第2次ラグナロック作戦(銀河英雄伝説)

登録日:2014/08/24 (日) 10:13:18
更新日:2018/09/20 Thu 23:14:13
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第2次ラグナロック作戦とは、SF小説「銀河英雄伝説」内におけるローエングラム王朝による自由惑星同盟を完全に併合するための作戦である。
別名「大親征」。




【背景】

宇宙歴799年/帝国歴490年5月、銀河帝国軍は自由惑星同盟の首都・惑星ハイネセンを無血開城させ、「バーラトの和約」を結び戦争は一時終結した。
その翌月にゴールデンバウム王朝は人知れず滅亡し、新たにローエングラム王朝が開かれることとなる。

しかし、新帝国が始まって間もなく、「動くシャーウッドの森」と名乗る謎の集団により「バーラトの和約」に基づき戦艦を処分しようとしていた部隊が襲撃される事件が起こる。
この事件は「ヤンが企ててメルカッツが実行した」という情報が帝国の高等弁務官府にもたらされ、在任中だったレンネンカンプはジョアン・レベロに対しヤンを逮捕するよう勧告、レベロもオリベイラに気圧される形でヤンの逮捕に踏み切る。
これらは全て、パウル・フォン・オーベルシュタインによるヤンを誅殺するための謀略であった。

ヤンの逮捕後、事前に予感をしていたフレデリカはシェーンコップとアッテンボローに連絡、レベロを拉致して彼の身柄と引き換えにヤンの救出作戦に踏み切る。
間一髪で救い出されたヤンは、今度はレンネンカンプを人質にしてハイネセンを離れる計画を立て、これに伴い計画に加わっていなかったキャゼルヌやムライ、フィッシャー等は罪に問わないようレベロに念押ししている。
翌朝、ヤン一党はレンネンカンプが宿泊していたホテル・シャングリラを襲撃し彼を拉致するが、自身が捕縛するはずだったヤンに捕縛されたということに屈辱を受けたレンネンカンプは自殺してしまう。ヤンはレンネンカンプを生きていることにして交渉を続け、巡航艦レダⅡを手に入れてハイネセンを脱出した。

その約1か月後、ヤンたちはエル・ファシル革命軍として独立し、帝国に対し抵抗の意思を示す。
これに対してラインハルトは「バーラトの和約」を破棄し、同盟を完全に併呑するための作戦「第2次ラグナロック作戦」の実行を下す。



【登場人物-銀河帝国】

ローエングラム王朝初代皇帝。旗艦はブリュンヒルト。

  • ウォルフガング・ミッターマイヤー
宇宙艦隊司令長官。元帥。「疾風ウォルフ」の異名を持つ。旗艦は人狼(ベイオウルフ)。

統帥本部総長。元帥。マル・アデッタ星域会戦において、ラインハルトの補佐を務める。

  • パウル・フォン・オーベルシュタイン
軍務尚書。元帥。この戦いの元凶ともいえる存在。

上級大将。黒色槍騎兵隊を率いる猛将。旗艦は王虎(ケーニヒス・ティーゲル)。

上級大将。速攻に定評のある提督。旗艦はアースグリム。

  • エルンスト・フォン・アイゼナッハ
上級大将。沈黙提督の異名を持つ。旗艦はヴィーザル。

  • ナイトハルト・ミュラー
上級大将。「鉄壁」の異名を持つ。旗艦はパーツィヴァル。

  • コルネリアス・ルッツ
上級大将。イゼルローン要塞の守備を任される。旗艦はスキールニル。

  • ヘルムート・レンネンカンプ
上級大将。駐ハイネセン高等弁務官。旗艦はガルガ・ファルムル。
有能な軍人だが器は小さく、ヤン一党に捕縛されたことを恥じて自殺。

  • アルフレット・グリルパルツァー
大将。レンネンカンプの弟子。旗艦はエイストラ。
知勇兼備の将だが、艦隊司令官としての器は今一つ。

  • ブルーノ・フォン・クナップシュタイン
大将。レンネンカンプの弟子。旗艦はウールヴルーン。
無能というわけではないが、艦隊司令官としての経験が浅く、失敗が多い。

