ゴールデンバウム王朝

登録日: 2016/07/29(金)06:41:33
更新日:2025/04/26 Sat 08:08:28NEW!
所要時間:約 19 分で読めます





ゴールデンバウム王朝とは、田中芳樹のSF小説『銀河英雄伝説』に登場する架空の王朝。


【政治制度】

言うまでもなく専制君主制。ルドルフ時代は皇帝による親政が行われていた。
各省庁のリーダーが尚書として皇帝に直接仕える方式もその名残である。
もっとも、第2代皇帝ジギスムント1世の時代には帝国宰相が置かれ、その後は親政が行われるかどうかはその皇帝の能力と性格によっていたようである。
ただし、歴史が下るにつれ帝国宰相は空位とされる事が多くなり、国務尚書が実際の国政を主導するようになった。
そもそも初代の宰相であるノイエ・シュタウフェンが同時代に発生した民主主義回帰の野党勢力の蜂起を鎮圧した英雄の為、ある種の永久欠番ポストとみられているふしがあるためでもある。
各帝国貴族には領地において広範な自治権が与えられており、ブラウンシュヴァイク公やリッテンハイム侯のように私兵を持つ者、アルテミスの首飾りをフェザーンから購入した(OVA版)カストロプ公などの例が存在し、帝国末期には反乱も頻発していた。

【社会】

国家革新同盟というルドルフが銀河連邦末期に率いていた政党が前身。
民主主義を根底から否定する極端なイデオロギーを掲げていたこともあり、一党独裁政党に変貌するや全国民への洗脳教育を断行。思想統制により社会風俗に関しては押しなべて古ゲルマン調の文化であり、これは貴族から平民の姓名と習慣まで同様である。
こう言ったもともと中近世的な生活様式と低福祉・高税率のためか、または人的資源については潤沢なためか、末期の同盟ほどの極端なインフラ衰退は見られない。

宗教については西暦でほぼ潰えたとする同盟側の歴史観も存在するが、帝国においては北欧神話をもとにした死生観や信仰が存在している。
また、地球がその版図にあるためか、地球教の浸食も同盟以上に進んでいるとされる。

国力では同盟を上回っているものの、社会そのものは黒人やアジア系など非ゲルマン系人種やLGBTへの極端なジェノサイド政策により戦争と関係なく衰退期を迎えており、銀河連邦当時3000億を数えた人口も、作中の時点では250億ほどに低下している。
(まあルドルフ大帝の治世下だけで40億人以上もの人間が虐殺されているので、人口減少してなかったらおかしいのだが…)
そのためかつての連邦時代は曲がりなりにも多民族社会だったのが、本編開始時点で有色人種系の帝国市民は皆無であり、ほぼ全ての臣民は身分を問わず白人のみで占められている。
実際にマシュンゴの様な黒人が往来を歩けていた帝国に属する惑星は地球教統治下の地球のみ確認できる有様である。
こんな政体で、かつ上述したような人口差があるのだが、銀河連邦が300年で崩壊し、銀河帝国との長期戦の末に270年余で降伏・解体した自由惑星同盟よりも長命で、作中の諸政体でも490年という数字は地球統一政府(約670年)に次ぐ長期政体である。

【帝国軍】

軍事については同盟と技術的な差はほとんどなく、あったとしても直ぐに対抗手段が取られていたとする描写が存在する。

ただし、末期からローエングラム王朝期まで激しい争奪戦が行われたイゼルローン要塞、それよりやや旧式小型とされるもののリップシュタット戦役で貴族連合の拠点となり、ワープにより第8次イゼルローン要塞攻防戦に導入されたガイエスブルク要塞など、静的な兵器については同盟を上回っていた節もある。
その理由としては、同盟がアッシュビーを中心とした機動戦論者が幅を利かせていたことと、第2次ティアマト会戦での大敗により帝国が防衛戦を志向したことが大きく、またその体制故に資金的にも潤沢であったことが挙げられる。
また、指向性ゼッフル粒子の開発は帝国が同盟に技術的に先んじた例といえるだろう。

もっとも第5次イゼルローン要塞攻防戦に見られた味方殺しや捕虜になることを忌避する価値観もあり、戦死率は同盟とそれほど変わらなかったようだ。
その他同盟との違いについては階級に上級大将が設けられている点が挙げられる。

社会機構そのものが身分制度を前提としており、当然ながら軍隊でもその傾向が顕著。
ただし、同盟との対抗上、軍部では実力主義的気風や人事傾向も存在しており、こと第2次ティアマト会戦における「軍務省にとって涙すべき40分間」の影響から、その末期は平民出身の将官もそれほど珍しいものではなくなっていた。
彼ら平民や下級貴族出身の将兵の支持を集めたのがラインハルト・フォン・ローエングラムであり、そう言った意味で帝国軍こそ新王朝の母体であったと言える。

【社会秩序維持局】

共和制主義者などの帝国の支配体制に反抗する人間を取り締まるための組織。
管轄は内務省で戦前の特高警察のように政治犯や思想犯の逮捕、拘禁、拷問による尋問などを主な任務としている。
その苛烈さは民衆の間で「死刑になりたくなければ警察には捕まるな。社会秩序維持局に捕まれ。決して死刑にならないから」と噂されているほど。

【フェザーン】

物語中では独立した第三勢力として描かれるが、名目上は銀河帝国内の自治領である。
帝国と同盟を結ぶ2つの回廊のひとつフェザーン回廊の中に位置する星系で、両交戦国の中立地帯となっている。
現在の自治領主はアドリアン・ルビンスキー。
どちらの勢力からも直接統治されていないことから商業が発展しており、両国はフェザーンを介した間接貿易もおこなっているほど。
そのため繁栄度は戦争中の両国を上回る。住人は自由商人であることに誇りを持っていて、実際に彼らの商才は極めて高い。
だが、自治領主ら一部の支配層は地球教と繋がっており、帝国と同盟の戦争のコントロールを陰ながら行っていた。
しかし長い繁栄の中で慣れと平和ボケに陥っていたのは彼らも同じであり、ラインハルトという天才の前に否応なく歴史の奔流に飲み込まれていくことになる。

【歴代皇帝】

銀河連邦末期、腐敗した銀河連邦の支配に飽きた民衆の前に英雄として登場したルドルフ・フォン・ゴールデンバウムは、民衆の支持のもと「神聖にして不可侵なる」銀河帝国皇帝に即位。
以後、彼とその子孫たちは五百年の長きに渡り銀河の支配者として君臨した。

