ファインモーション(競走馬)

登録日:2024/01/05 Fri 01:54:23
更新日:2024/09/21 Sat 11:29:27
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名血の王女

ウイニングポスト9 2022 異名より

ファインモーション(Fine Motion)は日本の元競走馬・繁殖牝馬。

メディアミックス作品『ウマ娘 プリティーダービー』にも登場しているが、そちらでの扱いは当該項目参照。
ファインモーション(ウマ娘 プリティーダービー)


目次

【データ】

誕生:1999年1月27日
父:デインヒル
母:Cocotte
母父:Troy
調教師:伊藤雄二 (栗東)
馬主:伏木田達男
主戦騎手:武豊
生産者:Barronstown Stud and Orpendale
産地:アイルランド
セリ取引価格:-
獲得賞金:4億9,451万円 (中央)
通算成績:15戦8勝 [8-3-0-4]
主な勝鞍:02'秋華賞・エリザベス女王杯

【誕生】

1999年1月27日生まれの鹿毛の牝馬。父はデインヒル、母はココット。
半兄に独英米*1愛日の五ヶ国でGⅠレースを合計6勝した名馬かつお茶の間に馬っ気大公開した迷馬ピルサドスキー*2がいる。
元はアイルランドの牧場の生れで、将来の繁殖牝馬としての活躍を期待され日本の伏木田牧場に購入された。

父のデインヒルはノーザンダンサー直系で、引退後はアイルランドのクールモアスタッドとオーストラリアのアローフィールドスタッドが共同で購入し、両国を行き来するシャトル種牡馬となった馬。
今でこそフジキセキのように北半球と南半球を行き来する種牡馬も割と見かけるが、当時は非常に珍しい存在であり、本馬の産駒が大活躍したことで、シャトルサイアーが急増することになった。

母父トロイは第200回英国ダービー馬。種牡馬4年目に早逝した。BMSとして優秀で1999年英国ダービー馬オースや米国の名種牡馬ストリートクライを輩出している。

さらに母母父にはミルリーフがいるなど、血統表には名を馳せた大種牡馬の名前が並び、その血統を見込まれて調教師である伊藤氏が北海道の伏木田牧場に持ちかけ、2歳の時に購入した。
かねてより伊藤師はアイルランド産馬に関心を抱いており、クールモアと交渉してみると、「牝馬だからいいかな」という感じで交渉成立した。この年のクールモアはGⅠ7連勝の年度代表馬ロックオブジブラルタルの生産に成功していた。

なお姪に熊本県産馬として初めてJRAの重賞を優勝したヨカヨカがいる。ほか近親に阪神JF勝ち馬タムロチェリー、中山大障害勝ち馬レッドキングダム、GⅠ2勝・3年連続で凱旋門賞2着ユームザインがいる。

購入時の金額は1億円以上もの価格設定となったが、
「良質種牡馬を何度か配合すればいずれ産駒で元が取れる*3
「ファインモーション自身も重賞の一つでも取れればそこまで高い買い物ではない」
といった認識だったそう。

しかし調教を積むと競走馬としての才能があったのか、急遽デビューが決定。坂路調教は牡馬顔負け、息を上げずに楽々とこなしていた。
厩舎入りした際には、シンボリルドルフタイキシャトルなどの鞍上を務めた岡部幸雄も「こんな馬と競走する相手は可哀想だね」と、その才能の高さを認めていた。
武豊に至っては一瞬牡馬と勘違いした*4ほどだったとか。

【戦歴】

最強牝馬我が世の3歳秋

2001年12月1日に阪神競馬場の2歳新馬戦芝2000mでデビュー。
鞍上は武豊。ジャパンCで兄ピルサドスキーの2着だった伊藤厩舎エアグルーヴの主戦騎手であった。
一番人気で出走。期待に応えデビューレースで見事に勝利を果たした。
ファインモーションは、松永幹夫を迎え500万下・阿寒湖特別・ローズSと3連勝、早熟のタムロチェリー・桜花賞馬アローキャリーをはるか後方に、手綱を持ったままの置き去りである。

「強い!!12番のファインモーション! 無敗の秋の3歳女王誕生です!

もはや同世代に敵はありません! 無限の可能性が広がりました!」

──石巻ゆうすけアナウンサー

武豊を迎えGⅠ秋華賞へ、単勝支持率72%の1.1倍1番人気、これに応え秋華賞の最大着差3馬身半差で圧勝、レコード勝ちした。
武豊は5月の日本ダービーをタニノギムレットで制して以降、GⅠ5戦連続優勝を達成した。

「新しい歴史の扉~…が開かれました!…ファインモーションです!

…歴史的なスターの誕生です!!ファインモーション!!!

…なんという強さでしょう!!上がり3ハロン33秒6!!

