天狗(妖怪)

登録日:2017/08/06 Sun 01:05:00
更新日:2024/05/28 Tue 23:50:57
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     )、._人_人__,.イ.、._人_人_人
   <´ 天狗じゃ、天狗の仕業じゃ! >
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/    天      \`i / /  狗   |





天狗とは山に住み、人間に対して怪異をなす亜人型の妖怪である。

化け狐・化け狸と同様に古くから日本の伝承に登場し、大変馴染み深い妖怪である。





☆概要

一般的に天狗といえば立派な修験者(山伏)の服装で、背中に翼を持ち、赤ら顔で高い鼻、手には団扇を持った姿が知られているが
これは後述する「大天狗」と呼ばれる最上位の天狗であり、他にも鳥のような頭部を持つ烏天狗等の様々な種類が存在する。

主に仏門の身でありながら高慢が仇となり修行を完成出来ずに死に仏となれなかった者が死後に天狗になるとされ、後述のように鼻の高さからも高慢を象徴する妖怪としても有名。
つまりは、仏にこそなれなかったものの中途半端ながら法力はあるので輪廻からも外れてしまい魔縁に堕ちた外道共*1のことで、これについては正式な仏教(密教)が伝来する以前の雑密から生じ、神道と雑ざりあった山岳信仰に入っていた山伏達のイメージも込められており、高名な天狗が山伏の名号で呼ばれている理由ともなっている。
天狗が高名な修験場にて守護神とされているのはこの為で、嘗ての日本では山とは人の棲む里とは切り離された異界であったのだ。*2
現代でも「天狗」と言えばそれだけで「高慢」「得意げ」「増上慢」を示す言葉である。
“天狗の鼻折れ”は、傲慢で鼻持ちならない者が自業自得で痛い目に遭うことを現した有名な諺の一つとして知られている。

前述の理由から高僧なのに堕落して醜態を晒す生臭坊主も矢張り天狗と呼ばれるようになったのである。
他にも稀なケースではあるもののこの世に強い恨みを持ちながら死んだ者も天狗になるとされ、後述する崇徳上皇もその一人である。
これについては、天狗が魔縁とも呼ばれ上記の様に西洋で言う悪魔(堕天使)の如き存在としての属性も生まれたからである。

天狗は化け狐・化け狸と同様に、人間に怪異をもたらすものの必ずしも悪とは限らない妖怪である。
人間の子供をさらったり森で人間を迷わせたりすることもあれば、
生前僧侶や山伏であった頃に得た知識を活かして人間に英知を授けたり、
かと思えば人間に祟りをもたらす魔王ともなる等様々な側面を持つ存在である。
民間伝承においても天狗は良く登場し、後述するように江戸時代には子供が行方不明になると天狗の仕業だとされることが多かったという。

近年の創作においても様々な解釈がされており、
魔界に君臨する大魔王として扱う向きもあれば、怨霊としての側面、人間に協力的な側面をクローズアップされる事もある。
何れにせよ、高い知性を持つ魔性の存在ということから『稲生物怪録』に登場する魔王山ン本五郎左衛門神野悪五郎を天狗と解釈する等、妖怪共の大将とする考え方も定着している。


☆天狗前史

元々天狗は中国に伝わる妖怪であり、災いの前触れとされていた流星を指す言葉であった。
その姿はご存知の赤ら顔で鼻の高いアレではなく、文字通り天翔ける狗、即ち犬の姿をした妖怪であった。
特に出産や乳児の命に危険をもたらし、子供のいる家は天狗を祓う「張仙射狗」という絵を張る風習があるらしい。

飛鳥時代の西暦637年に、天狗という言葉が日本で初めて使われた記録がある。
都の空を轟音のような音と共に流星が流れる様が目撃され、
人々が星の音だ、いや地雷だと言った中、丁度唐から帰ったばかりの僧が「あれは天狗の吠える声である」と書したのが始まりである。

しかし中国における天狗は残念ながら日本では浸透せず、その後文書において天狗という言葉は暫く使われなかった。
ついでにいうとこの当時は「天狗」と書いて「アマツキツネ」と読んでいた。なにその矛盾の塊

