昆虫採集

登録日:2019/08/25 Sun 22:39:05
更新日:2024/01/27 Sat 18:19:50
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昆虫採集とは、昆虫類を集めて楽しむ趣味のこと。
基本的に食用や駆除などの目的で虫を集めることを昆虫採集と言うことはあまりなく、趣味や遊戯の範疇のものが大半。
ただ、趣味ではなく研究目的で集める場合は昆虫採集と言うことも多い。

概要

昆虫類は細かい亜種を含めると非常に種類が多く、それでいながら身近であり、またキチン質の体表故に標本にして保存するのも容易なので東西問わず蒐集の対象として知られている。
ただし、「ほとんどの子供が夏になると虫取り網を振り回す」という文化はほぼ完全に日本オンリー。
海外での昆虫蒐集は「一部愛好家だけの特殊な趣味」という扱いである。
少年の日の思い出でも昆虫採集が描かれているが、あの子たちは現地では割とマニアックな趣味の持ち主といえるのだ。
その証拠に、日本では非常に良く名が知られているファーブルは、本国フランスではかなりマイナーな人物。

ちなみに、「虫の鳴き声を楽しむ」という文化もほぼ日本固有のもの。海外ではそもそも虫の鳴き声を音として認識できない人も多く、聞こえてもノイズ扱いされている。
アジアの国々の人々も欧米人と同じ反応を示したといい、日本人以外で虫の鳴き声が聞き取れたのはポリネシア人のみだったという研究結果もあるのだ。
この原因は、音を聞き分ける際に右脳と左脳のどちらを使うかという違いから来るもの。
世界のほぼ全ての国の人々は右脳で聞き取るが、日本人とポリネシア人は左脳で聞いているのでそうなるという。
また、これら二か国の人だけが虫の鳴き声を聞き取れるのは、言語のパターンが似通っているためらしい。

なお、上記ファーブルは逆に虫の鳴き声は好きでも鳥の鳴き声をうるさく思い、 研究の邪魔として頻繁に鳥を撃ち殺していた という。

採集の目的

  • 標本
一昔前はメジャーだった趣味。昭和の時代はデパートに「昆虫標本キット」なる怪しげなセットが売られており、 普通に注射器と毒薬がセットに入っていて小学生が購入できた (ただ、実際の所毒薬は単なる色水だったことが多いようだが。トカゲに注入するとパワーアップする)。
これで虫を仕留めてピンで刺して標本にすれば、夏休みの自由研究一丁上がりというお手軽なキット。
最近は危なっかしいためか、動物愛護の観点か、素人用の標本セットは販売されなくなっているため、子供がこの目的で採集を行う事はあまりなくなっている。
恐ろしい事に注射器はマジに使用可能な物で、消えた最大の理由はこれによる事故と、覚醒剤の注射用に悪用されないようにという都市伝説があるが果たして……。
現在でも死体用の標本製作キットは売られており、カブトムシ・クワガタムシの飼育コーナーなどで売られている。
なお、研究用の標本は種名と採集場所・日付などを記載したラベルが必要であり、針を刺す位置なども通例がある。
そのため、本格的にやろうとするとラベルの作成、手先の器用さを要求される展翅、
保管時に標本を食い荒らすカツオブシムシや腐敗の対策なども行う必要があるため、何かと初期投資手間が掛かる。


  • 研究
基本的には標本からの派生。何時何処でどの種を捕まえたかを記録しておけば地域の自然環境の変遷を辿る重要な手がかりとなる。
南方系の種が北上していれば地球温暖化の影響を疑う事が出来ると言った具合に。


  • 飼育
カブトムシやクワガタムシ、スズムシなら初心者にもとっつきやすい。ホームセンターでも飼育セットが安く売られている。
ただ、ペットとしては寿命が短い種類が多いためどうしてもお別れも早くなりがち。
そのため命に責任を持たない馬鹿げた考えだが「しばらく飼ったら逃がす」派の人もいる。
捕まえた場所と異なる場所での放虫は遺伝子撹乱の懸念があるため絶対に行うべきではない。 そう言う意味でも寿命を終えるまで飼い続けよう。
あと、間違っても深夜ラジオのコーナーから得た知識を鵜呑みにしてもいけない。


  • 食べる
現代日本人にはあまり馴染みがないが、実は日本を含め世界各地に昆虫食の文化がある。
近年では世界規模の食糧危機問題解決の手段の一つになり得るかもしれないとして注目されるようになっていて、研究も盛ん。
近年は食料として昆虫を採集する者が増えており、食用目的での昆虫採集を禁止する地域も出てくるようになってしまった。
詳細はこちらの項目を参照。


  • スポーツ
特にセミ採りで良く見られる。何人かで時間内に取った数を競う遊び。
明確なルールがあるわけではないが、キャッチアンドリリースになることが多いだろう。


  • タヌキや中二病カメレオンに売る
借りたお金は早く返したいし返さなきゃいけないからね。世界はいつかヘラクレスオオカブトやタランチュラとか高く売れる虫の無機質な目で裁かれることになるのだろうか…。
ともかく、あみの準備はOK?


