パウル・フォン・オーベルシュタイン

登録日:2021/02/22 (月曜日) 18:38:00
更新日:2024/04/20 Sat 13:30:15
所要時間:約 19 分で読めます




光には影が付き従う。だが光が陰れば影もまた…



パウル・フォン・オーベルシュタイン(帝国歴452年〜新帝国歴3年)は銀河英雄伝説の登場人物。
ラインハルト陣営内で参謀役を務め、政治および戦略面で終始暗躍する。

CV:塩沢兼人(OVA本編)、諏訪部順一(TVアニメ『Die Neue These』)

●目次


■来歴

初登場は劇場アニメ第一作『わが征くは星の大海』の、第四次ティアマト会戦。
宇宙艦隊司令長官グレゴール・フォン・ミュッケンベルガー元帥の参謀として登場し、幕僚として意見及び報告を行っている。

イゼルローン要塞陥落まで

原作での登場はアスターテ星域会戦の戦功によるラインハルトの元帥就任から。
式典の終わりを待つキルヒアイスに接触し、昇進するラインハルトと上司に恵まれたキルヒアイスへの賛辞、
そして先天性の理由で義眼を使っており、ルドルフ大帝時代なら殺されていたであろうという帝政批判の声を上げる。
キルヒアイスはラインハルトの失脚を狙う人物の差し金ではないかと警戒し、ラインハルトもこれに同意する。

本格的な登場は第7次イゼルローン要塞攻防戦から。
イゼルローン要塞駐留艦隊司令官ハンス・フォン・ゼークト大将の参謀として、同盟軍側の指揮官であったヤン・ウェンリー少将の策を読んで彼に度々意見具申した。
しかし全く聞き入れられず後手続きとなり、イゼルローン要塞は陥落。さらに武人の本懐と称した無謀な特攻を仕掛けたことでゼークト大将を見限り脱出している。
帝国帰還後、敵前逃亡と要塞陥落の責を負わされそうになり、当時元帥へ昇進したばかりだったラインハルト・フォン・ローエングラムに助力を求めた。
さらにオーベルシュタインは会談の場で周知の仲であったキルヒアイスの退出を求めた上、承諾されると改めてラインハルトに義眼を明かして帝政批判を主張する。
ラインハルトは会話を打ち切ってキルヒアイスを呼び出し、オーベルシュタインを反逆者として逮捕するようを命じるが
「あなたもこの程度の人か…」
「けっこう、キルヒアイス中将ひとりを腹心とたのんで、あなたの狭い道をおゆきなさい」
この言葉を受け、ラインハルトとキルヒアイスは追及を止めてしまう。
「キルヒアイス中将、私を撃てるか。私はこの通り丸腰だ。それでも撃てるか。」
「撃てんだろう。貴官はそういう男だ。尊敬に値するが、それだけでは覇業をなすには充分とは言えんのだ。」
「光には影が従う…まだお若いローエングラム伯にはまだご理解いただけぬか」
キルヒアイスを認めつつ、大事を成すには足りない面があると指摘。そしてラインハルトに野望への意思と器量を問うたのである。
「よかろう。卿を貴族どもから買おう」
このやり取りを経て、ラインハルトはオーベルシュタインをイゼルローン失陥による問責から擁護した上で配下とすることに決めたのである。
(ちなみに漫画版やアニメ版ではこの前にロイエンタールが貴族に囚われた親友たるミッターマイヤーの救援をラインハルトに依頼する場面があり、依頼の姿勢を対比できる)
この時ラインハルトは各々自ら辞職した帝国軍三長官の座を皇帝から提供されていたがどれも固辞。合わせて責任は要塞指揮官と駐留艦隊指揮官の2人のみにあるとしてオーベルシュタインへの追及を阻止している。
以後ローエングラム元帥府に招集され、参謀長兼元帥府事務局長として従事する。

