芸備線

登録日:2013/07/07(日) 23:03:00
更新日:2025/03/23 Sun 09:41:24
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芸備線 (げいびせん)は、備中神代駅から広島駅を結ぶJR西日本の鉄道路線である。

ラインカラーは紫で、路線記号はP


☆概要

*1

かつては山陽本線伯備線もしくは木次線経由で山陰本線を結ぶ間接的ながらも陰陽連絡路線のメインルートであったが、相次ぐ中国自動車道の開通や伯備線の高速化により今では単に広島~三次間の都市間輸送や三次~備後落合間、もしくは備後落合~新見間(特に日本屈指の秘境区間である備後落合~東城間)を結ぶローカル路線となっている。

管轄が國鐵廣島からも想像できるように、ダイヤや車両は 最早芸術レベルの悲惨な状態になっている。

特に備後落合~東城間は 1日3本しか走っていない‥

5 45
13 35
18 57
(東城駅の備後落合方面の時刻表。2024年現在)

のたった3本であり5時の始発を逃すと次は8時間後である。
北海道の部分廃線路線にこそ負けるが、九州のどっかの幹線同じ山陰を走る路線に並ぶ日本屈指の秘境区間である。
さらに同区間の2016年度の輸送密度(1日平均通過人員)は9(芸備線全体では1,699)、営業係数(100円稼ぐのに必要な経費)は106,801円(同、650円)。
営業係数は、往年の国鉄廃止線でも4桁までで、閑散区間の5桁ですらほとんど例が無い*2
この区間に限れば、札沼線や三江線ですら及ばない、 日本一の閑散&大赤字路線である。

因みに芸備線の名誉の為に述べると備後落合~東城間の2023年度の輸送密度は20と倍近くに増え、営業係数も11,766と約10分の1にまで減少しているがそれでもJR西日本の公表している赤字区間の中ではワーストの数字であり、即廃線になってもおかしくないレベルなのが現実である。

この区間だけネタにされがちだが、備後落合~備後庄原駅間が1日5往復、東城~ 新見間も6往復と負けず劣らず凄かったりする。

2018年に起きた西日本豪雨により
  • 狩留家~白木山間にある三篠川にかかる橋が崩落
  • 複数箇所で土砂崩れや路盤流出
が発生し一時は全線運休という事態に見舞われた。

2019年10月23日に最後まで残った中三田〜狩留家が復旧し、晴れて全線で運行再開となった。
2021年からJR西日本は備後落合~東城間の今後についての協議を沿線地域に申し入れていたものの、廃線にしたくない地域の対話拒否的姿勢に業を煮やし2024年3月にJRと沿線都市で構成される再構築協議会を開いた。
しかし、地域側は現状維持一本槍の拒否姿勢を崩していないが、地域側の主張する利用促進イベントの成果が「高校生22人に定期券1カ月分を配布も、鉄道通学に切り替えたのは2人」という有様である以上、部分廃線に赤信号が灯りつつある。

☆使用車両

注:國鐵廣島なのでお察しください。

現在の車両

  • キハ120形
広島~三次間で2往復、三次~新見間で使用。
同線では唯一のJR型車両。管内では福塩線美祢線でも使用されている。
中国地方の非電化ローカル線の主力車両…なのだが、実際はコストダウン車両。 昔はトイレすら無かった。
方向幕は手回し。朝の新見発備後落合行等、一部快速列車運用もあるが[快速]と言う紙を貼るだけであり、特に名称などはない。

