登録日:2011/08/14 Sun 14:53:11
更新日:2025/07/28 Mon 21:53:41
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性能
全長:785mm
重量:3.82kg+α
動作方式:ショートストロークガスピストン ターンロックボルト
口径:5.56×45mm
装弾数:30+1
概要
L85(SA80)とは、
イギリスのRSAF(ロイヤル・スモール・アームズ・ファクトリー/エンフィールド造兵廠)が開発した
突撃銃である。
近代イギリス製の銃の後の世代の代表といえる尊大である。(
縞パン&ワイシャツとともに)
前史
西側標準弾が
7.62mmNATO弾から
5.56mmNATO弾に切り替わる中、
イギリスも主力小銃である
L1A1やスターリング短機関銃の後継として開発が開始。
EM-2試作小銃での辛酸は
7.62mmNATO弾の頁を参照。今回も独自弾である4.85×44mm弾をわざわざ5.56mmNATO弾(SS109/M855)から加工して試作し試験に供されたが、結局はSS109が最適とされたのでお流れとなった。
同時期にもH&K社が西ドイツ軍の要求により4.73x33mm ケースレス弾を用いたG11小銃を開発していたが、こちらも冷戦終結により頓挫。その影響による経営難により
英BAEシステムズ傘下に買収される憂き目に遭っている(壮大な伏線)。
鋼製自体はEM-2AR-18の影響を色濃く受け、試作時にはブルパップ式AR-18なども制作していたという。
XL64、XL65、XL68(4.85×44mm弾)とXL70、XL73、XL78(5.56mmNATO弾)と試作を重ね、1985年にようやく配備が開始された。
最初期型の構成
本体は金属プレス加工を多用し、ハンドガードやグリップなど部分的に樹脂を導入していた。
外観も
ブルパップ式を採用し比較的短めにまとまっている。
そして当時とは珍しくフリーフロート銃身となっており、その恩恵をいくらか受けることができる。
照準器はSUSATスコープを採用。ACOGやエルカンスペクター等後世のスコープに通ずるもので、アイアンサイトとブルパップ式との相性の悪さを改善している。
しかし、部分的にしか樹脂を採用しなかったことがあだとなって素の重量が従来型の小銃(FN FNCなど)と大差がなくなってしまった。
特段問題がないように見えるが、SUSATがほぼ標準である本銃では全備重量(マガジン込み)で4.98kg!最軽量級のM16(A4で4kg)と比べるのも酷だが、1kg程重いのだ。
機関部だけが重くなることによるリアヘビーさが度を越している点も問題。
材質も錆や虫ジュース(駆虫剤)による溶解などが発生しおおよそ堅牢とは言えないものとなっていた。
さらには製造のRSAFもこれまでスターリング短機関銃のプレスが主であったため、より精度の高い本銃ではノウハウ不足による生産遅延に直結した。
- 銃剣が銃口に穴の空いたグリップ部分を直接差し込む専用品で互換性も普段の使い勝手も悪い
- アルミ製マガジンがコルト社製、RASF製ともに変形に弱く、特にRASF製はマガジンフォロアーやスプリングにオリジナル性を出したせいで給弾不良を起こす
- 排莢方向と排莢口にあるコッキングハンドルの位置が悪く、排莢時に薬莢が薬室に戻ろうとしてしまい排莢不良を起こす
- セーフティの部分の一部に使用している樹脂が濡れると膨張して安全から動かせなくなる
- そもそも操作性が悪い。右利きのみに対応しており右利きでも誤操作によるマガジン落下等が発生しうるしそもそもセレクターとセーフティが分離している
- 連射に耐えきれずガスピストン部のつまりや銃身加熱、ファイアリングピン折れなどが頻発しやすく対処も専門の者や本国の工場に任せる必要がある。L85、L86LSWともに顕著
- 異物に強くないのに十分な潤滑油が必要なので砂を吸着してさらに悪くなる。寒冷地でも問題が出ただろう。
このように些細なものも含め、部隊試験中に大小50以上の問題が噴出した。
平時なら今後のアップデートでどうにでもなる可能性もあったであろうが、ちょうど1990年は湾岸戦争。問題のほとんどを抱えたまま送り出すこととなってしまった。
なんとかマガジンを丁寧に2~4発減らしてだましだまし運用。SASではC7(M16のカナダ製ライセンス生産版)やM16などと交換した。元SAS軍曹のクリス・ライアン氏も痛烈な批判を残している。
そうして湾岸戦争後、英国防省がLANDSET報告書にて本銃の配備を批判。前後でメディアや貴族院議員にも取り上げられる事態となった。
