AIR

登録日:2009/06/18(木) 16:48:48
更新日:2025/03/07 Fri 20:30:00
所要時間:約 5 分で読めます




1.
AIR
名詞:空気、大気、空、外見、雰囲気、気取った態度(複数形)、曲、メロディー、空調、冷房、そよ風
動詞:…を外気に当てる、換気する、…を放送する、…を公表する、ぶちまける、乾燥する

2.
インドの放送局、All India Radioの略。

3.
Adobe Integrated Runtimeの頭文字をとった略称。

4.ナムコのゲーム「ミスタードリラー」シリーズに登場するアイテム。これを取る事によりAIRゲージが20%増加する。


5. TVアニメ新世紀エヴァンゲリオンの劇場版で描かれた25話。 Air(THE END OF EVANGELION)参照。

6.
ゲームブランドkeyが制作した第2作目の恋愛アドベンチャーゲーム。18禁作品として発売された。本項で解説。
本項目では、この作品を原作としたメディアミックスの作品群についてもあわせて解説する。






夏はどこまでも続いていく

青く広がる青空の下で

彼女の待つ、その大気の下で




【概要】

さすらいの人形遣いの青年が、海辺の田舎町で偶然出会った少女達と紡ぐひと夏の物語。

初回版が2000年9月8日に、後に通常版、全年齢版、逆移植版が発売された。
コンシューマー機への移植ではDC・PS2・PSP版がある。
移植は、DC・PS2版がインターチャネル、PSP版はプロトタイプが担当した。
レーティングは、初回版と通常版、2005年4月8日発売のDVD-ROM版が18禁、その他のPC版が全年齢対象、PS2版とPSP版がCERO:C(15歳以上対象)となっている(DC版はレーティングなし)。

PC版はすべてボイスなしだが、コンシューマ版には全作品ボイスがついている。
DC版では主人公はパートボイスだったが、PS2版以降は主人公も含めて完全フルボイスとなった。

PSP版は、完全フルボイスのままで限られた容量に収めるべく、
PSPソフト史上初となるデータインストール機能搭載作品となった。
(メーカーの前作『Kanon』は容量の都合でパートボイスとなっていた)

前作Kanonと同様にいわゆる泣きゲーに分類される。
完成度の高いシナリオと、BGMまで全て神曲ぞろいの音楽から絶大な人気と支持を得ている。
また、本作発売当時では珍しかった3部構成の物語は、
いわゆる「真シナリオ」「Trueエンド」のあるADVのほとんどに影響を及ぼしているといってもいい。
アニメ・漫画化など、さまざまなメディアミックスがなされ、エロゲでは珍しく映画にまでなった。

これだけの人気を誇りながら、というより当時は一種の神格化がなされたところがあり、
そのためかメディア化にはその人気に反してかなりの時間がかかったり、逆に神聖視されたことから二次創作が敬遠されるなど、
公式・ファンから良く言えば丁重に、悪く言えば神経質なレベルで取り扱われている。
メディア化に関しては後にCLANNADもアニメ化まで3年、リトバスも5年かかっているので、別にこの作品に限った話ではない。
ただKanonはドラマCDの展開がアニメより早かったのに対し、本作のドラマCD化はTVアニメと劇場版の間の8月まで遅れたのも事実*1である。


【登場人物】
PC版はボイスなし。特記ない限り、声優は全媒体共通。
リンクのある人物は関連項目も参照のこと。

DREAM編・AIR編の登場人物

国崎往人
声:緑川光(ゲーム版すべて・劇場版・ドラマCD)/小野大輔(テレビアニメ版)
主人公。
いやっほぅ!国崎最高!!