  • ルドルフ・フォン・ゴールデンバウム一世
ゴールデンバウム王朝の開祖で後世からは『大帝』の称号で呼ばれている。

元々は銀河連邦の軍人で政戦両略に非凡な才覚をもち、軍隊内の綱紀粛正や宇宙海賊の討伐で名を上げ、若き英雄として民衆の支持をうける。

軍を退役後は政界入りし、新党・国家革新同盟を結成。強力な指導力とゆるぎない信念で当時腐敗を始めていた銀河連邦の改革を断行。
やがて一党独裁政権下の議会で行われた国民投票によって『神聖にして不可侵なる』銀河帝国皇帝となる。
…まあ即位の根拠が自らが発した大統領令と議会が行った国民投票の為、国号と元首号を変更しただけで実質的には大統領だったころと大した変化がないようだが、
そうした矛盾から国民の目をそらす目的もあり即位後は自己神格化を進め、反対者や社会的弱者の粛正に奔走。党幹部や有力な選挙後援者たちは功臣達として爵位を与え、貴族階級を確立して、特権階級支配による王朝の基礎を固める。

皇后エリザベートとの間に4女をもうけたが、後継者たる男児を得る事ができず死後帝位は長女カタリナの息子ジギスムント1世が継いだ。
側室との間には男児ができたが、死産であったという。側室、侍医を含め、関係者全員が死を賜ったことを鑑みるに、
実は男児は死産ではなかったが、先天的障害(白痴であったと言われる)があり、しかもその原因がルドルフ側にあったことが推察される。
この事実は『劣悪遺伝子排除法』を発布し、自らの遺伝子の絶対的な優性を疑っていなかったルドルフを大いに苦しめたと言われている。

  • ジギスムント・フォン・ゴールデンバウム一世
ゴールデンバウム王朝第2代皇帝。初代皇帝ルドルフの孫。

有能な専制君主で、父である帝国宰相ヨアヒム・フォン・ノイエ・シュタウフェン公爵の補佐を受けつつ、ルドルフの死後に起こった共和主義者による反乱を粉砕し銀河帝国の基礎を固める。
反乱を起こした共和主義者とその子孫を農奴などの被差別階級へと落とすなど反逆者に対しては非情な支配者だったが、同時に良民には誠実かつ公正な姿勢を徹底していたと言われており、民衆からの支持は高かった。

なお、ジギスムント1世が即位した時点でゴールデンバウム王朝における皇祖ルドルフ大帝の男系子孫は途絶えているため、実質的にはノイエ・シュタウフェン王朝に移行している。

  • リヒャルト・フォン・ゴールデンバウム一世
ゴールデンバウム王朝第3代皇帝。先帝ジギスムント1世の長男。

政治よりも美女と狩りと音楽を愛する人物だったが。それでも専制君主としては足を踏み外すことなく無難な一生をおくる。

  • オトフリート・フォン・ゴールデンバウム一世
ゴールデンバウム王朝第4代皇帝。先帝リヒャルト一世の長男。

健康的で真面目だが、禁欲的、散文的で、陰気な保守主義者。
当時と未来の人々を退屈させるという点では比類ない人物。
趣味もなく、自発的に読んだ本は「始祖・ルドルフ大帝の回想録」と「家庭医学書」のみであると伝えられている。

スケジュールを神聖視し、その日のスケジュール通りにこなす事が目標ともいえる程であった。
軍の施設で爆発事故が発生し、1万人以上の将兵が死亡した事件の報告を「そんな報告を聞く予定はない」と冷たく対応したと言われる。

しかも、本人はスケジュールを自分で立案する能力はなく、実質的に政務秘書官であるエックハルト伯爵の操り人形と化しており、結果的にエックハルト伯爵の専横を招く。

  • カスパー・フォン・ゴールデンバウム一世
ゴールデンバウム王朝第5代皇帝。先帝オフリート一世の長男。

父親よりも祖父に似たのか芸術や美を愛する性格で、国政には関心を示さなかったため、政治の実権は引き続きエックハルト伯爵が握っていた。

自己の権力を盤石にするためエックハルト伯爵は自分の娘とカスパー1世を結婚させようと図るが、同性愛者であったカスパー1世は、カストラート(去勢された男性歌手)のフロリアン少年を寵愛していたためこれを断固として拒否。
業を煮やしたエックハルト伯爵は、ついに邪魔者であるフロリアン少年を殺害するため兵士を連れて後宮に乗り込むも、皇帝の意を受けたリスナー男爵の指揮する一隊によって逆に誅殺される。

騒動の後、カスパー一世は退位宣言書を玉座に残し、幾ばくかの宝石を持ってフロリアン少年と駆け落ちし、以後は完全に行方不明になった。在位わずか1年。

同性愛者を社会的弱者として排除していたルドルフ大帝の行動を考えると、その子孫に同性愛者が出てしまったのは歴史の皮肉と言えよう。

  • ユリウス・フォン・ゴールデンバウム一世
ゴールデンバウム王朝第6代皇帝。第4代皇帝オトフリート一世の弟。
先帝の失踪によって76歳という高齢で即位した。

彼自身よりむしろその息子であるフランツ・オットー大公の才覚が期待され、中継ぎとしての即位であった。
しかし周囲の期待に反して長生きし、二十年もの長きに渡り在位したため、ついには息子のフランツ・オットー皇太子の方が75歳で先に病死してしまう。

本人は老齢のせいか政治に対する意欲を持たず放蕩三昧という無能な皇帝だったが、息子であるフランツ・オットー皇太子が非公式な摂政として国政を統括していた。
オットー皇太子が堅実な施政を行ったため国庫は安定しており、彼の治世は大体において善政に終始した。

最後は曾孫であるカール皇太曾孫に毒殺されるが、あまりの在位期間の長さに重臣たちはほぼ例外なく全員がうんざりしており、その葬儀は盛大ながらも心のこもらぬものとなったと伝えられている。

  • ジギスムント・フォン・ゴールデンバウム二世
ゴールデンバウム王朝第7代皇帝。
先帝ユリウス一世の曾孫だが、本来の継承者である従弟のカール皇太曾孫が精神病院に幽閉されてしまったため、ブローネ侯爵だったジギスムント二世が即位。

