聖戦士ダンバイン

登録日:2011/02/18 Fri 20:22:56
更新日:2024/11/05 Tue 22:30:55
所要時間:約 12 分で読めます





バイストン・ウェルの物語を覚えている者は幸せである。心豊かであろうから…

私達はその記憶を記されて、この地上に生まれてきたにもかかわらず、
思い出す事のできない性を持たされたから。

それゆえに、ミ・フェラリオの語る次の物語を伝えよう……



『聖戦士ダンバイン』とは、1983年放映の日本サンライズ制作、富野由悠季監督のロボットアニメ




あらすじ

海と大地の間に存在し、魂の修練の場とされる、異世界「バイストン・ウェル」。

アの国の地方領主ドレイク・ルフトの企てにより、地上から召喚された青年ショウ・ザマは、
人型機械「オーラバトラー」に乗り、かの地に救いをもたらすとされる「聖戦士」として戦う事を要請される。

が、戦場で敵として出会った同じ地上人の女性マーベル・フローズンの言葉が彼を揺り動かす。

「善悪の区別もつかずにドレイクに手を貸すバカな男!」と…。


概要

富野氏のライフワークとも呼ばれる、異世界「バイストン・ウェル」を題材としたシリーズ、通称『バイストン・ウェル・サーガ』の一作目でもある。
同氏の小説『オーラバトラー戦記』は実質、本作のノベライズでありリメイクでもある。

端的に言えば「異世界召喚ファンタジーロボットアニメ」である本作だが、
放送時の83年にはそもそも「異世界召喚モノ」「ファンタジーロボットアニメ」のいずれも全く浸透していなかったため、
両ジャンルを組み合わせた先駆けどころか両ジャンル自体の先駆けとされる非常に革新的な作品である。
バイストン・ウェルの異世界描写も大変重厚だが、総じて革新的すぎたので途中からロボットアニメらしさを重視した路線変更を余儀なくされた。


登場人物

ゼラーナ隊(反ドレイク勢)

ショウ・ザマ

声:中原茂
東京吉祥寺で暮らす青年。漢字は『座間 祥』。
裕福だが愛情の薄い家庭に育つ。顎にバツ印のような傷がある。
趣味はモトクロスだが、同じようにモトクロスをやっている人間とはあまり親しくならず、
逆に「いいマシン(高いマシン)持ってて生意気」と妬みや嫌がらせを受けることも少なくなかった。
空手もやっていたようで、ある程度の心得がある。
強いオーラ力故にドレイク軍に招かれるが、ドレイク軍の真の姿を知り離反。
ゼラーナ隊に身を置き、ダンバイン、そしてビルバインを駆る、最強の聖戦士として覚醒する。

マーベル・フローズン

声:土井美加
ショウより早くバイストン・ウェルに召喚され、ギブン家に加担していたアメリカ人女性。
西部の牧場主の娘だが、禅を組んだりもする。
当初はニーに惹かれていたが、徐々にショウとの距離を縮めていく。

ニー・ギブン

声:安宅(あたか)
アの国の地方領主・ギブン家の息子。
ドレイクの野心にいち早く気付き、オーラシップ・ゼラーナを建造。ゼラーナ隊のリーダーとして戦う。
マーベルとキーン(ついでにチャム)に想いを寄せられているが本人はドレイクの娘リムルを追いかけるという色男。
ただし髪はミンキーモモ。
富野作品お馴染みの「最初は頼りないが、徐々に成長していくリーダーキャラ」

キーン・キッス

声:高田由美
ギブン家の家臣。
振り向いてくれないニーを想い続ける健気なマユゲちゃん。

チャム・ファウ

声:川村万梨阿
ゼラーナのマスコット的存在のミ・フェラリオ(まあ羽の生えた小妖精みたいなもんです)
マーベル同様最初はニーに懐いていたが、ショウにぞっこんになる。

ダンバインビルバインの強さの理由の一端は、同乗している彼女にあるとも思われる。*1*2

劇中にも登場したチャム・ファウ人形(等身大モデル)は当時、一部で話題となった。

エレ・ハンム

声:佐々木るん
ミの国の王女だったが、後に祖父の跡を継ぎ、ラウの国の女王となり、巨大戦艦ゴラオンを指揮する。
特殊な霊力を持つが故に様々な悲劇に見舞われる。

別名「泣き虫女王様」
後述のシーラに比べると、同じ女王でもこちらのほうが庶民的と言うか、親しみやすい。

シーラ・ラパーナ

声:高橋美紀
大国・ナの国の女王。
ショウに新型オーラバトラー『ビルバイン』を託し、ドレイクに対抗する。
老王として設定されていた筈が、何故か十代の美少女として登場。
出渕裕氏を悶えさせた。

