禍威獣

登録日:2023/04/11 Tue 00:35:39
更新日:2024/12/11 Wed 13:54:20
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"禍威獣"は何故かこの国にしか出現しないんだ。



禍威獣(かいじゅう)とは、『シン・ウルトラマン』に登場する怪獣である。
別名は「敵性大型生物」


概要


日本に突如出現した謎の巨大生物であり、本編以前だけでも既に6体現れている。
1~3号までの呼称は「巨大不明生物」であったが、4号以降からは今の名称になった。
「禍威獣」という呼称は一般公募によって決まったとされ、いわゆる「怪獣」と同じような意味で使われる。
ちなみに各禍威獣の個体名は防災大臣・小室肇のセンスで名付けられる。

1体出現しただけでも都市機能が壊滅的被害を負う程の脅威で、通常の兵器ではまったく歯が立たない。
さらに、どの禍威獣も基本的には生態・能力共に異なるため、出現の度に新たな対応策を練らなくてはならないと、対処は非常に困難。
このため最終手段として、禍威獣対策限定で核兵器使用も容認する国際条約に批准している。
さらに、理由は不明だが禍威獣の出現地は日本に限定されており、諸外国は禍威獣対策並びに被害と駆除に伴う責任を日本に丸投げする状態になっている。

一方の日本政府は、第1号出現後から自衛隊・科学者総出で禍威獣を駆除してきたが、度重なる禍威獣災害に限界を感じた事で、新たに専門機関となる防災庁を設立。
そしてその中に、禍威獣災害現場における状況分析・作戦立案を主任務とする専従組織「禍特対(かとくたい)(禍威獣特設対策室専従班)」を設置。
以降、禍特対の活躍によって様々な禍威獣災害が対処されている。

さらに、本編開始後は、禍威獣第7号「ネロンガ」対処中に突如として大気圏外から降着するや、
瞬く間にネロンガを撃滅せしめた謎の巨大人型不明生物「ウルトラマン」の出現を皮切りに、宇宙からの知的生命体・外星人までもが地球(日本)に干渉しはじめ、
禍威獣をめぐる劇中の世界情勢はさらなる混乱に陥ることとなった。



禍威獣一覧


ゴメスからパゴスまでの6体はオープニングに登場。
自衛隊や禍特対との戦いの様子がダイジェストで紹介された。


巨大不明生物第1号 「ゴメス」


*1

新東名高速道路谷ヶ山トンネルの工事現場にて、突如長い眠りから目覚めた世界最初の禍威獣。
前腕が小振りながらも頭部に鋭い角を生やした巨大な恐竜のような姿をしており、移動時には尻尾を高く掲げて摺り足気味に歩いている。
ちなみに尻尾部分をよく見てみると、歯が剥き出しになった口を備えている。
甚大な被害を出すも自衛隊の総力戦で駆除されたが、ゴメスの出現を皮切りに次々と禍威獣が日本中に現われるようになる。

原典は『古代怪獣ゴメス』。
CGモデルはやはりというかなんというか『シン・ゴジラ』のゴジラ(第4形態)にパーツを盛られたもの。
原典のゴメスもゴジラの着ぐるみを改造して作られているので、本作のゴメラにシン・ゴジラのCGモデルが流用されているのもその繋がりであろう。
歩き方のモーションや自衛隊の攻撃シーンもそのままシン・ゴジラからの流用である。誰が呼んだか"シン・ゴメス"

尤も、以降の禍威獣が駆除に際してそれぞれ特殊な対応策を必要としていたのに対し、
総力戦とはいえ自衛隊(地球製の通常兵器)でも駆除できたことを鑑みると、見た目はそっくりだがシンゴジほどは強くなかった模様。
デザインワークスの庵野氏のインタビューでは「版権管理上明確に繋げることはできないが何となくシン・ゴジラのようなことがあったかも」とのこと。