有能な政治家だったフランツ・オットー皇太子の側近を解任し、その後任に自分の側近をすえると盛大に浪費を繰り返し、終いには金を得るため徴税権の売却や金銭による免罪に走り国政を大混乱させる。
あげくに無実の罪で豪商三百人を一族諸共全員皆殺しにして財産を没収したことをきっかけに、ついに堪忍袋をぶち切った皇太子オトフリートによって廃位され荘園に軟禁された。

死後『史上最悪の黄金狂』『痴愚帝』『歴史上最大の禁治産者』と呼ばれる。

  • オトフリート・フォン・ゴールデンバウム二世
ゴールデンバウム王朝第8代皇帝。先帝ジギスムント二世の息子。
即位後は父親の側近であった三人の大臣を処刑したのを手始めに先帝の治世十五年の間に積み上げられた政治の腐敗を一掃した。

オトフリート二世の政治改革は特に独創的なものではなく、曾祖父たるフランツ・オットー皇太子の摂政時代に時計の針を逆転させただけだったが、それのみで名君と讃えられている。
彼の治世によってジギスムント二世の暴政によってゴールデンバウム王朝から離反しかけていた人々の心は再び帝室に回帰した。

オトフリート二世は六年にわたって国政に精勤したが、最後は過労のため早逝した。

因みに、後に「自由惑星同盟」の礎を築くアーレ・ハイネセンとその同胞が帝国領を脱出したのも彼の治世下での出来事。

  • アウグスト・フォン・ゴールデンバウム一世
ゴールデンバウム王朝第9代皇帝。

国政の場においては有能な専制君主であったが、統治者としての節度ある態度と、私生活における淫蕩ぶりの落差が激しく、『後宮の凡君、国政の名君』と評される。

で、私生活ではどんなだったかというと、重度の髪フェチだった。
具体的には長い美しい髪の女性を好み、ベットの上に百人の女性の髪を敷き詰め、その上を転げまわって陶然としたり、病死した愛妃の髪を泣きながら食べて胃の壁に髪が刺さって医者たちが蒼白になったことも。
まあ無害ではあるがなかなかのHENTAIである。

ただ、それでもアウグスト一世が水準以上の君主とされるのは、愚行をあくまでも後宮内に止め、国政の場においては、専制の範囲内ではあるが、公正で堅実な統治者として一貫したからである。

  • エーリッヒ・フォン・ゴールデンバウム一世
ゴールデンバウム王朝第10代皇帝。

  • リヒャルト・フォン・ゴールデンバウム二世
ゴールデンバウム王朝第11代皇帝。

  • オットー・ハインツ・フォン・ゴールデンバウム一世
ゴールデンバウム王朝第12代皇帝。
特に情報は無いが、彼の治世に精神病院に幽閉されていたユリウス1世の孫のカール皇太孫が97歳で死亡したとの記述がある。

  • リヒャルト・フォン・ゴールデンバウム三世
ゴールデンバウム王朝第13代皇帝。『流血帝』アウグスト二世の父。
余りの出来の悪さに皇太子であるアウグスト二世の廃立を考えるも、アウグスト二世の弟たちもさして出来の良い方では無かったため廃するだけの決心がつかなかった。

結果からすると、アウグスト二世の弟たちが例えどれほど出来が悪くても、少なくともアウグスト二世を即位させるよりはマシだったろうが…

  • アウグスト・フォン・ゴールデンバウム二世
ゴールデンバウム王朝第14代皇帝。先帝リヒャルト三世の長男。
歴代のゴールデンバウム王朝皇帝の中で最も悪虐な皇帝として知られ、後世『流血帝』と呼ばれる。

自力で立って歩く事もできないほどの極度の肥満体で、「溶けかけたラードの塊」などと形容される。
痛風を患っており、その発作を抑えるためアヘンを常用していた。

即位後、真っ先にやったことは父の愛妾の惨殺。殺された女性達はみな体の皮を剥がれていたという…
恐怖政治を敷き、ルドルフのような信念からではなく、単なる保身と快楽のために実の母である皇太后や弟たち、貴族から民衆まで無差別に虐殺を行なった。
アウグスト2世が殺害した総数は2000万人とも600万人とも伝えられている。

最後はリンダーホーフ侯エーリッヒ(後のエーリッヒ二世)による叛乱の最中、腹心である近衛旅団長シャンバークによって、自らが多くの「」を与えていた有角犬の巣穴に突き落とされ殺害される。

なお、シャンバークはエーリッヒ二世によって暴君を殺して国家と人民の害を取り除いたことを称えられ大将に昇格。
直後に暴君の腹心として多くの人々を惨殺した罪に問われ銃殺刑に処された。
まさに因果応報。

  • 余談
ダイヤモンド製の微細な針を眼球に突き刺し、更に眼底を経て脳にまで突き通して、相手を狂死させる『アウグストの注射針』なる処刑方法を考案した。

  • エーリッヒ・フォン・ゴールデンバウム二世
ゴールデンバウム王朝第15代皇帝。先帝アウグスト二世の従兄。

アウグスト二世が即位した際に身の危険を感じ、その手を逃れて自領に引き籠っていた。
が、オーディンにいた皇族などがあらかた殺し尽くされた後出頭を命じられ、惨たらしく殺されるくらいならばと止むなく反旗を翻す。

本人としては窮鼠猫を噛むの心境でペンダントの中には敗れた際には残虐に殺害される前に自殺する為の毒薬を仕込んでいる程だった。
しかし既にアウグスト二世は人心を失っており、彼の予想に反して有力な貴族や有能な軍人達が次々に彼の元に集結し、瞬く間に勢力を拡大。
ついにはトラーバッハ星域会戦で皇帝軍と戦闘になったが、皇帝軍は殆ど戦闘行為を行わずに事実上投降したため大勝。
そしてその時には既にアウグスト二世もこの世におらず、そのままオーディンへ進軍、皇帝に即位。
ちなみにこの時彼の元に集った提督の中にはコンラート・ハインツ・フォン・ローエングラム伯爵という人物も。

即位後はアウグスト二世時代の恐怖政治の影を一掃し人心を安定させたことから『止血帝』と呼ばれる。

  • フリードリヒ・フォン・ゴールデンバウム一世
ゴールデンバウム王朝第16代皇帝。

  • レオンハルト・フォン・ゴールデンバウム一世
ゴールデンバウム王朝第17代皇帝。

  • フリードリヒ・フォン・ゴールデンバウム二世
ゴールデンバウム王朝第18代皇帝。

  • レオンハルト・フォン・ゴールデンバウム二世
ゴールデンバウム王朝第19代皇帝。
実子がなく、皇后の勧めで甥であるフリードリヒを養子にするが、その直後に死亡。
一説によるとフリードリヒ三世と皇后クリスティーネは不倫関係にあり、そのために養子に推薦されたのではないかと囁かれている。