主な採集対象になる虫

昆虫採集の王様。コイツらをゲットできると子供たちの中での地位は大幅に向上する。
また、卵の状態なら越冬させて飼育することもできるので、その場合は愛着も増すだろう。
しかし土中や菌糸瓶の中で育つため幼虫のまま忘れ去られて気付いた頃には死骸しか残らない事も。
夜行性なので採集は非常に大変。
日中に樹液が発生するポイントを見つけるのがベスト。そうした場所では大人しいものの、ほぼ確実にスズメバチの仲間も存在するので何かと怖い思いをする事になる。
夜間の採取の際にも、樹液にいるとは思えない野生下のクロゴキブリや偶然いたムカデ、無害なものの精神的なショックが大きいオオゲジなど何かとリスクが付き物。
苦労してポイントに辿り着いても特に珍しくも何ともないシロテンハナムグリ・シラホシハナムグリ・カナブンしかいないと言う事もままある。
トラップを設置して寄って来るのを待つ手もあるが、発酵させなければ誘引できないため初心者では扱いが難しい。
それに当然スズメバチなどの招かれざる客もやってくるため、そちらはそちらでハイリスク。

海外産のカブトムシやクワガタムシをペットショップにデパートなどで購入することも可能。やはり一番人気はヘラクレスオオカブト
ただ、標本ならいいが生きている場合逃がしてしまって外来種になる危険性も指摘されている。
放虫ダメ絶対。必ず責任を持って死ぬまで買う事。
事実、日本の気候風土と相性が良く外来種になるリスクが極めて高い種もいるが、この項目に記載する事そのものが自然環境に対するリスクのため公表は差し控える。
また国内の種と言えども遺伝子撹乱が起きるリスクがあるため、こちらもやはり責任を持って死ぬまで飼おう。

外殻が固い甲虫の仲間は、死骸をそっくりそのまま標本に転用しやすいと言うメリットがある。
対策無しでは内部の腐敗は避けられないので、長期の保存は難しいが。

  • セミ
夏の昆虫採集の王道。クマゼミやアブラゼミなら日本全国にありふれているため、虫取り網が一本あれば捕まえるのは容易。
飼育にはアロエなどセミが留まれる植物の植木鉢を容易して鉢ごとセミを囲う必要があるため非常に手間。標本目的でない限りキャッチアンドリリースを基本としよう。
また捕まえようとして逃げられておしっこをかけられるのは誰もが通る道。ちなみにこれは、逃げる直前に水分を減らして少しでも体重を軽くするため。
自宅で羽化を見たい人にもお勧め。夏の夜には日本全国腐るほどの幼虫が木の根元から這い出てくる。
羽化を失敗させないようしっかりと捕まれる木の幹などを用意し、地面にほど近いもののみをほどほどに獲って速やかに帰ること。

幼虫は食草があれば何とかなるし成虫も脱脂綿に砂糖水を含ませたものなどで飼育が可能。
というか食草を予め植えておけば成虫がタマゴを産み付けてくれるので、収集も手間要らず。
ただし食草は食い尽くされるため、ある程度の量を植えておかないと意味がない。
植物園などでの飼育に由来する経験則を元に近年の研究で明らかになった事だが、成虫になっても幼虫時代の記憶を引き継ぎ人慣れするという。
そのため飼育するなら幼虫からの方が扱い易い。
ただし屋外で採集した幼虫は結構な確率で寄生虫を宿しているので注意。羽化を楽しみにしていたサナギから虫が湧いてくる光景がトラウマになったという人もいるはず。
標本としての人気は非常に高い。一般的にはチョウの方が人気はあるが、近年では蛾の愛好家も多い。
日本国内の蝶は昭和に全て発見し尽くされてしまったが、その何倍もの種類がいる蛾の仲間にはまだまだ珍しい種が存在するからだ。
地域ごとに羽の模様が異なる種も多く、海外の種なども集め始めるとキリがない上に財力のみならず標本商とのツテも必須。宝石よりはマシだが、金持ちの道楽に近い。
また貴重な蝶の仲間は法律で条約などで採取を禁止されている種も多いので、そう言った種は観察に留めるべき。
世界的な希少種として知られるとある蝶をコレクションに加えるために、原産地との国交の改善に努めた政治家も存在するほど。