「It is, however, quite clear that infantrymen did not have CONFIDENCE in their personal weapon. Most expected a stoppage in the first magazine fired. Some platoon commanders considered that casualties would have occurred due to weapon stoppages if the enemy had put up any resistance in the trench and bunker clearing operations. Even discounting the familiarisation period of desert conditions, when some may have still been using the incorrect lubrication drill, stoppages continued to occur.」
意訳すると、「ほとんどの歩兵や小隊長らが自らの武器に自信を持てなかったことは明らかである。砂漠地帯での注油をやめたとしてもこれは直らかっただろう」。
1994年に合計33万丁で生産終了。英軍は30万丁の本銃(L85A1)を抱える状態となった。
ともあれ改修は急務といえた。
A2への改修
ここで声をかけたのが、英BAEシステムズ傘下にいたH&K社。
2000年にアップグレード契約を結び、信頼性の向上の面で改修を加えた。
- コッキングハンドル形状を変え、ハンドルに薬莢が当たっても薬室に帰らないように
- エキストラクターを改良
- マガジンをH&Kのスチール製のものに差し替え
- ファイアリングピンをテーパー上にすることで折れにくく改良
- ハンマーの重量増加
- ガス周りのクリアランスを確保
- トリガー裏面の形状を変更することで異物が詰まっても引き金を引きやすく改良
- マガジンキャッチ周りにカバーを追加し指以外では押しづらい形状にしてマガジン落下を低減
- アンダーバレルグレネードランチャーへの対応
これにより動作不良は平均25000発に1回の割合へと劇的に改善された。
「改修していない場所はない」とまで言われるまでやったので費用もそれなりに掛かっており、20万挺を9,200万ポンドで改修した。2000年当時の円換算で400ポンド=65,323円/挺である。
2009年以降は以下の小改良が行われている。
- ハンドガードをダニエルディフェンス社製RISへ変更
- フラッシュハイダーをシュアファイアー社製のものへ変更
- 光学照準器をACOGまたはエルカンスペクターへ変更
- より軽量なマグプル製EMAGの配備
これらの変更により、本銃は他国と引けを取らない銃へと生まれ変わった。アフガニスタンでも湾岸戦争でのような不評は聞かれなくなった。
A3への改修
再度H&K社((95年からのG36の供給によりドイツに帰り咲いていた))により2018年以降順次改修中。変更点は以下の通り。
- アッパーレシーバーの改良によりトップレールがハンドガード先までフラットに
- 100gの軽量化
- FDE(フラットダークアース)へのコーティング
- ハンドガードの形状改善とM-LOK対応
派生型
銃身の延長とヘビーバレル化、バイポッドの追加などを施した分隊支援火器仕様。RPK等と同じく突撃銃を小改造で機関銃にしたタイプ。
リアヘビーな重量バランスが多少改善されたが重量は弾薬込みで約7kgに、銃身長は646mmに伸び、銃口初速が970m/sに上昇。射程と精度が向上。
内部メカも若干異なり、フルオート時はオープンボルト方式、セミオート時はクローズドボルト方式で作動する。
L85と同じマガジンで銃身の交換もできないため火力に欠けるなどの理由からイギリス軍ではFN MINIMIへ変更されお役御免となった。
その後マークスマンライフルとして転用されたことが確認されているが、それらも最近ではルイスマシン&ツール社製の「L129A1 SSW」に置き換えられた。
余ったL86の一部はL85A3へ改修された模様。アッパーレシーバーにL86特有の穴が空いたL85A3が存在する。
訓練用モデル。A1が手動装填、A2がセミオート版。
.22LR弾仕様。
ヘリパイロットやドライバー用の短縮モデル。アイアンサイトが無く、光学照準器を標準装備。
フィクション
えるかわゆす
ラスベガスでチェイスが使用
「左目に気をつけろ」で国連軍に参加した英国兵士が使用。
プライヤチャットの店の壁にある。
重いうえに高反動でジャム頻度が高く劣化速度も早い、おまけに売値すら安い地雷銃。