レオンハルト二世の死も、フリードリヒ三世と彼と共謀した皇后によって暗殺されたのではないかとも言われているが真相は不明。

  • フリードリヒ・フォン・ゴールデンバウム三世
ゴールデンバウム王朝第20代皇帝。先帝レオンハルト二世の甥。
後述するグスタフ一世、マクシミリアン・ヨーゼフ二世、ヘルベルト大公の父親でマクシミリアン・ヨーゼフ一世の異母弟。
『ダゴン星域会戦』時の皇帝なので後世『敗軍帝』と呼ばれる。

長子であるグスタフ一世は生来病弱でフリードリヒ三世の眼には頼りなく見え、また次男のマクシミリアン・ヨーゼフ二世も庶子だった為、三男であるヘルベルト大公を偏愛した。
治世中に「自由惑星同盟」が発見されると、フリードリヒ三世はグスタフ一世を廃立し、新たにヘルベルト大公を皇太子に立てるための「箔付け」として、ヘルベルト大公に自由惑星同盟の討伐を命じる。
しかし軍事には素人のヘルベルト大公率いる帝国軍は、敵を侮った結果リン・パオ率いる自由惑星同盟の軍勢に『ダゴン星域会戦』で完敗を喫してしまう。

結果ヘルベルト大公は失脚し、帝国の権威も著しく低下する事態となった。
フリードリヒ三世の治世はゴールデンバウム朝がもっとも深く腐敗と退嬰と陰謀の中に沈んでいた時代とされ、後世「暗赤色の六年間」と呼ばれた。

  • マクシミリアン・ヨーゼフ・フォン・ゴールデンバウム一世
ゴールデンバウム王朝第21代皇帝。先帝フリードリヒ三世の異母兄。
帝位継承を巡る争いを収拾するために一時的に帝位に就いた後、先帝の長男であるグスタフ一世に帝位を譲った。

  • グスタフ・フォン・ゴールデンバウム一世
ゴールデンバウム王朝第22代皇帝。フリードリヒ三世の長男。
即位後まもなく弟であるヘルベルト大公の配下の者に毒殺されたため通称『百日帝』と呼ばれる。
生来病弱でその点をフリードリヒ三世から疎まれ、結果的にヘルベルト大公の増長を招いた。

死の直前にもうひとりの弟、マクシミリアン・ヨーゼフ2世に帝位を譲る。
マクシミリアン・ヨーゼフ2世とは仲が良かったらしく、後にマクシミリアン・ヨーゼフ2世が「劣悪遺伝子排除法」を廃止したのには、病弱だったグスタフ1世の影響があるのではないかとされている。

  • マクシミリアン・ヨーゼフ・フォン・ゴールデンバウム二世
ゴールデンバウム王朝第23代皇帝。
フリードリヒ三世の庶子で、先帝グスタフ一世の異母弟。

母親が下級貴族出身のため、帝位を継ぐことは無いと思われていたが、異母兄であるグスタフ一世から死の直前に帝位を譲られ皇帝に即位。

即位後は自由惑星同盟への侵攻計画を破棄し、司法尚書のミュンツァーや、侍女出身の皇后ジークリンデなどの助けを得て、永年にわたって緩みきっていた綱紀を粛正。

劣悪遺伝子排除法という「遺伝的に劣悪」と定義された病や異常、性格を持つ者を安楽死させるルドルフ大帝以来の悪法を有名無実化するなど、内政に力を注ぎ、政治の腐敗とダゴン星域会戦の敗戦によって傾きかけていたゴールデンバウム朝銀河帝国を立て直した中興の祖と讃えられる。

混乱期の王朝を立て直したことから『再建帝』、腐敗の一掃もあり『清掃帝』とも呼ばれる。
もしくはヘルベルトの配下の者に毒殺されかかって失明したことから『晴眼帝』とも呼ばれる。

  • コルネリアス・フォン・ゴールデンバウム一世
ゴールデンバウム王朝第24代皇帝。先帝マクシミリアン・ヨーゼフ2世の又従兄弟。
先帝に子が無かったため、人物を見込まれ養子になる。

内政では先帝の方針を受け継ぎ名君と呼ばれるに相応しい功績を上げたが、外政においては先帝とは意見を異にしており、ダゴン星域会戦の報復戦を決意。
自由惑星同盟の征服を目論んだ彼は、同盟領に対してゴールデンバウム王朝史上唯一の親征を企てる。

これに先立ち、強行偵察により同盟領の地理把握を始めとして綿密な下準備を行っており、ダゴン星域会戦の失敗を教訓に計画を実行。
更に外交面での解決も模索しており、コルネリアス1世は三度にもわたって自由惑星同盟に対して和平使節団の派遣、自由惑星同盟に臣従前提とはいえ和平政策を行っている。

この姿勢はゴールデンバウム朝においては後のマンフレート亡命帝とならんでかなり寛大な態度と言えたが、同盟首脳部はダゴンの勝利の幻想に驕って帝国の使者に冷笑を浴びせかけ、コルネリアス1世の矜持に致命的なまでの打撃を与えてしまう。
…とはいえこの場合の臣従とは早い話が選挙制度の廃絶など含まれるためとてもではないが同盟の飲める和平案などではなく、翻れば同盟からすればこんなろくでもない案が帝国が民主主義勢力と講和する際の最大限の譲歩であるという銀河帝国皇帝の限界を示すものでもある。
前回の反省を生かし周到に準備されたコルネリアス1世の軍勢は、ダゴン星域会戦の勝利に驕る同盟軍を第一次ティアマト会戦で二度にわたって敗走させ、一時は同盟首都ハイネセンに迫るも、帝都で発生した宮廷クーデターによって撤退を余儀なくされ、コルネリアス1世の親征は失敗に終わる。
なおこの撤退時に発生した帝国軍による同盟市民への大量虐殺と拉致がこののち二国間の和平をほぼ不可能としていく事となる。


元帥号を濫発する悪癖あり、彼が大親征に随行させた元帥はあわせて58名。「元帥二個小隊」を率いて出撃と揶揄される程であった。
そのため『元帥量産帝』とも呼ばれる。
大親征での戦いにおいてこのうち35名が戦死したが、戦局には何ら意味をもたらさなかった。
親征後は思うところがあったのか、これ以後彼が臣下に元帥号を与えることはなくなったという。

  • マンフレート・フォン・ゴールデンバウム一世
ゴールデンバウム王朝第25代皇帝。

  • ヘルムート・フォン・ゴールデンバウム一世
ゴールデンバウム王朝第26代皇帝。
これといった功績や戦果も失政も出てこないが、庶子が多かったという記述がある。

  • マンフレート・フォン・ゴールデンバウム二世
ゴールデンバウム王朝第27代皇帝。
在位帝国暦398年~399年?

