宇宙人ゾーフィ

登録日:2022/05/21 Sat 00:09:42
更新日:2022/06/29 Wed 05:47:23
所要時間:約 6 分で読めます




ゾーフィとは、『ウルトラマン』に登場する宇宙人。

種別:宇宙人
体長:2m
体重:50kg軽すぎ


外見はウルトラマンに酷似している…が、これはそっくりに変身しているだけのようである。トサカが黒く染まっているのが特徴。
宇宙恐竜ゼットンを操り地球に攻撃をしかけるが、
自身は頭脳に優れる代わりに戦闘能力は低く、科学特捜隊のスーパーガンで倒されるほど弱いようだ。



追記・修正お願いします。





















   *   *
 *   + うそです
   n ∧_∧ n
 + (ヨ(*´∀`)E)
    Y   Y  *














…結論から言ってしまうと、資料不足による誤情報である。



時は1967年。『ウルトラQ』『ウルトラマン』が立て続けのメガヒットを飛ばし、世間は空前の「怪獣ブーム」に湧いていた。
子供向け雑誌が毎号怪獣特集を組み続けたのは言うまでもないが、なんと大人向けの大手週刊誌である『週刊朝日』までもが「ただいま120匹 怪獣大行進」と銘打った20ページもの特集を打つに至った。
週刊朝日1967年4月7日号に掲載されたこの記事は、ゴジラシリーズやウルトラシリーズ等でそれまでに登場した怪獣を一覧にし、
なんと同年4月9日放送の『ウルトラマン』最終回の登場怪獣まで掲載されているというたいへん豪華な記事であった*1
その中の『ウルトラマン』登場怪獣リストの一番下には、このように記載されていた。

怪獣名 通称 身長㍍ 体重㌧ 主要武器 弱点 出身地
ゼットン 宇宙恐竜 60 3万 口から火の玉 ペンシル爆弾 宇宙
ゾーフィ 宇宙人 2 50㌔ ゼットンをあやつる スーパーガン

ゼットンを操る宇宙人ゾーフィの誕生である。

ウルトラファンの皆様はご存知であろうが、『ウルトラマン』最終回には、宇宙恐竜ゼットンに敗れたウルトラマンを救うためやってきた光の国の宇宙人ゾフィ*2が登場する。
そして、ゼットンを操っていたのは「ゼットン星人」なる宇宙人であり、この2人はまったくの別人である。
ゼットン星人は巨大化していないので身長約2mであり、劇中では銃撃で倒されてしまったのでスーパーガンに弱いというのもその通りである*3
つまり、「ゼットンを操る宇宙人」「同じ回に登場する正義の宇宙人ゾフィ」が混同され、「ゼットンを操る宇宙人ゾーフィ」という謎の存在が誕生してしまったのだ。

どうしてこうなってしまったのか、当時の資料は残っていない。
ただ、「週刊朝日」の記事は『ウルトラマン』最終回とほぼ同時に掲載されていることから、本編を観ることなく円谷プロから提供された情報にもとづいて執筆したものと思われる。

週刊朝日が最終回について知っていた情報が

  • 怪獣「ゼットン」が登場する。
  • ゾフィ」という宇宙人が登場する
  • ゼットンは宇宙人によって操られるが、ゼットンはペンシル爆弾、宇宙人はスーパーガンで倒される

…というものだとすれば見事に三段論法が成立してしまう。
情報の裏取りする余裕や発想もなかったであろうから、ゼットンを操る宇宙人とはゾフィのことだと思ってしまうのも無理はない話であろう。
何しろこの当時ゼットンを操っている宇宙人には固有の名前がなく、単に「宇宙人」と呼ばれていたのだ。
「ゼットン星人」の名前が円谷プロの資料に初めて登場するのは、翌1968年11月のことである。

とはいえ、この間違いを犯したのが「週刊朝日」だけであれば、「ゼットンを操る宇宙人ゾーフィ」はさほど有名になることもなく消えていったであろう。
ところが、この「週刊朝日」の怪獣一覧表は資料としてよほど優秀だったようで、この後「宇宙人ゾーフィ」が掲載された子供向け書籍が頻発する。
一例としては、「ぼくら」1967年8月号および11月号付録、大伴昌司著「怪獣ウルトラ図鑑」(1968年5月)などがある。
おまけに、「週刊朝日」はゾーフィについて文字情報だけで姿は載せていなかったのに、
これらの子供向け書籍は『ウルトラマン』最終回の放送後であるために中途半端に本編の情報を仕入れており、ゾーフィの姿としてゾフィのイラストが掲載されてしまう。
かくして、ウルトラマンそっくりの姿の「宇宙人ゾーフィ」がゼットンを操りウルトラマンを倒したことになるという混沌とした状況になってしまった。
いずれも身長や体重、「ゼットンを操る」「スーパーガンに弱い」という解説、何より「ゾーフィ」というつづりが「週刊朝日」と一致しており、これを参考としたかもしくは孫引きした可能性が高いだろう。
媒体によっては「宇宙恐竜」を「宇宙恐」と、さらに誤字を重ねているものもある。