  • ヒルデガルド・フォン・マリーンドルフ
ラインハルトの首席秘書官で、マリーンドルフ伯フランツ家の長女。通称ヒルダ。



【登場人物-エル・ファシル革命予備軍】

革命軍総帥。旗艦はユリシーズ。
バーラトの和約後はハイネセンで平和に暮らすはずだったが…。

  • フレデリカ・グリーンヒル・ヤン
ヤンの妻。少佐。
ヤンの逮捕に裏を感じ、アッテンボローやシェーンコップらと共にヤンの奪還に動く。

  • ユリアン・ミンツ
ヤンの一番弟子。中尉。ポプランと共に地球教本部に潜入。
本部壊滅後にヤンと合流する。

  • ダスティ・アッテンボロー
ヤンの後輩。中将。旗艦はマサソイト。

元帝国軍の宿将。「動くシャーウッドの森」を動かす実行役。旗艦はシヴァ。

「薔薇の騎士団」隊長。中将。ヤン救出作戦で大活躍。

中将。後方支援本部長代理を務めていたが、ヤンの逃亡を事前に知ると、役職を捨てて家族と共に合流。

  • エドウィン・フィッシャー
元ヤン艦隊副司令官。中将。
  • ムライ
元ヤン艦隊参謀長。中将。
  • ヒョードル・パトリチェフ
元ヤン艦隊副参謀長。少将。
3人共辺境警備の任にあたっていたが、ビュコックの依頼で無傷の艦隊5560隻をヤンに届ける。

  • オリビエ・ポプラン
戦闘艇「スパルタニアン」のエースパイロット。中佐。ユリアンと共に地球教本部で大暴れ。
後にイゼルローン要塞再奪取作戦でも活躍。

  • バグダッシュ
情報操作のプロ。大佐。未だにユリアンからは信用されていない。

  • カーテローゼ・フォン・クロイツェル
「スパルタニアン」の新人パイロット。伍長。通称カリン。シェーンコップの娘。


【登場人物-自由惑星同盟】


  • アレクサンドル・ビュコック
元宇宙艦隊司令長官。元帥。ヤン一党のハイネセン脱出に伴い、戦線に復帰する。旗艦はリオ・グランデ。

  • チュン・ウー・チェン
宇宙艦隊司令長官代理兼総参謀長。大将。ビュコックの戦線復帰に同行する。

  • スーン・スール
ビュコックの部下。少佐。旧姓は「スールズカリッター」。ビュコックの命令でヤンのもとへ向かう。

  • エマーソン
宇宙艦隊旗艦リオ・グランデ艦長。中佐。

  • ラルフ・カールセン
中将。豪胆さを持つ勇猛果敢な司令官。士官学校を卒業していない叩き上げの軍人。旗艦はディオメデス。

  • ジョアン・レベロ
最高評議会議長。元はヤンやビュコックと親しかったが、帝国の策謀を前に彼らを裏切ることになる。

  • ロックウェル
統合作戦本部長。大将。己の保身を第一に考える男で、レベロとヤンを見殺しにしようとする。

【開戦に先駆けて】


作戦の決定が行われたのは、宇宙歴799年/新帝国歴1年11月1日。10日に作戦が帝国全土に公表され、また同日にビッテンフェルト艦隊が先陣として出立した。
艦隊陣容はビッテンフェルト、ミッターマイヤー、アイゼナッハ、ミュラー、ファーレンハイト、ヴァーゲンザイル、クーリヒ、マイフォーハー、グローテヴォール、旧レンネンカンプ艦隊(クナップシュタイン、グリルパルツァーが運用)。
ロイエンタールは統帥本部総長としてブリュンヒルトに乗艦し、ロイエンタール艦隊の運用はベルゲングリューンが担当した。
さらにイゼルローン要塞に駐留していたルッツ艦隊にも出撃命令が下された。

一方の同盟軍は、ヤン一党とは別にアレクサンドル・ビュコック率いる同盟軍残存艦隊が出撃し、マル・アデッタ星域に布陣する。
ビュコックはこの戦いを「大人の宴会」と称し、30歳未満の将来ある若い士官の参戦を認めなかった。
また、チュン・ウー・チェンは辺境警備にあたっていたムライ、パトリチェフ、フィッシャーを呼び出し、ヤンたちへの選別として5560隻の宇宙艦隊を届けるよう命令を下した。

かくして、銀河帝国軍と自由惑星同盟軍の最後の戦いが始まる……。



【第10次イゼルローン要塞攻防戦】


宇宙歴800年/新帝国歴2年1月2日、ヤン率いるエル・ファシル革命予備軍とイゼルローン要塞に駐留するルッツ艦隊との間に起こった戦い。

艦隊指揮はメルカッツが行い、ユリアンやシェーンコップ、ポプラン等白兵戦に腕のある同盟軍将兵が突入部隊を担った。
なおシェーンコップの判断により、カリンの参戦は認められていない。