  • キハ40・47・48形
広島~三次間の大半でこの車両が使用されている。
全国のキハ40系列では唯一、側面にLED式の方向幕が設置されているのが特徴。

広島色*3


過去の車両

  • キハ58系
「急行みよし」で使用されていた。

  • キハ20系
岡山-広島を結んでいた準急「たいしゃく」にて使用されていた。

⭐︎主な駅解説

  • 新見
姫新線伯備線乗り換え。津山駅・三次駅と並ぶ中国地方中央部の主要駅の1つである。
ここから備中神代までは伯備線に乗り入れている。

  • 布原
伯備線所属の駅なのに芸備線直通列車しか止まらない。
詳しくは伯備線の項目参照。

  • 備中神代
芸備線の線路名称上の起点駅。映画「八つ墓村」(1977年度版)のロケ地。
原作では八つ墓村の最寄駅(ただし徒歩半時間以上)は「伯備線のN駅」とされているが、昭和20年代の頃はローカル線*4だった伯備線が、1972年の山陽新幹線開通余波でどんどん発展して田舎の駅に見えなくなってしまったのでこっちにお鉢が回ったらしい。
ここは金田一耕助 の世界に使っても何の違和感もない田舎である。

  • 矢神
旧哲西町の中心駅。備中神代-東城の区間では唯一列車交換ができ、快速も停車する。ホームには御衣黄桜(黄色い桜)が咲く。

  • 野馳
岡山県最西端の駅であると共に開業当時の木造駅舎が現存する駅。

  • 東城
庄原市東城町の中心駅。帝釈峡への最寄駅なのだが、上帝釈までのバスは休日運休、下帝釈に至っては1本もない。
人口7000人とそれなりに大きい東城町の市街地からも程近いが、乗車人員は2桁行くか行かないか(実は備後落合より少ない)で、福山や広島方面へのバスの方が本数が多いという始末…。
ホームにはかつて運転されていた急行「やまのゆ」「たいしゃく」の乗車案内がうっすらと残っている。

開業は昭和5年11月だが、本当はもう少し早く夏には開業する予定だったらしい。
しかし、駅から市街地までの道路(距離にして300m弱)のルートをどうするかで町内を二分するほどの大騒動が起こり、その影響で開業が遅れてしまったという。ある意味東城町民の熱さと当時の鉄道の影響力が窺えるエピソードである。


↑ここまでまだ開けた田舎
↓ここから秘境

  • 備後八幡
八幡は「やた」と読む。無人駅になってしばらく後に、駅舎が待合室部分を残し解体され、スリムな姿となった。
昭和30年代まで駅近くに製鉄工場があり、駅から工場まで引き込み線が伸びていた。現在もその鉄橋が残っており、車窓からも眺められる。

  • 内名
牛山氏の全国秘境駅ランキング19位。中国地方トップの秘境駅である。
駅前には2件しか家がなく、牛山氏が訪れた2000年頃までは有人だったが現在は空き家。
なぜかラムちゃんのイラストに「ウチな」と書かれた紙が貼られている。

  • 小奴可
「おぬか」と読む。古くはたたら製鉄で栄えた小奴可村の玄関口であり、東城〜備後落合の途中駅で唯一の有人駅。
駅にはタクシー事務所が入り、スーパーも隣接するなど、小奴可地区の交通拠点となっている。駅周辺は東城三本桜のひとつ要害桜やりんご園などが点在。

  • 道後山
牛山氏の全国秘境駅ランキング30位。
広島県では古くからのハイキング&スキーの名所である道後山へのアクセス駅として開業。登山客やスキーヤーは駅から4キロの山道を歩いていた。
国鉄も古くから当駅に急行やスキー臨を停車させたり、道後山中腹に直営の山の家を建設・運営するなど、道後山の開発にけっこう乗り気だった。(山の家は管理者を変えながら現存している)
駅舎は開業時からのものだが、一部消防車の車庫に改装されている。あとトイレがやたらキレイ。
このほか駅裏にはかつて高尾原スキー場という初心者向けの小さなスキー場があったが廃業、現在その跡地を通るように道後山・鳥取方面への道路が作られている。

