ラグナロック作戦(銀河英雄伝説)

登録日:2017/06/27 (火) 07:39:37
更新日:2025/01/08 Wed 14:19:15
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作戦名は…

神々の黄昏(ラグナロック)


ラグナロック作戦とは、SF小説「銀河英雄伝説」内における軍事作戦行動の名称。
別名「神々の黄昏」。


【背景】


宇宙暦798年/帝国暦489年、ゴールデンバウム王朝の第37代皇帝であるエルヴィン・ヨーゼフ2世は、実質的な権力を帝国宰相であるラインハルト・フォン・ローエングラムに奪われていた。
それを不満に思った帝国貴族のランズベルク伯爵は、元帝国軍人のレオポルド・シューマッハと共に皇帝を誘拐。自由惑星同盟へと亡命する。

皇帝を手に入れた門閥貴族たちは、自由惑星同盟の支援の元で8月20日に旧貴族派の亡命政権である銀河帝国正統政府の樹立を宣言。

ラインハルトは同日エルヴィン・ヨーゼフ2世の廃位と生後8か月の第38代皇帝カザリン・ケートヘン1世の即位を発表した。
さらに「皇帝誘拐の実行犯」である正統政府と「共犯者」である自由惑星同盟に対し宣戦を布告する。

実はこれらの出来事は「フェザーンの思惑に端を発し、ラインハルトがこれに乗る形で仕組まれた:ことだった。

フェザーンはラインハルトの改革がこれまでの既得権益を損なうことを憂慮したのに加えて自由惑星同盟がアムリッツァ会戦救国軍事会議による内乱による疲弊から帝国との国力差をもはや覆せないほどに著しく低下させたため、同盟を見限り帝国に全面協力する方針へと移行したのである。
幼帝誘拐や亡命政権の樹立も全ては帝国に同盟を滅ぼさせる口実を作るための完全なる茶番劇であり、同時に両国間に何かしらの和解や停戦などを成立させないための策謀だったのである。

ラインハルトはフェザーンの動向を察知していたが、逆にこれを同盟に侵攻する大義名分を得つつ、帝国内での権力基盤強化の好機と捉えていた。
というのも、ラインハルトにとって幼帝の「擁立」は権力の確保に必要なものではあったが、「現状の幼帝」は邪魔でしかなかった。
激しい周囲への暴力が問題になってはいたが廃位を論じるほどの罪というわけでもなく、もし幼帝が死ぬようなことがあればラインハルトに非難が集中してしまう。
幼帝が誘拐されて同盟領に入れば「邪魔な幼帝の排除」と「同盟侵攻の大義名分」が一度にできる。利害が一致したためにあえてその策謀を陰ながら支援したのであった。
しかも、この計画を伝えた弁務官ニコラス・ボルテックにラインハルトはフェザーン回廊の自由航行権を要求した。全てを見抜かれ、隠し立てをしても無意味と悟ったボルテックは敢えて全てを暴露して、ローエングラム体制下での自治を認めてもらう、つまりゴールデンバウム王朝からラインハルトに主が代わるだけという旨を伝える……と、ここまでは良かったのだが流石にこの要求には即答できなかった。当然、この時はラインハルトも知る由もなかったがフェザーンの裏には同盟と帝国を共倒れさせようとする地球教の存在があり、フェザーン側としては帝国がイゼルローンへ侵攻して帝国の軍事力を崩れさせる狙いもあっただろう。
だが、同盟への侵攻に協力してくれるというのは自治領主であるルビンスキーの意志であると伝えた=フェザーン回廊を通って同盟への電撃的な侵攻と心理的打撃を与えるべく協力をするのが筋というもの。
それでも尚、返答につまったボルテックにラインハルトは遠回しに『今回の誘拐と亡命政権樹立が帝国に同盟を滅ぼさせるためにフェザーンが仕組んだこと。そう同盟政府に伝えることで帝国と同盟でフェザーンを袋だたきにする』と脅迫する。折り悪く、同盟はフェザーンに莫大な負債を抱えており、真偽を問わず債務を踏み倒せるのならばラインハルトの提案に乗る可能性も充分にあった。そうなれば、共通の敵を見出した両者の和睦さえ実現してしまい、地球教の思惑も水の泡になるのは必然。