☆日本における現在の天狗像が出来上がるまで

天狗という言葉が再び使われるようになったのは空海や円珍によって密教が伝えられてからである。
密教と奈良時代から伝わる山岳信仰が習合する中で、地獄にも極楽にも行けない者の世界として天狗道という魔界が想定・解釈され、
天狗は高慢な僧侶や山伏が死後になる存在という新たな設定で生まれ変わった。

どういうことかと言うと、密教(に取り入れられたインド神話の神々)の描写に流星や稲妻の描写があり、
漢訳の過程で「天狗(上記の通り空の轟音)のこと」と注釈が入ったため。
日本に伝わってからはおそらくは前述の「子供に害をなす空の妖怪」のイメージから物理的に子供に害をなす空の猛禽のイメージや、
流星の如く炎の様に光り輝き熱を発するガルーダのイメージが混入し、そこへ伎楽面の迦楼羅面や酔胡面のイメージが
「人間に化けていた天狗が正体を現す途中」のように影響して鼻の長い天狗になって行ったものと思われる。

一方で平地に住む平民は山で起きる怪異を天狗の仕業といい、山の神と称して恐れ敬うようになった。
ただし、当時の天狗はこれといって姿が決まっておらず、
僧侶の姿かと思えば童子のような姿、果ては半人半獣の姿と現在の天狗とはかけ離れた姿で、
同じく山に住む妖怪である鬼とも完全に分別されておらず、ほとんど鬼と変わらない姿をしたものもいたようだ

つまり現在の「扇・長い鼻・赤ら顔」というイメージは中世以降に解釈されたものであるが、
その姿のルーツとされるのが日本神話に登場する神、猿田彦である。


猿田彦命

日本神話に登場する国津神。
天孫降臨の直前に舞い降りたアメノウズメを案内した神として知られ、
後に結婚したが、海中でパルシェンみたいなヤツに手を挟まれて溺死してしまった。
本来は天狗ではないのだが、赤ら顔で鼻が長くかつ大柄という記述がある事から
日本に密教が伝わって以降日本における天狗と同一視されて語られることが多い。

鞍馬天狗

京都府は京都市の左京区に存在する鞍馬山に住んでいると伝えられる大天狗。
叡智を認めた人間に授ける「知恵者としての天狗」の代表格である。
かの牛若丸に武術を授けた事で有名な大天狗であり、鞍馬山僧正坊という名でも知られた。
恐らく日本においてもっとも有名な天狗である。

戦後まもなく本拠地の鞍馬寺が天台宗から独立した宗教法人となり、
神智学と融合して「実は鞍馬天狗の正体は金星から来たサマート・クマラである」等と謎の後付け設定が増えている模様。

崇徳上皇

猿田彦が日本における天狗の原型、鞍馬天狗が英知を授ける天狗の代表なら
人間に災いをもたらす魔王としての天狗として最も知られているのは崇徳上皇であろう。
元々は天皇家の出身であり、元永2年に鳥羽天皇と待賢門院の間に長男として生まれ、保安4年のまだ幼い内に白河法皇の命で即位し皇太子となる。
…が後に院政を敷いた鳥羽法皇は彼を快く思っておらず、鳥羽天皇の崩御後は弟の近衛天皇に譲位させられ、
さらに久寿2年に近衛天皇が崩御すると後白河天皇が、さらにその次に二条天皇が即位と実権は無きに等しかった。
保元元年に鳥羽院が崩御するも見舞いすら許されず、不遇な扱いに業を煮やした崇徳院は遂に兵を引き連れ反乱を開始、
これが保元の乱であるが崇徳院の率いた軍勢は夜襲によって崩壊し、敗退した崇徳院は讃岐(香川県)へ流刑されてしまう。
保元の乱から暫くして反省の意味も込めた写経を京都に送るも、
後白河天皇は呪いではないかと疑いこれを送り返すという行動に出る。