  • 備後落合
木次線 乗り換え。牛山氏の全国秘境駅ランキング101位。
日本一寂れた接続駅(2路線限定)の秘境駅としてつとに有名。
両路線のダイヤ本数の少なさに加え、やたら災害で不通になる為、到達難易度は全国秘境駅ランキング2桁台の駅に匹敵するという。
3方向の列車が会するのは1日1回しかない。
かつては機関区を有し、駅員や保線員などすべて合わせると職員が200人以上いたという。
そのため職員向けの商店が駅前に広がっており、栄枯盛衰を感じずにいられない。
なお「落合」を名乗る駅は全国にあるが、真の意味で鉄道が落ち合っている(分岐&合流している)落合駅はここだけである。

  • 比婆山
当初はイザナミノミコト神話が伝わる比婆山の中腹に社を構える熊野神社から、備後熊野駅と名乗り開業。
戦後行楽ブームが始まるとそれに乗っかり、1956年に当時の駅長や郵便局長の尽力で比婆山駅に改称された。
1面1線の無人駅で利用者も僅少だが赤屋根の駅舎が残っている。駅入り口の看板は岡山駅の時刻表を再利用している


↑秘境区間ここまで
↓ここからまた開けてくる

  • 備後西城
旧西城町の中心駅。列車交換が可能なほか、備後落合方面が災害で止まると列車はここで折り返す。利用客数は備後庄原以東で一番多い。

  • 備後庄原
庄原市の中心駅で、新見方面から来ると初めての乗降客3桁の駅。
備後と付いているが他に庄原と名の付く駅は無く、山陰本線の荘原駅(読み同じ)と区別する為に付けてある。
2020年に駅舎をリニューアル。明るくきれいな待合室、町の玄関にふさわしい交流スペース、1番ホームにマツダスタジアムに置かれていたカープ選手の人形が設置されるなどの改装が行われた。
ここもやはりバスの方が本数も利便性で優っている模様。

  • 七塚
1面1線の無人駅だがトイレがやたら立派な駅。国営備北丘陵公園に一番近い駅。

  • 山ノ内
庄原市最西端の駅。県立広島大学のキャンパスが周辺にあるが通学利用は皆無。駅裏に中国道の七塚原SAがあるおかげで喧噪だけはピカイチ。
くっそどうでもいい豆知識だが、ここから吉田口までの11駅連続でローマ字表記だとiで終わる駅が続く。

  • 塩町
福塩線との分岐駅だが、ここでの乗り換えはまっっっっったく考慮されてない。福塩線は全て三次駅まで直通するし。
駅裏に中学と高校があるので通学時間帯は混む。

  • 八次
三次の中心街にある為初めて景色が市街地っぽくなる。「やよし」と見せかけて普通に「やつぎ」と読む。

  • 三次
広島県北の中心都市である三次市の代表駅。
快速みよしライナー始発駅。
前述の通り、福塩線列車は当駅まで乗り入れる為、同線の実質的な始発駅となっている。
また、2018年3月31日までは三江線と接続していた。
因みに広島方面は1〜2時間に1本程度の運転があるが、それ以外は1日6、7本で備後落合方面は7時台の次は13あるいは14時台 6時間程度運行がないので要注意。

開業当初は十日市町の中心駅ということで備後十日市と名乗っていたが、1954年に十日市町と三次町が合併し三次市となったため三次駅に改称した。後に駅前が開発され新市街地が形成されたので、名を捨て実を取った形である。ちなみに三次町には三江線が通ったが結果は…お察しください。

  • 西三次
実は初代三次駅である。貨物駅もあったこともあり構内は広め。

  • 志和地
思わずウルトラマンっぽく読みたくなる駅名。駅舎の屋根の角度が妙に急。

  • 上川立
郵便局と商店が一緒になった駅舎。

  • 甲立
快速停車駅。
安芸高田市甲田地区の中心駅。

  • 吉田口
安芸高田市の中心部である吉田地区の名を冠するが、そちらへは少しアクセスしにくい。快速も通過する。

  • 向原
快速停車駅。
安芸高田市向原地区の中心駅で快速停車駅。

  • 井原市
井原市の駅…と見せかけてここから広島市内。広島市の最北東端の駅でもある。広島駅より三次駅のほうが近いのは公然の秘密
2019年に開業時からの駅舎が解体され、めっちゃ簡素な待合室に変わった。曲がりなりにも政令指定都市の駅なのに…。