こうしてフェザーンはその計略を半ば逆手に取られ、ラインハルトによる史上初の自由惑星同盟への大遠征が始まった。


もし、この時同盟が幼帝と誘拐犯を送還する形で和平を申し入れていれば、ラインハルトとしては軍事的にも政治的にも妥協せざるを得なかった。
ラインハルトが申し入れをはねつければ、幼帝を無為な危険にさらすことになりラインハルトの権力的正統性が揺らいでしまう。
さしものラインハルトもそれを押し通せる権力基盤を帝国内で確立していたわけではなかった。
確かに、この時期は直前にラインハルトがガイエスブルク要塞で直接イゼルローン要塞に侵攻するという政略・戦略的にも意味がない暴挙を行っていたこともあり、同盟内部でも和平申入は世論の反発を買いかねず、容易ではなかったかも知れない。
だが、現実的に見れば帝国に勝利する道筋の立たない同盟にとっては、そのような感情論に乗ることは自らの死刑執行書へのサインに他ならなかった。
人道的に見ても、仮に送還したところでラインハルトが皇帝を殺すわけにも行かない状況は変わらないので、さして問題のある対応でもない。

目的のために手段を選ばないならば、敵対者の片方と組んで紛争を拡大させるという手法は理のある戦略だが、それには敵対者双方がある程度は拮抗しうる戦力を有していることが前提となる。
せめてリップシュタット戦役の時点で門閥貴族かラインハルトのどちらかと手を組んだならば理のある戦略となり得たが、正統政府は形ばかりで帝国内における支持も失われており、戦力と言えるものなど何一つ持っておらず、手を組んだところで同盟の実戦力は全く増えなかったのである。

にもかかわらず、イゼルローンにヤン・ウェンリーがいるし、フェザーンは中立勢力だから帝国は同盟に攻勢に出られないという、あまりにも無責任な根拠で同盟政府は正当政府と手を組んだ上、その存在を大々的に表明・公認するというアムリッツァに続く最低最悪の愚挙を犯してしまった。
フェザーンの策謀があったのは事実であるが、イゼルローン要塞の有無を問わずにそのような事をすれば帝国が皇帝奪還のために全面攻勢を掛けてくるのは明白であった。
攻勢が幼帝を危険にさらす可能性はあるが、放置しておいていずれ返って来ると思われる状況でもなく、それならば武力での奪還もラインハルトの権力的正統性を揺るがすことはない。
既に同盟は軍事的にも社会的にも壊滅状態であったにもかかわらず、腐敗した政治家と軍上層部は自分達の人気取りだけのためにこの最低の愚挙を犯した上に首都ではナイトシンドロームが蔓延し、『暴虐且つ悪辣な簒奪者の手から幼い皇帝を守り、正義の為に戦おう』などと市民までも無邪気に同盟政府を支持している有様であった(無論、憂国騎士団とトリューニヒトの裏工作もあっただろう)。

7歳の子供というだけで理性や論理が飛んでしまうといってしまえばそれまでだし、昔から童話では王子や王女が正義で大臣が悪と相場が決まっているが、童話と同じレベルで政治を語られては付き合わされるヤン達にとっては迷惑極まりない。
しかも、『正義のため』と言っているが、相手は500年にもわたり民衆を搾取し続け、同盟と150年も戦争を続けたゴールデンバウム王朝である。つまり、同盟が掲げる正義とは『自分達が打倒するべき筈のゴールデンバウム王朝を復活させ、貴族達による搾取を回復しよう』というのと同じ。あまりにも滑稽且つ本末転倒としか言いようのない醜態を同盟政府も軍も市民も晒していた。

不倶戴天の敵のゴールデンバウム王朝と和平を成立するにしても、それは上述通り今ではなくリップシュタット戦役の際にラインハルトか門閥貴族に協力して、友誼を結ぶべきだったのである。裏でルビンスキーもイゼルローンとヤン・ウェンリーという組み合わせが正常な判断を狂わせると、同盟政府の愚挙を鼻で嗤っていた。