その行いに絶望した崇徳院は舌を噛み切り憎悪のあまりその身を天狗と化しながらその血を混ぜた墨で経に以下の呪いを書き加えたという。




「彼の(とが)を救はんと思ふ莫太の行業を、(しかしながら)三悪道に投こみ、其力を以て、日本国の大魔縁となり、皇を取て民となし、民を皇となさん」
(罪から逃れようと多大な努力をしたが、叶わぬゆえに、この経を三悪道(地獄道、餓鬼道、畜生道)に投げこみ、その力で日本国の大魔王となって、天皇を民に、民を天皇にしてくれる)








長寛2年、崇徳院は都に帰る事もかなわず現地で没した。
―いや、天狗となった

その後都には崇徳院の憎悪と怨念による災厄が吹き荒れ、後白河天皇の寵姫であった平滋子が死去し、続けて中宮九条院呈子も死去し、
再建した内裏も火災で市街もろとも全焼した。
都で相次ぐ災いに恐れ慄いた後白河天皇は崇徳上皇の怨念を鎮めるべく讃岐に白峰宮を立てて祀り、
崇徳上皇の怨霊はようやく鎮まったとされている。

生きながらに天狗と化し死後に都に災いをもたらしたその凄まじい怨念の強さから、
今日では平将門、菅原道真と並ぶ日本三大怨霊として知られている。

天逆毎

江戸時代の僧侶・諦忍の著した『天狗名義考』では、スサノオノミコトが吐いた猛気から生まれた女神・ 天逆毎 (あまのざこ)と彼女が同じように生んだ 天魔雄 (あまのさく)が日本における天狗や天邪鬼の祖先であるという説を*3引用している。

☆神としての天狗

何度も述べている通り元々が仏門に身を置く者である為、寺社と縁が深い天狗も多く、
中でも神として信仰されるほどの大天狗には先述した鞍馬天狗を含め、名前がついており、
その所縁の地が日本各地に存在する。
代表的なものとしてはかの役小角(えんのおづぬ)の師とも、本人が化したとも言われる石鎚山法起坊(いしづちやまほうきぼう)
それから管狐(くだぎつね)などを操る秘術を授けるとされ、足利家・武田家・徳川家ら大大名たちの信仰を集めた飯綱権現(いづなごんげん)こと飯綱三郎(いづなさぶろう)
その他にも秋葉山の三尺坊、筑波山の法印坊、富士山の太郎坊、比叡山の法性坊等がいる。



愛媛県は石鎚山に以下のような話がある。
親と共に石鎚山を登っていた幼い男児が山頂で行方不明となり、探したものの見つからなかった為諦めて帰ったところなんといなくなったはずの息子がいた。
息子に何があったかを問うと、迷った際に山にあった祠で小便をしていたところ、
突然大男が現れ、祠で小便をしていた事をたしなめられた。
しかし大男は送ってあげるから目をつぶっておいでと言い、疑いつつも目を瞑り、再び目を開けた時には家だったという。


滋賀県高島市には、空を飛びながら祭の見物を行うのが好きだという天狗が住むという。
この天狗は、高島町大溝に放火しに行ったものの隙間がなくて断念したというなんともコミカルな一面も見せている。
(なお高島市の白鬚神社は滋賀県最古と言われる歴史ある神社であり、上記の猿田彦神を祀っている)

このように天狗は、山の神として畏れられる一方で、親しみのある存在でもあるという、独特の地位を庶民の中で確立していった。

ちなみに天狗は鳥の姿としても描かれており、先述した崇徳上皇も金色の鳶の姿として描かれたものがある。



☆天狗にまつわる怪異

天狗の相撲場

山形県では、夏山の茂みの間にある少し広めの砂地や苔地を天狗の相撲場と呼んでおり、信仰の対象であった。

天狗倒し

神奈川県では突然木が倒れたり、木を斬る音が聞こえたので行ってみると何も異常はないという怪異を天狗倒しといい、
山小屋が風がないのに揺れるのを天狗の仕業といった。

天狗笑い

群馬県では山道を歩いていると誰もいないのに笑い声が聞こえ、これを無視して進むと笑い声は大きくなり、
不気味に思いつつ笑い返すとさらに大きな笑い声が帰ってくる怪異を天狗笑いといった。

天狗(つぶて)