公開前は「シンゴジのCGを改造して『シン・ジラース』が出る」なんてファンからはネタにされていたが、まさかゴメスの方が出るとは誰も予想していなかったようだ。
後にバンダイのソフビフィギュア『ムービーモンスターシリーズ』で商品化された。


巨大不明生物第2号 「マンモスフラワー」


*2

東京駅前のど真ん中に出没した巨大植物。またぶっ壊されている
その大きく咲いた花から酸性の花粉を放つが、官民学による炭酸ガスと火炎放射の連続攻撃によって駆除*3
徐々に朽ち果てながら、巨大な花弁を落として崩れ落ちる最期が描かれた。

原典は『巨大植物ジュラン』。
今作では別名の「マンモスフラワー」で呼ばれている。


巨大不明生物第3号 「ペギラ」


*4

東京都心に出現。
ほぼ原典と同じ姿をしているが翼腕は非常に細く、翼も翼膜がなく風切り羽か翼を支える骨だけかのように複数に分かれている。
劇中では羽ばたく姿こそ見せているが、飛行するカットはなく、この翼に飛行能力があるのかは不明。

冷凍ガスを放出して大寒波を発生させ、都市機能を麻痺させて「東京氷河期」を引き起こしたが、
ある女性生物学者が弱点を発見したことで対応策が立案され、駆除された。
最後に巨大不明生物と呼ばれた個体である。

原典は『冷凍怪獣ペギラ』。
但し最期は異なっている。またコウモリに似た翼は、スーツ改造したチャンドラーを彷彿とさせる。

後にバンダイのソフビフィギュア『ムービーモンスターシリーズ』で商品化された。


敵性大型生物第4号 飛翔禍威獣「ラルゲユウス」


*5

初めて「禍威獣」と呼ばれた個体。体格がやや丸っこく巨大であること以外は現実に存在する鳥類にそっくりである。かわいい。
飛行しただけでも羽の風力によって生じた暴風で、松本城の瓦が全て吹き飛んでしまう被害が出てしまった*6
唯一飛行能力を有していたことが確認できる禍威獣で、この個体のみ駆除できず鳥逃し取り逃がしてしまい、ラルゲユウスも夕陽に向かって飛んでいってしまった*7

それからしばらく経った物語開始時点でも消息不明のままで、ステルス機能を備えているのではないのかと推測されている。
初の駆除失敗例であったためか、この事件以降に禍特対が設立された。
また、飛行の際の暴風が壊滅的な被害をもたらすとはいえ、人間を積極的に襲っている描写はなく、
劇中でも具体的な被害について唯一言及されていないため、他の禍威獣よりは人類にとって害が少ないと思われる。

原典は『古代怪鳥ラルゲユウス』。
実は頭部が原典よりやや小さめ。


敵性大型生物第5号 溶解禍威獣「カイゲル」


*8

サザエとカタツムリが合わさったような姿をした禍威獣。
殻のあちこちにドリルが生えており、鈍重そうな姿ながらも動きはやや速く、まさに生きた戦車の様にも見える。

劇中では蒲田に出現し、これが禍特対の初の任務となった。
最終的には自衛隊の戦車部隊による集中砲火を浴びせられて倒されたらしい。
「溶解禍威獣」の別名が付けられた所を見るに、描写こそ無かったが今回も溶解光線を出して暴れたのかもしれない。

原典は『貝獣ゴーガ』。
カイゲルの名前はゴーガの没ネームから*9


敵性大型生物第6号 放射性物質捕食禍威獣「パゴス」


*10

後に出現するガボラの頭とネロンガの胴体をそのままつなげたような姿の、4足歩行の禍威獣。*11
当初は「地底禍威獣」と呼ばれていたが、出現時に放射性物質を食したことで放射線を含んだ光線を発射する生態に進化したことから今の通称に改名された。
これにより出現地帯は放射線がばらまかれてしまい、かなり広い被害を被った。
この一件は後に「パゴス案件」と呼ばれ、政府関係者にとっては悪夢のような事件となった。
自衛隊と禍特対の連携作戦により駆除。死体は結晶化してボロボロに砕け散った*12