しかし、政治家の人気取りとそれにつられて熱を上げる市民たちと裏腹に、同盟の実戦力は損失を重ねて弱体化が著しかった。
最前線であるイゼルローン要塞からは、手薄になった軍人育成のために熟練兵を引き抜かれて新兵を回され、現場は新人育成に忙殺されるはめになっていた。前年のイゼルローンへの攻勢で発生した監視衛星群の損害についても、予算委員会の動きが鈍重で回復するための予算が下りないままであった。
その上ヤンを警戒する同盟政府首脳は、ヤンの力を弱めるためにユリアンのフェザーンへの赴任を隠れ蓑にメルカッツを正統政府の軍務尚書にしてヤンから引き離してしまう始末で、イゼルローン要塞があれば同盟は大丈夫だという安直な発想でヤンの邪魔をしていた。それだけでは飽き足らず、統合作戦本部長もトリューニヒトが「帝国の侵攻への挙国一致体制を確立する」という名目でクーデターで重傷を負ったクブルスリー大将を辞任に追いやり、後任は代行を務めたドーソンになった。
そして、肝心のトリューニヒトは帝国の侵攻への対策を聞くマスコミにイゼルローンにヤンがいるから大丈夫としか答えず、マスコミもそれで納得してしまう。そして、上述の通りトリューニヒトの手下であるドーソンを統合作戦本部長に充てるなど政府は権力を濫用し続けていた。
誘拐幼帝の受け入れが同盟にとって自滅的な決断という事を理解できたのは、イゼルローンのヤン艦隊とビュコック、そして元最高評議会議員のジョアン・レベロとホワン・ルイくらいであった。

そして、もはやレベロとルイはこの同盟の腐敗を止めることができずにいる中、頼みの綱のヤンが独裁者になるか否かという議論の次は、同盟と帝国の現状を分析していた。
片や『国家の苦しい内部事情さえも理解せずに保身や権力しか頭にない政治家』『それに媚び諂って出世した無能な軍人に牛耳られる軍隊』『政府の美辞麗句を真に受ける堕落した市民』によって『腐敗した民主政治の極致にまで達した同盟』
片や『腐敗した大貴族の支配体制を一掃した後に国政を改めて法治国家へと生まれ変わり、極めて理想的な専制国家となりつつある帝国』
果たしてどちらが良いのか、彼らは民主国家の政治家として極めて解答困難な命題を突きつけられている局面に立たされていた。そして、政府でそれらを理解していたのも彼ら二人だけであった。美辞麗句を鵜吞みにして、『自分たちの祖先を弾圧したゴールデンバウム王朝を守ろう』などと叫ぶ市民などは論外であろう。



◇登場人物


【銀河帝国軍】


帝国宰相兼帝国軍最高司令官。元帥。旗艦はブリュンヒルト
ゴールデンバウム王朝を事実上制したことで、銀河統一の最終段階へ向けて動き出す。

帝国軍総参謀長。上級大将。
自由惑星同盟への侵攻の正当性を作り上げるためにある策を実行する。

ロイエンタール艦隊司令官。上級大将。旗艦はトリスタン。
レンネンカンプ・ルッツ両艦隊を率いてイゼルローン要塞を攻撃。

「疾風ウォルフ」の異名を持つミッターマイヤー艦隊司令官。上級大将。旗艦は人狼(ベイオ・ウルフ)。
本隊の第一陣としてフェザーン侵攻を担当する。

  • ヘルムート・レンネンカンプ
ヒゲレンネンカンプ艦隊司令官。大将。旗艦はガルガ・ファルムル。
指揮・戦術能力は十分以上に実力者だが、ロイエンタールに言わせれば目の前の敵に勝つことしか考えられない戦闘屋。
ラグナロック作戦で2度に渡ってヤンの策に乗せられてしまい、因縁ができる。