同盟による帝国領侵攻~リップシュタット戦役

続くアムリッツァ星域会戦から艦隊参謀長(准将)として参加。ラインハルトの傍らで度々自らの見識を述べ同意を得ている。
一方でビッテンフェルトの自らの失策による救援要請を強硬に断る姿に
「はたして万人に対してこの姿勢が取れるのか。覇者は私情と無縁でなければならないのだ。」と内心でラインハルトを試す場面も。
この戦いで同盟軍への大打撃のみならず帝国領民に対し同盟への敵対心を植え付けることに成功し、功績により中将へ一気に2階級昇進している。

貴族連合との内紛であるリップシュタット戦役では戦略及び謀略を駆使してローエングラム陣営の勝利に大きく貢献している。
レンテンベルク要塞攻略戦時には、貴族連合軍の守将であるオフレッサー上級大将の捕縛を進言。捕えたオフレッサー自身を無傷で釈放しつつ部下全員を公開処刑。
これは反ラインハルトの急先鋒であるオフレッサーが裏切ったと思わせることを目的としており、本拠地であるガイエスブルク要塞へ帰還したオフレッサーは弁解を受け入れられることなく処刑されることになった、これにより貴族連合軍内に疑心暗鬼が芽生えていくことになる。
その後半、自身の領地ヴェスターラントで起こった民衆の反乱に激怒したブラウンシュヴァイク公が、西暦時代からのタブーである地上への核攻撃を企んでいるとの情報が入る。
これを事前に察知していたオーベルシュタインとラインハルトだが、各メディアによって内容が異なるため以下に分ける。
結果としてヴェスターラントの住民200万人は虐殺されたが、民衆の支持が圧倒的にローエングラム陣営へ向いた。
しかしこの虐殺を許してしまったことはラインハルトの周囲に後々まで影響を残すことになる。

貴族連合が追い詰められてリップシュタット戦役が終決し、戦勝式典を執り行う。
しかし現場でアンスバッハ准将による暗殺未遂事件が起こる。オーベルシュタインは身を挺してラインハルトを庇う。
キルヒアイス上級大将がアンスバッハに飛びかかって身柄を押さえたが、正面から抵抗されたキルヒアイスは傷を負って死亡してしまう。
アンスバッハはその場で自殺したものの、今度は暗殺の主犯として政敵であるリヒテンラーデ候に濡れ衣を着せ拘束するよう各提督に指示。
(この時、ロイエンタールはこのオーベルシュタインの策に『敵に回したくないものだ。勝てるわけがない』と皮肉を交えて評したという)
更にラインハルトにも立ち直って貰うため、彼の姉であるアンネローゼ・フォン・グリューネワルトにキルヒアイスの死を伝える役も担った。

自由惑星同盟への侵攻

ラインハルトが帝国内で権力を堅実にすると上級大将に昇進し、同時に宇宙艦隊総参謀長と統帥本部総長代理に就任。
帝国貴族残党のランズベルク伯アルフレットとレオポルド・シューマッハ大佐がエルウィン・ヨーゼフ2世を誘拐するという計画を、フェザーン自治領から齎された情報も含めて察知。最初はどうするか決めかねていたラインハルトに、敢えて誘拐を成功させる事で自由惑星同盟へ攻め込む正当性を獲得させると助言し承諾させる。
だが事が事なので無血で済む問題ではなく、宮廷の警備責任者であるモルト中将と更にその上官であるウルリッヒ・ケスラー大将にも罰を負わせる必要があった。
当初の意向ではモルトとケスラー2人とも自裁させるべきとの方針を示していたが、ラインハルトがケスラーの才覚を惜しんだためこちらは減俸に抑えられている。
オーベルシュタインの思惑通り、皇帝は誘拐されフェザーン経由で自由惑星同盟に亡命したため、同盟量侵攻作戦たるラグナロック作戦が発動した。

