指の数

登録日:2019/09/16 Mon 22:40:48
更新日:2023/11/18 Sat 09:47:48
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指の数とは、生物に備わった指の数のこと。

概要

生物が細かい作業をする際に必須となる「指」。
しかし、別に多ければ多いほど有利というわけではなく、生物の種類ごとに適した指の本数がある。

基本的に陸上生物の指の本数は両手両足共に「5本」というのがベース。
なお、この本数に何か深い理由があるかと言うと 何もない
恐らく最初に地上に上がった両生類には6本指や4本指の種類もいたのだろうが、たまたま現生する多くの生物のベースになったのが5本指というだけの話と思われる。
ドロの不可逆則という、ある分岐群を他の生物から区別するような派生形質は系統樹上で一度しか発生しない法則が化石の研究から観察されており*1
基本的に生物に進化の過程で一度退化した器官が新たに備わることはないため、人間は進化の過程で一度も指の数を減らさずに来た生物であると言える。
一方のように進化の過程であえて指の数を減らした生物も存在する。これは高速走行に適した指の形が1本指であったため。
また、クマの仲間は地上を歩くことに適した足の形に進化したため5本の指が一直線に並んでいるのだが、そのクマから派生したパンダは笹を掴んで食べる必要に迫られた。
しかし一度一直線に進化した指を再び物を掴める形に進化させることは不可能だったため、親指側と小指側の骨が隆起して「6本目」「7本目」の指状に進化している。

使われない器官は退化していくのが常なので、人間の場合「足の小指」は何千年かすると退化してしまう可能性も指摘されている。昔のSF作品だと「未来人のイメージ」として「やたらボタンばかり押しているので手の指だけは非常に進化しているが肉体そのものは貧弱」という図もよく見られた。
上記のような説は用不用説というが、現在では否定的に考えられている。今現在の進化論の主流的な考えに沿えば、進化や退化は突然変異によって生じたものが子孫世代に優先的に遺伝しなければ後世に影響を与えないとされる。
上記の例にそって言えば、突然変異で先天的に足の小指がなかったり体が貧弱だが指だけが異常に発達した人間が魅力的で異性からモテモテになってハーレムを築き子孫を残しまくるという未来が到来しなければならないのだが、今のところその風潮は世界のどこでも見られてないので杞憂であろう誰かがこの題材でラブコメ漫画を作ってくれないかな


また、奇形の一種として指の数が通常よりも多くなる「多指症」が存在する。
有名な人物だと、豊臣秀吉が多指症として知られているが、フィクションで登場する際にこの特徴が反映されることは滅多にない。
ちなみにギネスに登録されている史上最多の多指症は 28本
現代では手術で取ってしまう事も可能で、著名人では声優の細谷佳正が「右手が多指症で、幼少期に両親がいじめを心配して手術で取った」という旨を公言している。現在左利きなのもその影響だとか。

先天的な指の数とは全く関係ないが、いわゆるヤクザの「エンコ詰め」という風習がある。
これは謝罪やケジメなどの証としてみずからの指(多くは小指)を切り落としてしまうもの。
ちなみに、これには単なる罰としての意味だけでなく、小指を失うことによって拳を握ったとき力を込められなくするという目的もある。拳を強く握れないと喧嘩のような暴力沙汰において不利になるのだそうな。


ちなみに人類が使う数字が10進数で定着している理由は、人間の手の指の数が10本なのでそれが基準になったからだと考えられている。

フィクションにおける指の数

単純に事故などで指が欠損しているキャラクターも登場するが、アニメ作品ではそれよりも有名な「指の数」に関する表現がある。
それが「カートゥーン作品ではキャラクターの指の数が4本になる」というもの。
これはあのミッキーマウスが4本指で描かれていたことが元祖。
なぜ4本なのか、というとハッキリした事情は分からないが、「アニメーターの負担の軽減」と「アニメ作品だと4本の方が自然に見える」というのが主な理由らしい。
実際ミッキーマウスの先祖とも言える「幸せウサギのオズワルド」は5本指なのでディズニーが最初から4本指で描いていたわけではないのは確か。
「5本指のキャラクターを動かすと6本指に見える場合がある。4本の方が自然に映る」というのはあの手塚治虫がディズニーから聞いた逸話らしいが、あくまでウォルト・ディズニーから聞いたわけではなくディズニーのスタッフからの又聞きなのでどこまで元の話と一致しているのかは不明。

ディズニーの強い影響を受けていた手塚治虫は当然鉄腕アトムなど多くのキャラクターを4本指で描いていた。
その潮流から、日本でも4本指で描く漫画家が多かったのだがここで非常に微妙な問題が持ち上がる。
日本では「ヨツ(四本指)」というのがいわゆる「被差別部落」への差別語として使われていた過去があったのだ。
もちろんこれらの漫画家が部落差別の意図を持って四本指のキャラクターを描いていたわけではないが、あまりに繊細すぎる問題だったため1970年代以降は「四本指のキャラクターを描く」こと自体がタブー視される傾向が強くなっていった。
それでも漫画ではそこまで規制は強くなかったのだが、アニメ化される際には強い配慮が求められるようになっていく。
『ドラゴンボール』のピッコロナメック星人や魔族は「四本指」、ドドリアが原作漫画では「三本指」として描写されていたのに、アニメではいずれも5本指に変更されているのがその顕著な例だろう。