1967年当時は家庭用ビデオはおろか、再放送もろくになかった時代である。
故に怪獣などのキャラクターに関する情報も不足しがちで、
改訂される前の脚本などを資料としたために、誤った情報が怪獣図鑑の類に載っていることはそう珍しくはなかった。
例えばゲスラは「カカオ豆につく害虫を食べるトカゲが変異した」というのが公式設定だが、
古い本では初期設定であった「ゲラン蜂の幼虫が変異した」という記述がされている場合もある。*4

一応1970年ごろには「ゾフィはウルトラマンを助けに来たM78星雲の宇宙警備隊員である」という正しい記述がされるようになった…が、
外見に関してはいまだ資料不足だったらしく、71年にはっきりとした写真が提供されるまではイラストで代用されていた。
そのイラスト類も、身体の模様や、胸部のボタン状の部分(ウルトラブレスター)の位置が実際と異なるものが多く、
「ウルトラマンと同じ姿だが、赤い線が二重で胸に丸い模様が並んでいる」くらいの情報から推測して描いていたと考えられる。
結局、1972年の『ウルトラマンA』でウルトラ兄弟の設定が本格化し、宇宙警備隊隊長としてゾフィ本人が度々客演するようになるまで、ゾフィの正しい姿はなかなか広まらなかったのであった。


【余談】


  • 2000年代のネットでは、ゾフィーがネタキャラ扱いされていた時期があったが、案の定この「ゾーフィ」もゾフィー弄りの格好のダシとなっていた。
    ゾフィー同様にネタキャラとして愛されている某ライダー誤植ネタを連想した人も多い。

  • 本物のゼットン星人は身長2m・体重60kgとされており、同身長で体重50kgのゾーフィと比べ若干健康的である。



ゾフィーの名誉のために正確な情報の追記・修正をお願いします。



























“嘘から出た実”。私の好きな言葉です。














!!!この先、映画『シン・ウルトラマン』の重大なネタバレがあります。!!!





















「君はこの男の生命を奪ったのか。」




「リピアー…」




「いや、この星に合わせ"ウルトラマン"と呼ぼう」







登録日:2022/05/21 Sat 00:09:42
更新日:2022/06/29 Wed 05:47:23
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ゾーフィとは、2022年公開の映画『シン・ウルトラマン』に登場する外星人(宇宙人)。
「ウルトラマン」…「光の星」の生命体「リピアー」の同胞である。



【容姿】

造形自体はリピアーと変わらないものの、ウルトラマン特有の赤色や銀色が一切存在せず、黄金色の身体に黒のラインを帯びているのが大きな特徴。
『ウルトラマン』最終回に登場したゾフィーと同様に鶏冠部分が黒くなっている他、胸のラインがリピアーより一本多い。

そして何より顔が左右非対称で微妙に歪んでいる
より正確には左目が右目より僅かに丸っぽい造形で傾きが浅くなっているのと、口角が若干右寄りに上がっているのである。
これはウルトラマンジャックの初期マスクが3Dモデルに使われているためであり、見る人によっては言いようのない不安感・恐怖感を覚えるデザインになっている。

劇中ではベーターカプセルによって本体を召喚して巨大化するリピアーとは対称的に、終盤の一場面を除き人間サイズの大きさを保っていた。
また登場シーンの殆どが直立不動の姿勢で、上述の特徴的な顔も相俟って底知れない雰囲気を醸し出している。


【劇中における動向】

禍威獣*5ネロンガが出現し、人類が対策にあたっていた中、リピアーは地球へと降り立った。
ネロンガの攻撃を歯牙にもかけず、逆に自らが放つ熱光線で撃滅するという圧倒的な力を地球人類に知らしめる*6

