない対戦車手段として使われていた。

しかし銃弾では貫通しても加害が限定される点や、戦車の装甲厚も向上したことにより第二次大戦後はいったんカテゴリごと消滅した。

対戦車ライフルと対物ライフルとの空白期間では、ベトナム戦争やフォークランド紛争にて重機関銃にスコープを付けて1km超の狙撃に供される事例があったが、基本的にはそれらだけで事足りてしまっていた。

湾岸戦争以降では超遠距離狙撃や地雷除去用途として再び用いられ始めた。重装甲の相手でなければ(対バンカー、対軽装甲車、飛行機の窓、対ヘリ、対モビルスーツ、対AT等)十分効くとして再興の道をたどっている。


余談

名称について

たまに誤解される事だが、反物質*1用いたライフルではない

そもそも「物質」(materi a l(マテリアル))を貫くライフルというわけでもない。
正しくは「軍用資材」(materi e l(マテリエル))*2を撃ち抜くための銃である。
そのため、正しい呼称は「アンチマテリルライフル」(Anti-materiel Rifle)である。

ハーグ陸戦条約

対物狙撃銃による対人狙撃は、ハーグ陸戦条約による「不要な苦痛を与える兵器」としてその使用が議論されることがある。
無論同じ弾やより大きい30mm機関砲弾をフルオートで対地目的でばら撒いている中では些細な話であり、先の条約にも該当している記述は存在しない。

民間人の所持

アメリカのいくつかの州では正規の手順を踏めば民間人にも対物ライフルの購入が認められている。
理屈としては『こんな反動も発射音も半端なくて位置バレどころかデカくて持ち運びもしにくい上に弾も金掛かる銃を犯罪に使う非効率なアホはいねぇだろ、GTAじゃあるまいし(意訳)』ということらしい。



主な対物狙撃銃

対戦車ライフル

  • モーゼルM1918 Tankgewehr(ドイツ)
 世界初の対戦車ライフル
  • ボーイズ対戦車ライフル(イギリス)
  • ラハティ L-39(フィンランド)
  • PTRD1941/PTRS1941(ソ連)
 デグチャレフ設計/シモノフ設計。
  • 7.92 mm EW141(ドイツ)
 車載式の試作対戦車銃。試作軽戦車/装甲車の主砲等として開発。

対物ライフル

 概ね現代の対物ライフルの祖。写真家で超遠距離狙撃を趣味としていたバレット氏が50口径の魅力に憑りつかれて生み出した。
  • チェイタックM200(アメリカ)
 専用弾と弾道コンピューターを搭載していた。
  • アンツィオ Mag-Fed 20mmライフル(アメリカ)
 20mm弾使用、射程4500m、全長約2m、重量59kg……と、2023年現在個人携行できる中で最大級の銃器
  • マクミランTAC-50(カナダ)
 世界最長狙撃成功記録を持つ
  • ダネル NTW(南アフリカ)
 部品の交換により20mm弾と14.5mm弾が使い分けられる
  • IWS2000(オーストリア)
 小銃であるにもかかわらず15.2mmAPFSDS(装弾筒付翼安定徹甲弾)を使用する
  • ゲパードシリーズ(ハンガリー)
 主にロングリコイル式を採用しており、戦車のような駐退複座を行う。
  • PGMヘカート(フランス)
  • AI AW50(イギリス
  • DSR-50(ドイツ)
  • KSVK(ロシア)
  • PTST(ロシア)
  • OSV-96(ロシア)



登場する作品

スクールボーイが使用。
後にランボーもM2重機関銃を使用している。
激しい人体欠損が見られる。

終盤でクラレンス一味が「コブラアサルトキャノン」というハイテクガンを使用。
着弾時に大爆発する弾を発射しているが、現実でも榴弾や「徹甲焼夷弾」といった爆発する弾丸を発射できるアンチマテリアルライフルもある。
次回作でもロボコップが暴走する2号機に対して同タイプの物を使うが、ノーダメージだった。