また、ゲーム作品でもこの影響を受けているとされるケースがある。
例えば、『ドラゴンクエストIV』のデスピサロなどがFC版の時点では4本指だったのに、後年外伝などで登場する際は5本指に修正されている。
また、ポケモンの「バリヤード」も最初期は4本指だったのが現在は5本になっている。
ただ、ゲームの場合「ドット絵の限界」という問題があるため、元々の構想では5本指だったのがドットでは表現しきれずやむなく4本になっており、その問題が解消された近年の作品で元の設定に戻っている可能性があるため、一概に差別問題が原因とは言い切れない(無関係ではないだろうが)。
直接的な逸話としては海外でヒットしたゲーム“Fat Princess”(邦題:ぽっちゃり☆プリンセス)が日本でローカライズされて発売される際に、配信直前になって急に発売延期⇒1か月以上後に発売…という事件があった。
延期後に発表された差分は、パッケージなどが4つ指から5つ指に丁寧に書き直されている。
ただし、あのモンスターハンターに登場する種族である竜人族は4本指で描写されている。

この手のデフォルメ表現に関して漫画内で触れてしまうのもタブー化しているようで、『パタリロ!』では登場人物の多くがクリームパンみたいな4本指で表現されている(バンコランのようなリアル頭身キャラを除く)のだが、初期のエピソードであった
パタリロ(指を一本立てて)「指は何本だ!」
タマネギたち「一本です!」
パタリロ「指は五本に決まっている!」というひっかけ問題に対する返答が、連載版・単行本版ではタマネギたちが「いつもは四本なのに~」とぼやくメタネタなのだが、文庫版では「ハァ……」と溜息を吐くだけの無難な応答に変更されている。
「地球人の課題」という最初期のエピソードに至っては台詞の差し替えでは対応しきれないレベルで指の数に関するギャグが使われていたためか、文庫版未収録という措置が取られた。また関連は不明ながら、後に原作でパタリロ自身が「本当はきちんと5本の指があるが、普段は一本隠しているため4本に見える」と明かすくだりが描かれてもいる*2

3本指の場合は特に差別表現にひっかからないためか、そこそこ出番はある。
また動物を擬人化した場合、肉球は「3本指+親指」の方が可愛らしいためかこれも割とそのまま通りやすい。
また親指以外の指そのものをデフォルメ表現の一環で消してしまう(鍋つかみ状に描く)のも特に咎められない。

泥田坊という三本指の妖怪について考察した国文学者の阿部正路は
「5本の指は智慧と慈悲の2つの美徳と貪・瞋・癡の3つの悪徳を示す」
と語っている。

なんにせよ現代日本で「四本指の人間型キャラクター」をそのまま登場させるのはかなりデリケートな問題になっていると言える。

そして「六本指以上のキャラクター」というものは非常に珍しい。
まず映像作品やイラストの場合単純に作画の手間が多くなるということ、そして前述のとおり自然界の法則から大きく外れるということが背景にある。
しかし皆無というわけではなく、Magic the Gatheringに登場する「ヴィダルケン」という人間型部族は出身次元によっては六本指のものがおり、人数を指折り数える際に「ちょうど6つ」という言い回しをしているカードもある。
またファイブスター物語(FSS)には、ドラゴン・ネイチャー(FSS)やサタン、異宇宙人のディギャオといった六本指キャラが登場する。全て人外。アマテラス曰く、六本指は人間以上を示すのだとか。
先述の通り現実に多指症という身体障害は存在するが、フィクションに登場するニンゲンの多指症持ちとなると間久部緑郎(ブラック・ジャック)(これも後の版では修正が入った)やシグルイの岩本虎眼(右手のみ)ぐらいで、やはり非常に珍しいことになるか。

ちなみに漫画家やアニメーターが時々指の数を間違えて描いてしまうケースは割と多い。五本が四本になってしまうのは稀だが、五本が六本になっちゃうパターンは散見される。
この手の作画ミスは単行本化及びソフト化の際などに修正されることが多いが、無修正で残っている場合も。
また、実写でも写真を加工・修正する際のミスなどで指が増減してしまうケースはままあり、こちらも後の版で修正されたりされなかったりする。



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最終更新:2023年11月18日 09:47

*1 近年では遺伝子的な研究から系統樹の見直しが進められた結果、例外と思われるケースも見つかっているようだが

*2 余談だが「指を4本だけ立てる」ポーズも同様の問題(むしろ、このジェスチャーが由来は不明ながら蔑視の意図で使われていたために意図的でない「四本指」にまで差別的なニュアンスが付き纏ったとか)があり、『覚悟のススメ』では「怪人4体がかりなら勝てる」意の発言をする敵幹部の絵が単行本収録時に書き直された結果、自信に満ち溢れた表情で控えめに挙手したような“謎のポーズ”を取ってしまっている。