機甲猟兵メロウリンク

登録日:2011/07/03(日) 23:24:24
更新日:2024/10/02 Wed 01:09:52
所要時間:約 6 分で読めます






ドッグマン大尉に伝えろ。『地獄の底から挨拶に来た』とな…



1988~89年に発売されたOVAで『装甲騎兵ボトムズ』と世界観を共有する外伝作品である。


◆概要

ロボットアニメでありながら主人公がロボットに乗らずに戦うという異色作であると同時に『ベルゼルガ物語』共々パイルバンカーの人気と知名度の向上に貢献した作品でもある。
特に前者の『生身でロボットを仕留める』という要素はトラックに撥ねられただけでもやられるほど脆弱なATだからこそ成立する話である。

原作およびシリーズ構成はボトムズ本編の監督こと高橋良輔
監督は高橋監督の朋友にして、『太陽の牙ダグラム』『銀河漂流バイファム』『機甲戦記ドラグナー』などを手掛けた神田武幸。


◆あらすじ

アストラギウス銀河を舞台にギルガメスとバララントの二大勢力により展開された百年戦争の終結直前、ギルガメスの少年兵士メロウリンクは軍上層部の陰謀に巻き込まれ戦友達を死に追いやられ、自身も濡れ衣を着せられる。
軍を脱走したメロウリンクは仲間を死に追いやり、自身を嵌めた将校達への復讐を開始する。

◆主な登場人物

メロウリンク・アリティ
声:松本保典
主人公。愛称は「メロウ」
メルキア軍プランバンドール機甲大隊所属の伍長。友軍の撤退陽動作戦に従事したシュエップス小隊唯一の生き残り。
帰還後に軍法会議にかけられ、敵前逃亡ならびに軍事物資強奪の罪を着せられ逆上、戦死した仲間の認識票と小隊の装備である旧式の対ATライフルを奪い脱走する。
そして仲間の名誉を守る為、軍法会議で偽証した大隊所属の将校達に戦いを挑むが、復讐行の過程で次第に事件の核心に近づいていく。

主人公だがAT(アーマードトルーパー)には一切乗らず、対ATライフルを武器にトラップなどあらゆる手段を駆使して敵が乗るATを生身で撃破していく。

強靱な肉体に不屈の精神、類い稀な悪運を併せ持つ。
機転も利き地の利や想像力を生かしたゲリラ戦が得意。敵の意表を突く事もしばしば。
基本的に標的であるプランバンドール将校にのみ定めており、それ以外は極力犠牲を出さない様に戦う。
やむを得ず戦わざるを得なくなった際にも「すまんっ!!」と謝罪しながら蹴り飛ばす場面も。

普段は口数も少ないが本質は真面目かつ誠実。かつては軍務に忠実であった事を示唆する描写も存在する。
長いこと女っ気が無い生活を送ってきた為か女性の相手は慣れていないらしく、純情な一面を覗かせる。


ルルシー・ラモン
声:玉川紗己子(現:玉川砂記子)
ヒロインにして本作唯一の名有り女性キャラ。メロウリンクより若干歳上で彼を「坊や」と呼ぶ。
流れ者のカードディーラーで、メロウリンクの最初の復讐に巻き込まれて以来行く先々で彼と関わる事になり、やがて復讐を手助けする様になる。
実は貴族出身で本名はフルレル・C・ヘルメシオン。メロウリンクの標的の一人、ヘルメシオン准将は叔父にあたり父と母を死に追いやり、家名と財産を奪った張本人として忌み嫌う。
メロウリンクや叔父との再会をきっかけに物語後半からはメロウリンクと行動を共にする。


キーク・キャラダイン
声:大塚明夫 
メルキア軍情報将校で階級は中尉。軍上層部の特命によりメロウリンクが濡れ衣を着せられた「プランバンドール・スキャンダル」と称される軍事物資強奪事件に纏わる謎を追っている。
メロウリンクの前に度々姿を見せ時に共闘するなど協力的な素振りを見せるが…
演じた大塚明夫氏はこれが声優デビュー作*1であり、本作の次回予告も担当している。重要人物なのにその回ごとの台本以上の情報は(ネタバレ)「実はメロウの本編中最後の相手こそ彼」「明夫氏含めてのネタバレ回避・守秘義務」という、最終話まで観れば頷ける理由からと思われるが貰えなかったらしく、仕方なく雰囲気で乗り切ったとか。