  • 志和口
快速停車駅。
旧白木町の中心駅。2019年まで猫(龍馬)が駅長だった。みどりの窓口あり。広島への始発列車と広島からの終電が存在する。
"志和"口の名の通り、以前は隣町の志和の最寄駅でもあったのだが、現在はバスすらない。志和町へは西条か八本松から芸陽バスに乗りましょう。

  • 中三田
保線車両が留置されている。

  • 白木山
その名の通り広島の高尾山?こと白木山最寄駅。

  • JR-P09 狩留家
芸備線内における広島シティネットワークエリアの北端の駅。ICカードもここから使えるようになり、広島駅行きの列車が増える。
しかし駅そのものは田舎の寂れた無人駅の様相を呈しており、駅周辺もナスが名産ののどかな住宅地である。

なお、呉線に似たような駅(かるが浜駅)が存在するが当然無関係。乗り換え案内アプリで入力する際は気をつけよう。
なお、こっちの住所は「広島県広島市安佐北区狩留町」。

  • JR-P08 上深川
周辺には住宅街や学校があるだけといった、これと言って特色がない駅。

  • JR-P07 中深川
この辺りから段々広島市の市街地に入っていく。深川台や元高陽町役場(高陽出張所)最寄駅。

  • JR-P06 下深川
高陽A団地の最寄駅。
利用客が4桁になり、ここから更に広島方面との列車が増える。快速もここから広島まで各駅停車。
駅のすぐ近くに精米工場があるので、いつもごはんのよい香りがする。

前述の通り、ICOCAエリアは狩留家までであるが、次の快速停車駅である志和口はエリア外であるという地味なトラップと化している。
なので、交通系ICで利用する際には注意が必要。

  • JR-P05 玖村
高陽B団地の最寄駅。太田川の堤防のすぐ隣にある。
橋を渡れば可部線の梅林駅との徒歩連絡ができなくもない。

  • JR-P04 安芸矢口
周辺の団地群へのハブ駅となっている。高陽ニュータウンの首都的な存在で現在、改築中。

  • JR-P03 戸坂
「とさか」ではなく「へさか」。無人駅だがここも団地群へのハブ駅。
また、広島県の進学校の一つである広島城北高校・中学校にアクセスできる駅なので利用者は多い。

  • JR-P02 矢賀
広島駅の一つ隣。新幹線とJR貨物の車両基地があり、公開イベントの際はかなり賑わう。あと一応イオンモール広島府中の最寄駅。

なお、呉線には「矢」という駅が近距離に存在するが当然(ry。
全くもって紛らわしいことこの上ない。

山陽本線の天神川駅へは徒歩で行くことが可能だが、20分かかる。

山陽新幹線山陽本線(岡山・下関方面)・呉線可部線、広島電鉄本線乗り換え。
中国・四国地方で最も多くの人口を有する広島県第一の都市である広島市の中心駅。
芸備線は8・9番のりばから発着している。
ただし切り欠きホームである8番のりばは数本のみの発車で、それ以外は専ら降車用ホームとして使われている。


追記・修正は接近メロディを聴きながら宜しくお願いします。

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最終更新:2025年03月23日 09:41
添付ファイル

*1 出典:日本の旅・鉄道見聞録 URL: http://www.uraken.net/rail/alltrain/kiha/kiha120.jpg 日時:2016/01/08

*2 1987年廃止された士幌線の、末端区間である糠平~十勝三股間は1977年に営業係数22,500(全体では1,497)に達し、他区間に先駆けて実質的にバス代行となった例がある。

*3 出典: JR西日本キハ47形「広島色」と単色塗装の2両編成 URL: https://news.mynavi.jp/article/trainphoto-353/ 日時:2014/01/04

*4 本編内でも「山陽線は二等車があるのに、伯備線にはない。」としている。