ドレイク勢力

ドレイク・ルフト

声:大木正司
アの国の地方領主だが、地上人・ショット・ウェポンを招き入れ、オーラマシンを量産。
ミの国を落とし、下克上によりアの国を乗っ取った後、ラウの国に侵攻。
着実に領土を広げていく。
強欲な野心家だが、王としての器を備えた人物でもある。

バーン・バニングス

声:速水奨
ドレイクの騎士団長として、将来を期待された身であったが、ショウに惨敗を繰り返し、ショットの私兵に身を落とす。
バイストン・ウェル出身としてはかなりのオーラ力を持ち、生身の闘いでもショウを気絶させられるぐらい(第一話より)は強いのだが…
いかにオーラバトラーに乗ったショウの力が傑出しているかが分かる。
よく悔し泣きする。銀の長髪の美形キャラだがケツ顎。

黒騎士
オーラバトラー・ズワァースを駆る謎の男。
ショウに憎しみのオーラ力をたぎらせている。
てか、エンディングのクレジットでも正体バレバレ。

トッド・ギネス

声:逢坂秀実
ショウと共にドレイク軍に招かれた地上人。
元アメリカ空軍パイロットで、日本人であるショウの事を「ジャップ」呼ばわりしていた。
ショウとは対照的に、異世界での新生活を愉しもうとする楽天家。
が、皮肉にもショウとの戦いを通して、真人間へと成長していく。
タレ目のマザコン*3

ガラリア・ニャムヒー

声:西城美希
ドレイク軍のタレ目の女騎士
脱走騎士の娘という過去から手柄を焦っている。色仕掛けで新型オーラバトラーを手に入れるしたたかな面も。
ドレス姿でトッドとデートする等良い雰囲気になりそうだったが…
エルフ城攻略戦の際、オーラ力の衝突から、ショウと共に東京上空に浮上してしまう。
東京編は屈指の名エピソード。

ミュージィ・ポー

声:横尾まり
ドレイク臣下の騎士家の長女。
リムルの音楽教師を勤めていたが、強いオーラ力をショットに見出され、彼へ愛の為に戦う騎士となる。

ジェリル・クチビ

声:大塚智子
中盤、ドレイク軍に新たに召喚された三人の地上人の一人。
アイルランド出身のパンクロッカー。
荒んだ生活を送っていたらしく、オーラバトラーで戦う事に悦びさえ感じていた。

彼女のメインエピソード『ハイパー・ジェリル』は必見。

リムル・ルフト

声:色川京子
ドレイクの愛娘。
ニーとの許されざる恋故に、何度も彼のもとに脱走しようとするのだが、その度にゼラーナ隊は多大な迷惑を被っている。
今でいうKYな娘。

ルーザ・ルフト

声:火野捷子
ドレイクの奥方。
ドレイクと並ぶ野心家だが、自らの野望の為に娘を犠牲にする事にも何ら躊躇せず、旦那やビショットを煽り手玉に取る毒婦にして「戦いの元凶」

ビショット・ハッタ

声:曽我部和恭
ドレイクと同盟を結ぶクの国の王。
ドレイクからは「奸智に長けた小者」と評されており、実際、ルーザと内通していた。

ショット・ウェポン

声:田中正彦
バイストン・ウェルにてオーラマシンを発明したロボット工学の天才
オーストラリア移民のアメリカ人。
ドレイクに従うが、自らも野心を持ち、造反の機会を窺っていた。
オーラマシンを発明し、バイストン・ウェルに戦乱を巻き起こした本作の元凶とも言える存在で、
それ故に本編の後、永きに渡って「死より重い罰」を受けることになるが、それはまた別のお話。
後年に発刊された『聖戦士ダンバイン・ノスタルジア』では、
『訳の分からない異世界に身一つで放り込まれて生きて行こうとしたら、何とか話が通じて財力や権力の有る人間に自身の技能を売り込んで取り入ろうとするのは人として当然の行動だろう』
と、一応彼の行いについても擁護されている。

ゼット・ライト

声:立木文彦
ショットと共にオーラマシンを発明した技術者。
実質的に彼がオーラマシンの生みの親と言えるが、世渡り上手のショットに手柄を横取りされている。
のちのマダオ。