ガルボネール・J・ボイル
声:兼本新吾
メロウリンクの標的の一人でプランバンドール・スキャンダル後は第18メルキア方面軍第2師団特殊機甲部隊長を務める。
全体的に人格的に問題が多い他の標的とは異なり潔い武人肌の性格をしており、周囲からの信頼も篤い。
AT乗りとしての技量は高く、白兵戦でも素手でメロウリンクを圧倒する程の実力を誇る。
メロウリンクとは2度に渡り対決するも、一人の武人として高く評価している。
反面ある理由から上官であるヘルメシオン准将とは意見が対立しており、ヘルメシオンの側近ヌメリコフとも仲が悪い。
最終的にメロウリンクに敗れるも彼により命を助けられ、その借りを返すべくメロウリンク達に協力する。
最後は重傷の身を押してヘルメシオンの間に乱入。「明日のギルガメスのために」とヘルメシオンの口車に踊らされたことを告白した後、本性を現したキークからメロウリンクとルルシーの盾になる形で死亡した。


オスカー・フォン・ヘルメシオン
声:阪脩
メルキア軍准将。元プランバンドール機甲大隊作戦参謀で大隊を事実上私物化していた人物。
狡猾な野心家で実の兄を部下に命じて暗殺し、姪のフルレル(ルルシー)の後見人としてヘルメシオン家の財産に手を付け、更にフルレルに相続放棄させる事で財産を完全に我が物にした上で姪を抹殺する事を企む。
プランバンドール・スキャンダルの黒幕と目されていたが…。
実はプランバンドール・スキャンダルはバッテンタイン中将が黒幕で、ヘルメシオンは彼に従いPS開発計画に加担したことをメロウリンクらに告白。キークの「特命=プランバンドール・スキャンダル関係者の消去」は彼の始末も含まれており、最終的にその銃弾を受け葬られてしまう。


シュエップス・F・ブライアン
声:森功至
本編開始時点で故人。
メルキア軍プランバンドール機甲大隊シュエップス小隊の小隊長で階級は少尉。
上層部の無謀な作戦案に抗議した結果、懲罰として小隊は装甲騎兵(AT)小隊から機甲猟兵小隊として再編成され、敵の目前に友軍撤退の為の囮として取り残される事になった。
貴族出身ながらその事を鼻に掛けない穏やかな人物でメロウリンクも含め部下たちからの信頼は篤かった。
メロウリンクを除く他の小隊メンバーとは異なり敵の総攻撃からは辛うじて生き延びたが、偵察に来た敵兵をやり過ごす為メロウリンクと共に死体のふりをしていた所に機銃掃射を受け、メロウリンクを庇う形で息絶えた。



◆用語解説

機甲猟兵
生身でATと戦う事を強いられた兵士達。基本的に装甲騎兵部隊が懲罰としてこの兵種に再編成される事が大半である。
その生存率は最低野郎とまで言われたAT乗りよりも更に低く、生き残る為なら友軍の死体すらトラップに活用するとまで言われる事もあり、最低野郎の生き血すら啜る戦場の蛭として蔑まれている。

対ATライフル
機甲猟兵の標準的な装備にして本作を象徴する銃。メロウリンクが使うものは銃身下部にパイルバンカーユニットが装備可能なパイルバンカーカスタムと呼称されるタイプ。重量は30kgを超えるが、メロウリンクはこれを軽々持ち運ぶ。
現実世界でいう対戦車ライフルに近い武器であり、ATや戦闘ヘリの装甲を貫通可能な威力を持つ代わりに有効射程距離が短く、危険を承知である程度接近しなければ有効打が与えられない。このあたりの欠点も対戦車ライフル(戦車側の発達でそもそも貫通できない相手が増え、接近して・一発で行動不能にできるパーツを打ち抜く必要が出た)のオマージュなのであろう。
パイルバンカーユニットはATのアームパンチ用液体火薬カートリッジを用いて杭を打ち込むもので、ATの装甲程度なら容易く貫通可能。ライフルに取り付けずにユニット単体で使用することも出来る。
メロウリンクは最終的にこの兵装で敵に止めを刺す。たとえ相手が生身だろうと例外なく杭でぶち抜くし、変則パターンの時(パイルバンカー単体を外して撃つ、パイルで穴を開けることで火のついたポリマーリンゲル液をコクピットに噴出させ焼死させるなど)でも必ずパイルバンカーでフィニッシュしている。
名著『青の騎士ベルゼルガ物語』とともに、ボトムズの世界観に限らずパイルバンカーが創作物で「リアル系っぽい作品における必殺技」「メインキャラの武器・武装」として登場するようになったきっかけがこの『メロウリンク』対ATライフルの設定と見なすこともあるようだ。

