エアシャカール(競走馬)

登録日:2023/08/09 Wed 03:45:00
更新日:2025/04/20 Sun 01:53:57
所要時間:約 6 分で読めます




エアシャカール(Air Shakur)とは日本の元競走馬

メディアミックス作品『ウマ娘 プリティーダービー』にも登場しているが、そちらでの扱いは当該項目参照。
エアシャカール(ウマ娘 プリティーダービー)


目次

【データ】

誕生:1997年2月26日
死亡:2003年3月13日
享年:6歳
父:サンデーサイレンス
母:アイドリームドアドリーム*1
母父:Well Decorated
調教師:森秀行 (栗東)
馬主:ラッキーフィールド
生産者:社台ファーム
産地:千歳市
セリ取引価格:-
獲得賞金:5億4,505万円 (中央)
通算成績:20戦4勝[4-6-1-9]
主な勝鞍:00'皐月賞・菊花賞

【概要】

1997年2月26日生まれの黒鹿毛の牡馬。
父はご存知サンデーサイレンス、母はアイドリームドアドリーム。二歳上の半姉(父ノーザンテースト)に重賞馬エアデジャヴーがいる*2

競走馬登録をした際には「エアスクデット」という名で登録されたが、出走前に「エアシャカール」に改名された。
馬名の由来は「スクデット」のほうはイタリア語で「小さな盾」を意味する単語だが、
意味合いとしては「セリエAで優勝したチームの選手に贈られる小さな盾(スクデット)形のバッチ」が転じて「優勝」そのものを指すようになった単語。
「シャカール」はアメリカのヒップホップMC兼俳優である"2PAC"こと"トゥパック・アマル・シャクール"に因んで*3のもの。
余談だが2PACと同世代で鎬を削りあったMC兼ラッパーのノトーリアスB.I.G.が命名由来となった「エアノートリアス」という競走馬も実在する(馬主はシャカールと同じくラッキーフィールド)。

主戦騎手はお馴染みの武豊の他、ミルコ・デムーロや蛯名正義なども騎乗経験あり。
生涯戦績は20戦4勝[4-6-1-9]、獲得賞金は5億4505万円。

血統面を含めてデビュー前から「クラシックを狙える大器」と期待されていたが、
同時にとんでもなく繊細で気性難とも言われていたらしく、当時の厩舎スタッフ全員が一丸となって作業分担し、代わる代わる世話をしていたなんていう逸話もある。
主戦騎手である武豊にとっても、エアシャカールの気性難と暴れっぷりは規格外の酷さだったようで、
「サンデーサイレンス産駒の悪い特徴が全部集まったような馬」「頭の中を見てみたい」などと、辛辣すぎるコメントを残している。
またレース中は右への斜行癖もずっと抱えていた。

【戦歴】

1999年10月31日に東京の新馬戦芝2000mでデビュー。
デビュー戦ではユーワシーザーに敗れて5着となってしまうものの、続くリベンジとなる未勝利戦では見事に勝利。
その後、4戦目となるホープフルステークスでの勝利。続くGⅡの報知杯弥生賞での2着入賞と弾みを付けた上で、初のGⅠレースともなる皐月賞に挑戦。
ダイタクリーヴァとの接戦をクビ差で制し、見事クラシック三冠の一つ目を獲得した。

続いて挑んだ東京優駿(日本ダービー)では1番人気と前評も十分だったのだが、第3コーナーから差し掛かる辺りで仕掛けたところ、後方のアグネスフライトがそれに食らいついていく。
両馬鞍上にとっても負けられない戦いでもあり、エアシャカール鞍上の武豊は史上初ダービー3連覇*4意地が、
アグネスフライト鞍上の河内洋は27年目にして初のダービージョッキーをかけたレースでもあった。
ゴール直前で

河内の夢か! 豊の意地か! どっちだぁー!!

と実況されたことからも注目を集めていた。
最終直線、末脚を繰り出したアグネスフライトが猛追し、最終的にほぼ2頭同時に並んだままゴールイン。
写真判定の結果、アグネスフライトがハナ差僅か7cm前を行っていたことから2着。
ダービー後はなんと海外遠征、皐月賞後から検討されていたイギリスのGⅠ「キングジョージ6世&クイーンエリザベスダイヤモンドステークス」(KGⅣ&QEDS)に出走するも、数多の日本競走馬の夢を食らってきたモンジューに手も足も出ず、8馬身以上離されての5着という結果に終わる。

帰国後は神戸新聞杯の3着入賞の後、クラシック三冠最期の1つである菊花賞に挑戦、トーホウシデンをクビ差で下して勝利(アグネスフライト5着)。
三冠達成はならずとも、クラシック三冠で二冠を達成するという十分すぎる成績を残すに至った。
ちなみにその後二冠馬や三冠馬の複数登場、春クラシック馬の菊花賞回避(天皇賞(秋)や凱旋門賞挑戦、馬の故障等)が重なった事で、「皐月賞馬とダービー馬が相争う菊花賞」は2023年菊花賞まで22年間途絶える事になる