速攻に定評のあるファーレンハイト艦隊司令官。大将。旗艦はアースグリム。

黒色槍騎兵艦隊(シュワルツ・ランツェン・レイター)を率いる猛将。大将。旗艦は王虎(ケーニヒス・ティーゲル)。

  • カール・ロベルト・シュタインメッツ
シュタインメッツ艦隊司令官。大将。旗艦はフォンケル。

  • アウグスト・ザムエル・ワーレン
ワーレン艦隊司令官。大将。旗艦は火竜(サラマンドル)。

ミュラー艦隊司令官。大将。旗艦はリューベック。

  • モルト
宮廷警備の責任者。中将。誠実で重厚な初老の武人。
今回の幼帝誘拐の警備責任を問われ、処分が決定する前に自決してしまった。
リップシュタット戦役から首都オーディンの留守を任されており決して評価は低くなく、彼を実質的な冤罪で死なせることにはラインハルトも一度はためらった。

  • ウルリッヒ・ケスラー
憲兵総監。大将。
ランズベルク伯とシューマッハが何者かの誘拐目的でオーディンに入ったとの密告を受け、ラインハルトとヒルダに報告する。
モルトの上司にあたるがこちらは戒告と減俸で済まされた。

  • ヒルデガルド・フォン・マリーンドルフ
帝国宰相首席秘書官(中佐待遇)。マリーンドルフ伯フランツの長女。通称ヒルダ。
幼帝誘拐の可能性を聞かされながら特に警備を強化しなかった点からラインハルトの誘拐見逃しとモルト中将の冤罪に気付き指摘するが、強く追及することはなかった。

  • カザリン・ケートヘン1世
銀河帝国第38代皇帝にして初の女帝。
先々帝オトフリート5世(フリードリヒ4世の父)の第3皇女の孫。父はユルゲン・オファー・フォン・ペグニッツ子爵。
生後8か月の乳児で、ラインハルトの完全なる傀儡。

【自由惑星同盟】


イゼルローン要塞兼駐留艦隊司令官。大将。
皇帝誘拐の真相を正確に見抜いていたが、最前線のイゼルローンの司令官職では阻めなかった。

  • ユリアン・ミンツ
ヤンの一番弟子。曹長。
同盟側のヤンへの嫌がらせ策謀により銀河帝国正統政府成立と前後して、少尉昇進とともにフェザーン駐在武官としてイゼルローンを離れる。
ルイ・マシュンゴが相棒として付き従っている。

  • アレクサンドル・ビュコック
宇宙艦隊司令長官。大将。ヤン艦隊以外の残存戦力を糾合して帝国軍に挑む。

  • チュン・ウー・チェン
宇宙艦隊総参謀長。少将。
帝国との明らかな兵力差を縮めるべく奔走していたオスマン中将が急病に倒れたため副参謀長から昇格。
「パン屋の二代目」と揶揄される冴えない風采だが、その頭脳は戦術・戦略共に非常に明晰。ビュコックの片腕としてその才をいかんなく発揮する。

  • スーン・スールズカリッター
少佐。ビュコックの副官。
前任のファイフェル少佐が心臓発作で倒れたため急遽抜擢された。
長い姓を言いにくかったのか覚えられなかったのかビュコックは「スール」と愛称のように短く呼ぶようになり、これを気に入って本人は正式に姓を変えてしまったという。
なお士官学校の同期はアンドリュー・フォーク(銀河英雄伝説)で、彼の存在のおかげで式でス-ルズカリッターの名前を呼ばれて爆笑される事が避けられており、フォークは生涯で唯一他人の為に善行(?)を施している。

  • パエッタ
第1艦隊司令官。中将。
アスターテ会戦で負傷して以来の出陣。
当時はヤンの進言を退けたりと頑迷であったが療養後は改心したようで帝国軍に苦戦するヤンを心配したり、以前は媚びを売っていたトリューニヒトとのしがらみも無くなったことで本来の実力を存分に発揮するようになる。

  • ライオネル・モートン
第14艦隊司令官。中将。旗艦はアキレウス。
アムリッツァ星域会戦時に第9艦隊の副司令官として参加。司令官アル・サレム中将の負傷後に指揮を引継ぎ撤退戦を戦いぬいたことで、ヤンやビュコックからも評価されている。士官学校卒業でなかったことを気にしていて出世が遅れていた。