1月2日、バグダッシュによりイゼルローン要塞における情報操作が行われた。
これはラインハルトの名を騙って第2次ラグナロック作戦への参戦を命令するものだったが、翌3日にはこれと逆の命令を行い、さらに内通者を捕縛せよという内容の指令まで送り込まれた。
実際に逮捕者が出たためルッツはこの命令を信用したが、翌日にはさらに逆の内容の指令が届く。
この情報操作が繰り返され、5回目に下されたラインハルトの本当の命令をルッツは罠だと疑って無視することとなった。
これに対しバグダッシュは、脅迫めいた内容の命令を送るが、これを罠だと判断したルッツは、要塞を出撃するとみせて、突入を図る革命予備軍をイゼルローン要塞と挟撃する形で殲滅する作戦を取る。

しかしこの時、第9次イゼルローン要塞攻防戦でヤンたちが残していた「置き土産」がその効力を発することとなる。
バグダッシュが「健康と美容のために、食後に一杯の紅茶」という通信を送り、それを受容したイゼルローン要塞は機能が完全にストップしてしまう。
無防備な要塞に革命予備軍は突入し、白兵戦の末にAS28ブロオク第4予備制御室を制圧。ユリアンの「ロシアン・ティーを一杯。ジャムではなくママレードでもなく蜂蜜で」という暗号を入力して要塞機能を掌握。
帰還するルッツ艦隊に向けて「トールハンマー」を照射し、追い散らすことに成功、要塞内の帝国軍も戦意喪失し、勝敗は決した。
留守を任されていたルッツの幕僚であるヴェーラー中将は、部下の命を助けてもらうことを嘆願した後、責任を取ってピストル自殺を遂げた。



【マル・アデッタ星域会戦】


先のイゼルローン要塞再奪取作戦と並行して行われたのが、マル・アデッタ星域会戦である。
帝国軍はラインハルト率いる本隊を中心に、左翼にミッターマイヤー、右翼にアイゼナッハ、後方にミュラー、予備兵力にファーレンハイト、前衛にクナップシュタイン、グリルパルツァー率いる旧レンネンカンプ艦隊の、総勢13万隻の大軍で陣を敷いた。
これに対し同盟軍は、アレクサンドル・ビュコック率いる本隊1万隻に、ザーニアル、マリネッティ少将率いる分艦隊各3000隻、カールセン率いる別働隊6000隻の計2万2千隻という、圧倒的兵力差を前に戦うこととなった。
戦いの場となったマル・アデッタ星域は、恒星マル・アデッタを中心に小惑星が多く、狭く複雑な回廊を形成しており、同盟軍は数の不利をこの地形によってカバーしようとしていた。

数では帝国軍が圧倒的であり、その兵力を分散してもお釣りが来るほどであった。
そのため、別働隊を組織してビュコック艦隊との戦闘にあて、その隙に本隊が首都ハイネセンを落とすという案がシュトライトから出された。
しかしラインハルトは、「老将の死を覚悟の挑戦、受けねば非礼にあたる」としこれを却下。
もっともシュトライトも本気でその策が受け入れられると思って提言したわけではなく、諸将もこれに同意した。

宇宙歴800年/新帝国歴2年1月16日、両軍は激突する。
双方軽く撃ち合った後ビュコックは小惑星帯に下がるが、これを好機と見たグリルパルツァーが突入する。
しかし、小惑星の陰から攻撃する同盟軍と恒星風に煽られたグリルパルツァー艦隊は3割の損害を出し撤退。これに対しラインハルトは、ファーレンハイトに敵の背後を突くよう指示し、同時にクナップシュタインに敵の陽動を命じる。
しかし老練なビュコック相手に経験の浅いクナップシュタインでは荷が重すぎたのか、陽動するどころか逆に攪乱されてしまい、被害を拡大させる。
クナップシュタインを牽制したビュコックは後方のファーレンハイトとの戦いに備える。
小惑星帯から出て来たところに逆撃を加えようとしたファーレンハイトだが、その直前にカールセン率いる別働隊から奇襲を受け、やむなく後退せざるを得ない状況となる。

カールセンはそのまま回廊を迂回して帝国軍本体の背後を狙い、その後ろをファーレンハイト、ビュコックと続く形となった。
カールセン艦隊は背後に回り込むことに成功するが、そこに控えていたのは「鉄壁」ミュラーだった。


強行突破だ!!生きて還れずともカイザーに一太刀浴びせずにおくものか!