神尾観鈴
声:川上とも子真田アサミかぎなど
テーマ曲:夏影 -summer lights-
メインヒロイン
観鈴ちんぴんちっ

霧島佳乃
声:岡本麻見/武田彩良(かぎなど
テーマ曲:水たまり -puddle-
ヒロインその2。観鈴と同じ学校の生徒だが面識は無い。

遠野美凪
声:柚木涼香
テーマ曲:虹 -prism-
ヒロインその3。天文部に所属する少女。お米券をいっぱい持っている。

神尾晴子
声:久川綾
観鈴の義母。真の主人公。

橘敬介
声:三木眞一郎(ゲーム版すべて・劇場版・ドラマCD)/津田健次郎(テレビアニメ版)
往人の人形劇を見て素直に賞賛と助言を与えた珍しい男性。
観鈴の実父

霧島聖
声:冬馬由美
佳乃の姉。

みちる
声:田村ゆかり
テーマ曲:てんとう虫 -bug walk-
美凪の親友の少女。
間違ってもgoogleで「みちる AIR」と画像検索してはいけない。

ポテト
声:今野宏美
人間の言葉を理解する謎の毛玉生命体。一応犬。「ぴこ」。

SUMMER編の登場人物

柳也
声:神奈延年/少年時代:斎藤千和
神奈備命の衛者で社殿の警備隊長。元浪人。

神奈備命(かんなびのみこと)
声:西村ちなみ
テーマ曲:月童 -moon child-
「翼人」の末裔であり、最後の生き残り。
この作品のメインヒロイン

裏葉
声:井上喜久子
神奈備命の女官。



【スタッフ】

エグゼクティブプロデューサー:馬場隆博
企画:麻枝准
脚本:麻枝准・イシカワタカシ
シナリオアシスタンス:涼元悠一・雲龍寺魁・丘野塔也・藤井知貴
原画:樋上いたる
音楽:折戸伸治・戸越まごめ・key(麻枝准の当時の作曲者名義)



【音楽】

本作では折戸伸治key(麻枝准の作曲者名義)の2人と、新人の戸越まごめが作曲を担当した。
基本的に音楽への評価が高いKey作品の中にあっても、本作への音楽の評価は際立って高い。
楽曲自体のクオリティだけでなく、場面とのシンクロ率が異常なため、
「曲を聴くだけで涙腺崩壊する」というプレイヤーを多数生みだした。
特にOPテーマ『鳥の詩』は、Keyだけにとどまらず、アニメ・ゲーム業界のさまざまな媒体でアレンジされ、歌い継がれている名曲である。
後の劇場版・テレビアニメ版でも、基本的には原作の楽曲が用いられた。

OPテーマ

 作詞:key
 作曲:折戸伸治
 編曲:高瀬一矢(I've)
 歌:Lia

『AIR』は知らなくても『鳥の詩』ならば知っているという人も多い名曲。
ボーカリストLiaのデビュー曲であり、収録はロサンゼルスで行なわれた。

EDテーマ

  • Farewell song
 作詞:key
 作曲・編曲:戸越まごめ
 歌:Lia

DREAM編及びAIR編のED曲。
DREAM編では各ルートのGOOD END後にインスト版が、AIR編でTRUE ENDを迎えた後にボーカル版が流れる。
鳥の詩に比べると知名度は劣るもののこちらの方が好きという人も結構いる。

挿入歌

  • 青空
 作詞・作曲:key
 編曲:折戸伸治
 歌:Lia



エロゲ史上に残る究極の涙腺破壊曲。
楽曲自体の完成度はもちろん、流れる場面が場面なので、多くのプレイヤーがディスプレイの向こうの人物とともに号泣することになった。
また、ボーカル曲がOPとEDしかないのが当たり前だった時代に挿入歌を用いたという意味でも画期的な曲である。



【テレビアニメ版】

2005年1月6日から3月31日まで、BS-i(現BS-TBS)にてテレビアニメ版が放送された。京都アニメーション制作。
1クール全13話(本編12話、総集編1話)。
毎週放送のテレビアニメとしては破格のクオリティで、審美眼の厳しい鍵っ子をも唸らせた。
京アニが下請けではなく元請けとして第一線に立つため、総力を上げて制作に力を入れたのがその理由。
なによりも評価されたのは、比較的長編である原作を1クールでほぼすべてまとめあげたことである。
また、異常とも呼べるほどの高い作画クオリティ(特に背景)で多くの視聴者を魅了し、涙腺を破壊させた。
BGMも原作のものやそのアレンジアルバムからすべて流用されており、雰囲気もバッチリ。