季節に水辺近くの野原などに行くと多数が飛んでいるのを見られるため捕まえるのは割と簡単。
ギンヤンマやオニヤンマのような大型の種は飛翔ルートがある程度決まっているため待ち伏せ戦法が使える。
飛翔時間の長い肉食昆虫であり飼育は極めて難しいので、セミ同様にキャッチアンドリリースされることが多い。
標本にしても甲虫や蝶と異なり生前の色合いを保てず著しく色褪せるため、美しさを楽しむなら生態写真が良いのだがそれはそれで難易度が高い。
ちなみに「トンボの前で指を回すと目を回して素手で捕まえられる」とされるが、実際は「指の動きを餌と勘違いして集中しているために背中からの捕獲が容易に成功する」というだけらしい。

  • 鳴く虫
キリギリス、スズムシ、エンマコオロギ、マツムシ、カンタンなど。
鳴き声を楽しむために飼われることが多い。江戸時代にはこれら鳴き声の美しい虫を売る商人も現れ、庶民の間で人気を博していたとの話が伝わる。
ただ、クツワムシはガチャガチャと尋常でなくうるさいので、そう言った目的での飼育にはまるで向かない。
近年では外来種で樹上性のアオマツムシが騒音で他の虫の鳴き声をかき消してしまうため風情を味わうのが難しく、そう言った面でも需要は高いのかもしれない。
最も美しい鳴き声のカエルが清流のカジカガエルならば、鳴く虫の女王は邯鄲と呼ばれている。

  • その他甲虫
オサムシ、タマムシ、カミキリ、ハムシ、糞虫などの甲虫はカブトムシ・クワガタムシほど一般的ではないが美しい外見の美麗種も多いため熱烈な愛好家もいる昆虫。
地味な種も無論多いが、美麗種に見飽きて来るとそう言った渋くて地味なものも集めたくなるらしい。
特にマイマイカブリは日本限定のレアな虫で亜種も多いため、海外の愛好家からの人気は高い。
…と良く言われがちだが、実際には海外における昆虫愛好家の人口が極めて少ないため本当に人気があるのか、何とも言えないのが実情。
日本国内以外で見るのが難しい昆虫であれば都内でも確保できるガロアムシの方が人気があるし。
マイマイカブリの亜種ではカタツムリの殻の破壊に特化したサドマイマイカブリが有名。佐渡では優先種のため現地に出向く事さえ出来ればさしたる苦労もなく確保する事が出来る。

  • アリ
標本としては小さすぎるので向かないが、働きアリを数匹捕まえて、透明なアクリル板などで作った巣箱に土と一緒に入れると、餌を与えるだけで勝手に巣を作り始めてくれる。
飼育環境の用意が面倒という人はキットも売っているのでこちらがおすすめ。
特に土がゲル状になっているものは、このゲル自体がエサになっており、エサやりが不要でゲルが透明なので奥の巣の様子が見られるため、眺めているだけでもなかなか楽しい。
餌を与える以外の世話はほぼいらない上、変化を観察して写真を撮ってちょっと文でも添えたレポートにするだけで自由研究が出来上がるので、夏休みの友としては意外と優秀。
また女王アリは非常に寿命が長いため長期飼育を視野に入れて捕獲する者もいる。
普通種のクロオオアリでも10年以上生きられる上に観察するだけでも楽しいので、じわじわとペット人気を上げている。
他のアリの巣に一時的に寄生を行うサムライアリやトゲアリと言った種の飼育の立ち上げは専門家が何度試みても上手く行かない。女王を見つけるのがまず難しい。と非常に難儀する。

肉食昆虫として有名なカマキリも人気の種類である。
大型で目立ちやすく、動きもそれほど早いわけではないので捕まえやすい。
だが、大抵の場合は草地からうっかり飛び出してきたカマキリを目視で捕らえる事になる訳で、狙って草地でカマキリを探すのは意外に難しい。
さらには狙った種類のカマキリを狙って捕まえようとすると生息環境を把握するセンスと運が必要になる。
生きた昆虫しか食べないと思い違いをされがちだが、視界で動いているものにはとりあえず食いつくので、箸で摘んだササミを目の前で揺らしてやるだけであっさり餌付く。
ある程度育ったカマキリはそうして寿命まで飼育するのが簡単だが幼虫から育てるのは卵のうから大量に小さなカマキリが生まれてくる都合上難しい。
秋口からは背の高い草木に卵を見つける事ができるが、採集した卵を引き出しにしまったまま忘れたりしないように!そのまま孵化したら家が大パニックになず!
また、捕まえた個体や死んだ個体の尻から、黒い針金状のうねうねした変な奴が出てきてビビることも。寄生虫ハリガネムシである。