ローエングラム王朝の成立~死まで

ローエングラム王朝成立と時を同じくして、元帥に昇進し軍務尚書に就任。
自由惑星同盟降伏後に締結されたバーラトの和約以後、ハイネセンに高等弁務官として駐留していたヘルムート・レンネンカンプ上級大将を諭してヤンの暗殺を企てさせる。しかし暗殺は失敗しレンネンカンプは自殺する失態を犯していたが、一連の行為で暗躍していたのを誰にも看破されていない。

新領土総督オスカー・フォン・ロイエンタール元帥が謀反を企てていると帝国内で噂され、実際にフェザーン元自治領主のルビンスキー及び地球教徒によってそれが実現化されると、内務省内国安全保障局長兼内務次官のハイドリッヒ・ラングと共に帝政を壟断する者として非難を受ける。
これに対し和解をするためラングを引き連れロイエンタールの元を訪れようとするもラインハルトに制されている。

同盟滅亡後、最後の敵勢力であるイゼルローン要塞内の共和主義者らを引っ張り出すために旧同盟領に残った元要人約5000人を次々と逮捕。後に「オーベルシュタインの草刈り」と呼ばれる一連の行為は、フリッツ・ヨーゼフ・ビッテンフェルト上級大将の家訓に則った大々的な悪口によって早々に非難される。この対立は、一方は皇帝の人となりを批判すると共にそれに妄信する提督らを嘲笑し、一方は自分の戦果を侮辱された事で暴力的行為に頼るまでに悪化する。
ラグプール事件によって収監者が脱走・暴動をすると上記の対立関係が障害となり、ラインハルト直々に叱責と和解を行った。同時に草刈りの一件が失策であったと認めて容疑者を全て解放しているが、イゼルローン革命軍司令官ユリアン・ミンツ中尉はここまでを帝国の反感を自分へ集中させる作戦ではなかったのかと読んでいる。(この時、イゼルローンでは、オーベルシュタインへの罵詈雑言が多数記録されたり、アッテンボローがユリアンの冗談に対して、『帝国軍将兵が全員、顔にオーベルシュタインの似顔絵を張り付けた姿』を想像して胸が寒くなったりしたりしたという。なお、草刈りの件についてユリアンは『人々を納得させることはできず、憎悪と怨恨がなお残るだろう』『ヤンの苦悩や懐疑を超克するものであるはずがない』と評している)
またこの時元フェザーン自治領主アドリアン・ルビンスキーを逮捕することに成功している。全宇宙のカルテを一つ一つ調べあげるという気の遠くなるような作業の賜物ではあったが、既に末期の脳腫瘍で死に体だった彼から有益な情報が齎される事は遂に無かった。

そして最終話。詳細不明の皇帝病に罹患したラインハルトが崩御する夜に、仮皇宮で容態が回復しつつあると地球教徒の残党に情報をリークさせる。
後の無い彼らがおびき寄せられ一進一退の攻防戦となり、最終的に地球教徒は皇帝の病室に爆発物を投げ込む。

ラインハルトの居場所と彼らが思い込んでいたその部屋にいたのは、他でもないオーベルシュタインであった。

OVA描写では内臓や肋骨が見えるほどの重傷で、本人も助かる見込みが無いとして治療を拒絶し、執事への遺言のみを呟くと事切れた。

結果として彼は皇帝ラインハルトの身代りとしての死を迎えたが、これが冷徹な彼が皇帝に殉じたのか、あるいは計算違いだったのか。
彼を知る者の意見は二つに分かれ、しかも一方の意見を主張した者も、完全な自信を持ちえなかったという。

■能力


劇中全体を通して、艦隊戦などの物理戦闘ではあまり出番が無い一方、戦略及び政治の分野で広く活躍する。
人心、特に人間の悪意を予測・感知しコントロールする政治活動(敵味方問わず)で優位を獲る仕事においてはラインハルトの幕僚でも並ぶ者がいない。
オフレッサー無傷解放に反発していたレンテンベルク要塞攻略指揮官のミッターマイヤーとロイエンタールだが、この後に貴族連合に起きることを聞かされると苦い表情を見せつつ承諾。
さらに道原版では「効果が絶大なのは認めるが、オーベルシュタインのやり方は好かんな」と複雑な思いをこぼしている。

