バウムクーヘン

登録日:2021/12/15 (水) 18:04:17
更新日:2024/12/25 Wed 21:29:02
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バウムクーヘンとは、ケーキの一種である。


概要

木や串に材料を巻きつけて焼いた菓子(ツリーケーキ)は古代ギリシャの時代からあったらしいのだが、
それがヨーロッパ中にそれぞれの国の文化に合わせて変遷していき、
ドイツではで、ドーナツのように中心に穴が開いている見た目と同心円状の模様が特徴の菓子に進歩した模様。
切り口が樹木の年輪に見えることから、ドイツ語で「木」を意味する「Baumu(バウム)」と、
「ケーキ・(焼き)菓子」を意味する「Kuchen(クーヘン)」が合わさってこの名前になったようだ。
ドイツでは、この年輪のような模様が職人としての技術を証明するものとして重視されている。
しっとりとした食感と、口にした大きさ以上にお腹を満たしてくれる食べ応えが持ち味にして特徴。
また日本のバウムクーヘンは、日本人の舌に合わせて柔らかさを重視した触感へと独自の進化を遂げており、ドイツ産より軽め。
フレーバーのバリエーションも多く、チョコレート抹茶バナナなども人気。

お菓子の王様」と称されることもあるほか、特に日本では結婚式などの祝い事で引出物に選ばれることの多いケーキでもある。
その理由は、バウムクーヘンの年輪のような模様が「年を重ねることを表す縁起物」と解釈されるため。
ペースト状の生地を塗って薄い層を積み重ねては焼き……という手順を繰り返す製造工程の様子を、家庭が木のように年月を重ねていく光景と重ねて見ることもできる。
単純に割と日持ちするし軽くて持ち運びもしやすく、それからいわゆる「消えもの」なので貰った方もそんなに消費に困らないから、という現実的な理由は考えないものとする。

作り方は色々とあるが、先に触れたのが主流の手順。
なおGMBlのLeitsätze für Feine Backwarenに基づく規定では「・バター・粉類の比率が2:1:1」という配合や油脂の指定など、指標が設けられている。
また1943年には「バウムクーヘンは、最⾼級の材料からのみ作られる、品位の⾼い製品である。それは直⽕の上で閉じられた形態の中で円柱の上で焼かれる」と定義されている。
かの国ではバウムクーヘンを作ることはマイスターとして国家資格にもなるほどで、日本でもこの試験を突破したことで腕前をアピールする菓子職人もいる。
ちなみに、精魂を詰めつつ直火を至近距離で受け続けるせいで「バウムクーヘン職人は長生きしない」などとも囁かれるという……。

しかし、ドイツ出身のケーキだが、実は同国では日本ほどの知名度と人気は無いと言われている。
これは前述の通り高級品とされているから、という事情があるためのようだ。
日本のように、お高い贈答品もある一方で、コンビニなどでも100円ちょっとでおやつとして気軽に買える、という状況とはかなり違うといえる。
実際、ドイツ大使館がTwitterに投稿したところによれば、大使館職員も日本に赴任して初めて口にした、というケースが少なくないのだとか。
バウムクーヘンの名産地が旧東ドイツに偏在していたことから、バウムクーヘンの存在も知らないドイツ人すらいたという。
日本で例えれば「赤福」などのように「確かに知名度は全国レベルなのだが産地から離れたところでは店に並ばないお菓子」のようなものである。

「バームクーヘン」と「バウムクーヘン」はどう違う?

日本では「バームクーヘン」という表記が見られるが、実はこれただの表記揺れではない。
実は上述したようにバウムクーヘンには配合の規定があるが、これを満たしていないものが「バームクーヘン」とされることがある。
日本においては独自の進化を遂げているので材料の規定が無く、日本版のバウムクーヘンが所謂「バームクーヘン」とも表現できる。
余談だが、日本におけるバームクーヘンの標準的な配合比率は「卵・油脂・粉類・砂糖の比率が2.2:1.8:1:1.3」で、
油脂や砂糖の種類、小麦粉のグルテン含有量が異なっていて、粉類に混ぜる澱粉も小麦ではなくタピオカ製で、更にベーキングパウダーを加えている。

ただし、定義と言っても本場ですら「本来はこれを守ることが 望ましい 」レベルのもので、守らなければバウムクーヘンとは呼べないなどということは全くない。
まして日本で限定するなら正直どちらでも良いと判断されることが殆どだろう。