  • ザ・シューター極大射程
スワガーがヘリのローターを撃ち抜き辛くも撃破している。

  • ハート・ロッカー
PMCが持ってくるが、迫撃砲で死亡。
スキンヘッドが狙撃に使用する。
バンカーに対して発砲するが、威力は控えめ。

大佐率いる傭兵団が使用。
エビ製パワードスーツに強烈な一撃を与えるものの、電磁砲にはかなわなかった。

ファントムバレット編のヒロインシノンがPGMヘカートⅡモデル『ウルティマラティオ・へカートⅡ』を愛用している。

◆カホウ系統(~MHP2G)
老山龍砲系統(~MHP2G)
◆妃竜砲系統(MHP3)
いずれも見た目は完全に対物ライフルで、分類はヘビィボウガン

「世紀末ハリウッド」にて、依頼主と共に敵襲を受ける中、デューク東郷は監視カメラを覗く依頼主の通信を頼りに、上階から迫る敵兵達をPTRSで天井→床越しに狙い撃った。しかし、数の差と敵の自爆により殲滅には至らず、下方の部隊は別の方法で倒すことに。

単行本8巻にてロベルタが使用。
グレイフォックスのアルファ分隊へ向かいのビルの屋上から右手のみで固定した無茶撃ちを叩き込み、乱入してきたFARCの特殊部隊へ超至近距離の乱射を行う。
更には棒高跳びしつつ背面に背負ったライフルを乱射。もはやギャグである。

フィールドに落ちている対戦車兵キットを拾うことで上述した世界初の対戦車ライフルの「Tankgewehr M1918」を装備した対戦車兵となれる。
性能的を一言で表すならば「ロケットガン並の破壊力がライフルの弾速・精度で飛んでくる」代物。
実力さえあれば戦車どころか13.2mm弾の対戦車ライフルに「銃座を吹き飛ばされる装甲列車」「機関部を撃ち抜かれて一撃で爆散する重爆撃機」が拝める。

  • メタルギアソリッドシリーズ
シリーズ初登場は『4』。M82A2が登場。かなり高価だがドレビンショップで購入することができる。
即死級の威力と長い射程に加え、セミオートのため連射性能も悪くない。月光相手でも余裕になるほど強力な武器。欠点は値段と重量。
ストーリー中では最終決戦にてジョニーが使用、窮地に陥ったメリルの許に駆け付け、多数の敵兵を撃破する活躍を見せた。

『PW』ではPTRD1941がスナイパーライフルカテゴリの武器として登場。
4に比べると流石に年代が古く単発式でリロードも遅いなど使い勝手に少々難がある。開発が進めばセミオート化したPTRS1941も開発可能。

『V』では実在銃から架空銃に変更された上でスナイパーライフルカテゴリで登場。
「ブレナン長距離狙撃銃 タイプ46」、「サーバル対物ライフル」、オンラインでのみ開発可能な「モロトーク-68 対物ライフル」が該当する。
ブレナンとサーバルは、それぞれモデルはL96A1、ダネルNTW-20と思われる、
どこに命中させても即死するほどの威力を持つ上ヘルメットやボディアーマーなどを貫通するため敵の装備状況を気にせず運用することができる。
もちろん戦車やヘリなどの兵器にも有効。
上位グレードになるとセミオート版が登場、さらにはサプレッサーまで取り付ける事も可能となる。

M82モダン三部作とBO2に、DSR-50がBO2に登場。
また第二次世界大戦を舞台にした初代やWAWでも対戦車ライフルのPTRS-41が登場する。
どれもスナイパーライフルのカテゴリの中でトップレベルの高威力を持つ。
MW1ではM82を使った狙撃で人間の片腕が吹っ飛ぶ描写があり、問答無用のグロさで有名なWAWではPTRS-41で敵兵を撃つと当たり前のように四肢や頭部が飛び散る。

自慢の357マグナムが効かないアーマーを着込んだ敵への対策として、中盤からはシモノフPTRS1941対戦車ライフルを使用した。
14.5mmの大口径で、銃身長1,219mm、重量20.8kgと、小脇に抱えて撃てるようなシロモノではないはずだが…。




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最終更新:2025年07月07日 20:01

*1 「反物質」は英語でアンチマター(Antimatter)である。マター、マテリアルは共に日本語では「物体・物質」と訳されるが、“material”は「(物質の)材料」「(何かを作る為の)物質」、“matter”は「(物質の)集合体」「(自然界を構成する)物質」といったニュアンスの違いがある。

*2 語源はフランス語のmatérielで同じく「物質」を意味するが、英語ではそこから転じて「軍用資材・輜重」を意味する単語として派生した。