もう言葉も出ません!…本当に強かった!!」

──馬場鉄志アナウンサー

エリザベス女王杯も1.2倍1番人気、シルクプリマドンナ・レディパステル・スマイルトゥモローのオークス馬3頭に加え、最優先4歳以上牝馬ダイヤモンドビコーをも一蹴し、GⅠ二連勝という破竹の勢いでの活躍を見せつけた。
6戦目での古馬GⅠ制覇JRA史上最短記録、そして史上初の無敗での古馬GⅠ制覇となった。デビューから6連続で2馬身差以上の勝利グレード制導入後の最高記録である。

7戦目となる有馬記念ではファン投票3位で単勝2.6倍、ヒシアマゾン以来の牝馬の1番人気となった。二冠馬エアシャカール・二冠牝馬テイエムオーシャン、菊花賞馬ナリタトップロードヒシミラクル、年度代表馬ジャングルポケットを抑え、1971年トウメイ以来の牝馬優勝が期待された。
しかし13番人気の伏兵タップダンスシチーに道中絡まれたことでいつもの走りができず、更には内で秘められていたかかり癖が出てしまい、5着と初黒星となる。優勝したのは同期で同じく海外生まれの末脚自慢シンボリクリスエスであった。
なお、この年のJRA賞最優秀3歳牝馬に選出される。

「馬の温泉」でじっくり休養し8月のクイーンSで復帰、逃げたオースミハルカのクビ差2着とまずまず。しかし毎日王冠ではGⅡ王バランスオブゲームの7着と大敗してしまう。初めて2番人気となったマイルCSでは武豊が勝利を確信する走りを見せたが、デュランダルの鋭い末脚に差し切られ惜敗となった。12月の阪神牝馬Sで何とか勝利を挙げたが、4歳シーズンは前年ほど圧倒的な走りはなかった。

5歳は安田記念で復帰し3番人気となった。しかし大きくかかり暴走、「武豊ジェットスキー」と笑われる中13着に撃沈してしまう。
馬群を避けて大外回しの競馬となった函館記念2着を経て札幌記念に出走、最後方待機から追い上げてバランスオブゲームを半馬身差抑え優勝した。武豊が如何にファインモーションを制御するのに苦労していたかがよくわかる。
そしてマイルCSでデュランダルの連覇を見届ける9着を最後にレースを引退した。

生涯戦績は15戦8勝[8-3-0-4]、獲得賞金は4億9451万円。
勝利以外の7戦においても着外は2回だけ、内3回は2着とかなりの実力馬であった。

【引退後】

引退後は繁殖牝馬入り。
しかし、初年度のキングカメハメハとの交配を始め、何度交配しても受胎ができなかった。
後に医師が確認したところ医学的理由により、生まれつき子供が作れない体をしていたことが判明。
伏木田牧場の繁殖牝馬としての目論見は予想外の事態によって崩れることになってしまった。

こうして繁殖牝馬としての未来は失われてしまったものの、競走馬としては目覚ましい活躍を見せていたこともあり、
2024年現在も伏木田牧場の功労馬としてのどかに余生を過ごしている。

【その後】

  • ファインモーションの調教助手であった笹田和秀はこの時の経験を生かして調教師となり、デュランダル産駒のエリンコートでオークスを優勝している。
  • 当初の目的を達成できなかった伏木田牧場であったが、それでもファインモーションはかけがえのない存在だった。というのも86年鳴尾記念をロンスパークで制してから重賞タイトルが遠ざかっていた牧場にとっては、待望の活躍馬だったからだ。伏木田修代表は「『お助けホース』ですよ。牧場(の経営)が苦しい時に助けてくれましたから」とコメントしている。
  • 伏木田修代表いわく「自己主張が強い馬ですが、さびしがりやな面があって周囲に馬がいないとダメなタイプ」「(20年間共に暮らしていて)腰を痛めたことはありますが、本当に健康な馬で今まで内臓面での病気や不安は1度もありません」
  • 秋華賞制覇により伊藤調教師は牝馬三冠達成となった。牝馬二冠マックスビューティをはじめ、シャダイカグラ・ダイイチルビーエアグルーヴを管理した伊藤師をして「今迄の自厩舎の名牝達の良い所を全て合わせたような馬」と絶賛であった。
  • 繁殖入りしなかったため心身ともに年齢以上に若々しい。2021年までアメリカ生まれ2歳上のピッコロプレイヤーという馬にお世話係を命じ悠々自適な生活を送っていた。ピッコロプレイヤーの死後はウォーターエナンに2代目お世話係を命じている。2022年にはエンジェルパイロにもお世話係を命じた。後述の「ウマ娘 プリティーダービー」に「SP隊長」なる存在がいる。アニメにおいて牝馬と特定されており、ピッコロプレイヤーではないかという見解もある。