幼少期に暗殺者の手を逃れ亡命したため自由惑星同盟において成長した。
そのため『亡命帝』とも呼ばれる。

即位後は様々な政治改革を行い同盟との平和共存に尽力。銀河帝国と自由惑星同盟の和解と対等外交の達成も視野に入るほどだったが、即位後わずか1年ほどで反動派の貴族によって暗殺された。
暗殺劇の裏には、利益の独占をはかるフェザーンの思惑が動いていたという説があるが、いずれにせよ民主主義との対話を最大のタブーとする帝国の姿勢を端的に表した事例ともいえる。


  • ウィルヘルム・フォン・ゴールデンバウム一世
ゴールデンバウム王朝第28代皇帝。

  • ウィルヘルム・フォン・ゴールデンバウム二世
ゴールデンバウム王朝第29代皇帝。
皇后コンスタンツェとの間にコルネリアス2世を、寵姫ドロテーアとの間にアルベルト大公をもうける。

次男のアルベルト大公は、十五歳の時侍従武官を従えて新無憂宮の地下の探索に出かけ行方不明になる。

これは寵姫ドロテーアが息子のアルベルト大公を皇后コンスタンツェの魔の手から逃すために行ったとも、逆に息子のコルネリアス2世の政敵であるアルベルト大公を抹消するための皇后コンスタンツェの陰謀とも言われているが真相は不明。

一般的に知られている事実としては、アルベルト大公が侍従武官と共に地下で行方を断ち、その直後ウィルヘルム2世が病没したことだけである。
ウィルヘルム2世の死後は皇后コンスタンツェの息子であるコルネリアス2世が即位。

その翌日、先帝の寵姫ドロテーアは何者かの手によって毒殺され、さらにその一ヶ月後コンスタンツェ皇太后も原因不明の熱病で狂死した。

  • コルネリアス・フォン・ゴールデンバウム二世
ゴールデンバウム王朝第30代皇帝。先帝ウィルヘルム2世の長男。

第二次ティアマト宙域会戦時の皇帝で、ブルース・アッシュビー率いる自由惑星同盟との戦いで貴族出身の将官を大量に喪う。
だが、これが結果的に帝国軍が平民に対して高級士官への門戸を開くきっかけとなる。

即位から20年後、重い病に倒れたコルネリアス2世の前に失踪した弟のアルベルト大公を自称する男が現れる。
長年にわたって弟の失踪に母親の犯行を疑っていたコルネリアス2世は、病床に「弟」を呼び寄せ涙の体面を果たす。

この自称アルベルト大公は一時はコルネリアス2世の後継者と目されたが、その後、多数の貴族から提供された5000万帝国マルク相当の宝石と可憐な侍女とともに失踪。
自称大公を本物とする説もあるが、真相および以降の消息は不明。

  • オトフリート・フォン・ゴールデンバウム三世
ゴールデンバウム王朝第31代皇帝。
先帝のコルネリアス二世の関係は不明だが、子が無いまま重病に倒れたため、皇族の誰かから取った養子と思われる。

皇太子時代は有能で人望もあり、帝国軍三長官を兼任して帝国軍最高司令官となり、更には帝国宰相をも兼任した。
しかし、即位後は相次ぐ宮廷陰謀に次第に猜疑心が強まり、皇后を三度替え、帝位継承者を五度替え、最後は毒殺を恐れるあまり食事をろくにとらなくなり40代半ばで衰弱死した。

  • 余談
ランズベルク伯爵のセリフに伯爵の5代前の先祖に皇宮地下通路建設を命じたとされるゲオルグ二世なる謎の皇帝が出てくるが、逸話や年代からみて恐らくこのオトフリート三世の事だと思われる。

  • エルウィン・ヨーゼフ・フォン・ゴールデンバウム一世
ゴールデンバウム王朝第32代皇帝。

  • オトフリート・フォン・ゴールデンバウム四世
ゴールデンバウム王朝第33代皇帝。
後宮に1万人以上の美女を集めたことから『強精帝』と呼ばれる。
即位5年後にベッドの上で頓死したとき『後宮ではなお5000人が処女のまま皇帝の寵を受ける夜を待っていた』と伝えられる。
624人の庶出子をもうけ、内388人が成人している。

  • オットー・ハインツ・フォン・ゴールデンバウム二世
ゴールデンバウム王朝第34代皇帝。

  • オトフリート・フォン・ゴールデンバウム五世
ゴールデンバウム王朝第35代皇帝。フリードリヒ四世の父。
自由惑星同盟との通路であるイゼルローン回廊に要塞の建設を命じるなど戦略眼もあり、フリードリヒ四世の即位した時点で、自由惑星同盟との戦争中にもかかわらず国家財政の健全化にも成功していたことから、水準以上の君主だったと思われる。

ただ大変な吝嗇家で、イゼルローン要塞の建設費用が予定を大幅に超過したことに激怒し、責任者であるセバスティアン・フォン・リューデリッツ伯爵に死を賜るなど狭量な面が見られる。

放蕩を重ねるフリードリヒに愛想をつかし、勘当同然にしていたが、長男リヒャルトと三男クレメンツが皇位を巡って争い、二人とも共倒れの末死亡してしまったので、他に帝位継承者がいなくなり、仕方なくフリードリヒ四世に後事を託す。

  • 余談
オーベルシュタインの台詞において、第38代カザリン・ケートヘン1世の先祖であるとされる「先々帝ルードヴィヒ3世」という謎の皇帝が出てくるが、実際の先々帝はこのオトフリート5世。
これは単純に作者である田中芳樹氏のミスだと思われる。
そのため、OVAの台詞では「先々帝オトフリート5世」に直されている。