ある意味、愛ある再現と言えるかもしれない……。
MW2と
MW3にL86A1LSWが登場。
カテゴリはライトマシンガンに分類され、装弾数100発のドラムマガジンが装着されている。
L85A2:
阿慈谷ヒフミと
浦和ハナコが所持(固有名はそれぞれ「マイ・ネセシティ」「オネストウィッシュ」)
L85A3:朝顔ハナエが所持(固有名:ハッピースマイリー)
鷲見セリナも正確なモデルは不明だがSA80系統のものを所持している(固有名:タクティカルセラピー)。
4人ともイギリスをモチーフにしたとみられる「トリニティ総合学園」の所属。
擬人化した場合「病弱」「(見た目に相反する重量から)隠れ巨乳・着痩せする」「ドジっ子」といった属性を付けられることが救いと言えば救いかも。
余談
英軍では王室近衛歩兵連隊としてL85を装備して王室を警護している。
バッキンガム宮殿やウィンザー城の観光ついでに見られるかもしれない、敬意をもって拝ませていただこう。
追記・修正お願いします。
- 同じRSAFでもエンフィールド小銃は評判良いし息も長いんだけどなぁ… -- 名無しさん (2013-09-27 16:28:25)
- 地雷ぶきだな -- 名無しさん (2014-01-31 12:27:26)
- BFだとLMG扱いだったな。 -- 名無しさん (2014-08-07 12:11:34)
- ファイアリングピン折れただけで工場送りなのか(困惑 -- 名無しさん (2015-10-18 15:17:36)
- 重量のくだりの(AK47)と(AKM,AK74)が逆じゃない?AK47だけブロック削り出しで重いはず -- 名無しさん (2015-10-18 15:21:18)
- 他が大爆死した為に現在の世代で一番マトモな銃になってしまった(なお前の世代よりまともとは言ってない) -- 名無しさん (2017-02-02 17:51:17)
- 逆に重量もあってか精度が高めでマークスマンライフル版や分隊支援火器版の評判はよい -- 名無しさん (2017-06-01 14:16:22)
- 「G36新品と変わらない値段」というけど、G36自体かなりの廉価版ライフルなんだし十分安いのでは? HK416はG36の1.5倍、FAMASやAUGは2~3倍の価格だし。 -- 名無しさん (2017-09-17 21:18:22)
- 確かにブルパップで従来方式と同等の価格ならむしろ安いな -- 名無しさん (2017-09-24 17:08:35)
- 調べたらL86LSWの銃身長646mmって。狙撃銃並じゃないか… -- 名無しさん (2017-10-02 16:15:10)
- ↑3修正はしておいたけど、正しくは「改修費用だけでG36の本体価格の半分」かかってる。高くついたことに変わりはないよ… -- 名無しさん (2018-05-27 09:48:44)
- ドールズフロントラインにメガネキャラとして出ていますなぁ -- 名無しさん (2018-08-30 22:01:46)
- 古いヤツだけど各国の銃を紹介する動画の投稿者が英国海軍が合同演習のために来日し、護衛艦や装備を一般公開しているときに海兵隊にインタビューしたところ「改修前のヤツは散々な性能だったけど、今はそこまで不便とは思わない。」「昔のは酷かったらしいけど、普通に使えるよ。」との回答を頂いたとか。 -- 名無しさん (2020-08-06 14:04:14)
- どう見ても銃剣が使いにくい。柄と刃の接続部分も強度があるようには見えない。 -- 名無しさん (2020-09-09 15:49:08)
- A2までなら納得できるけど、英海兵隊やSASがL119採用しはじめてるのに、マークスマンの枠をAR系にも変えて、わざわざA3に改良してと…フレームボロになる個体でてきてそうなのにね -- 名無しさん (2020-10-22 18:00:16)
- 改良どころか完全に壊れるまで使ってる本邦が言えた話か? -- 名無しさん (2022-03-02 16:28:24)
- むしろ欠陥を認めて、それを直す能力が無いことも認めて、別の(それも外国の)企業に依頼して直してもらって…という流れは羨ましいくらいだ。そりゃ最初から欠陥とか無いのが一番だけどさ -- 名無しさん (2022-08-07 02:49:35)
- ソースはWikiとかなんでしょうがそもそも日本語版WikiのL85の参照元のコンバットマガジンの2003年の記事が誤りだらけなのがあって、それを元に誤情報が広まってるっていうのが -- 名無しさん (2023-02-01 05:46:16)
最終更新:2025年07月28日 21:53