石川県においては人気のない山でどこからともなくまるで投げられたかのように突然石が飛んでくる怪異を天狗礫と呼んでいた。
この石に当たると病気になってしまうという伝承や、猟をしている時にこの現象に遭遇すると獲物が取れなくなってしまうという伝承もあるようだ。

天狗(さら)

日本各地で見られる子供が突然行方不明になる怪異の事。
よく時代劇や昔の日本が舞台の漫画等で「天狗じゃ!天狗の仕業じゃ!」となるアレである。
その正体は大型の猛禽類であるイヌワシによるものではないかとの推測を行っている民俗学者も居る。

天狗憑き

他の妖怪や悪霊のように、天狗が人に憑りついて怪異をなすこと。
天狗らしく高慢ちきになってわけのわからないことを口走ったりすることもあるが、
中には町娘に憑りついた天狗が夢枕で呼び寄せた武芸者に武術の奥義をさずけたという話もある。

天狗の爪石

鋭い爪のような形をした石。お守りとした。
その正体はメガロドンの歯の化石。
どんだけデカいの天狗。

☆天狗が入る諺

「天狗」が入ることわざ・慣用句も存在する。
自分の知識を見せびらかして高慢になる様を「天狗になる」と言い、
さらにそうした人物を黙らせることを「天狗の鼻を折る」と言う。

この様に、天狗が姿を見せなくとも色々な怪異がゴルゴム天狗のしわざとされたり、
「天狗」を含む言葉が日常的に定着していることからも、
天狗がたいへん馴染み深い存在となっている事がうかがえよう。


☆天狗の種類

天狗は実は多くの種類が存在する妖怪の大グループという事はあまり知られていない。
ここではその天狗の種類を述べていく。

  • 大天狗
日本各地で伝わる天狗にして最上級とされる天狗。
背中に翼を生やし、大柄で、赤ら顔で、高い鼻を持ち、一本下駄を履き、団扇を持った高僧の姿で知られる。
我々が天狗と聞かれた時に思い浮かべるのはこの天狗だろう。
先述の崇徳上皇の影響もあってか妖怪の総大将という扱いを受ける等破格の扱いとなる事が多いが
実は下記の烏天狗よりも歴史が浅かったりする。


  • 烏天狗(からすてんぐ)
山伏の姿で鳥のような嘴を持つ天狗。
上記の大天狗の手下とされ、都まで下りては猛威を振るったとされており、
大天狗には劣るもののそれでも十分強大な神通力を扱う事ができたとされ、
尚且つ剣術の名手としても知られていたという。
大天狗の定着以前は天狗と言えばこの烏天狗の事を指していて
鞍馬天狗は大天狗とされてはいるがこの烏天狗であると伝わる事も多い。

その姿のモチーフになったのは仏教の守護神である迦楼羅(カルラ)神であるとも、中国の雷神であるとも言われる。

  • 女天狗/尼天狗
男性的なイメージの強い天狗だが実は女性の天狗も存在する
それが女天狗である。
通常の天狗と違ってほとんど人間の姿に近く、緋色の袴に小袖を着ており、
長い髪に眉墨とおしろいで化粧しているなど非常に美しい女性の姿をしている為、
背中の翼を見るまで天狗だとは気付かなかったという伝承がある。
モンスターとかを美少女化するのは日本の伝統文化である模様。

尼天狗はそんな女天狗のバリエーションとも言え、通常の天狗同様に高慢な尼が
死後に尼天狗と化すとされており、坊主頭であるという。
あの清少納言も死後に尼天狗と化したとされている。

  • 木の葉天狗
狼のような頭部を持つ天狗。別名は白狼天狗。
ある意味では中国の本元の天狗に近い姿ではあるものの、天狗の中では格下らしく、
小柄な姿で人間を相手に商売をしたり、イタズラをしたりするという。


  • 川天狗
多くの天狗が山地に住む中、川などの水場に好んで住んでいる天狗界の異端児。
他の天狗以上にシャイなのか人間の前に姿を現す事はかなり稀で
夜に川で釣りをしていると松明の火を激しく燃え上がらせる、巨大な火の玉を飛ばす、
誰もいないのに大勢の人の声を発している幻聴を起こすなど、
直接姿を現さずにイタズラする事が多い。
河原の石を洗い清め、とれた魚を捧げるとこの怪異は止むとされる。