  • ラルフ・カールセン
第15艦隊司令官。中将。旗艦はディオメディス。偉丈夫の勇将で、モートンと共に急遽編成された艦隊司令官となる。メディアによって士官学校卒業かどうか分かれているが、石黒版では、こんな時代でなければ艦隊司令官には到底出世できなかっただろう、と自ら述べている。

最高評議会議長。
帝国軍のフェザーン侵攻を知り、クーデターのときに続いて再び雲隠れする。

  • ウォルター・アイランズ
国防委員長。
「二流利権屋」と呼ばれるトリューニヒト派の政治家で軍の受けもよくなかったが、トリューニヒトが雲隠れしたことで政治家として覚醒し、事実上の議長代理として軍事・政治両面を取りまとめる。

  • ヘンスロー
フェザーン駐在弁務官。何の能力もないお飾り。
彼が持っていた現金だけは役に立ったが。

【銀河帝国正統政府】


  • アルフレッド・フォン・ランズベルク
軍務次官。
才覚に優れるところはないが、貴族でありながら傲慢にふるまうことのない稀有な人物。ラインハルトからは『へぼ詩人』*1とは言われていたが、悪印象はもたれてなかった。またかのフレーゲル男爵とも友人関係であるほど、コミュニケーション能力は高い。
リップシュタット戦役では貴族連合軍に参加し、敗北後にフェザーンへ亡命したが、ケッセルリンクの誘いを受けエルヴィン・ヨーゼフ2世の「救出」を実行する。

  • レオポルド・シューマッハ
准将。平民出で後方勤務主体の軍歴でありながら30歳の若さで帝国軍の大佐まで昇進していた極めて有能な人物。
リップシュタット戦役ではフレーゲル男爵の参謀として参加したが、敗戦濃厚となってから無謀な決闘を望むフレーゲルを見限り叛逆。
その後はフェザーンに亡命し開拓事業についていたが、ケッセルリンクからの脅迫交じりの勧誘を受け、ランズベルク伯と共に皇帝救出に参加することに。
銀河帝国正統政府の荒唐無稽さや漁夫の利を狙うフェザーンの思惑にも気づいてはいたが、眠っていた自身のラインハルトへの対抗心が実行の後押しとなる。
後に全てが終わった後、フェザーンの開拓地へ帰るものの、その開拓農場は解体されていた。結局彼は帝国軍に戻るが、ある海賊討伐のさいに行方不明になる最期を迎える。しかしそれは別の話である。

軍務尚書。元帝国軍の宿将。
リップシュタット戦役後に同盟に亡命しヤンの客将となるが、本人の与り知らぬところで軍務尚書とされる。
しかし彼の立場として皇帝を放置するわけにも行かず、その立場を追認する。

  • ヨッフェン・フォン・レムシャイド
首相。
かつては帝国のフェザーン駐在高等弁務官を務めていたが、ラインハルトの権力掌握によって立場が危うくなっていたところをルビンスキーらに利用されることになる。
無能でこそないものの、実質の伴わない正統政府をどうにかできるだけの政治的手腕はない。

  • エルヴィン・ヨーゼフ2世
皇帝。
ラインハルトによって傀儡として遇されていたが、ランズベルク伯とシューマッハにより誘拐される。
周囲にとんでもない暴力を振るう子どもになってしまった。

【フェザーン自治領】


  • アドリアン・ルビンスキー
フェザーン自治領主。
同盟を滅亡させ帝国の経済的実権を握ることをもくろんでいた。

  • ルパート・ケッセルリンク
ルビンスキーの補佐官。
皇帝誘拐の実行犯をそろえるなどのお膳立てを整えた。実はルビンスキーの庶子であるが、母が捨てられたことでルビンスキーを憎悪している。

  • ニコラス・ボルテック
帝国駐在弁務官。
当初はルビンスキーの命で動いていたが、逆にラインハルトに看破されフェザーン総督就任を条件に帝国軍のフェザーン侵攻を容認する。