2005年8月28日と9月4日には、SUMMER編を下敷きにした特別編『AIR IN SUMMER ~夏・特別編~』が前後編で放送された。
本編ではやや駆け足となったSUMMER編をより濃厚に描いている。

その人気や話題性も充分で、DVDにおけるシリーズの年間売上の総合2位になった。
(1位は『The World of GOLDEN EGGS』というCGアニメ)

主人公・往人のCVが、コンシューマ版の緑川光から当時まだ無名だった小野大輔に交代になったことについては、放送前にはいろいろと言われたりした。
(小野Dにとっては、これが初主演作品である)
緑川へのオファーはスケジュールの都合が合わなかった模様…と言われているが実際はキャスティングが青二でないことに起因していると思われる。
あまり注目されないが、橘敬介役の三木眞一郎もこれまた当時は海馬くらいでしか知られてなかった津田健次郎へと変更されており、これも上記の説を裏付けるものとなっている。

本作がきっかけとなり、京都アニメーションはアニメファンの間で一目置かれる存在となった。
本作で監督を担当した石原立也、全話脚本を担当した志茂文彦は、
京アニ版『Kanon』、テレビアニメ版『CLANNAD』『CLANNAD After Story』でも同じ役職で続投している。



【劇場版アニメ】

公開が延期され、TV版から1月遅れて2005年2月5日に公開。東映アニメーション制作。元々は秋公開でTV版より先んじて上映される予定だった。
監督には横田守プロデューサーが話を持ち込んで興味を持ったアニメ業界の重鎮の一人である出崎統が、脚本には東映版『Kanon』に関わった中村誠が起用されている。
2011年に亡くなった出崎にとっては、最初で最後のエロゲ原作の監督作品となる(CLANNADはギャルゲ)。
良くも悪くも原作からの改変をしばしば行なう出崎だが、本作では原作ファンからの怒りと失望を買う結果となった。

作画は東映Kanonの大失敗を反省して独自のアレンジが加えたデザインになったことから、前評判は好評だった。
さらにPVの入ったDVDを配っていたが、内容はまるで原作を再現するかのように3ヒロインが映る内容となっていた。
しかし蓋を開けてみればその内容は東映のKanonに負けず劣らずの酷い内容だった。
「もうひとつのAIR」がコンセプトとなっており、ストーリーとしては『DREAM編』をベースとしつつ『SUMMER編』を伝承として触りだけ登場させるに留め、
『AIR編』についてはほとんどその要素がなく、最後の要素だけ『DREAM編』に組み込む形でまとめあげる、という無茶を通した構成である。

そんな欲張った無理の多い内容と、監督のセンスが悪い意味で噛み合っており、公開後は酷評の嵐となる。
  • 観鈴関係以外のキャラはほぼカット。ストーリーは事前告知ありきとはいえオリ展開で節々が古臭い。
  • 先行PVでは他のメインヒロインも映っていたのに実質カット、完全な詐欺広告
  • 原作ファンの憤慨させる改変だらけな反面、しかし原作の最も感動するシーンは唐突に原作再現するなどの半端に媚びた演出*2
  • 先行放送されていたTV版より明らかに金がかかっていない作画面。

結果、褒められる所はキャラデザとコンシューマ版に思い入れのある人的には男性キャストが同じであることだけ*3と言われるような内容となった。

と言っても、脚本家は鍵っ子として知られ、CLANNADまでのKey作品に何かと関わってきた中村誠である、という点は評価するうえでは忘れてはいけない。
本作の準備稿は10稿を越え、原作の麻枝准に何度も確認を取るなど意欲的な脚本だった。
それに原作を一切プレイしていない出崎がケチを付けたことが全ての悪因*4だとされる。
そもそも本当なら原作と同じく三篇に分けて映画化する予定が、予算不足のせいで一編にまとめる計画に変更となったのもあったらしく、難しかったのはやはり、「90分という上映枠でどうまとめるか」だった様子。
佳乃や美凪が切られたもののカメオ出演で登場したのはその抵抗だった可能性も…。