原典は『地底怪獣パゴス』。
後にバンダイのソフビフィギュア『ムービーモンスターシリーズ』で商品化された。


敵性大型生物第7号 透明禍威獣「ネロンガ」


*13

口内には歯に似た器官がびっしり敷き詰められ、首は発光した筋肉組織が剥き出しになったパゴスと似た禍威獣。
電気を使って透過率ほぼ100%・反射率吸収率0%の体表組織を形成してレーザーなどあらゆる熱光学兵器を無効化できる程の透明化能力を持つ。
しかし、サーモグラフィーではしっかりと写り足跡や歩行時にできた砂煙で姿が捉えられ、電気を吸収し満腹になれば透明化が解除される生態としての弱点も持っている。
一部からは「透明の意味無いじゃん…」と言われる始末である。
反面、ネロンガの生態は対熱工学兵器にあり地球にとっては未知の領域であるため、神永からは「エネルギーを蓄え万事整うと姿を現し周囲を威嚇する。理にかなってるよ」と評されている。

首都圏近郊の山間部に出現し、餌となる電気を求めて善和変電所を襲撃。
電気を食っている間は大人しかったが、発電を止めると途端に暴れ出して変電所を壊滅させて移動を再開し、
自衛隊のミサイル攻撃を放電して無効化してからは、周囲に無差別に放電しながら暴れ回り、付近の市街に大きな被害をもたらした。
禍特対も打つ手なしと思われたその時、突如として付近に上空から謎の銀色の巨人…ウルトラマンが降着。
ネロンガは目の前に立ちふさがったウルトラマンに向けて電撃を放つが、彼は痛がる素振りすら見せずに平然とそれを受け止め、
やがて形勢不利と見たか、ネロンガは放電を止めて逃亡の素振りを見せるが、そこにウルトラマンから光波熱線…スペシウム光線を浴びせられ、爆散した。

原典は『透明怪獣ネロンガ』。


敵性大型生物第8号 地底禍威獣「ガボラ」


*14

ネロンガ同様パゴスに似た個体で、特に顔が一番酷似してドリル状の襟巻きが付いている。
顔の部分は髑髏のようで、赤く光る3対6個の眼がある異形となっている。
パゴスと同じく放射線を高濃度に含んだ光線(通称:激ヤバ光線)を口から発射する能力を持つ他、
体内に貯めている放射線は通常時にも漏れており、ガボラが移動した場所は高濃度の放射線で汚染されてしまう。
顔のヒレは閉じるとドリルのような形状になり、回転させて削岩や攻撃にも使用できる。

あのシン・ゴジラにもダメージを与えたことで有名な地中貫通爆弾「MOP2」の連続投下をものともせずに貯蔵施設目前まで迫るが、
そこに上空から現れ、目の前に立ちはだかったウルトラマンと戦闘になる。
地中へ潜ってからのドリルを回転させた突撃や、2又に分岐する尾を鞭のように叩き付ける攻撃でウルトラマンを苦しめるが、
振り回していた尾をウルトラマンに掴まれ、ジャイアントスイングのように振り回され、投げ飛ばされたことで形勢は逆転。
閉じていた襟巻部分を広げたガボラは、切り札であろう高濃度の放射線を含んだ「激ヤバ光線」をウルトラマンに向けて放ち、
周囲の放射能汚染を危惧し、敢えてそれを自身の身体で受け止めたウルトラマンにダメージを与えるが、倒すまでは至らず、
やがて、その光線を受け止めつつじりじりと距離を詰めてきたウルトラマンに渾身の拳を顔面に叩き込まれ、静かに斃れた。
その後、死体はウルトラマンに抱えられて天空へと消えた。

原典は『ウラン怪獣ガボラ』。
やたらとパゴスとの類似点を引き合いに出されたシン・ガボラだが、これは原典のガボラの着ぐるみがパゴスの改造ということもあるが、
当初はガボラのエピソードはパゴスを出す予定だったという裏話もあり、その繋がりと思われる。
また、『デザインワークス』掲載のメモによれば「パゴスの進化形」であり、「戦術核生物」のパゴスと「戦略熱核生物」のガボラという構想も綴られている(デザイン検討用の初期設定であり、本編にも引き継がれた設定かは不明)。


????