歴史

◇発祥

ルーツに関しては諸説あって判明していないが、古代ギリシャのオベリアス、リトアニアのシャコティス、フランスのガトー・ア・ラ・ブロッシュがルーツの候補である。
何にせよ、バウムクーヘンと関連性がありそうなお菓子はヨーロッパで多く確認されている。

1800年代に入ると、ドイツで本格的に普及し始めた。
1807年にザルツヴェーデルにてヨハン・シェルニコウが作って遺したレシピが最古の記録と紹介されることが多く、
このレシピは様々な人々の手に渡りながら受け継がれていくことになった。
バウムクーヘンの本場に数えられているコトブスでは、1819年のレシピを最古としていて、2019年にはバウムクーヘン生誕200周年の記念行事が実施された。

発祥についても諸説あるが、マルクス・ローフトが1769年に記した『ブラウンシュヴァイクの料理書』を初めとする1700年代の料理関連の資料にて、
新しい菓子としての言及が確認されているため、恐らくその年代に現在のバウムクーヘンが開発されたとする見方も有力。
ただし当時のドイツにおける製菓技術は後塵を拝していてレシピが洗練されておらず、ほぼ完成形となる仕上がりになったのは1900年頃だとされている。
また、1600年代にヨハン・ジギスムント・エルスホルツによる『⾷餌療法料理書』という料理本にて、串焼きの菓子が「バウム・クーヘン」という名前で登場してもいる。

◇日本上陸

バウムクーヘンが日本にやって来たのは、1910年代のこと。

1900年代、ドイツ人のカール・ユーハイムという菓子職人の男性が、当時ドイツの租借地だった中国の青島で暮らしていた。
彼は現地で自前の喫茶店を営むなどしてキャリアを積んでいたが、第一次世界大戦に巻き込まれ、ドイツの敵対国だった日本に捕虜として強制連行されてしまう。*1

そんな中カールは、1919年に広島県の広島県物産陳列館(後の原爆ドーム)で開催された「ドイツ俘虜製作品展覧会」に参加し、自分の手掛けたお菓子を出品することになる。
彼はこの展覧会にて「ピラミッドケーキ」という名前に変更したバウムクーヘンを出品。
名前を変えたのは、日本人には「バウムクーヘン」の名前は馴染まないと考えたことや、またカールの作るバウムクーヘンはピラミッド状に見えることもあっての判断だった。
青島での経験から日本人の舌の好みを分析していたカールは味にも独自のアレンジを加え、結果としてピラミッドケーキは大好評となる。

言ってみれば、日本のバウムクーヘンは平和な時代に持ち込まれたお菓子ではなく、戦争の産物だったとも評することができるだろう……。

◇日本での普及

第一次世界大戦後に捕虜から解放されたカールは中国に戻ろうとするが、疫病の影響で断念。妻子を呼んで東京都で働くことに決める。
カールは1921年に全財産を投入して横浜市に「E・ユーハイム」(現在のユーハイム社の前身)を開店。バウムクーヘンは好評を得ていた……が、関東大震災で店が崩壊
泣く泣く神戸市に店を構えることにした*2が、バウムクーヘンはその地でも評判を呼び、周囲の洋菓子店もこれを模倣し始めた。

だが、やがてカールの心身の調子は崩れ始めてしまい、店舗や弟子の職人も第二次世界大戦の影響で苦難の道を歩み始める。
彼は終戦直前にこの世を去るが、戦後に生き延びた一部の弟子や奥方のエリーゼが洋菓子店の「ユーハイム」を再興する。
戦後の洋菓子ブームの影響を受けてユーハイムは勢力を拡大、バウムクーヘンも更に広まっていった。

1960年代、ユーハイム社の会長がドイツを訊ねた際に、ピラミッドケーキではなくバウムクーヘンという名が一般的だったという事実を初めて知る。
この事実を受けて日本でもドイツの呼び名に合わせることになり、本国での名前が我が国でも浸透することになった。

かくしてバウムクーヘンは、遠い東の島国で出身国を上回るほどの人気を博し、バリエーションも発展を遂げるに至ったのだった。


バウムクーヘン(またはバームクーヘン)が登場する創作

漫画

『毒と幻のデザイン』というエピソードに登場。
バウムクーヘンに仕込まれていたによる殺人事件発生。
犯人はバウムクーヘンの形状を利用して、毒を仕込んだ一切れをターゲットに取らせたのだった。