極悪な謀略もお手の物で、貴族連合討伐後の政敵となるリヒテンラーデ公に濡れ衣を着せて追い落としたり、ラングを支配下に置いてロイエンタールの謀反を起こさせるなど敵味方に遠慮のない行動は広く恐れられている。
本人自身は自分の謀略そのものが非道であること自体は自覚しているが、むしろそれに賛同した相手を逆に非難する材料として徹底的に利用するほど。

彼の政治的方針の一つとしてNo.2不要論が挙げられるだろう。ひいてはキルヒアイスやマリーンドルフ父娘、或いは自分もそうであったように、組織にNo.2は要らないと称する彼は度々その信念に基づいてラインハルトを掣肘していた。その過程でキルヒアイスは死に、帝国の双璧であるロイエンタールも対象と見做されてしまったが、そうした障壁が取り除かれた先に自分がNo.2として立っていたとしても容赦なく排する覚悟も有していた。*1


■人物


余はオーベルシュタインを好いたことは、一度もないのだ。
それなのに顧みると、もっとも多く、あの男の進言に従ってきたような気がする。
あの男はいつも反論の余地もあたえぬほど、正論を主張するからだ。
by.ラインハルト・フォン・ローエングラム

オーベルシュタインに私心がないことは認める。認めてやってもいい
だが奴は、自分に私心がないことを知りつつ、それを最大の武器にしていやがる。
俺が気に入らないのはその点だ!!
by.フリッツ・ヨーゼフ・ビッテンフェルト

オーベルシュタイン元帥は劇薬であって、患部は治癒する代わりに副作用が大きい……。
正論だけを文章として彫りこんだ、永久凍土上の石板……。
その正しさは充分に承知されながら、誰もが近づくことを拒む……。
by.ヒルデガルド・フォン・マリーンドルフ


徹底的なまでに効率性と能率性を追求し続ける功利主義者
マキャヴェリズム*2の体現者でもある。
先天的な持病で両眼が義眼なため、時代が異なれば『劣悪遺伝子排除法』によって自分は処分されていたと時折自虐する。そしてその法律を制定したゴールデンバウム王朝の開祖ルドルフ大帝とその子孫、及びそれらが築き上げてきた全てを憎んでいる。そして彼の理想は打倒ゴールデンバウム王朝に傾倒しており、その上で新たな時代の幕開けとなる新王朝を作り上げる事である。
よって彼の上司たるラインハルトは新王朝立ち上げの道具に過ぎず、彼もそれは理解している。
即位したラインハルトも「自分に後継者ができたら、自分はさっさと廃位させて後継者の英才教育に専念するんじゃないか(意訳)」とこぼしてもいる他、
冗談交じりで「自分の存在が王朝の利益と相反するときは自分を廃立するかもしれない」とヒルダに語っている。
ヒルダもオーベルシュタインのことは「ラインハルトの忠臣なのだろうか?(=ローエングラム王朝の忠臣ではあって、ラインハルト個人の忠臣ではないかもしれない)」と懸念を抱いている。

小を殺して大を生かすを地で行くスタンスだが、必要なら自分を犠牲に含めることを厭わない
ある意味、徹底的に公平な性格。その感性が、常人には追いつけない。

ラインハルトから嫌がらせ目的で自分の命が賭けられるかと問われた時は即答して肯定している。
また講和を餌にイゼルローン要塞からヤンを引きずり出す際、人質として要塞内部に拘留する高官の候補者がいない時は自分がなると進言している他、
最終話では地球教徒のテロでラインハルトの居場所として自分の部屋を伝えて騙し、自分が犠牲となっている。