トカマク・ロブスキー

声:戸谷公次
ショウ、トッドと共にバイストン・ウェルに召喚された聖戦士でソ連人。
主人公・ライバルと共に主役機を受領しながら突然の初陣にて瞬殺された哀れすぎる男だが、
あまりにもあっさりしていたことから「実は生きていた」展開をしている外伝作品が複数ある。
『どうすりゃいいんだよぉぉぉぉ!』

アレン・ブレディ

声:若本紀昭
ジェリル、フェイと共に召喚された地上人。声がナレーションと同じで若本。
世間は狭いものでトッドの空軍時代の先輩だった。
ショウのダンバインを撃墜した唯一の聖戦士。

フェイ・チェンカ

声:三橋洋一
ジェリル、アレンと共に召喚された地上人。
中国人で売れない俳優。
『俺はフェイ・チェンカなんだぜ!!』

ガラミティ、ダー、ニェット

声:佐藤正治、高宮俊介、戸谷公次
クの国で「赤い三騎士」と呼ばれている三人組。赤く塗装したビアレスに乗り、得意とする三体連携攻撃「トリプラー」でショウを苦しめる。
富野監督による「黒い三連星」のセルフパロディ(転生という説も)。


その他

ジャコバ・アオン

声:吉田理保子
エ・フェラリオ(仙女みたいなもんです)の長。
悪の存在というわけではないのだが、どこか人間を見下しており、自分達フェラリオの為には強引な手段も辞さない。
バイストン・ウェルに戦乱をもたらす機械を排除すべく、後半、全てのオーラマシンを地上に浮上させるという暴挙に出る。
おかげでバイストン・ウェルは救われたかもしれんが、パリは焼かれるわ、核兵器は飛び交うわ、地上は大混乱に陥った。

シュンカ・ザマ

声:土師孝也
ショウの父親。
経済評論家であるが、家庭を顧みず、秘書を愛人にしているダメ親父。
ただ、その愛人はショウにとっては姉のような存在であり、心を開ける間柄であった。その為一概にマイナスばかりとは言えない。
中盤でショウと再会した際には一度は困惑していたが、彼の話に耳を傾けて現実を受け入れようとする等、妻よりはマシな人物である。
その後は親として責任を感じ、息子の関わる地上の戦乱の結末を最後まで見守った(流石に現地には行けなかったので、テレビ映像を通じてだが)。

チヨ・ザマ

声:高島雅羅
ショウの母親。
教育評論家であるが、家庭よりも世間体を優先する節があり、中盤でダンバインに乗って現われたショウと再会した際にはパニックを起こして彼を息子と認めようとせず、
更には銃を向けて発砲する等、ルーザとは別のベクトルで最低な毒親と言える。
ショウはその態度に失望し見切りをつけ、自らを宇宙人と偽るデタラメな発言をして*4その場を去り、二度と両親の元へは戻らなかった。
しかしショウの最後の気遣いも理解できず、「もう日本に住めない、これからどうしたらいいの」と嘆くチヨのあまりの自己中心的な態度には、
(浮気と言う負い目もあって)普段いいように言われまくっているシュンカですらぶち切れ、怒りと共に苦言を呈した。
最終話では登場しておらず、シュンカのそばにくだんの秘書が付き従っていたことから、おそらく愛想を尽かされて(あるいは尽きて)離婚し、ショウの生家を出ていったと思われる。

フラオン・エルフ

声:山田俊司(キートン山田)
アの国の国王。
ぐうたらでふやけきった平和ボケした人物。
作中で先代は名君との評判であったが、後継ぎの育成に失敗したと、ニー・ギブンから酷評された。
公務そっちのけでドレイクに贈られたボーリングやサッカーゲームに興じている。
ドレイクからオーラバトラー・ゲドやオーラシップ・ナムワン型を購入しているが、
平和ボケの為か整備不良でエンジンが掛からない、修理中で稼働しないなど散々な有り様であった。*5
ルフト家側の言い分のみを聞き、ギブン家の言い分を聞かずにミの国討伐の勅令を発布するなど、言葉の軽さや無責任さが目立っていた。
自己中の塊であり、ラウの国王フォイゾン・ゴウの要請によるゼラーナ隊の来援により一度はエルフ城の防衛に成功するも、
自分の意に逆らったとの理由から夜襲の援軍要請を蹴ったことでゼラーナ隊を敗走させ、勝機を失う。
ドレイクの攻撃が始まった時には何も出来ず、掌を返してやっつけろ!と調子の良い事を言うが、家臣に見限られ、落城の際に城壁から転落し敢えない最期を遂げる。
平和な世で官僚制度が整っていればマシな君主であったが、動乱期では暗愚な王であった。