予算を切るくらいなら始めからやるなと言いたいところだが予算を切られた原因は、恐らくドラマCD等が好調な反面、東映Kanonが低評価かつセールスが微妙だったためと思われる。本作公開記念に誰得DVD-BOXを出していたが
このため老舗の東映アニメがあまり成功を期待できず、予算を渋った空気がある。監督の出崎も脚本の中村もそう考えるとドケチ極まりない東映アニメーションの被害者と言えるかもしれない。
とはいえ、ありえない程の制約の中、『SUMMER編』込みで構築するという潔い取捨選択のもとで冒険に踏み出した姿勢自体は評価すべきな部分もある。
比較対象に京アニAIRがあることも不幸ではあった。まあ、業界では当時ほとんど無名だったチームにボロ負けした事実は否めないが。

ネット上では原作組の怨嗟の声がこだまし、出崎統のファンクラブサイトのBBSは荒らしが多発して閉鎖された。
掲示板を荒らす行為自体は褒められた行為でないが、監督の無理解さにも問題があるため同情も難しい。
………が、そもそもここまで原作を改変するのであれば、最早AIRを原作にする意味もないわけだが…。

監督の古臭いイメージがねじ込まれたためか、ネタにされる要素も多く、
祭をメインに据えて、(原作にはない鬼の面や和太鼓をむさくるしく不気味に取り上げた)謎演出は特に不気味。
ゲロが光る演出など、監督の別作品と同じ演出も見られたことから、あしたのジョーの関連作と揶揄された。
前作の東映Kanonがアゴアニメと嘲笑されたが、こちらは「太鼓ドンドコ」「光るゲロ」と呆れ混じりにネタにされた。

ネット上では今も昔も酷評が並んでいるが、当時の観客動員数の成績はよかったらしく、劇場版『CLANNAD』上映に繋がった。
本作の不評を出崎・中村両名は重く受け止め、「リベンジしたい」との思いで制作された『CLANNAD』では原作再現を諦めて再構成するという雰囲気面でに歩み寄りを見せた。
原作のプレイヤーからすれば許しがたい内容ではあったものの、先の通りいろんな意味で不幸が重なった映画なのかもしれない。

余談だがアニヲタ界隈では「新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に」の方が有名なこともあって検索するとぶつかりやすい。

音楽

本作では、主に実写ドラマや映画で名を馳せていた周防義和が音楽を担当。原作の楽曲も使用されているが周防のアレンジが入っている。
ミスマッチではと訝しがられたものの、前作もそうだがアレンジ自体はそこそこ好評で、音源も豪華。
ボーカル曲は原作のものが用いられているが、EDには加えて原作BGM『ふたり』をボーカルソングとした新規楽曲も用いられている。
以下、劇場版のみで使用されたボーカル曲を記す。

  • IF DREAMS CAME TRUE(ED2)
 作詞:Linda Hennrick/作曲:羽岡佳/編曲:岡崎雄二郎/歌:河井英里

原作BGM『ふたり』は折戸伸治作曲で、先の通りこれをボーカルアレンジしたもので、本作のイメージソングでもある。
作詞が日本人ではないが、歌詞は全て英語である。今は亡き河井英里が歌い上げた透き通るような歌声は
本作の評価点の一つと言っていいくらいの名曲と言って差し支えない。
というかこれが本作の期待感を異常なまでに高めた理由の一つとも言えよう。
EDはメドレー形式で、『Farewell song』のあとに本曲が流れる。



【余談】


完全に余談だがGLAYの楽曲
『君が見つめた海』がモロにAIRと被る歌詞になっている。




編集よろしくお願いします。

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最終更新:2025年03月07日 20:30

*1 KanonはDC版に合わせてというのもあるが2000年9月から開始と、本家発売から1年で展開している。

*2 一応ここは原作サイドからの要望とのことで、結果としてちぐはぐになってしまった

*3 これでも映像作品においてコンシューマ版と同じ声優で見られるのは本作だけ。

*4 一応補足すると脚本自体は面白いと評価はしていたが、難解で万人にわかりづらい部分に物言いを付けた、のが正しいようである。