信頼と呼べるものは非常に薄く、ラインハルトとはあくまで利害の一致で行動を共にしているだけでしかない。
寡黙で功利主義なのも合わさってとにかく非協調的で空気も読まず、
ラインハルトとヒルダの結婚式の真っ最中ですらお構い無しに中断させて重大な事項を報告した。
この時には参列者からも『式が終わるまで待てないのか。空気を読め馬鹿(意訳)』と罵倒されるも、「危急は待ってはくれぬ」と正論を返して黙らせようとしたほどである。

同時に徹底的な秘密主義を貫いているため、他の提督達と足並みを揃えようとはせず重要な情報を独占したまま独自に活動を続けたりするため、こうした態度は後世からも非難の対象となっている。

ミッターマイヤーは「オーベルシュタインは自分以外の幕僚が反逆者予備軍だと思ってる(意訳)」と評しており、彼の「ナンバー2不要論」や秘密主義も潜在的にはこの思想が見え隠れする。
他の提督から嫌わているが、彼も他の人間を信用していなかったのかもしれない。


彼の吐く言葉は一貫して正論であるが、しかし軍事的浪漫主義が跋扈するローエングラム陣営の中で、現実的かつ正論家である彼の言動はとても受け入れられる様子は無く、時として相手を激怒させるような状況もあった。
特にビッテンフェルトなどは彼を露骨に嫌っており本人の前でも堂々と大声で悪口を言うほど。
(ロイエンタールやミッターマイヤーもオーベルシュタインを嫌っていて、ロイエンタールなどは『あの』オーベルシュタインとわざわざ『あの』をつけて述べるうえに、提督たちの中で最も流ちょうに『あの』と発音したという)
温厚なキルヒアイスですら「危険な男」と直感して嫌悪を抱いたほどで、さらにそのキルヒアイスが不慮の死を遂げる原因にもなったために彼の幕僚達はもちろん、リップシュタット戦役でキルヒアイスの指揮を受けて共に戦ったワーレンとルッツも同様に強い恨みを抱いている。




私生活は執事のラーベナルト夫妻と拾ったダルマチアンの老犬がいるくらいで、血縁者の情報は一切不明。
皇帝として世継ぎを儲けることを勧めたラインハルトから言葉を返された際に「オーベルシュタイン家が断絶しても世人は嘆きますまい。」と語っており、末裔である可能性もある。
ちなみにこの老犬は元帥府に出向いた際に何故かついてきていた野良犬で、衛兵から本人の愛犬と見間違われたのに感心してそのまま飼い始めたもの。
愛着はあったようでナイトハルト・ミュラー曰く「生意気にも柔らかく煮た鶏肉しか食わない」らしく、夜中に自身が肉屋に出向いて鶏肉を購入している姿を目撃されている他、今際の時には老犬の好きにさせてあげるようラーベナルトへの遺言を残している。


■人間関係


  • ジークフリード・キルヒアイス
ラインハルトの腹心の友。
優しい性格のキルヒアイスに政治謀略は向かないと考えたラインハルトがオーベルシュタインを参謀として迎え入れ、ラインハルトの覇道への一歩となった。
軍事的能力でもラインハルトに匹敵するとされるが、オーベルシュタインの掲げるNo.2不要論の元では火種となってしまった。

ヴェスターラントの件で友情に亀裂が入り、特例として許されていた式典中の武器携帯も認められなくなったことがリップシュタット戦役式典での死の理由の一つとなった*3
その死に落ち込み続けるラインハルトに「私を責めないのは立派なことですが~」と言葉を向けており、
オーベルシュタインも自分の方針がキルヒアイスの死の理由の一つであること、少なくそう見られることは理解はしていた様子。

  • ハンス・ディートリヒ・フォン・ゼークト
ゴールデンバウム王朝の軍人で大将。イゼルローン要塞の駐留艦隊司令官を務める。
ラインハルト陣営に加わる前の直属の上司で第七次イゼルローン要塞攻略戦の直前に彼の幕僚として赴任したが、当の本人はオーベルシュタインを「陰気を絵に描いたような男」と毛嫌いしていた。
典型的な軍人気質な性分から当然、オーベルシュタインとは反りが合わず彼の的確な意見具申も退け続け、ついには追い出してしまう。
挙句の果てにはヤンによって奪われたイゼルローン要塞に部下を道連れに玉砕しようとするが、トールハンマーによって旗艦もろとも宇宙の藻屑となった。
オーベルシュタインからは「忠誠心を刺激するような人間ではない、怒気あって真の勇気なき小人」と吐き棄てられている。