しかし、リピアーが地球に降着した際に生じた衝撃の余波から、逃げ遅れた子供を庇って地球人・神永新二が命を落としたことをきっかけとし、
「自分ではなく他人のために命を投げ出す」という新二の行為に興味を抱いたリピアーは、死亡した彼と一体化。
以降は新二として過ごし、地球人のことを学ぶ傍ら、彼らを脅かす禍威獣や外星人を本来の姿、彼らが呼ぶところの「ウルトラマン」として排除していた。


その過程でとある外星人との戦いに至るのだが、その最中に姿を現したリピアーによく似た金色の宇宙人こそ、ゾーフィであった。


ゾーフィが地球へ訪れた目的は、「光の星」の掟に背き、他の星の生命体との融合という禁忌を犯したリピアーに代わり地球人を監視すること。

そして…


「先述の外星人が起こしていた行動により、生物兵器としての有用性が判明した地球人類を、悪用される前に根絶させる」という裁定を下すことであった。


そんな彼がリピアーに見せたのは「天体制圧用最終兵器ゼットン
「宇宙に星の数ほどいる知的生命体のうち、一種類を殲滅したとて大勢に影響はない」と考えるゾーフィに、
リピアーは「この星の知的生命体にとっては、自分たちは唯一無二だ。私は母星の決定を過ちと判断する」と兵器の使用、及び地球人の根絶に否定的な意向を示すも、
「光の星」の掟に忠実なゾーフィが聞き入れることはなく、「過ちか。それは君が地球人との融合を行ったことだ」と断じると、ゼットンを起動させてしまう。*7

単身でゼットンに立ち向かうリピアーだったが、力の差は圧倒的で全く敵わず、宇宙から叩き落され重傷を負う。
ゾーフィは満身創痍の彼に、抵抗をやめ人類の最後を見届けるよう進言する。


だがリピアーは諦めていなかった。
これまで仲間として様々な脅威に立ち向かってきた禍特対*8の面々に、自らが考えた「ゼットンを倒すヒント」を託していた。
そして、人類との協力により、ついにゼットンを撃破することに成功する。
しかしその代償は大きく、ゼットンを破壊したことで生じた次元の歪みに飲み込まれていく…。






異次元空間に囚われてしまったリピアーだったが、ゾーフィは彼の「生きたい」という意思を信号として察知して救い出していた。


一連の出来事を見届けていたゾーフィは、ゼットンを倒した人類の勇気と叡智および生命力を認め、地球を静観していくことをリピアーに告げ、光の星へ連れ帰ろうとする。
だがリピアーは、自分のことは省みようともせず新二の身を案じ、今後マルチバース中の外星人達から狙われ、火の粉が降りかかることは避けられない地球の命運を憂う。
彼が抱いていたのは…まさしく「愛」と呼べるものであった。そんなリピアーにゾーフィは言葉をかける。



「ウルトラマン、そんなに人間が好きになったのか…」



リピアーの真意を聞いたゾーフィは、彼を連れ帰るという目的の遂行を中止することはなかったものの、
彼の意思を汲み取り、ベーターカプセルを手に取るとリピアーと新二を分離させ、新二を地球へと送り返したのであった。


そして、目覚めると仲間たちに迎えられていた新二の視点で、この映画は締めくくられる。


【総評】

誤情報にすぎなかったはずの「宇宙人ゾーフィ」がいちキャラクターとして拾われ、映像作品に登場したことは多くのファンを驚愕させた。
一方で、ゾーフィの台詞から本作における「光の星」は、宇宙の秩序のためとあらば星や生命を滅ぼすことをも厭わない方針であることが窺え、
元になったキャラがキャラなだけにこれらの描写がショッキングだったという感想も少なくない。
大のウルトラマン好きで知られる庵野秀明氏だからこそ出来たサプライズとも言える(ちなみに本人は十数年前に教えてもらうまで上述のゾーフィのことは知らなかったそうである)。

とはいえ、ゾーフィ自身は最後まで同胞であるリピアーのことは気遣っており、
ゼットンが撃破されれば地球人の叡智を認め、滅ぼすことを撤回するなどまったくの非情な人物というわけでもない。
もしかすると、地球人の可能性を愚直なまでに信じ続けたリピアーを切欠として、この宇宙の「光の星」も変わっていく…そんなことが起きないとも言い切れない。

「雑草駆除で山ごと吹き飛ばす人」「バルサンを焚く感覚でゼットン出す人」なんて例えもある。星系単位というスケールで見過ごしがちだが、スケールを小さくすると実は割と無茶苦茶なことをやっているのがよく分かる。実際、マルチバースの一つであるこの世界では光の国はその極端さから星間連合に危険視されて封印処分されてしまってるし…