用語

オーラマシン

ショット・ウェポンが開発した、人間の生体エネルギー・オーラ(ちから)を動力源とした各種機械。
軍馬に代わる移動手段としての地上走行機からスタートし、宙を舞い火炎放射器を主武器に戦場を一変させた「オーラボム」、
そして作中の主力となる人型兵器「オーラバトラー」等が登場する、と何段もの技術革新を重ねた。
また、空中戦艦「オーラシップ」がそれらオーラマシンの母艦にもなる。
ちなみにショットがオーラマシンを発明する以前のバイストン・ウェルの戦争は、地上の中世然とした騎兵戦が主だった。

地上人のオーラ力は総じてバイストン・ウェル人のそれより高い。
オーラバトラーも当初は召喚された地上人か、もしくはバイストン・ウェル人の中でも特にオーラ力の強い者が扱う特別な兵器であった。
しかし後には、オーラ力増幅器の発展によってオーラ力の弱い一般兵でもオーラバトラー等を扱い易くなった事もあり、各国がオーラバトラー等を自力で量産する様になる。
更には地上でも存在しない1000メートルを超える超巨大空中要塞オーラ・バトル・シップ等も登場した。
格闘戦メインのオーラバトラーから一撃離脱を主戦法とするオーラファイター、より地上攻撃向けのオーラボンバーが登場し始めたところで作品は完結を迎えた。

オーラバトラー

ショット・ウェポンが開発したオーラマシンの一種で、甲虫を思わせる外観をもつ人型兵器。
バイストン・ウェルに生息する「強獣」の外皮や筋肉を加工し、家内制手工業により組み立てられている。
動作制御の中枢は、地上ではコンピュータとなるところだが、バイストン・ウェルでは強獣の脳を利用している*6

主武装はで、他にはワイヤー付きの射出爪や、原始的な火器しか装備されていない。
しかしオーラ力で満ちている地上においては、その搭載火器の破壊力は何倍にも膨れ上がる上に、
オーラ力によるバリアーまでが発生し、進んだ科学技術を持つ筈の地上の兵器の攻撃をまるで受け付けない。
更には騎士のオーラ力の暴走によるハイパー化まで引き起こした。

ダンバイン

ショット・ウェポンが地上人用に3機試作したオーラバトラー。
オーラ力が強い地上人しか扱えず、不安定な機体だが、理論上の限界オーラ力は「∞」であり、
聖戦士であるショウが乗り込む事によって、次々と投入される新型機を凌駕する性能を発揮した。
だが、やがてショウの力に機体そのものが対応しきれなくなってしまう。
OVAにて登場するサーバインは設定上はダンバインの試作機であるが、デザイン上は出渕が公開したオーラファンタズム版のダンバインである。
またサーバインもダンバイン制作時の初期案の名前でもある。

ビルバイン

ナの国が開発した新型オーラバトラー。
シーラ女王により聖戦士ショウに贈られる。
赤と白のカラーリング。大きな特徴として飛行機型のウィングキャリバーへの変形が可能。
背中に二本のオーラキャノンと、剣にも銃にもなるオーラソードライフルを装備。

モロにスポンサー*7から押し付けられたデザインだった為に、当時はかなり酷評されたと長年ネット上で言われていたが、
実際の所デザインはサンライズ側の提案であり人気もそれなりにあったようで、プラモの売れ行きも上々だったらしい。(詳細は当該項目参照)
出渕的には気に入らなかったのか、後にオーラファンタズム版のビルバインともいえる「ヴェルビン」を設定集で公開している。

聖戦士

バイストン=ウェルに呼び出された地上人は、その強いオーラ力によって戦乱の導き手となり、聖戦士と称えられる。
作中では単なる強戦士のような扱いになってしまったが、本来はもっと崇高な意味を持つ称号。

ハイパー化

人間の負の感情が増大することによって引き起こされるオーラバトラーの巨大化現象。
本当に巨大化しているわけではなく、オーラバリアーが機体の姿を形作ったもの。
圧倒的な攻撃力をもたらすと同時に、制御しきれずに暴走したオーラ力は乗り手に自滅をもたらす諸刃の剣。