  • アントン・フェルナー
かつてはブラウンシュヴァイク公に仕えていた軍人で、当時の階級は大佐。後に少将となる。
リップシュタット戦役間近に、アルツール・フォン・シュトライト准将とラインハルト暗殺計画を進言するも、実力差で劣るからだと勘繰ったブラウンシュヴァイク公に拒絶される
諦めたシュトライトに対して独断で行動をするも、予見されており失敗。しばらく逃亡した後に自首。
ラインハルトと面会した場でブラウンシュヴァイク公の批判を交えつつ自分を売り込み、神経の太さを見たラインハルトにオーベルシュタインの元へ送られる。
胃痛などによるリタイアが続出する部下の中にあって長く務めあげており、時として物怖じせず単刀直入に意見する度胸すら見せつける。
それは時としオーベルシュタインの不興を買う事もあったが、彼なりに自嘲する姿を見せるなど心を許していたようにも思える。

久々にワロタ
ゴールデンバウム王朝で民衆や敵対勢力を弾圧してきた秘密警察組織「社会秩序維持局」の局長を務めていた人物。
自らをオーベルシュタインに売り込み、ローエングラム王朝においては「内国安全保障局」と名前を変えてそのまま居座る。
オーベルシュタインからは敵を排除するための道具としか見られていない。
会議の場でラインハルトの威を借りた発言をしたためロイエンタールに手厳しく罵倒され、その逆恨みで彼を陥れようと暗躍するようになり、結果としてロイエンタールの反乱へと繋がっていく。
会議での罵倒は出席する許可をオーベルシュタインが他提督の了解を得ないままでいた等の不注意から起きたことであり、彼の非協調性や寡黙な部分の悪い面が大きく出てしまったものでもある。

  • ウド・ディター・フンメル
ローエングラム王朝の官僚で、バーラトの和約後、同盟に駐留する帝国高等弁務官レンネンカンプの首席補佐官を務める。
実はオーベルシュタインのスパイであり、レンネンカンプの動向を知らせる役目を担っていた。
法知識に詳しく行政処理にも長けているが本質的には悪徳官僚のような人物で、同盟の法の穴を突いて退役していたヤンを無理矢理逮捕させようとレンネンカンプに入れ知恵をしたり、第二次ラグナロック作戦による同盟完全征服の際には統合作戦本部長ロックウェルに最高評議会議長レベロの暗殺をそそのかしたが、これら卑劣な小細工がラインハルトの逆鱗に触れ、ロックウェル共々薄汚いハイエナとして粛清されてしまった。

  • グスマン
オーベルシュタイン直属の部下の一人で少将。
フェルナーと比較すると柔軟性や主体的な判断力などが極めて欠けており、オーベルシュタインからの命令を機械的に実行するだけのロボットのような人物。
ラグプール事件でフェルナーが負傷した際は臨時代理を務めるがこの性格もあって酷く事務的かつお役所仕事な対応しかとれず、ミュラーやワーレンらが不快になり半ギレするほど。
つまり、軍務省はフェルナーがいないとまともに機能しないということの証明でもある。
ちなみにローエングラム王朝における軍務省では彼を含めてオーベルシュタインの性質を色濃く受け継いでいる者がほとんどで、むしろフェルナーのようなタイプは異端とされている。

