「!?」
「……はは……ッハハハ、ハッハッハ……!」
「なんでアンタがバロンなんだ!?」
アノーア・マコーミック
アノーア・マコーミックとは、『ブレンパワード』に登場する人物である。
CV:磯辺万沙子
【概要】
国連の信託する艦「ノヴィス・ノア」の初代艦長を務める女性。
52歳だが年齢の割に若々しく見える。
本作に登場するジョナサン・グレーンの実の母である。
しかし、ジョナサンが仇敵であるリクレイマーになっていた事は何年も知らなかった。
また、ジョナサンは天才の遺伝子を買って作った試験管ベビーであった。
女だてらに艦長職を気丈に務めており、政治的な任務も担当する仕事人間気質な性格。
家族のことや背景などはほぼ語らないが、息子のジョナサンから贈られたカードを常に持ち歩いている。
だが、これが第9話「ジョナサンの刃」にてジョナサンの逆鱗に触れることとなってしまう。
いくらカードを持ち歩いていようと、ジョナサン本人の側にいなかったことは事実なのだ。
この事はジョナサン本人にも
「見せかけの愛」「こんな事をされても子供には伝わらない」と切り捨てられている。
彼女自身はジョナサンの事を想っており、精子提供者に問題はない事、自分の母としての至らなさへの負い目などを感じていたが、そのことごとくがジョナサンとのすれ違いを産んでしまった。
ついには
クリスマスにまでジョナサンを放置していた事を彼に糾弾されてようやく自身の過ちを自覚し、そのショックで別人のように気力を失ってしまう。
息子がリクレイマーだったと発覚して艦内での立場を失った事もあり、続く第10話で汚名返上しようと半ば錯乱しながら暴走するビープレートかもしれないと思われた強い反応を示したプレートに飛び込み、生死不明となってしまう。
ここまではノヴィスノア側としての行動だった。
その後のことは、バロンの点で記載した通りである。
最終決戦でバロンズゥに生命力を費やしすぎた結果衰弱してしまうが、ジョナサンに自身の愛が伝わったことを確信できたからか、やつれながらも穏やかな表情となる。
そして、バロンズゥのコクピットでジョナサンの腕の中で母と子の時を過ごしながらオルファンを見送った。
アノーアの生死については不明。『ブレンパワード』の作風からして生存していそうではあるが。
【主な台詞】
「親子の絆がそれで断ち切れるものでしょうか」
「あなたを愛しているわ」(究極の指揮権を奪いながら)
「あなたは相手がわかっているの!? やめなければ、母があなたを殺します!」
「いい加減でクマゾーくんを下ろして投降なさい。そうすれば悪いようにはしません」
「そんなに忘れてる……っ」
「私は捨てた覚えはありません! 私が憎いなら、何故あの子は私に引き金を引かなかったの!?」
「ママンは、私……ああっ!!」
「あの光はジョナサンも見た光! なら同じ光に包まれた私なら、ジョナサンに本当の母親の愛を見せてあげられるわ!」
「ジョナサン! ジョナサンの温もりをいっぱいに感じる! 私はママンよー!!」
「お前の側に……いたかった……今度こそ、お前の為に……何かをしてあげ……」
「元気な……ジョン……」
「ジョン……私の坊や……」
【余談】
オープニングに
裸のお姉さんがいっぱい出てくることで有名なブレンパワードだが、女性キャラでありながらアノーア艦長は脱いでない。
脱がれても困るが。
ジョナサンとのやり取りはクリスマスになるとよく話題に上がり、
バーニィや
ヴァジュリーラともどもネットで人気になる。
彼女自身はジョナサンとのセットが基本で、クリスマスや年中行事を適当に片付けたり、逆に今までの分のプレゼントやカードをまとめて渡す良い話なんだか雑なんだかわからないネタ性を発揮している。
前述の通りバロンと名乗っていた際には鎧と仮面で口元以外の全てを覆い隠しており、ボイスチェンジャーによって声も変わっていた。
鎧も腹筋が見事に割れた筋肉質なデザインであったり、名前も男爵を意味する「バロン」であるなど、とことんまでアノーア艦長との関連性が薄く、勇やクインシィでさえ「マントの男」と認識していた。
ジョナサンに付き従うという点以外ではアノーア艦長であると判断できるものは少ないだろう。
逆に言うとスパロボにてそれだけで正体に感づいたOVAさんすげぇ