その一方で女性の川天狗が姿を現す事があり、膳椀を貸すと様々な知識を教えてくれたと言われている。
この天狗は男女が存在する事が示唆されているが女性として描かれることが多い天狗である。


潜伏キリシタンの口伝による天地創造神話『天地始之事』では、
天使頭(あんじょかしら)の「じゅすへる」がでうすと自らを同格と吹かして「あだん」と「ゑわ」の夫婦と天使(あんじょ)達に自らを拝ませた上、「でうす」に禁じられたまさんを騙して食べさせたことで、
「じゅすへる」の鼻は伸び、口は広がり、手足は鱗が生え、角を振り立てた恐ろしい有様となって雷神として極楽(ぱらいそ)から追放され、
「じゅすへる」を拝んでいた天使(あんじょ)達も天狗となって追放されたとされている。
要はキリスト教における堕天使が天狗と呼ばれていたわけだが魔王とか悪魔ではなく「天狗」が訳語に選ばれたことが、天狗の位置付けを物語っている気がしないでもない。


☆鬼との比較

人間よりも大柄だが人の形をした妖怪である事から同じような姿のと比較されることも多い天狗。
ここからは鬼と天狗を比較し、共通点と相違点を挙げていく。

鬼と天狗の相違点

  • 人間に対して残忍な行為を働かない
鬼と天狗の最大の違い。
それは人間を直接殺したり、捕らえた人間を捌いて肉を喰らうといった残忍で血生臭い行為は一切しないという点だ。
鬼は日本三大妖怪にも名を連ねる酒呑童子の様に攫った女性を捌いて食べたり、血を絞り出して飲んだりとやたら残忍な性質が強調されることが多い。
対して天狗は人間を森で迷わせたり子供を攫ったりと人間に対して悪さをする事はあっても命まで奪ったりはしない。
崇徳上皇の様な「悪い天狗」でさえ怨霊となって人々を祟る事はあれど天狗が直接的に人間を襲って殺傷したといった逸話は見られない
これは日本における天狗が先述した様に元々仏門の身でありながら慢心した者がなる妖怪である事が大きいと思われ、いくら慢心したとはいえ
生前は仏門にいた身であるからその点を弁えている為と思われる。


鬼と天狗の共通点

  • 美しい女性が存在する
割りと男性的なイメージのある鬼と天狗だが、どちらも美しい女性の姿の者がいたという伝承が存在する。
例えば鬼の方は大四天魔王の娘として伝わる楯烏帽子や第六天魔王の娘として伝わる紅葉がいる。
一方の天狗には名のある女性天狗はいないものの、上記の女天狗は文字通り女性の天狗であるし、川天狗も美しい女性の姿をしていたという伝承が存在している。
女の子も筋肉モリモリマッチョウーマンの変態だったり鼻が長かったりしたら萌えないからね、仕方ないね

  • 住んでいる環境
生態的には全く真逆の側面を見せる鬼と天狗だが、どちらも山に住んでいる事が多いという共通点がある。
実際に初期の頃は鬼と変わらぬ姿をした天狗も存在しており、広義の意味での山神は両方を指していたという説もあるのだ。

  • 神としても扱われる
どちらも超常的な存在として扱われる事があり、神として祀る寺や神社も存在している。
もっとも鬼は神であっても荒神的な扱い方をされるのに対し、天狗は山の守り神や知恵の神的な存在として扱われる違いはあるが。


☆創作上においての天狗

さて、天狗が登場する伝承や天狗に関連する怪異、複数存在する天狗の種類などを挙げたが
創作上においても良く登場し、その数は化け狐・化け狸、鬼と並ぶだろう。
これは天狗が人型に近い姿をしている為に擬人化するなどして無理に原型を弄らずとも
動かしやすく、空を飛んだり木と木の間を飛び移ったりとアクロバティックかつ超人的なアクションをさせやすいメリットがあるのだ。