ゴールデンバウム王朝第36代皇帝。
先帝オトフリート5世の次男。
物語開始時点の皇帝であり、実質的にはゴールデンバウム王朝最後の皇帝。

詳細は当該項目参照。

  • エルウィン・ヨーゼフ・フォン・ゴールデンバウム二世
ゴールデンバウム王朝第37代皇帝。
先帝フリードリヒ四世の皇太子だったルードヴィヒの息子で、フリードリヒ四世の唯一の直孫であったが、父親が早死にしてしまったために皇太孫としてはたてられなかった。

しかしフリードリヒ四世の死後、エルウィン・ヨーゼフに有力な外戚がいなかった事からラインハルトリヒテンラーデ候の手によって皇帝に擁立される。
皇帝に即位したものの、僅か五歳の少年に何かが出来るはずもなく、実権は帝国宰相に就任したラインハルトに握られており、後にそれを不服としたランズベルク伯爵らの手によって誘拐される。

建前上の最高権力者として丁重に扱われるも、真心を持って面倒を見てくれた人間は皇宮には誰もおらず、結果として甘やかされ放題に育ったため自我の抑制が効かず、即位した時はやや狂気の芽が芽吹いていたらしい。
ランズベルク伯により誘拐されフェザーン商人の密航船に乗った際も、猿を乗せているようだと苦言を呈されるほど手が付けられなかった。
ノイエ版ではフリードリヒ四世の葬儀で初登場するが、既に自制が効かなくなっており擁立時には自分へ頭を下げる大人を見てご満悦と言った具合に増長ぶりが描かれた。

同盟へ亡命後に銀河帝国正統政府皇帝に擁立されるも、やはり本人の意志は介在しておらずここでもお飾りの存在になっていた。
しかも一連の誘拐すらラインハルトは知ったうえでわざと放置され、ラインハルトはエルウィン・ヨーゼフ二世を廃位し、同盟侵攻の大義名分に利用した。

ラグナロック作戦」によって、自由惑星同盟が征服され、銀河帝国正統政府が崩壊すると、エルウィン・ヨーゼフ2世は銀河帝国正統政府の構成員だったランズベルク伯爵と共に姿を消す。

2年後、ランズベルクが逮捕された時、エルウィン・ヨーゼフ2世とされる幼児のミイラ化した遺体とランズベルクの手でエルウィン・ヨーゼフ2世の末路を記した手記も発見され、エルウィン・ヨーゼフ2世は死亡したものとして公共墓地に埋葬された。
しかしその後、やはり正統政府の構成員だったレオポルド・シューマッハが逮捕後にした証言によれば、エルウィン・ヨーゼフ2世はランズベルクの元から逃げ出して行方知れずとなり、ミイラは別人のもので手記も発狂したランズベルクの創作であることが判明する。彼のその後は永遠の謎となった。

  • 余談
表向き父親はフリードリヒ4世の皇太子だったルードヴィヒという事になっているが、エルウィン・ヨーゼフ二世が帝国暦482年の生まれなのにもかかわらずルードヴィヒ皇太子は帝国暦477年に死んでいる。
これが正しかった場合エルウィン・ヨーゼフ二世の父親はルードヴィヒ皇太子ではなく別人だという事になる。

エルウィン・ヨーゼフ二世の父親が誰であるかというのは、彼のその後と同じく永遠の謎に終わるだろう。

  • カザリン・ケートヘン・フォン・ゴールデンバウム一世
ゴールデンバウム王朝第38代皇帝。
ゴールデンバウム王朝初の女帝にして、最後の皇帝。
ペクニッツ子爵の娘でオトフリート5世の第3皇女の孫。

エルウィン・ヨーゼフ2世を廃位したラインハルトの手によって生後わずか八ヶ月で擁立される。

ラインハルトの傀儡であるが、その傀儡としての仕事も乳児には果たすことはできず、父親たるペクニッツ子爵(彼女の即位後公爵に格上げ)が親権者として代行している。

在位僅か一年ほどでラインハルトに帝位を禅譲したためゴールデンバウム王朝最後の皇帝となる。

退位を強制されるに際し、ペクニッツ公爵はオーベルシュタインからカザリン・ケートヘン1世に対して年間150万帝国マルクの終身年金を下賜するという交換条件を約束され、その身の安全はローエングラム王朝より保障された。

  • 余談
カザリン・ケートヘン1世の即位に際して、ラインハルトは生後八ヶ月の幼児が皇帝に即位し、銀河帝国の支配者になることに暗い侮蔑を感じていたが、そのラインハルトの後継者が生後二ヶ月の乳児だったのは歴史の皮肉と言うべきだろう。

【貴族】

  • オットー・フォン・ブラウンシュヴァイク
門閥貴族の中で最大の勢力を持つブラウンシュヴァイク公爵家の当主。フリードリヒ四世即位の際に後ろ盾となり、即位後はその長女アマーリエを妻に娶り、皇帝の外戚として絶大な権勢を誇った。
壮齢のいかにも貴族らしい風格を持つ男性だが、内面は貴族主義、血統主義、傲慢、残酷、短絡と、貴族の悪い見本の大バーゲンのような卑劣漢。
自己の欲のためならなんでもやる残酷さは作中随一であり、次期皇帝の摂政になりたいがために皇帝の赤子を毒殺した疑惑がある。作中では更に皇帝の孫娘にして自身の娘のエリザベートを帝位に就かせようと躍起になっていた。
その異様なまでの自己中心的な人格は数世紀にも及ぶ貴族社会の腐敗の堆積によるものであり、メルカッツ提督は公のことを「不運な病人」と呼んだ。

ブラウンシュヴァイク公の甥で、若くしてすでに選民思想に凝り固まった人物。
下級貴族出身のラインハルトを憎悪しており、あの手この手を使って排除を目論む。
自ら最前線に出ることや死を恐れない勇敢さは持つが、それは自陣営を悪い方向に動かす無能な働き者の見本。
詳細は項目参照。

  • ウィルヘルム・フォン・リッテンハイム3世
帝国第二位の勢力のリッテンハイム侯爵家の当主。フリードリヒ四世即位の際にはブラウンシュヴァイク家と共に後ろ盾になり、即位後はその次女クリスティーネと結婚して外戚となる。
中年くらいの長身の男で、ブラウンシュヴァイク公ほどではないが、こちらも貴族主義に凝り固まった卑劣漢。
自身の娘サビーネを帝位に就かせようと暗躍するがラインハルトらの介入で失敗するとブラウンシュヴァイク公と手を組んだが、戦後の派閥抗争に目を取られ過ぎて現実を顧みれず、最期は貴族らしい尊大な振る舞いが仇となって死亡した。