母として接する事ができなかった彼女が、せめて父親らしくジョナサンに力を貸そうと思ってその姿になったのかもしれない。
……が、EDにてしっかりと
「バロン 磯辺万沙子」と記載されてしまっていたため、EDまでしっかり見ている視聴者にはモロバレであった。
なお、
スパロボでもアノーアとバロンの両方が磯辺万沙子氏が担当声優になっている事がキャラ辞典で記載されたため、原作未視聴者にもモロバレした。
アノーアの声を収録しなかったらバレなかったかもしれないが、ジョナサンの例の場面をやるのにアノーアの声を録らない選択肢はないだろう。
それ以外の点では、よくよく見ると底の厚いヒールブーツを履いているため、身長を誤魔化していた事は察しがつくかもしれないし、『死ねよや‼︎』という台詞もジョナサンの口癖だったので、ある意味これもフラグの一つである。
ほとんど育児放棄していた息子の前でそんなことを言っているとは思えないので、メタ的にはともかく作中設定的には偶然の一致かジョナサンの口癖が移ったのだろうが。
しかし、結構よくよく考えると本作と同じ制作会社が作っている『
ガンダムシリーズ』に登場する仮面の人とかも、正体がバレバレだったりするケースもよくあるので、これも伝統(?)かもしれない。
9話での数々の問題点から毒親という印象が強いが、ジョナサンに想いが伝わらず、伝える努力も足りなかったとはいえ、何年も前にもらったクリスマスカードを手元に置いておくなど愛情はあった。
「勝手に想ってるだけの想いなど伝わるわけがない」とは言われたが、逆を言えば
伝わらなくても想ってはいたのだ。
勇「言ってくれなきゃ……!何も分からないじゃないか!!言ってくれなきゃ……!」
なまじジョナサンが優秀で聞き分けの良い子に見えてしまった為に、彼女も手をかけずにきてしまったのだろう。
また、ジョナサンに掌握されたノヴィス・ノアの指揮権を奪回する為に「愛している」と口先で言いながらジョナサンを欺いた(通称「片手間の愛」)が、クルーと艦の安全を考えればやむを得ない行為と思えなくはない。あくまでもここに関してはだが。
クマゾーを人質に取るジョナサンに銃を向けた事も、罪を犯そうとする子へのけじめなのだろう。
つまりジョナサンに対し、彼女自身が進んで悪意を持って接したことはなかった。
そして、バロンとしてジョナサン本人さえ欺きながらも彼に尽くす事を選び、過去の過ちを懸命に償おうとした姿は、見過ごしてはならない事であると言えよう。
子供らを実験台扱いしていた伊佐美ファミリーの両親や、他の
富野作品のクレイジーな親と比較すれば、まともな親の部類に入るのではないだろうか。
……と、日本の視聴者的には思えるが、アノーアが幼いジョナサンにやった「クリスマスに息子を放置する」という仕打ちはアメリカでは訴訟レベルのネグレクトになるとも言われている。
このため、米国吹替版では声優陣がアノーアのやらかしにドン引きして通夜状態に陥った、アノーア役の声優は台詞の変更を懇願した(収録後寝込んだと言う説すらある)とすら言われている。
逆に言うと、ジョナサンはその気になればアノーアを簡単に破滅させられるのに、ここまでの目に遭ってもアノーアを訴えようとはしなかったことになる。
そんな有様で自分は立派な親だと確信していたアノーアは上記の面々とはまた別の意味でクレイジーな親な気がしなくもない。
結局のところ、富野作品の親としてはまだまともなだけで現実では確実に毒親だったわけである。
また皮肉にもアノーア艦長は残酷な言い方ではあるが母親としては失格。…だが父親としての才能は満ち溢れていた。
そうでなければ喧嘩離れした息子が自分を頼っているのに「未熟者の言うことは聞かない」と切って捨てるような言い方ができるわけがない。
時には褒め称え、時には厳しい言葉で発破をかける「大きな背中の大人の男」は、ジョナサンの刃を確実に解していった。たとえそれが偽りの関係だとしても。
またジョナサンへの対応以外にも、背の高い男になりきる為に全身鎧に身を包み、その状態で華麗にスノーボードを操る等、その風格、運動神経はまさしく「(90年代の世間一般のイメージである)男」のそれであり、この辺りは富野監督お得意の「男(父)としての才覚溢れる女(母)」と言えるだろうか。
もちろんバロンとしての演技も愛と前述の後悔を経てこそのものなので、人生はそう思うようにはいかないものとも取れる。