この直後にビュコック率いる本隊が追いつき、敵陣本営を突くべく突入を試みるが、ミュラー、ファーレンハイト、さらに右翼から回り込んできたアイゼナッハ艦隊に足止めされる形となる。
恒星風の影響で一時的にミュラー艦隊を突き崩すことに成功するが、その側面をミッターマイヤー艦隊に急襲され再び足止めを食らう。
突破したミュラーも背後から攻撃し、さらには先行していたビッテンフェルト艦隊が到着しダメ押しの攻撃を加えたことで、同盟軍の攻勢はついに限界点に達した。

ワシは士官学校に行けなんでな…
これまで統合作戦本部のエリートさん達に対する意地だけで戦ってきたようなものじゃ
こんな時代でなかったら、到底艦隊司令官までは出世できなんだろう

それが、こうしてカイザーに肉薄するところまで戦えたんじゃ
…もう、充分じゃな

23時10分、カールセンが戦艦ディオメデス撃沈に伴い戦死。
8割の艦隊が失われた状態で組織的な抵抗も不可能と同盟軍は敗走を開始するが、ビュコックを始め100隻程の艦艇は殿を務めるべく最後の攻勢に出た。
抵抗を止めない同盟軍に対しヒルダはラインハルトに降伏勧告を行うよう勧め、ラインハルトはミッターマイヤーに代理で勧告させる。
しかし、初めから死を覚悟していたビュコックはその申し出を拒否した。

カイザー・ラインハルト陛下、ワシは貴方の才能と器量を高く評価しているつもりだ。
孫を持つなら、貴方のような人物を持ちたいものだ。

――だが、貴方の臣下にはなれん。
ヤン・ウェンリーも、貴方の友人にはなれるが、やはり臣下にはなれん。他人事だが保証してもよいくらいさ。
なぜなら、偉そうに言わせてもらえば、民主主義とは、「対等の友人をつくる思想」であって、「主従をつくる思想」ではないからだ。
ワシはよい友人が欲しいし、誰かにとってよい友人でありたいと思う。だが、よい主君もよい臣下も持ちたいとは思わない。
だからこそ、貴方とワシは同じ旗をあおぐことはできなかったのだ。
ご厚意には感謝するが、いまさら貴方にこの老体は必要あるまい

民主主義に、乾杯!


23時30分、ラインハルトはついに最後の砲撃を開始。戦艦リオ・グランデは撃沈し、ビュコックとチュン、艦長のエマーソンは最後の杯を交わしながら宇宙に散った。


他人に何がわかる……


【作戦の終結】


マル・アデッタ星域会戦終結後、ラインハルトはビュコックの戦いに敬意を表し、星域を通過する間諸将に敬礼を行うよう命じている*1
またこの後、ヤン一党によるイゼルローン要塞奪取の報が舞い込み、ビュコックたちが陽動であった可能性を感じたラインハルトは激怒するが、ヒルダはその可能性を否定した。
ヤンにとってビュコックはまだまだ必要な存在であり、そのような人物を囮にして目的を遂行することはヤンの本領ではないという判断からである。
事実、ビュコックの死はヤンにとって完全に想定外のことであり、凶報を聞いたヤンは己の判断の甘さを悔いた。
ただし仮にヤンがビュコックが戦いに出向くことを知っていれば、イゼルローンを放置してビュコックの援護に向かった可能性も指摘されており、そうなればヤンは史上初めて勝算なき戦いに身を投じることになったであろうと推測されている。

同盟軍敗退を知った首都ハイネセンでは、保身を考えるロックウェルが同盟元首のジョアン・レベロを射殺。その首級をもってラインハルトに投降した。
しかしラインハルトはこの卑劣な行いを許さず、ファーレンハイトに命じてロックウェル一味の処刑を命じた。
この時ラインハルトはロックウェルらを「泥水」、ビュコックを「山の聖水」と喩え、一杯の白ワインを手向けている。

かくして宇宙歴800年/新帝国歴2年2月、首都ハイネセンは陥落し、自由惑星同盟は滅亡した。


追記や修正する部分がありましたらよろしくお願いします。

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