☆エロ担当としての天狗

あらゆる妖怪がエロ要因としても使われている近年において天狗も例外ではない。
何せ創作上の天狗でも書いたように元から人型に近い姿をしている事から無理に擬人化せずとも扱う事ができるので
その意味では手軽に使えるからである。
といっても男性的なイメージが強いからか竿役として使われることが多く、
攻め側というイメージが根強いが女性の天狗もいないわけではない。
とはいえ元が仏教に関係する妖怪なのに煩悩を誘うようなボンキュッボンな体つきじゃおかしいし、
森の中を素早く駆け回る妖怪なのに無駄肉があるのではおかしいというツッコミを考慮してか、
アスリートのように無駄肉のないスレンダーな女性に描かれるケースがほとんど。

ただし、伝承の天狗がしょっちゅう僧侶の修行の邪魔をしていることから、煩悩を誘うようなボンキュッボンな体つきに描かれるケースもなくもない。



☆天狗をモチーフとしたキャラクター一覧

映画

  • 鞍馬天狗
戦前~戦後しばらくにかけて絶大な人気を誇り、かの月光仮面のモチーフの1つともなった大佛次郎原作のチャンバラ映画シリーズ。
主人公は「鞍馬天狗」を仮名として名乗っているだけで人間なのだが、悪を蹴散らす超人(ヒーロー)の名として「天狗」が使われる辺りに、天狗という妖怪の独特の立ち位置が現れている。
ちなみに鞍馬天狗の敵は正義の勤皇志士に仇なす極悪非道の暗殺集団新撰組であり、新撰組びいきの作品が主流となった現代では逆に新鮮な設定である。


漫画

奴良家お目付け役にして高尾山天狗党党首。かなり小さい体で爪楊枝サイズの尺場を持つ。こう見えて国際派。

  • 町でうわさの天狗の子
天狗が実在し信仰される緑峰町が舞台の作品であるゆえに、主人公の秋姫(人間とのハーフ)、幼馴染の瞬(人間だけど修行中)、ライバルの紅葉(鞍馬山出身)、 康徳坊(秋姫の父)等様々な天狗系譜キャラが登場。中には動物出身の天狗もいたり…。

仮面の下はチャーム効果があるほどのイケメンの山の神だがショタコンの変態。本作ではよくあること。

  • 聖、幽山(高尾の天狗シリーズ)
高尾山に住む天狗の親子で、本シリーズにおける高尾山の解説役を務める。
実は血が繋がっておらず、赤ん坊の頃に山に捨てられていた聖を幽山が拾って養子にしたという地味に重い過去がある。
ちなみに他の山にも天狗はいるようで、作中では雲取山の大天狗の娘・くれはや御岳山の狗賓*4・狛丸が登場する。

  • 鞍馬(神様はじめました)
ビジュアル系アイドルKURAMAを名乗る鞍馬山出身の烏天狗。本作一番のネタキャラだがたまにはいいところもある。「ダテンダテンダテンダテン…」

  • 大天狗、カラス天狗、山天狗(ゲゲゲの鬼太郎)
妖怪を題材にした作品である本作において天狗も登場している。大天狗と烏天狗は「妖怪裁判」にて裁判官として登場し、山天狗は同作屈指の迷作として名高く3期と6期でアニメ化もされた「木の子」に敵の妖怪として登場しているが3期は大天狗に似た赤肌の姿だったのに対して6期は緑色の肌に鋭い歯を生やしたミツクリザメのような顔つきとそれぞれ異なるデザインである。

日本全国の妖怪を巻き込む本作にももちろん登場。
東日本の妖怪たちをとりまとめる「長」は、普段は長い顔立ちに長い鼻をした人間の老人の姿をしているが、その正体は大天狗。割と序盤から主人公と接触し、穏健かつ堅実な判断力で最終決戦まで登場人物たちを導いた重鎮である。一度だけ、西の長である神野(しんの)から「山ン本」と呼ばれた事があり、前述の『稲生物怪録』を元にしていると思われる。
威吹は白い羽毛を持つカラス天狗で、東の長の直属の家来。求嵐は黒い羽毛をもつカラス天狗で、神野の側近。どちらも風属性の強者。