昆虫採集をテーマにしたフィクション

  • 昆虫博士
恐らく昆虫採集をメインにした最初期のゲーム
雰囲気は中々だがコンテストがかなり運頼みだったりとゲーム性にも粗があるが結果的には良作の部類。
本作より始まった昆虫博士シリーズは最低最悪のバグゲーである昆虫博士2とクリア後が虚無の3。
ついには良作だが会社が潰れ別メーカーからナンバリングを外して発売されたGET僕の虫捕まえて。と何かと問題が多い。


  • Get虫'倶楽部 みんなの昆虫大図鑑
昆虫博士の翌年に発売された単発タイトル。電池必須の特殊なROMでワゴンのGBゲームではやけに目立つ。
中身は初代昆虫博士より薄いクリア後も会話があると言う一点で昆虫博士3に勝る。
女の子のドット絵の可愛さがかなりの評価ポイント。


夏休みをテーマにしたゲームなので、夏の遊びの定番である昆虫採集ももちろん収録。
あくまで一サブコンテンツであるが、初代の時点で総計60種もの昆虫がいて、さらにサイズの違いも記録されるなどなかなか本格的。
また多くの昆虫採集ゲームではリアルの植生を完全に無視しているのに対して舞台となった地域の昆虫の分布をある程度(流石に完全に、ではない)再現している事が昆虫採集ゲームと言うジャンルにおいて際立つ。
ゲームの性質上特にプレイを強制されることはないが、捕まえた昆虫のサイズがクリア後確認できる標本箱の3Dモデルに反映される都合上全ての昆虫の最大サイズを目指すと夏の終わりがまるで見えない。
と言うか全ての昆虫を正規の最大サイズで揃えたプレイヤーが存在するか非常に怪しいものである。やはり昆虫採集ゲーにサイズの概念は不要なのでは?


おなじみシンプルシリーズの一角。シンプルシリーズとしては回転・拡大が可能な本格的な3Dモデルの昆虫図鑑など、力は入っている。
恐ろしく不親切でチュートリアルなどもないため網の入手方法が分からないと延々素手で昆虫に立ち向かう事となる。
史上唯一無二の昆虫採集FPS。操作方法が微妙に厄介で慣れるまではなかなか捕まえるのが大変。距離感も掴み難い。
加えて、ありとあらゆる3Dファースト・パーソン・ゲームの中でもトップクラスに3D酔いを起こしやすいと言う重大な問題を抱えている。
滅多に3D酔いを起こさない体質の人でもThe昆虫採集だけは無理だったりする。妙な知名度に反して実況プレイ動画などが少ない理由がこれ。
強靭な肉体を持つ選ばれしものだけがプレイを許される真の昆虫採集ゲームと言えるだろう。
しかし本作では救済要素として博士の助手であるパヤン様とのミニゲームが存在しておりミニゲームで勝てば昆虫が貰える。
ミニゲームでもらえる昆虫はサイズが大きいものばかりの上に採取してない種類が優先的に出てくる仕様のため3D酔いでリタイアしてもミニゲームを続けていれば何時かは図鑑のコンプリートは可能。ぼくのなつやすみより有情では?
地味にミニゲームを縛った上でのコンプリート達成報告はなかったりもするのだが。
こうした仕様を そんな些細な問題点を吹き飛ばすぐらいに電波でカオスな登場人物たち も印象的。


正確には設定上は野生の虫の力をそのまま借りているため、「昆虫採集」というテーマからは少し外れるか。
ただ、「色々な虫のカードを集める」というスタイルは昆虫採集と非常に似ていると言える。


実際に集めるのはポケモンというふしぎなふしぎないきものだが、モデルとなっているテーマの一つが「昆虫採集」であることは明らか。
事実、開発者の田尻智氏も少年期に甲虫探しに熱中しており、その経験が多かれ少なかれ投影されていることは想像に難くない。
また、後発のポケモンフォロワー系ゲームも似たような発想の元作られていると言える。
アニメ版も最初期は原作のコンセプトを受け捕獲を推奨しまくっていたが、そのうち友情を築いた後ゲットすることが当たり前になってきている。


追記・修正は虫を捕まえながらお願いします。

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最終更新:2024年01月27日 18:19