……しかし、次に挑んだジャパンカップ。
この時点で既に重賞6連勝という全盛期の真っただ中にあった"世紀末覇王"テイエムオペラオーと、
その背を常に追い続け後続の2着争いすら許さなかったメイショウドトウという2大巨頭に成す術無く……どころか14着と惨敗。
その後も春秋天皇賞や宝塚記念、ジャパンカップへのリベンジといった数々のGⅠレースに果敢に挑んでいったものの、
入着こそあれ勝利を得ることは叶わず、2002年12月22日の有馬記念9着を最後に競走馬を引退した。

【引退後】

引退後は種牡馬入り。
…だがその気性難ぶりは種牡馬入り後も健在だったのか、引退から3ヶ月後の2003年3月13日、放牧中に事故を起こして左後脚を骨折してしまい、そのまま安楽死処分という最期を迎える。
そのため産駒はたったの4頭でいずれも牝馬。自らの雪辱を子に託すことも(ほぼ)叶わず、2頭が繁殖入りしたもののすでに子孫は残っていない。

【余談】

エアシャカールを擁する2000年クラシック世代は、テイエムオペラオー率いる覇王世代こと99世代とその覇王の絶対王朝に終止符を打った01世代に挟まれGⅠ戦線では苦戦
特にエアシャカールはシニア期にはその気性難ぶりも合わせて成績が低迷したことから、クラシック二冠という偉業がかえって枷となってしまった一面もあり、最弱世代の代表みたいな酷評を受けてしまうこともあるなど、悲劇的な運命を背負った競走馬だったといえる。
ちなみに「世代全体が最弱」の批判はその後アグネスデジタルタップダンスシチーなどの外国産馬が古馬期に相次いで覚醒した事で鎮静化していったが、つまりクラシック組である内国産馬の評価は変わらなかったというオチであった*5

なお、この評を決定的にしたのが上記14着となったジャパンカップ。
二冠馬エアシャカール、ダービー馬アグネスフライト、NHKマイル馬にして後のジャパンカップダート馬イーグルカフェ(外国産馬)、オークス馬シルクプリマドンナと、
「クラシック世代のトップ4が揃った」と言える布陣で臨んだ結果、16頭立てのレースで13着~16着の下4つを独占
レース結果が荒れもせず1-5-2番人気決着で3番人気エアシャカールと4番人気アグネスフライトを抜けばガッチガチというのも悪かった*6
同期の芝、ダート、果ては海外レースまで自由気ままに勝利してみせた勇者との扱いの差に泣けてくる…

【創作作品での登場】

あの武豊をして「頭かち割って中身見てみたいわ」と言わしめたほどの気性を反映してか、パンクな容姿で非常にガラが悪い。名前の由来がヒップホップアーティストということでDTM制作が趣味の一つ。
しかしぱっと見の印象とは裏腹にデータとロジックを絶対視するスーパーハカーガチガチの頭脳派で、言うなれば「(常人には)何を考えているかわからない」という好意的な解釈であり、結果的にはむしろ人一倍常識的なキャラに落ち着いている。なんなら公式でツッコミ役の代名詞扱いされた事すらある。
アプリ版のシナリオ(本人のみならず周辺含む)ではその無念の競走生活ぶりが強くフィーチャーされており、「定められた運命に苦しみ、抗う」という方向性で描かれている。
また、なぜかウマ娘世界で今の所姿が見えない史実でのライバルアグネスフライトの全弟アグネスタキオンが、ウマ娘では似て非なる頭脳派キャラであり、そこも含めて意識されているかは不明だが意見の相違でよく対立している。


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最終更新:2025年04月20日 01:53

*1 I dreamed a dream,日本ではミュージカル版『レ・ミゼラブル』内の同名曲の邦題から「夢破れて」と訳されることが多い。

*2 繁殖入り後重賞馬エアシェイディと秋華賞馬エアメサイアを産んでおり、孫世代以降も大阪杯を制したベラジオオペラを筆頭に重賞馬を複数輩出している。

*3 英名表記だとShakur。シャクール⇔シャカールは単に表記揺れ。

*4 98年スペシャルウィーク→99年アドマイヤベガ。2022年現在、2連覇したジョッキーは98-99年武豊を含め、07年ウオッカ→08年ディープスカイの四位洋文、20年コントレイル→21年シャフリヤールの福永祐一の3人のみで、3連覇は未だ現れていない。

*5 一応内国産馬組でもGⅡ産経大阪杯で世紀末覇王を撃破したトーホウドリームや地方ダート路線でGⅠ級2勝のカネツフルーヴ、繁殖入り後成果を出したアッミラーレ・ニューイングランド・ゴールドヘイロー(3頭ともエアシャカールと同父の種牡馬)・オリエンタルアート(繁殖牝馬)等活躍馬はいるのだが。

*6 クラシック世代を抜けばほぼほぼ人気通り=実力がモロに出るようなレースと取られ、そんなレースで世代トップ4揃い踏みした結果着順下位4つ独占とかかましてしまったクラシック世代のレベルがどう見られるか、と言う問題である。