ストック(銃器)

登録日:2011/05/28 Sat 17:05:40
更新日:2024/12/15 Sun 18:07:27
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概要

ストックとは銃の部品の一種。
スキーで使う棒や在庫品や経済学的意味のストックもあるが、ここでは小銃のストックについて解説する。

ストックって何さ?

肩に当てることで射撃姿勢や照準を安定させて、発砲時の反動や跳ね上がりを抑える部品。
日本語だと銃床(じゅうしょう)。肩に当てる部分をバックストックと言う。
つまり乱暴に言ってしまうと「肩当て」である。
主にクルミ材等の木材、プラスチック等が用いられ、結合部や心材にはスチールやアルミ合金等の金属素材が用いられる。


ストックの分類

ストックの構造による分類。言ってしまえば「外観」による名前付け。
特に「銃身(バレル)の後端をストックがふさいでいるかどうか」が差別点として挙げられやすい。銃身の後端は発砲反動の運動エネルギーが一番強く飛び出す部位だからだ(今となっては曖昧な事になっているが)。

直銃床

例)M16ファミリー(M4カービンなど大勢)、Stg44
銃身から肩当てまでが一直線上にあるもの。ストレートストックともいう。
フルオート射撃時の反動をコントロールしやすいのが長所。ただし発砲の衝撃が直接肩に来る為、肩を痛めやすい。
その為、昔の強装薬の弾薬で材質も木か金属しかなく、衝撃吸収機構の設計が稚拙な時代は、下記の曲銃床がよく使われていた。
直銃床が曲銃床に取って代わるには、低衝撃の5.56mm弾使用でプラスチック製銃床のM16で採用されるまで待たなければならなかった。
現在はより衝撃吸収力に優れた材質に衝撃を吸収する機構の登場など、素材も設計も進化したので大半の銃が直銃床となっている。

曲銃床

例)M1ガーランド
銃床が銃身の後ろより下にあり、構えた時に顔が銃身の真後ろにあるモノを曲銃床という。
現代の軍用ライフルの世界では旧式になりつつあり、現在採用しているのはAK-47とその派生ぐらいである。
  • 厳密にいうと、AKファミリーのストックは「銃身の後端をストックの先端がふさいでおり、そこから後ろは斜め下に下がっている」という直銃床・曲銃床の折衷案な形状になっている。時代的にAK-47は両者のちょうど過渡期に位置する。
構えると必然的に顔の真正面に照準線が合うので狙いは付けやすいが、銃口を跳ね上げる事で衝撃軽減しているのでフルオート射撃では銃が暴れる。M14がいい例だろう。
反面フルオートとは無縁な猟銃ではライフルショットガンの区別無く現役である。
レミントンM700とか最近の軍用狙撃銃も曲床銃だが、大抵はそれが猟銃を転用したものだから。
まあストックを変えれば直床銃にもなる。


ストックの種類

ここからは機能による名前付け。

フォールディング(折り畳み式)ストック

例)M93R・イジェマッシ AK100シリーズ・スペクトラM4
「folding=折る」
運搬の際に取り回しがし易い様に折り畳み可能なストック。
折り畳み方は様々で、M93Rは下方向、イジェマッシは横方向、スペクトラは上に被せる様に畳む。
横タイプは排莢口を塞がない様に角度をずらすか、排莢口と逆側に畳む様にしている。


テレスコピック(伸縮式)ストック

例)MP7
「telescopic=伸縮自在の」
ストックの長さが調節できるストック。
フォールディングストックと一緒にリトラクタブルストック(retractable=収納式、引き込み式の)とも呼ばれる。
縮めれば運搬時の取り回しがいいことや使用者の体格やボディアーマーの有無に合わせられるのが特徴。


フィクスド(固定式)ストック

例)MP5
「fixed=固定した」
名前から分かる通り固定式のストック。
昔の固定式の物を伸縮式や折り畳み式と区別する為の用語。
狙撃銃に見られる肩当てやチークピースが調節可能なタイプもこれに含む場合もある。
取り回しは不利だが折り畳み用のジョイント関節や伸縮用のスライド可動部が無い為「ガタ」が少なく、高耐久で強度に優れるという長所がある。


スケルトンストック

例)H&K G36
「skeleton=骨組み」
弾撃てる栓抜き
透け透けの透明という意味では無い。
肉抜き加工が施されたり、ワイヤーやパイプを組み合わせたものだったりと最低限の骨組みで作られたもの。

ワイヤーストック

例)ワルサー MPL・スコーピオン
ワイヤーを折り曲げられて作られたストック。種類的にはスケルトンストックの一種。
軽量、折り畳んでも排莢口を塞がないといった長所がある。
また、樹脂製のスケルトンストックはリコイルの緩和の役目ももっている。


サムホールストック

例)ドラグノフ式狙撃銃 SV-98
ストレートストックとピストルグリップを組み合わせた様な形状で、親指を穴に通して拳銃のように握る。
狙撃銃や競技銃でよくみられる。


ホルスターストック

例)VP70
ホルスターなの? ストックなの?」「いいえどちらも」

VP70やモーゼルC96やスチェッキン機関拳銃で使用するホルスター兼ストックのこと。
詳しくはこちらの項目の「ホルスターストック」をどうぞ→ホルスター



補足


◆複数の特徴を併せ持つストックは多い。

◆銃によっては別のストックへの交換が出来る。
M4カービンのカスタム製品は取り外しも可能。

◆ドイツ軍の拳銃『モーゼルc96』はグリップ部分にストックを取り付けるハードポイントが設けられている他、ストックの中に拳銃を収納してコンパクトに持ち運べるようになっている。

◆あくまでも肩撃ちする銃器にのみ付ける物。
車両や船舶に取り付ける銃器(M2重機関銃、ミニガン等)に取り付けられることはまずない。
逆に言えば、たとえ拳銃でも肩固定で安定させて撃ちたいならストックを装備する。

過去には拳銃に大型ストックと大容量マガジンを取り付け、カービンの代替とした銃も存在した。
現代では拳銃で遠くを狙う競技のためにカスタムパーツショップからストックが販売されている。
大口径リボルバーでの遠撃ち競技にもなると、ハンドガンなのにストックと照準眼鏡(サイトスコープ)までくっつけて何の銃だかわからない事になる。
別冊コロコロコミックで連載された「超未来戦隊コンバット弾」は、ハンドガンをストックで保持して撃つシーンを細かく描写した珍しい作品(しかもコロコロコミック!)。
肩と太腿で支持するカスタムストックで、オートマグを集中連射するという漢のロマン溢れる場面。

◆このストックに機関部を丸々収納するとあら不思議…ブルパップに早変わり!!

◆銃を逆に持ちストックで殴る使い方もある。
これは通称『バッシュ(殴打)』と呼ばれ、寧ろ当時のボルトアクションライフル等のストックは、反動抑制を抜きにすれば直接ぶん殴る為に存在していた。
米軍では小銃を模したクッション製のパジルスティックという棒で格闘訓練を行うが、銃剣(赤く塗られている端)だけでなくストック(黒く塗られている端)での打撃も認められている。
…が、最近のストックは軽量化やプラスチックやゴム製で内部機構も衝撃吸収を重視しているため、
強度が殴打には耐えられない・殴打してもその衝撃をストックが吸収してしまうので低威力になってしまう場合がある。

◆肉抜きされていないストックの場合、内部にクリーニングキット等を入れられるスペースを設けてあったりする。
特に今日日はレーザーサイトやダットサイトといった電気で動く周辺機器が増えてきたため、予備電池入れを備えたストックも珍しくない。






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最終更新:2024年12月15日 18:07