【結果】

戦争終結直後、ヤン・ウェンリーとラインハルト・フォン・ローエングラムの二名は史上唯一の直接会見を果たす。

バーラトの和約によって、自由惑星同盟は事実上は銀河帝国の支配下に置かれ、ラインハルトの代理としてヘルムート・レンネンカンプ上級大将が帝国高等弁務官として就任。

敗戦の責任を取りヨブ・トリューニヒトは最高評議会議長を辞任(事実上のトンズラ)し、誓約によって身の安全が保障された帝国へ亡命する。
それに代わって新たにジョアン・レベロが滅亡の危機に瀕した最高評議会議長に就任する。
(アイランズはトリューニヒトに裏切られたショックで廃人となってしまった)
ヤン・ウェンリーは軍を退役し予備役に編入され、新妻と夢の年金暮らしをはじめることになった。
ヤン艦隊の主要メンバーやビュコックらは、特に軍事裁判などにはかけられず退役あるいは辞表を提出。
キャゼルヌだけは軍が成り立たなくなると言うことで辞めさせてもらえず勤務を継続することとなったが、彼らは、皮肉にも同盟が属領となったことで、作中でも最も平穏な時期を謳歌することができた。

また銀河帝国正統政府は敗戦以前から閣僚が次々姿を消していく末期的状況であり、敗戦に伴って完全に崩壊した。
首相のレムシャイドはロイエンタールに邸を囲まれて自殺、皇帝エルヴィン・ヨーゼフ2世は、ランズベルク伯爵と共に姿を消す。
翌新帝国暦2年11月、ハイネセン辺境のクラムフォルスに潜伏していたランズベルク伯爵が捕らえられるが、エルヴィン・ヨーゼフ2世は同年3月に既に死亡しており、ランズベルクは発狂した状態でミイラ化した死体と共に逃亡生活をしていたことが明らかになった。
しかし翌年6月にシューマッハが捕らえられた際に、エルヴィン・ヨーゼフ2世は死亡したとされた前年3月に行方不明になったと証言した(ランズベルクが発狂したのもこれが原因と思われる)。

メルカッツ軍務尚書は戦死…したと見せて、実はヤンの手引きで潜伏していた。
同盟から帝国に売り渡される危険があって身を隠す必要があったことと、将来につなげるための軍事力を保存する役割を任され、これが後に射切ることになる。


なお、会戦におけるヒルダの独断行動は本来、帝国の統帥本部権を侵害する越権行為であり、特にラインハルトの名を勝手に使ってトリューニヒトを免罪にしてしまったことは大問題であった。
ラインハルトの怒りを買っているが、ラインハルトとてヒルダが自分を救ったという事実は分かっており、功績を鑑みて処罰されることはなく不問とされた。

6月20日、皇帝カザリン・ケートヘンの親権者、ユルゲン・オファー・フォン・ペグニッツ公爵は、オーベルシュタインよりの呼び出しを受け、ある同意書にサインを求められた。
それはカザリン・ケートヘンの退位と帝位をラインハルトに禅譲するという内容であった。
元より政治的な能力も野心もない親権者は財産・安全の保障と高額の年金と引換に禅譲の署名を行い、この日をもってゴールデンバウム朝銀河帝国は人知れず490年の歴史に終止符を打つこととなった。

宇宙暦799年/新帝国暦1年6月22日。
ラインハルトは銀河帝国の首都オーディンの新無憂宮において大々的に即位式及び戴冠式を行い、自ら帝冠を戴いた。

かくして長年銀河の覇権を争っていたフェザーン自治領、自由惑星同盟、ゴールデンバウム王朝銀河帝国の三大勢力は共に歴史の舞台を降り、新たにラインハルト・フォン・ローエングラムを開祖とするローエングラム王朝の時代が幕を開けた。


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最終更新:2025年01月08日 14:19

*1 貴族のサロンでは作品を一応評価されていたが、フェザーン亡命後、リップシュタット戦役を題材に原稿を書いて出版社に持ち込んだが、あまりに美化しすぎで商業作品にはできないと編集者にダメ出しをくらっている