  • ワルター・フォン・シェーンコップ
自由惑星同盟軍の軍人で、帝国からの亡命者で編成された陸戦部隊「薔薇の騎士」連隊の第十三代連隊長。
作中では面識こそないものの、シェーンコップはオーベルシュタインの第一印象を「帝国印、絶対零度の剃刀」と何故か見知ったように語っている。
本人によれば帝国に住んでいた幼少時代に母親と一緒に街を散歩していた際、
「向こう側から目付きの悪い陰気そうなガキが歩いてきたから、思い切り舌を出してやった」
「もしかしたらそれがオーベルシュタインだったのかもな」と言っている。当人たちは年齢的にも近いために本人だった可能性が高い。
ちなみにシェーンコップはさらに「石でもぶつけといてやればよかったな」とも言っている。

  • ダスティ・アッテンボロー
「それがどうした!」が口癖の同盟軍軍人。後にイゼルローン革命軍副司令官。
『オーベルシュタインの草刈り』のさい、帝国から護衛を依頼するというユリアンの案に「オーベルシュタインに命運をゆだねるのか!?」と難色を示したさいに、彼から「帝国軍の全員がオーベルシュタイン印の製品ではない(=全員がオーベルシュタインと同類または彼の息のかかった者ではない)」と返され、そこから帝国の将兵全員がオーベルシュタインの写真を顔に貼り付けた様を想像して胸を悪くした。

  • ユリアン・ミンツ
ヤンの養子。そして、イゼルローン革命軍中尉にして総司令官。
オーベルシュタインのやり方を「その場を収まるだろうが、裏には不満や怨嗟がたまっていくだろう」「ヤンのやり方を超越するものであるはずがない」と否定している。

  • ヤン・ウェンリー
自由惑星同盟軍の軍人にしてラインハルト最大の宿敵。
ローエングラム王朝の成立後は潜在的な危険分子とみなして度々彼を排除するべく陰謀をめぐらしており、最終的には地球教に暗殺されたことによって目的が達せられた。
ヤンのことを過大評価していた節があり、元帥待遇で旗下に加えようとしていたラインハルトに対して「迎えるところ大なら他提督の反感を買い、小なら彼は応じない」と助言していたが、実際のヤンの望みは退役して余生を静かに過ごしたがっていただけであり、完全に的外れであった。
戦史研究に没頭させる地位なり職務をあてがえば、彼がかつて夢見ていた通り戦史書に埋もれて没頭する未来もあったかもしれないが、ヤンは軍人らしからぬ珍しい気風で、繊細に取り扱わないと良くも悪くも影響力が大きすぎた人物であったがために暗殺などの極端な方策で処する以外の手が無かった可能性もある。


■余談

誕生日は5月5日の子供の日。
これは道原かつみ版漫画でキャラクタープロフィールを作る際に各キャラクターの誕生日を田中芳樹と道原かつみとの間で決めようとしたとき、
最初キャラがキャラだけになかなか決められず、仕方なく田中芳樹がオーベルシュタインに最も相応しくない日ならあるとして子供の日を出して、即断で道原かつみが決めたという経緯がある。

ゲーム『ちびキャラゲーム銀河英雄伝説』では、軍務尚書である彼の部下として働くルートがある。
ただ他で語られるように、激務かつ胃痛で倒れる者が多い職務なので主人公も過労から倒れてしまう。
この時、飼っている犬にまで主人公はいびられている。



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最終更新:2024年04月20日 13:30

*1 ただしラインハルトが帝国の実権を握ってからしばらくは死んだキルヒアイスの代わりにオーベルシュタインが重用されてナンバー2のような立場になってしまっているために実質、ナンバー2の地位を乗っ取っているじゃないか。二枚舌じゃないのか? と、ファンからは指摘されることも……。

*2 国家の利益を最優先として、その手段や方法を問わない思想

*3 白兵戦にも優れたキルヒアイスならば銃でなくとも接近戦用の武器でもあれば深手を負わせて追撃を阻止できたであろうが、完全に丸腰では刺客を抑えつけることしかできなかったために仕込み武器による反撃を許してしまい、体を張ってラインハルトを守ったキルヒアイスの致命傷となったのである