とある外星人が出現させた特殊な存在。
厳密には「禍威獣」と呼べるかどうかは微妙であるが、便宜上ここに記載。

大気圏外にいながら、地上からも目視できるほど巨大な姿は地球人を畏怖させたのみならず、
自身を倒すべく現れたウルトラマンの攻撃を物ともせずにあっさりと返り討ちにした、劇中最強の禍威獣。
詳しくは該当項目を参照。


余談


  • デザインを務めたのは前田真宏氏、山下いくと氏、竹谷隆之氏。
    特に山下いくと氏は庵野監督作品の『新世紀エヴァンゲリオン』シリーズに携わったことがあり竹谷隆之氏は『シン・ゴジラ』にも参加した。

  • ゴメスからパゴスまでは『ウルトラQ』の登場怪獣であり、この『シン・ウルトラQ』のダイジェストというべきパートは事前の情報公開がなく、公開日に劇場に来た往年のファンを大いに驚かせた。
    後にこの部分が期間限定公開されたが、そこでも主に初見の視聴者から驚きの声が上がっていた。

  • 『ウルトラマン』のリブート作品である本作に『ウルトラQ』の怪獣が登場するのは、『ウルトラマン』は『ウルトラQ』と地続きの世界観という裏設定からきていると思われる。


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最終更新:2024年12月11日 13:54

*1 画像出典:Twitter 映画『シン・ウルトラマン』公式アカウント @shin_ultraman 2022年6月28日掲載より https://twitter.com/shin_ultraman/status/1541617383575498753?s=20

*2 画像出典:Twitter 映画『シン・ウルトラマン』公式アカウント @shin_ultraman 2022年6月29日掲載より https://twitter.com/shin_ultraman/status/1541979775337541632?s=20

*3 『ウルトラQ』におけるジュランの最期のオマージュ。

*4 画像出典:Twitter 映画『シン・ウルトラマン』公式アカウント @shin_ultraman 2022年7月1日掲載より https://twitter.com/shin_ultraman/status/1542704550003363840?s=20

*5 画像出典:Twitter 映画『シン・ウルトラマン』公式アカウント @shin_ultraman 2022年7月3日掲載より https://twitter.com/shin_ultraman/status/1543519920578646016?s=20

*6 往年の特撮ファンからは『空の大怪獣ラドン』で、ラドンが飛行して街を破壊するシーンを彷彿とさせるという声もある。

*7 『ウルトラQ』のオマージュ。

*8 画像出典:Twitter 映画『シン・ウルトラマン』公式アカウント @shin_ultraman 2022年7月4日掲載より https://twitter.com/shin_ultraman/status/1543882307429285889?s=20

*9 『ウルトラQ』におけるゴーガの初登場回「ゴーガの像」のNG脚本「生きている化石」で使用されていた。

*10 画像出典:Twitter 映画『シン・ウルトラマン』公式アカウント @shin_ultraman 2022年7月5日掲載より https://twitter.com/shin_ultraman/status/1544154098857132032?s=20

*11 厳密にはそのままではなく、頭部は原典を意識した三本の小さなツノが生えている点、胴体は背鰭が無い点などがそれぞれの流用元と異なる。

*12 『ウルトラQ』におけるパゴスの最期のオマージュ。

*13 画像出典:Twitter 映画『シン・ウルトラマン』公式アカウント @shin_ultraman 2022年7月15日掲載より https://twitter.com/shin_ultraman/status/1547777975273373697?s=20

*14 画像出典:Twitter 映画『シン・ウルトラマン』公式アカウント @shin_ultraman 2022年7月19日掲載より https://twitter.com/shin_ultraman/status/1549197333312806912?s=20