軍用側車
メロウリンクの愛車(?)。
ギルガメス軍が主に偵察や連絡に使用している機種で、サイドカーが付いている事以外は何の変哲もないただのバイク
しかも相当古い型らしく、中盤で完全に寿命を迎えたため放棄された。ボトムズ主人公は機体を使い捨てるお約束がここにも。

プランバンドール・スキャンダル
百年戦争の終戦間近にメルキア軍プランバンドール機甲大隊で起きたとされる軍事物資強奪事件。
強奪されたのは大量のヂヂリウム。一小隊が実行犯にしては規模が大きすぎる、ヂヂリウムは結局行方知れずと不可解な点が多いと見られている。

ポリマーリンゲル液
実は明確に設定が作られて出てきたのはたぶん本作が初*2。初期作品のため本作のみ「PL液」と略される*3
精製工場が出てきたその回のうちに残置されてたPL液がすべて引火し大爆発(しかもボイル小佐側の兵のミスによるもの)、回想パートにちょっと出てきたヌメリコフが復讐達成回では文字通り生きたままPL液で焼かれてメロウに殺されるなど本作の時点でお世辞にも安全な代物としては扱われていない。

◆主題歌

OPテーマ「ソルジャー・ブルー」
歌:坂井紀雄

EDテーマ「VANITY」
歌:マーキーズ



◆余談

生身で次々とATを仕留める要素が目立つ作品だが、敵役として登場するATも魅力的であり、本作オリジナルのスコープドッグのカスタムバリエーション機体も登場している。ATファンの方も必見の作品である。

第6話のある1シーンにキリコ・キュービィーによく似た男が登場しているが、これは雑誌企画によるお遊びであり、キリコ本人ではない。
ちなみに、時系列としては本作の第1話がキリコがウドに流れ着く4か月前の7213年9月であり、
第6話にてメロウが復讐相手のバンスを殺害した7214年4月の時点では、キリコはクメンにてアッセンブルEX-10の傭兵として活動していた。

本作は女性人気が高く、女性作家により多数の同人誌が描かれ、本家ボトムズ以上に同人活動が盛んだったそうである。

実はATの体内を循環しているポリマーリンゲル液が初めて公式設定として採用された作品であり、それまではムック(しかもボトムズではなくダグラム)が初出の非公式な設定であった。

スーパーロボット大戦シリーズにおいてはソーシャルゲーム媒体の『スーパーロボット大戦X-Ω』で初参戦。
さすがに身一つで参戦させるわけにはいかなかったのか、便宜上軍用側車が主役機という扱いになっている。
とはいえバイクその物に特別な武装などは無いため、事実上の生身ユニットである。
ユニット性能としては攻撃力はSSR相当だが、装甲・運動性はR並、HPに至ってはUC並という極端な性能で、コストもSSRとしては非常に低い。
もちろんスパロボのお約束?で海や宇宙でも運用可能。ただしどちらも適応Cの上パーツスロット数が1しかない(Bまでしか上げられない)ため実質陸マップ専用ユニットと言える。というかコンシューマ作品でやらなかったのって半分はこれ、もう半分はメロウはAT乗らないからでは
なお、本作と『サンライズ英雄譚』シリーズにおいては世界観が同じでありながらも会う事が無かったキリコとの共闘も実現している。
また、『ボトムズ』の黒幕でもあるワイズマンに、キリコ同様に強者と見做され彼の後継者の候補として賞金首にされてしまう。
メロウの方もAT乗りより生存率の低い機甲猟兵の身でありながら小隊唯一で生き延び、その後ATに乗った復讐相手を生身で次々と仕留めていった点を考えれば、彼も異能生存体として扱ってもおかしくないかもしれない。

♪推奨BGM「PREVIEW」


予測された通りに項目は建てられた。


次はあんた達の番だ、Wiki籠もり。


あんた達はなんせスターだ。


このアニヲタWikiでは目立ち過ぎるよ。


死神の目を躱すには、な……。


STAGE2    

 エディット



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最終更新:2024年10月02日 01:09

*1 氏いわく名無しやガヤ役、父・周夫氏からの要請でピンチヒッター出演などはそれまでにもやっていたとのことだが、明夫氏本人含めて「初の正式な名前あり役・レギュラー出演役」のキークや本作ナレーションを初仕事とするのが普通。

*2 そのため初代アニメだと「四肢がもげたATが普通にぴんぴんしている」「明らかに駆動部を貫通されたのに「そこが壊れる」程度で済む」などPL液の設定を知っていると疑問しか浮かばないシーンがいくつかある。本作ではもちろん転倒した程度でも爆散。

*3 現在の公式設定は「PR液」