  • ヘルクスマイヤー
中年の伯爵。OVA外伝「決闘者」と「奪還者」に登場。
リッテンハイム公の縁戚もとい腰ぎんちゃくのような男で、公にすり寄るために何の罪もないシャフハウゼン家の鉱山の採掘権を奪い取ろうとした。
しかしゴマをすろうと熱心になり過ぎてリッテンハイム公の秘密を知ってしまい、逆に命を狙われて同盟に亡命しようとしたが……。
門閥貴族の例に漏れずに典型的な尊大なだけの小者だが、意外にも家臣や家族には寛容なタイプだったのか、亡命の折には多くの家臣が共に付き従っていた。

  • マクシミリアン・フォン・カストロプ
父親が不正に蓄財した財産を帝国に没収されるのが嫌で、カストロプ動乱と呼ばれる地方反乱を起こした馬鹿息子。
メディアによって容姿や反乱の内容が大きく違う。
しかしキルヒアイスの敵ではなかったという点は共通し、彼の昇進の踏み台になって惨めな最期を遂げた。
カストロプ動乱の詳細は単独項目参照。

  • アルフレット・フォン・ランズベルク
伯爵の地位を持つ門閥貴族の一員、帝国歴489年時点で26歳。
特別な才覚は持っていない一方、若い門閥貴族としては極めて珍しい事に温厚で誠実な人柄を持ち、
凡そ他人から憎悪されるような悪辣さや卑劣さ、そして彼自身も他人を傷つける攻撃的な気質を持ち合わせていない。
貴族という立場故に得られる利益を享受する事や、それを生む社会構造自体には特に疑問も持っていなかったようだが、
その一方で相手が平民であっても初対面の協力者に自分から笑顔で握手を求め、迷惑をかければ謝罪もきちんと行う等、貴族としての特権意識を他人に振り翳す事はしない。
その善良さは育ちの良さから来るものとされているが、ゴールデンバウム王朝を嫌悪しているラインハルトですら
「何度か会った事があるが、悪い印象を受けた記憶が無い」「有益では無いが、無害な人物」とその人柄を評していた程。
他にもヒルダや前述の協力者たるレオポルド・シューマッハ大佐なども、彼の人柄は高く評価している。
後にリップシュタット貴族連合に参加してラインハルトと敵対するが、それすらもラインハルトへの敵意や損得勘定からではなく、
ゴールデンバウム王朝の貴族としてそれが当然の義務であると信じていた、という素朴な理由からであった。

リップシュタット戦役に敗北後はフェザーンに脱出。
そこでもラインハルト個人を憎悪する事は無かったが、その純粋さはラインハルト陣営、
そして暗躍するフェザーンによって更に利用されていく事になる。

  • マグダレーナ・フォン・ヴェストパーレ
女性ながら貴族では珍しく男爵家の当主を務めている人物。男爵夫人と呼ばれている。
貴族としては良い意味で異端児的な才色兼備の女傑。
宮廷内で孤立していたアンネローゼの数少ない友人の一人で、強力な後ろ盾となっていた。
ラインハルトにとっては姉の恩人であり、彼女には頭が上がらないほど。
無名の芸術家のパトロンという一面もあり、「歩く博物館」の異名を持つ。メックリンガーもかつては彼女の援助を受けており、
その縁でラインハルトとの面識を得る。
パトロンとして何人も愛人を囲っているがキルヒアイスをとても気に入っているようで、本人からは苦手意識を抱かれている。

本編では一切出番がないものの、リップシュタット戦役後に失意と共に世捨て人になってしまったアンネローゼを見舞っていたのではないかと推測されている。

  • エリザベート・フォン・ブラウンシュヴァイク/サビーネ・フォン・リッテンハイム
前者はブラウンシュヴァイク公の娘で、後者はリッテンハイム公の娘。先述通り母親たちがいずれも皇帝の娘である為、従姉妹同士でもある。
フリードリヒ四世の逝去後*1、次代の女帝と目された二大候補である。しかし本人らの才覚は期待されておらず、彼女らの父親が狙う摂政としての土台や、『女帝の夫』としての最高の名声を得ようとする貴族たちの政争の餌でしかなかった。
ちなみに権力掌握前のラインハルトは、権力を得る手段として彼女たちのどちらかと政略結婚することも考えていたが、実行に移されることは無かった。
貴族連合の戦闘では参加せず、原作小説・OVA・ノイエ版では内戦終結後の去就は不明。藤崎版では戦闘に果敢に参加するが死亡する。
ノイエ版ではフリードリヒ四世葬儀の場で歳相応の仲積むまじい会話をしており両者の関係は当段階では良好だった模様。
OVA版外伝では遺伝的欠陥があると指摘されているが具体的な持病・体質などは不明。

  • シュザンナ・フォン・ベーネミュンデ
侯爵夫人で実家も子爵家の家柄。かつてはフリードリヒ四世の寵愛を独占する寵姫であったが、現在はグリューネワルト侯爵夫人ことアンネローゼに寵愛が移ったことで捨て置かれてしまった存在。
そのせいか人格も歪み切ってしまっており*2、アンネローゼを排除すれば皇帝の寵愛を取り戻せると、その弟のラインハルトを亡き者にしようと幾度も暗殺者を差し向ける。
しかしことごとく失敗。ついに所業が皇帝の知るところとなってしまった結果、自殺を強要されてあえなく最期を迎えた。
ただ、現在こそ妄執に狂いきった魔女のようになっているが、昔は可憐な少女だったと言われ(ちなみに本編時点でまだ30歳ほど)、彼女も宮廷社会の犠牲者だと言えるかもしれない。

【軍人】


皇帝フリードリヒ四世の寵愛を受けるグリューネワルト伯爵夫人の弟。
「金髪の孺子(こぞう)」と周囲からは侮られるが、たぐいまれな才覚を発揮して異例の早さで出世の階段を駆け上がっていく。
詳細は単独項目参照