立体化

各種オーラバトラーは、バンダイから放送時のものとHGの二種類のプラモデルが発売されている。ダンバインのみMGがリリースされている。
その独自の世界観とデザインから立体化に恵まれており、近年でも造形と可動を両立したROBOT魂では、テレビ版に登場したABのみならず、
可動フィギュアどころかマスプロダクツ自体も珍しいサーバインやズワウス、上記の設定集にしか出ていないにもかかわらずヴェルビンも発売されるなど根強い人気がある。
ROBOT魂は2024年にフォイゾン王のボチューン・一般兵用ボゾンの発売でTVに登場したオーラバトラーコンプリートするまでビルバイン発売から10年以上続く長期シリーズとなった。
放送時のプラモデルのバストールは30年以上前のキットにもかかわらず、可動面や単色成型の難があるがそのプロポーションの良さから人気があり、定期的に再販されては完売している人気商品である。*8

ゲーム

聖戦士ダンバイン 聖戦士伝説(2003年、PS)

スパロボなどのゲスト参戦が多いダンバインだが、コンシューマソフトではこの一作しか出ていない。(PCソフトでは2本出ている)
内容はシミュレーションゲームだが2000年発売にしては同じ年発売のスパロボαやGジェネFに比べると色々と見劣りしておりバグもある。*9

主人公はショウではなくシュンジ・イザワというオリジナルキャラ(CV:はうえだゆうじ。名前は変更可能)。
召喚された時期もショットとマーベル達の間という割と早い時期で、リの国という独自の陣営からアニメに登場した国や人物たちとかかわっていく。
シナリオは大きく分けてほぼテレビと同じ道筋をたどる「ロウルート」、逆にドレイクと手を組み敵対する「カオスルート」の2つがあるが、
前者は分岐の少なさと浮上してしまうと強制的に浄化EDになることから人気は低い。
後者は浄化ED以外にも「ガラリアの代わりにショウと浮上(協力しないと死亡)」「ドレイクを倒し覇権を握る」「オーラバトラーを否定して飛竜に乗って戦い抜く」など多岐に渡り、
難点の多いこの作品の評価点としてこのルート(の多彩な展開)が真っ先に挙げられるほど。
このルートだと選択次第では主人公が高校生であるにもかかわらずドレイク並みに狡猾な立ち回りをする。
そのためEDも多いのだが、内容自体は若本氏によるナレーションで語られるのみであるため少々味気ない。

登場するABも多岐に渡り、アニメ登場の機体はOVAを含めほぼ網羅*10やアニメ未登場だった強化型ライネックやズワァース、
オーラファンタズムから「ギトール」や「ボテューン」、オリジナルABの「アルダム」「ゼルバイン」*11など豊富で特定ルートでしか手に入らない機体も多い。
スパロボで救済されることの多いトッド・ガラリア*12、も仲間になり聖戦士はジェリル以外はトカマクも含む全員が仲間になる*13
ショウはカオスルートでも仲間にできるが、ロウルートを選びつつドレイク軍に残留させるとバーンの『黒騎士』のように覆面を被り『修羅』となり主人公に牙をむく。*14


スーパーロボット大戦シリーズ

リアルロボットの代表格の一つ。ファンタジーなのにリアルとは何ぞやという感じだが、見た目やオーラ力以外の要素はかなり所謂リアルロボットではあろう。
ファンタジー色や虫をモチーフにした異形のメカが良いアクセントになるため、異世界が絡む作品では参戦が多い。それどころか異世界がほぼ絡まない作品でも普通に参戦する。
原作アニメの舞台が中盤から現実世界へと切り替わっているために、異世界ネタも現実世界ネタでもどちらも違和感なく扱えるというのが本作の強みといえる。
そのため、異世界ロボ作品の中では最古参かつ参戦確率が高い。

その分原作再現が少ない所謂いるだけ参戦のことも多いが、原作終了後でもトッドやバーンがライバルとして登場することがある。原作再現が多めなのは『COMPACT3』や『BX』等。
トッドやガラリアは大抵仲間になり、一部作品ではバーンが仲間になるのも特徴。
ボイス収録にあたり、すでに引退していたトッドの声優を半年かけて探し出したのは有名なエピソード。

登場キャラには「聖戦士」という技能がつき、ガンダムシリーズのニュータイプ等と同様、回避や命中に補正がかかるが、
さすがにオーラバトラー乗りが全員聖戦士というのは不自然だったのか、『UX』以降は「聖戦士」はダメージ強化の地上人キャラ専用になり、旧来の方は「オーラ力」という技能になった。
さらに聖戦士独特の能力としてオーラ斬りに攻撃力補正がかかるため、大物食いも可能な高い攻撃力を誇る。
なおオーラバトラーはSサイズなので、よく避けよく当てる。まさにリアルロボットの鑑。加えてオーラバリアと切り払いを持っており、全般に強キャラとして設定される。
装甲も『EX』や『第4次』では「オーラバリアーには現用兵器が通用しない」原作再現でガチガチに硬かった……がそれ以降は一発通れば落ちる紙装甲で落ち着いている。