十二鬼月』の一角『上弦の肆』を務める
らしい容姿ながらも一見どの辺が天狗なのかわからないが、攻撃を受けると出現する分身体は錫杖や羽団扇を使うなどそれらしい外見や能力を備えている。

  • 鱗滝左近次(鬼滅の刃)
こちらは↑ら鬼を討伐するのが役目の鬼殺隊の一角『水柱』を務めていた人物で、現在は新人隊士を育成する“育手”の一人。
ぶっちゃけ天狗の面を被っただけの人間だが、炭治郎に対する「判断が遅い」というセリフが有名になり天狗の顔文字👺だけで「判断が遅い」という意味が伝わるようになってしまったほど。


アニメ

  • 大鳥モミジ(トライブクルクル)
天狗山に住む少女でユヅルの許嫁。天狗ではあるが女性の天狗の多くに共通してほとんど人間に近い姿である。


ゲーム

ポケットモンスタールビー・サファイアで初登場したポケモン。タネボー、コノハナからの最終進化系で、二頭身になった天狗のような姿をしている。

DEAD OR ALIVE2で初登場したキャラクターで同作のラスボス。「全ては我が戯言なり」が口癖。

DEAD OR ALIVE5 ultimateにて登場した二人目の天狗キャラ。名前の通り女性の天狗だがグラマーな女性の多い本作において彼女も例外ではなく、スレンダーな体型の多い天狗キャラとしては掟破りな胸も尻もデカいグラマラスボディの持ち主。
コラボとして仁王2にボスとして登場し、DoA同様の投げ技や火の玉をバレーボールのように打ち出す技を持つ。
見た目は人間だが性質的には妖しであり、DLC3登場と言うこともあり本作でも特に強力なボスの1人。なお姿写しで彼女の姿も操作可能。

文は妖怪の山在住の烏天狗の少女で新聞屋。言動が軽いが、こう見えて1000年以上前と博麗大結界が成立される前から生きており、相当な力を持っている。
椛は白狼天狗の少女で、妖怪の山への侵入者の見張り役。

風隠の森を治める天狗モチーフの魔王。森の荒廃に怒りを抱いてるが、その原因はメディアによって異なる。自慢の「天狗のうちわ」による大風や大音声による麻痺付加と特殊効果除去を得意とする。

  • テングマン(ロックマン)
同作に登場するボスキャラ。名前の通り天狗をモチーフとしており高慢な性格の風使い。エグゼにも同名の風属性のナビが存在するが、こちらは冷静沈着な性格。

  • ウィング・カラスティング(ロックマンX)
同作に登場するボスキャラ。冷静な性格で2つの短剣を用いて戦う。アクセルの元盟友で、戦闘時にも自分達の側に戻ってくるように諭した。

同作に登場するボスキャラ。ステータスが高い上にケンゴウ系と同じく装備を弾く厄介な相手。シリーズにおける他の天狗系モンスターとしてはGB1をはじめ複数の作品に登場し、能力は低いが姿だけ他のモンスターに化けるカラス天狗系、初代における序盤の雑魚敵だがリメイク版でカラス天狗系と同じ能力と立ち位置を得た小僧天狗系が存在する。

エリア5のボスである巨大メカ。エレハンドや門松ランチャーなどで攻撃する強敵。断末魔は何故か「とびまーす」。

ライズで初登場のモンスター。異名は「三林の荒法師」。
柿をハンターに投げつけ、攻撃を行う。

  • つぐみ(ドラグーンマイト)
マイナー格ゲーのヒロイン。天狗の血を引いたバトル巫女。頭飾りは烏を模したらしいがむしろロボのアンテナっぽい。武器の天狗扇は八つ手型の刃を持ち鎖の内蔵された扇子。術と扇による遠距離戦が得意。