【余談】

  • 映画公開前に明かされていたビジュアルの1つに「そんなに人間が好きになったのか、ウルトラマン。」と書かれており、
    原典におけるゾフィの台詞「ウルトラマン、そんなに地球人が好きになったのか」という台詞を明らかに意識したものであったことから、
    ゾフィにあたる存在が登場するという予想を立てていたファンも少なくなかった。
    • 公開後はゾフィーとゾーフィのセリフを混ぜて「ゼットンを2個持ってきた」なんてネタも。

  • 金色の身体に黒のラインという外見は、ウルトラマンをデザインした成田亨氏が1996年に発表し、亡くなるまで製作し続けていた企画「ネクスト」における金と黒の身体の超人をモチーフとしている。
    また、『ウルトラマンG』の制作にあたり、円谷プロからの依頼を受けて1989年にデザインを描き起こした「ウルトラマン神変」も想起させる*9
    そしてなんの偶然であろうか、現在ストーリーが進行中のとある作品における敵の勢力もまた金と黒の巨人である。
    しかしこの配色、人によって見え方に差がある*10ためか「劇場のスクリーンで見る限りだと銀色の体に青のラインに見えた」という証言も出ている。

  • ゾフィーの特徴であるスターマークがないため、劇中で名乗るまでマスクと体のラインが似ているウルトラマンジャックと誤認した視聴者も多い。
    前述の通り実際にマスクの3Dデータはそちらから取られている。元がゾフィ―のマスクと言われているため解説が「ゾフィーのマスクを流用したと言われる『帰ってきたウルトラマン』のウルトラマンのマスク」とややこしい、回り回ってゾフィー本人の顔とも言える。

  • 担当声優の山寺宏一氏は、日本アニメ(ーター)見本市の企画で製作されたショートアニメ『ザ・ウルトラマン ジャッカル対ウルトラマン』でもゾフィー役を担当している。
    他にも劇場版『オーブ』ガピヤ星人サデス役等でウルトラシリーズには何度か出演している。

  • 5月23日には公式より情報解禁されると共に、ソフビや可動フィギュアなどの商品化も発表された。そして6月4日には「ムービーモンスターシリーズ」としてソフビが発売。
    基本的にはウルトラマンのリペイントだが頭部は新規造形であり、ウルトラマンとは似てるようで異なるあの特徴的な顔つきも見事に再現されている。
    また、劇中ではその姿を見たメフィラスがすぐさま戦闘を中断し撤退を図ったことからか、魔除け的なものとして購入するファンも多いらしく、設置場所である種の大喜利めいたことが起こっている。


追記・修正は外星人同士の戦いを見守りながらお願いします。

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最終更新:2022年06月29日 05:47

*1 最終回の2日前に最終回の内容をリークしたように見えるが、日本の雑誌は「◯月◯日号」といった日付よりだいぶ早く実際の発売日を設定する慣習があるため、実際には4月7日より流通開始は早かったと考えられる。当時の週刊朝日の号数と発売日のずれは不明だが、2022年現在は10日早い。

*2 現在は「ゾフィー」が公式だが、脚本での表記は「ゾフィ」

*3 ただし光線拳銃スーパーガンではなく、大型光線銃マルス133で倒された。

*4 ゲスラは当初イモムシの怪獣として脚本を執筆していたが、着ぐるみの都合でトカゲの怪獣に姿が変更になった

*5 本作における「怪獣」の表記。

*6 因みに本作における"禍威獣"は外星人が他星侵略のために用いる生物兵器という設定で、この世界における光の国もとい光の星は宇宙の秩序を守るため他星文明による明らかな侵略行為が認められた場合の武力介入、原生文明の監視を使命としている。

*7 しかもメフィラスがゾーフィを見るなり即撤退したことを踏まえると、恐らく宇宙ではゾーフィの存在はかなり恐ろしいものという認識が広まっている可能性がある。ウルトラマンが「兵器」と聞いて「ゼットンか…」とすぐに気付いたり、そのスペックを事細かに話していたことから、既に同じ手口でいくつもの星が吹き飛んでいる可能性も…

*8 「禍威獣特設対策室専従班」の略。原典の科学特捜隊に相当する。

*9 結局デザイン料について成田氏・円谷プロ間で折り合いが付かず、「ウルトラマン神変」が映像作品に登場することはなかった。

*10 いつか話題になった、ボーダーのドレスが人によって黒と青、金と白に見える錯視と同じ現象