スパロボでは当たり前のようにメインウェポンとなっている「オーラ斬り」「ハイパーオーラ斬り」だが、
「オーラ斬り」は一応原作由来の技であるものの(「オーラ斬り」という技名をつけて使われたのは2回のみ)、
「ハイパーオーラ斬り」に関しては完全なスパロボオリジナル技である。『BX』では原作の「ハイパー化現象」と絡めて多少の説得力が加えられている。
X』以降はハイパーライネックを倒した光線がOPの歌詞から「オーラシュート」と名付けられ、ハイパーオーラ斬りを上回るビルバインの最強技となっている。

作品単位での難点としては、自軍戦力の層の薄さがあがる*15
パイロット面では、実力トップのショウがチャムをサブパイロットに持つお約束が定着していて一軍確定級、
トッドやバーンも条件をクリアし自軍入りすれば十分な実力を有する形が出来ているものの、それ以外はマーベルがギリギリという所で、目に見えて質が下がる。
特に近年はショウ専用イメージのオーラバトラー(ビルバイン、サーバイン*16、ヴェルビン)が何体か登場するため、
実際にショウが乗る機体以外は余ることになるが、専用武器・合体攻撃の都合で乗り換え選択肢が狭いので、下の層にはさほど恩恵がない。
総体としては、ツインユニット制で下の層もある程度救済+母艦としてゴラオン&グラン・ガラン両艦とも存在感ある『BX』が比較的マシな按配だった方だろうか。


なお、現在バンプレストオリジナルとして確固たる地位を築いているサイバスターについて、
元々FCの『第2次』で参戦させる予定が実現できなかったダンバインの代わりとして登場させ、背景や世界観を肉付けされた経緯がある。
このことは書籍『スーパーロボット大戦EX 熱血・幸運・必中ガイド』においてスタッフの阪田雅彦が語っていたのだが、
2020年8月21日配信の「生スパロボチャンネル」では寺田貴信Pが「ダンバインが出せないのでサイバスターを作った」というのは事実無根と否定している。

この二つの意見を矛盾なく解釈するなら、サイバスターは『第2次』でのオリジナルキャラクターとして最初から登場が確定しており、
その時点で異世界ファンタジー風ロボットとして設定されていたのだが、版権作品のダンバインが参戦できなくなったつじつま合わせとして、
異世界ファンタジー風のロボットであるサイバスターのキャラにダンバインのキャラの役割を当てはめた…というところだろうか。*17





バイストン・ウェル・サーガシリーズ

小説

リーンの翼

バイストン・ウェルを舞台にした話で『ダンバイン』の直接の前日談。召喚された元日本軍人、迫水真次郎が主役。
彼が召喚された時乗っていた特攻機「桜花」のバーニアはビルバインに取り入れられている。

オーラバトラー戦記

バイストン・ウェルを舞台にして富野御大自身が手がけた小説。特に『オーラバトラー戦記』はダンバインのリメイク的な要素が強く、主人公や機体は異なるが他の登場人物はほぼ共通している。
主人公、城毅(じょう たけし)通称ジョクはアの国の姫君アリサに一目惚れされ、超勝ち組な人生を送る……まあ黒トミノなんだけどな!

ファウ・ファウ物語

バイストン・ウェルではなく80年代当時の現代日本が舞台だが、これも一応ミ・フェラリオのファウ・ファウが主役の関連作品。
全体的に血生臭い作品が多めな富野氏の小説では異色作だが、執筆当時の世相を皮肉った内容や、かのやんごとなき御方が出てきたりと、別の意味で富野節は全開。

ガーゼィの翼

世界観に直接の繋がりは無いが、これもバイストン・ウェルを舞台にした小説作品。
主人公がハーフ設定だったりと、後年のOVA版『リーンの翼』の原型とも言える要素が散見される。

漫画

聖戦士ダンバイン異聞 エグザイルサーガ 銀竜の章

衣谷遊による『ダンバイン』の続編作品。富野氏は関与してない。
TVシリーズのみならず後述のOVAよりも更に未来のバイストン・ウェルを舞台に、三度復活したショットの野望を挫くべく主人公が立ち向かう……という流れの作品ではあったが、
肝心の主役機が出てきたところで打ち切り終了に見舞われている。
地味ながら「オーラ力を直接武器に用いる戦い方」が作中で示されたりと、後年のスパロボにおけるハイパーオーラ斬りなどの独自要素を先見したかのような設定も散見される。