『剣持警部の殺人』というエピソードに登場。
その形状がトリックを解明するきっかけになった。

アニメ

  • 『それいけ!アンパンマン』
食べ物をベース・モデルにしたキャラクターが数多く登場する本作。
その例に漏れず「バームクーヘンさん」も登場している。
バームクーヘンを作ることとタップダンスが趣味の紳士。また、語尾に「~バーム」を付けることがある。
ただ、目がイッてるように見えることもあるのが玉に瑕。

なお、主人公のアンパンマンはたまに別のお菓子が頭になる事もある*3が、残念ながら未だバウムクーヘンはそのバリエーションに採用されたことはない。

厳密にはそれ自体が登場したわけではないが、バームクーヘンにまつわる印象的なエピソードの一つとして便宜上ここに記載。
エヴァ弐号機が初登場した第8話にて、シンジアスカと共に弐号機に乗り込んだ際、弐号機の起動に失敗してしまう。
これは、普段の思考言語がドイツ語であるメインパイロットのアスカ(日独、ドイツ寄りのクォーター)に合わせて弐号機の思考言語の設定もドイツ語であったのに対し、半ば強引に同乗させられた、こちらは純日本人のシンジの思考言語が日本語だったので、思考言語が読み取れず、弐号機にエラーが発生したせいであった。
それに気付いたアスカは「ドイツ語で考えろ」とシンジに指示を飛ばすが、純日本人、かつ、ドイツ語を学んだこともないシンジには無理難題もいいところ。
そして、シンジがなんとか捻り出した唯一のドイツ語(の単語)が「バームクーヘン……?」であった。逆にこれがよくドイツ語だと知っていたもんである
結局、単語のチョイスとドイツ語を話せないことに呆れたアスカがシンジに合わせて弐号機の思考言語設定を日本語に変更することで、弐号機の起動は成功した。

ゲーム

お宝として登場。
スタンダードなバウムクーヘンの「おかしの大車輪」と、これに比べれば小ぶりだが外周に砂糖のコーティングがされた「おかしの小車輪」の2種類が登場する。
いずれも本作屈指のトラウマスポットとして悪名高い「水中の城」で回収できる。

シンデレラ姉妹「サンドリヨン」と「アシェンプテル」の好物ということで、4コマ漫画などではしょっちゅう食べている。
特に、クールでダークな印象を持つアシェンが甘いものを好き好んで食べる、というのはギャップもあり大人気。
それだけではなく、他にも各キャラクターが「バウムクーヘン!」と叫んでいるだけのTシャツが発売されたり、ゲーム中でも「バウムクーヘン!」と叫ぶだけのチャットがあったりと謎に推されている

小説

  • 『作家アリス』シリーズ
このシリーズにおける探偵役である火村英生の下宿先の大家が好んでいる。


余談

  • 創作物では、キャラクターの関係についての表現として「バウムクーヘンエンド」という単語がある。
    これはいかにも恋愛関係になりそうだと思われていた関係性のキャラの一方が、別のキャラと結ばれるという結末を表現した言葉のこと。
    何故バウムクーヘンなのかと言うと「結ばれなかったもう一方が、披露宴でスピーチなどを終えた後に家に帰って1人で引出物のバウムクーヘンを食べるような結末」という意味がある。

  • 回転体の体積を求める方法の1つに、「バウムクーヘン(型)積分」と呼ばれる技法がある。
    ただしこれはあくまで通称らしい。

  • 3月4日は「バウムクーヘンの日」。カールが日本で初めてバウムクーヘンを焼くのに成功したのがこの日だったことにちなんでいる。





追記・修正はバウムクーヘンを食べてからお願いします。

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  • 縁起物
  • 3月4日
  • 広島県
  • 似島
  • カービィのグルメフェス

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最終更新:2024年12月25日 21:29
添付ファイル

*1 似たような経緯で日本に連行されてきたA・ローマイヤーやC・ブッチングハウスらとは異なり、ユーハイムはれっきとした非戦闘員で軍属でもなかったのに、どうも捕虜の人数を水増しするためだったらしい……。

*2 以来ユーハイム社は2021年現在も神戸市に本社を構えている。

*3 あんまんや笹団子など。