ラインハルトの幼馴染で生涯最大の友。
見事な赤毛を持つ温和な青年で、ラインハルトを支えて彼の栄光の道筋を築いていく。
ラインハルトと同等以上の万能の天才だが、人間的な完成度ははるかに上回る。ただし『覇者』としての器ではない。
アスターテ会戦まではラインハルトの副官としてのみ務め、周囲から目立つ立場では無かった(それでもラインハルトを支えた功績は巨大だが)。
しかしカストロプ動乱で一挙頭角を現し、艦隊司令官として活躍を始める。
その温厚で人当たりの良い性格から同僚や部下からの評価も人気も絶大であった。
だが「No.2不要論」を唱えるオーベルシュタインによってラインハルトと溝が生じた末に……。
詳細は単独項目参照

  • グレゴール・フォン・ミッケンベルガー
銀河帝国軍宇宙艦隊司令長官を務める老年の男性。
威風堂々とした威厳ある風貌を持ち、長年軍務で生きてきただけあって軍政ともに凡庸ならざる人物。
ラインハルトからは、「見かけだけの無能者」と侮られるが、それはラインハルトが天才ゆえの視線の高さからと言える。
実際に、我の強い門閥貴族出身の提督たちが無用な軋轢を起こさないように配慮する老獪さを発揮するなど最高司令官として有能な面を見せている。
また、当初はラインハルトを軽視していたが、ラインハルトの功績を見て、
「もうスカートの中の提督ではない。生意気な金髪の孺子ではあるがな」
と、評価を改める柔軟さ、人を見る目の確かさを持っている。
そしてその柔軟さは歴史の転換点において、ラインハルトとの敵対を避けるという判断で彼を破滅から救うことにつながった。

  • シュターデン
ミッターマイヤーが学生時代に士官学校の教官をしていたこともある提督。階級は中将。
無能というほどではないが実践より理論を優先しがちな人間で、教え子たちからは「理屈倒れのシュターデン」と陰口を叩かれていた。
リップシュタット戦役では貴族連合について参戦するが、我が強く戦意だけは旺盛な門閥貴族の子弟たちを抑えることができず、結果としてミッターマイヤーに完敗することになってしまった。
その後はなんとか逃げ延びるもののストレスから吐血して病床へ。
ラインハルト陣営からはほとんど路傍の石のように扱われてしまったが、彼の名誉のために言えばアスターテ会戦では危なげなくメルカッツやファーレンハイトと肩を並べて戦えており、艦隊司令官としては十分な力量を持っていたことは認めてもよいだろう。

帝国軍の重装甲陸戦部隊・装甲擲弾兵の総監。階級は上級大将。
白兵戦においては作中では文句なしに最強の戦闘能力を誇り、同盟軍からは『ミンチメーカー』と恐れられるほど。ファンからの通称は『石器時代の勇者
詳細は単独項目参照

  • アントン・ヒルマー・フォン・シャフト
禿げた恰幅の良い56歳で、帝国軍技術大将。
指向性ゼッフル粒子の発明など、決して無能な人物ではないがそれ以上に政治力を駆使して保身と昇進を計る向きが大きな野心家。
帝国と同盟の軍事バランスを保つことを目論んだフェザーンにそそのかされ、ガイエスブルグ要塞をワープで移動させてイゼルローン要塞に当てる作戦を進言し、技術的には成功させた*3
だが結局この作戦は同盟軍に目立った損害を与えることができずに*4失敗し、ガイエスブルグ要塞と多数の艦艇と将兵に加えてケンプ提督という有能な人材もまとめて失う大敗北となってしまった。
それ自体はシャフトの責任ではなかったが、彼を用済みと見たフェザーンによって収賄他の汚職を暴露されて逮捕された。
しかしシャフトをあからさまに切り捨てたことで、フェザーンが帝国を間接的に操ろうとしていることをラインハルトに確信させる結果となったのは当人たちにも予想外のことであった。


【その他】

クロプシュトック事件のおりにミッターマイヤーを拷問しようとした男。
出番は短いが、どのメディアでもなぜか濃いキャラづけになっていて妙に記憶に残る変態。
そのため隠れた人気キャラ。詳細は項目参照。

  • グレーザー
ベーネミュンデ侯爵夫人に仕える宮廷医師。
とはいえ忠誠心ではなく、彼女の莫大な資産のおこぼれが目当てで従っていただけの小者。
ラインハルト暗殺に関して暗殺者を手配するなど暗躍したものの、彼女の傲慢極まる性格には愛想を尽かしていた。
そしてついに反撃に出たラインハルトの動きを知ると即座に侯爵夫人を裏切る。

  • 暗殺者
OVA【決闘者】に登場したベーネミュンデ侯爵夫人がラインハルト殺害のために送り込んだ暗殺者。本名不明。
ヘルクスマイヤー伯爵の決闘者を殺害してその後釜に入り、決闘でラインハルトを殺害せんとする。
縮れ髪の不気味な男だが腕は本物で、ラインハルトもギリギリのところまで追い詰められた。
しかしプロとしての矜持も本物であり、最後には真っ向勝負でラインハルトと剣で勝負した後に潔く自害して果てた。

見た目はどことなく吸血鬼ハンターDに似ていると言えなくもない。出版社違うけど。


ゴールデンバウム王朝の忠臣の方々は追記・修正お願いします。

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • ゴールデンバウム王朝
  • 銀河英雄伝説
  • 帝国
  • 王家
  • 王族
  • 皇族
  • 皇帝
  • 黄金樹
  • 専制君主
  • 君主
  • 銀河帝国
  • 架空の王朝
  • 王朝
  • 旧王朝
  • 暴君
  • 暗君
  • 凡君
  • 名君
  • 政治腐敗
  • 専制君主制
  • 架空の国家
  • 星間国家
  • 国家革新同盟
  • 洗脳教育
  • 人種差別主義者 ←当時は普通
  • 回帰主義
  • 政権交代の結果
  • 一党独裁制
  • 毎日がアウシュビッツ
  • 忽然と姿を消した黒人
  • 自分たちを王朝だと思い込んだ政党
最終更新:2025年04月26日 08:08

*1 この時点でエリザベートは16歳。サビーネは14歳。

*2 皇帝の子を三度身籠るもいずれも流産したことも原因。しかも自分の子を帝位に就けたいブラウンシュヴァイク公はじめとする貴族らに毒を盛られたからという噂があるが真偽は不明。

*3 ラインハルトが乗ってきたのはキルヒアイスを失った直後の精神の不安定な時期だったのが大きい

*4 グエン・バン・ヒューとアラルコンの敗北はヤンの静止命令を無視して突出したことが原因で、作戦とは無関係