アニメ

ガーゼィの翼

前述の小説のアニメ化。結果的に富野アニメでは数少ない非ロボットアニメとなる。

リーンの翼

上で触れた小説版と同じタイトルの続編。こちらは『ダンバイン』とは並行世界で、「サコミズがバイストン・ウェルに残っていた」未来の話。
内容以前に誰もが思うのは「紛らわしい。せめてサブタイトルを付けろ」。
ブレンパワード』に匹敵する富野節全開でインパクトの強い名台詞の宝庫だが、一方で本来主役のはずのエイサップ・鈴木がサコミズの存在感に喰われてしまっており、
ファンからはエイサップが不遇の主人公と称されることも。(ついでに言うと「エイサップ」という名前はあまり馴染みがなく、サコミズが呼ぶように「鈴木君」とファンからも名字で呼ばれがちというネタも。)
バイストンウェル・シリーズは富野氏のライフワークという表現も一部で為されるが、本作完結(2006年)後はプラモ等の商品に留まり、アニメ・小説・漫画化といった作品の発表は途絶えている。

New Story of Aura Battler DUNBINE

TV本編から700年後のストーリーを描いた続編OVA。といっても、単独ソフト化ではなくTVシリーズ総集編ビデオに1話ずつ収録という抱き合わせみたいな展開だった。
本作に登場する「サーバイン」はそのデザインから高い人気を持ち古くはガレージキット、マスプロダクツでも数は多くないが出ている。
スパロボでは長らくサーバイン、ズワウスとシルキーが隠し要素として登場するだけのことが多く、参戦作品として表記されないことも多かったが、
COMPACT3』で初のシオン以下パイロットが参戦し原作再現がされ、『T』以降は通常の参戦作品扱いになっている。


パチンコ

近年多いサンライズ作品のパチンコ・パチスロ化にもれず本作も2015年にサミーからパチンコが登場した。
スペックは1/319、1/256、1/99(いわゆる甘デジ)の三機種で確変はST、総数25000台がリリースされた。
キャラは図柄やリーチ演出のものは書き直されており一部キャラは服飾が変更されている。*18
ABもアレンジされCGで描かれエングレービングが追加、ダンバインやビルバイン、ズワァースなどはオーラファンタズム版とミックスしたようなデザインになっており非常にカッコいい。
通常時は特定のSP発展確定演出を除き赤演出でもSPに発展しないことも珍しくなく、SPに発展しない演出も多いため*19酷評されていたが、その評価を帳消しにできるほど確変の評価は高い。

電チューは一定時間開閉しっぱなしで保留の消化もスピーディー、さらに当落演出も即連は即大当たり、超速は演出は長いものでも5秒もかからずテンポがいい。*20
中速ではテンポが落ちるが確変図柄テンパイ*21や確変終了演出直後の大当たりや通常での電チュー保留による大当たり*22など打ち手を喜ばせるポイントも多い。
赤系の演出も通常とは違い期待値は約7割、一部演出に至っては当確という信頼性の高さも高評価。
出玉は2015年頃の同スペック機と比較しても少ないがその分継続率は1/319は約92%、1/256、甘デジでも90%という高い継続率を誇っている。
その代わり確変突入率は高くなく、時短による引き戻しも1/319では50回しかないため絶望的。
逆に甘デジは同様に50回がつくため引き戻しできる確率が高く、甘デジほどではないが1/256では100回つくためまだ期待できる。

提供楽曲も評判がよく、一部ではほぼ文句ない確変でも好きな曲を選べないのが欠点ともいわれている。
なお主題歌である「ダンバインとぶ」は流れるのは撮り直した2015verのみでオリジナルは聞けず、確変突入時以外で聞けるのは対戦相手がガラバになる41連以降とハードルが非常に高い。
出荷数の割には稼働してる店舗も多く、規制強化で撤去されるまで稼働させる店舗も少なくなかった。
またその人気の高さから中古の台が出回ることが少なく高値で取引されていた。
2021年1月で検定は切れていたが昨今の事情を考慮され特例として1年の設置延長が認められたが、翌2022年1月末でそれも終了しすべての台がホールから姿を消した。