【創作作品での登場】

ローズS回で初登場。伊藤調教師期待の馬として、同じ厩舎繋がりでマックスビューティの霊の薦めで様子を見に行ったエアグルーヴと対面したが、そこにはかつてグルーヴの前でそそり立てた兄ピルサドスキーもおり…。
続く秋華賞とエリザベス女王杯は他の馬がメインとなったため影が薄かったが、2003年クイーンS回ではファインの強さに圧倒されていたオースミハルカが、ライバルの意外な面を知り重圧から解放されファインを撃破。
2003年マイルCS時にはエリザベス女王杯後の迷走とマイルCS2着が「国を追われた姫君が、流浪の果てひょんな事から騎士にエスコートされる」物語として描かれた。
また2004年函館記念出走時には参戦決定時の対応が、低迷するスティルインラヴ(牝馬三冠)を励ますアドマイヤグルーヴ(エリザベス女王杯馬)から「したたかさ」と例えられていた。

  • 『優駿たちの蹄跡』
第116戦「ファインな女」に登場。
男社会の中で男に負けない活躍を見せる「完璧(ファイン)な女」の象徴として描かれている。
しかし、満を持して挑んだ有馬記念ではどこか様子がおかしく……。

厩舎関係者に「本物のお嬢様」「お嬢」と呼ばれていたからかおしとやかなお嬢様気質。
アイルランド出身の留学生で実はやんごとなき家の出という噂もあるが、味覚は庶民派らしく日本で食べたラーメンが好物。カップ麺でもいいらしい。

後に育成キャラとして実装された際にアイルランドのガチ王族である事が判明しており、
キャラスト1~4話では「危険だから」とトレセン学園に留学させながらもレース出走を禁止する家族の説得に重点が置かれたものになっている。
なおその結果キャラストの話数としてはともかく時系列的には選抜レース前に両親に紹介してファインを託されると言うある意味結婚RTA最速更新をやらかしている

【余談】

繁殖馬入りから引退までの出来事については、情報が一部混乱しているが、
明確なソースがあるのは、
「スポニチと週刊ギャロップでは記者の手で『染色体異常』と書かれた記事がある」
「競走馬のふるさと案内所掲載のコラムでは伏木田牧場の関係者が実名で『医学上の理由』と説明しており、染色体と断言していない」
という所まで。

この話に伝言ゲームで尾ひれがついた結果、「ファインモーションは染色体上では牡馬だった」というトンデモな噂が広まっている。
この噂に関しては少なくとも繁殖入りに際して牝馬に課される検診はパスし、実際に交配までは行われたのだからとても考え難い可能性であるし、
だいたい染色体異常を書いた記事もそこまで主張しているものは存在しない。
要約による誤解が発生しないよう本件については原文を引用します。

実際の記事リンク・原文の記述
スポニチ:https://keiba.sponichi.co.jp/news/20180724s00004048199000c
引退後、染色体の異常で子どもを生めないことが分かった。
競走馬のふるさと案内所:https://uma-furusato.com/column/56739.html
「もう、種付けはしてないんです。医学的に(受胎は)無理だと言われました」と伏木田さんは、表情を変えずにファンに状況を報告していた。

気性は結構悪かったらしく、武豊は
歳を重ねるにつれて頑固なオバサンに変身
と評している。
また栗東トレセンの坂路調教コースへの馬道でスイープトウショウと共に立ち往生して通行止めにしたり、坂路を駆け上がって乗り手を振り落としたり、馬房に置いてあった岩塩を隣の馬*5と共謀して破壊したなんてことも。


遅れてきた乗客

少し急ぎ足で来たんですよ
あふれるほどの才能を
詰め込んだバッグ抱えて

すぐに追いついたのだから
許してくださるでしょう
では先頭車両へと続く通路を
あけていただけるかしら

だってあの特等席は
この旅のヒロインのために
予約されたシートだもの

名馬の肖像 2022年秋華賞

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最終更新:2024年09月21日 11:29

*1 BCターフは持ち回り開催で開催地はカナダだがアメリカ競馬のレース。

*2 父ポリッシュプレセデント

*3 2000年代はじめに日本の種牡馬リーディング上位にいたサンデーサイレンスやトニービン、ブライアンズタイムらと交配しても産駒に3×4以上のクロスができないため、日本の優秀な種牡馬を宛てがいやすい血統だったのは事実。

*4 デビュー前のファインモーションに跨った際、その力強さに思わず伊藤調教師に「これでダービーに行きましょう」と進言したところ、伊藤調教師から「牝馬だけどな」と返され、慌ててファインモーションの股座を覗き込んで確かめたという事を本人がインタビューで語っている。

*5 誰かは不明。その事が掲載された雑誌記事でも触れられておらず