  • 天狗(富士山バスター)
マイナー格ゲーの中ボス。大体そのまんまだが、コンセプト上英語でしゃべる。扇で竜巻を出したりしてくる。

  • 大天狗(大神)
通常敵の一種として登場。
その姿は巨大な天狗面から烏天狗の様な翼と足が生えたというもので、空を飛びながら火吐き等の中々避けづらい攻撃を仕掛けてくる。
特定のタイミング、かつ一部以外を除き神の技たる筆しらべが全く通用しないという厄介な防御特性を持つが、この姿はあくまでも仮のもの。
時間が経過するかダメージが蓄積すると急に震えだし、天狗面を取って一般的に伝わる天狗の形態へと変身。
天狗面を盾にしその鼻を仕込み刀の如く引き抜くと大団扇を開き、あらゆる攻撃を無効化する無敵状態となって苛烈な攻撃を一方的に仕掛けてくるという、通常敵の中でも頭一つ抜けた厄介な相手である。
かつては野山を駆ける修験者だったものの気の迷いから妖怪へと身を落とした存在という、上述の天狗になってしまう原因の伝承が加えられていたり、「気の迷いを起こさぬよう、冷たい水で己を清めていた」という修験者だった頃の名残か無敵状態へ移行されても筆しらべ「水郷」で水をぶっ掛けてやる事で強制的に通常形態ヘ戻してやる事もできる。

  • 天狗の面(暴れん坊天狗)
アメリカ合衆国は、宇宙から飛来した邪悪な生命体の攻撃によって滅亡の危機に瀕していた。
人々の祈りは海の向こうにまで届き、その祈りを受けた天狗により、天狗の面がアメリカに遣わされる――。

ゲーム本編は天狗の面を自機とするシューティングゲーム。


特撮

知名度が高く、「鼻が高い」という分かりやすい外見的特徴もある事から、「敵は妖怪軍団!」という作品にはだいたい怪人として登場する。
ただの鳥男になっちゃうせいかカラス天狗の登場は少ないでヤンス。
なぜか牛若丸を鍛えた鞍馬天狗のような味方側としての登場はまるで見られない。


小説

天狗の面を被って空を飛ぶ二丁拳銃のヤクザという狂気的な外見のニンジャハンター。
常人では通常絶対に敵わないはずのニンジャを殺害する実力者だが完全に発狂しており、自身の尿などを用いたニンジャ浄化の儀式を欠かさない。
「天狗とは日本に古来から存在するフェアリーの一種である」という劇中の解説は多くの読者のニューロンに重篤なダメージを与えた。
なお、実際海外に天狗が訳されるとき「ウッドエルフ」と訳されることもあるとか。

主人公リムルの治める 魔国連邦(テンペスト)に隣接するクシャ山脈を支配する 長鼻族(テング)の族長とその娘。なおモミジは大鬼族(オーガ)とのハーフである。
本作におけるテングとは、山狼族(オオカミ)天使族(エンジェル)が受肉して生まれた種族であり、鼻が長いわけではない。長鼻族というのは嗅覚の鋭さを暗喩している。


実在する動物

  • テングザル
東南アジアに生息するサルの一種で、名前の通り天狗のように高く長い鼻を持っており、オスは特にこれが大きく発達する。

  • ウミテング
海に生息する魚で、長い鼻のような器官を持つ事からこの名がある。

  • ミツクリザメ
深海ザメの一種で、こちらも長い鼻のような(ふん)を持つため、別名をテングザメと呼ぶ。

  • テングタケ
かの有名なベニテングタケなどを含む毒キノコの仲間。どの辺が天狗なのかは不明



「じさま~!じさま~!大変じゃ!いつの間にかオラの項目が追記・修正されとるだ!」
「こ…これは…


     )、._人_人__,.イ.、._人_人_人
   <´ 天狗じゃ、天狗の仕業じゃ! >
    ⌒ v'⌒ヽr -、_  ,r v'⌒ヽr ' ⌒
// // ///:: <   _,ノ`' 、ヽ、_ ノ  ;;;ヽ  //
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最終更新:2024年05月28日 23:50

*1 現代風に云えば悪堕ち、黒化とか。

*2 例えば、山道に通るのに邪魔な位の大きな石が置かれていたとするならば、それは同胞以外の立ち入りを禁ずるという合図であった。天狗の他にも山には後に多くの妖怪の姿を生んだ山の民が棲み、彼等の中には高度な製鉄やらの技術を持った渡来人も居たとされる。

*3 偽書説が強い『先代旧事本紀大成経』という経典より

*4 犬が天狗になった姿とされる天狗の一種。