2023年に新基準に対応した後継機が登場した…が一番の持ち味であった確変が変更されたことでユーザーの評価は低く、ホール的にもあまり旨味がなく早々に撤去、台を減らす店が多かった。
翌年甘デジがリリースされたがなんとこちらでは初代と同じSTタイプに戻り、初代同様70回で超速・高速・中速の3ゾーンも継承。
楽曲選択ができるようになり『闘いの詩』をずっと流せる・初代は41連からしか聞けなかった『ダンバインとぶ』が選べるようになり新曲も追加されたが、初代から半数ほどの楽曲が削除されている。*23
ただし以前に比べると現行基準に適応させるために7揃いなどの出玉減少、時短が7回or600回で後者が引ける確率が低く時短引き戻しが厳しくなるなど
以前よりも勝ちにくい台にはなってしまったが純粋な初代の後継機を望んでいたユーザーからの評価は上々である。


余談

  • 農耕士コンバイン
1985年に秋田大学アニメーション製作研究会の学生が製作した手書きアニメ作品で、聖戦士ダンバインのOP・EDを農業風にアレンジした作品。
秋田大学アニメーション製作研究会は、これまで「先公メッタ打ち ザ・ブンナグル」などの作品を世に送り出してきたが、「農業」をテーマに描いたのが本作である。

ちなみに主題歌を歌っているのはアニメーション研究会のメンバーで、一部はエフェクトがかかっている。

製作から6年後の1991年1月28日に放送された自主製作映像公開番組「平成名物TV・三宅裕司のえびぞり巨匠天国」の第3回にてテレビ放映された。




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最終更新:2024年11月05日 22:30

*1 「オーラの相性」がショウとチャムでは良いらしい。ショウ以外でもオーラの相性が良いフェラリオを乗せたことでパワーアップした例がある。

*2 例えば、後述のトッド・ギネスの機体にエル・フィノというフェラリオが一時的に乗った時は、明らかに通常時よりもパワーが増していた。

*3 やたらに「ママ」と連呼するためついたイメージだが、アメリカ人なのでニュアンス的には「お袋」に近く、本来は母に楽をさせたい孝行息子なのであろう。

*4 これは、チヨに責が及ばないようにするための最後の心遣いでもある。実際、夫のシュンカはショウの言葉の意味をちゃんと理解していた。

*5 第14話『エルフ城攻略戦』より

*6 後に地上に出て強獣素材が入手できなくなってからは、地上側技術のLSIも組み込まれた

*7 この直後に倒産してしまった玩具メーカー・クローバー。発売はトミーから。

*8 HGでリリースされなかったこともあるがそのHGのダンバインとは設定に近い対比になっているのも人気の一つ

*9 ただし進行に問題があるものはBest版で修正されており、レベルをカンストさせるバグはとあるルートではほぼ必須なのでそのまま。

*10 ただしズワウスは敵専用など使えない機体もある

*11 ビルバインの量産型で可変機構がないなどの違いがある

*12 諸事情でヴァルキリアと名乗り手土産代わりにサーバインを持ってくる

*13 ただしルートによって仲間に出来ないキャラもいるので自軍に聖戦士を全員集めることは出来ない

*14 キャラ性能は全キャラトップでズワウスに乗るなど機体もいいためかなりの強敵

*15 とはいえガンダム系を除いたリアル系の中では頭数に恵まれた部類。ガンダム系の優遇が突出しているだけなのである。

*16 本来は上述通り、舞台年代の全く違うOVA『New Story~』の主人公シオンの乗機なのだが、彼が登場せずサーバインは「いるだけ参戦」のパターンがスパロボでは異常に多い。

*17 「BANDAI SPIRITSホビー事業部開発ブログ」でのHGサイバスターの特集記事(2021年6月10日掲載)によると、サイバスターの名前とおおよその設定を考えたのは阪田雅彦、それを元に機体デザインと地底世界、5万年続く文明などの要素を作ったのがバンプレスト側、それを膨らましてラ・ギアスという世界観を作ったのは阪田雅彦、となっている

*18 ニーはバンダナを巻いており、エレは特徴的な髪型はリボンによるもののようになっている

*19 それらの演出でのみ登場のドレイクやショットなどのキャラも書き直されているので本当に無駄

*20 ただし復活演出で10秒以上かかることもあるがそれでも快適

*21 左に確変図柄が留まった時点で当確でガセ演出はない

*22 確変と同じ扱いなため再抽選で確変確定

*23 具体的にはガラリア戦の『part of you』『promised land』、トッド戦の『Changing The World』、黒騎士戦の『誓いの荒野』が削除されている、逆にジェリル戦の楽曲は2曲とも収録されている