タップダンスシチー(競走馬)

登録日:2023/12/18 Mon 07:14:33
更新日:2024/03/10 Sun 01:09:47
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これがオレ達の走りだ。

駆け引きなんて必要ない。お互いを信じて、ただひたすら「自分の競馬」に徹する。
それが彼らの築き上げた、勝利へのセオリー。
タップダンスシチーと佐藤哲三。信頼の絆で結ばれた人馬の、
熱く、力強い走りが、私たちの心を惹きつける。


タップダンスシチー(Tap Dance City)とは日本の元競走馬

メディアミックス作品『ウマ娘 プリティーダービー』にも登場しているが、そちらでの扱いは当該項目参照。
タップダンスシチー(ウマ娘 プリティーダービー)

目次

【データ】

生誕:1997年03月16日
父:Pleasant Tap
母:All Dance
母の父:Northern Dancer
生国:アメリカ合衆国
生産者:Echo Valley Horse Farm & Swettenham Stud
馬主:(株)友駿ホースクラブ
調教師:佐々木晶三 (栗東)
主戦騎手:佐藤哲三
生涯戦績:42戦12勝[12-6-7-17](中央競馬41戦12勝、海外1戦0勝)
獲得賞金:10億8422万1000円

主な勝鞍:03'ジャパンカップ(GⅠ)、04'宝塚記念(GⅠ)、03'~05'金鯱賞(GⅡ)、03'京都大賞典(GⅡ)、02'チャレンジカップ(GⅢ)

【誕生】

1997年3月16日生まれの鹿毛の牡馬。
父Pleasant TapはアメリカG1競走2勝を挙げたほか、1991年のBCスプリント2着、1992年BCクラシック2着の実績馬。
母All Danceはノーザンダンサー産駒で、現役中1勝を挙げたのみで目立った活躍は無し。タップダンスシチーはその11番仔にあたる。

友駿ホースクラブが購入し、1歳の秋に日本に輸入される。一口6万円×500人の総額3000万円で出資者を募り、
父の名"Pleasant Tap"+母の名"All Dance"に冠名「City(シチー)」を合わせて"Tap Dance City(タップダンスシチー)"と命名された。

彼の半兄にあたるクリプトシチ―が栗東の佐々木晶三厩舎に所属していた縁もあり、同じく佐々木晶三厩舎に入厩。
デビューは2歳の秋を予定していたが、手綱に躓くアクシデントにより、舌を噛み千切りかけるほどの大けがを負ったためデビューは3歳の3月にまでズレ込むことになる。

【戦歴】

3歳~4歳

2000年3月04日に阪神競馬場の新馬戦芝2000mでデビュー。
新馬戦こそ9着に敗れるものの、次走の「2回目」新馬戦で勝利すると、4戦目に重賞初挑戦となる京都新聞杯でダービー馬アグネスフライトの3着と好走。
しかしその年は900万下の条件戦・天竜川特別の1勝に留まる。
4歳になった翌2001年は怪我の影響もあり、6戦走ったものの未勝利で年内を終えた。

5歳

5歳となる2002年の初戦は久々の重賞・日経新春杯。3着に敗れるものの、その後1000万下と1600万下の条件戦を2連勝。5歳にしてようやくオープンクラスへの昇格を果たす。
昇格初戦となる日経賞ではアタマ差の2着と好走したが、続く3戦では勝利を挙げることができなかった。

ここまで22戦4勝。この出世の遅さは佐々木師によれば、タップダンスシチーの気性を原因に挙げており、パドックなどで入れ込む様子はさながら名の如く「タップダンス」をしているようだと例えられている。
またここまで10人もの騎手が騎乗*1し、主戦と呼べる騎手が定まらなかったことや、父やその産駒が短距離から長距離まで実績を挙げたことに加え、幅広い世代で勝利を挙げていただけに、適正距離や活躍時期を見出せなかったことも理由に挙げている。

転機となったのはチャレンジカップ。鞍上は「たまたま」空いていた佐藤哲三。
スタートから3番手を追走し、直線で抜け出す。ただ後ろから2頭が接近しており、激しい先頭争いを繰り広げるもクビ差で差し返して捻じ伏せ、念願の重賞初勝利。しかも走破タイム1分58秒1はレースレコードであり、それ以降引退まで佐藤が鞍上を務めることになる。
その後京都大賞典・アルゼンチン共和国杯・京阪杯と重賞3連戦を敢行。勝利こそできなかったが全て掲示板内に入る健闘を見せた。

年内最後はG1初挑戦となる年末のグランプリ・有馬記念。ファン投票50位に選出され、当日の人気はブービー13番人気。
メンバーも錚々たるメンツが集まっており、
それ以外にもテイエムオーシャンやノーリーズンも集まるなどG1ホース勢揃いのドリームマッチとなった。

ファインモーションがハナに立ったため2番手を追走。ファインモーションがペースを落とした向こう正面でお構いなしとばかりに先頭に立つとペースアップ。後続を大きく突き放し最終コーナーを先頭で通過し、さらに後方に控えていたほとんどが伸びを欠いたため、人気薄の逃げ切り勝ちを収めるかと思われた。
……しかしただ1頭だけ、タップダンスシチーを猛追する漆黒の影がいた。この年の天皇賞(秋)を制した3歳馬・シンボリクリスエスであった。
その爆発的な末脚で交わされたものの粘り切り、半馬身差の2着を確保する大激走を披露した。

6歳

初戦はOP戦・メトロポリタンステークス*2。有馬記念2着から一気にランクを落としての参戦だが、激走はフロック視されたのか7番人気と人気薄だったものの2馬身差つけての勝利。
続く金鯱賞では翌年の安田記念を制するツルマルボーイやG2番長バランスオブゲーム、牝馬二冠含むG1競走3勝のテイエムオーシャンらを抑えて勝利、重賞2勝目を挙げる。
次走は春のグランプリ・宝塚記念で、ファン投票では12位に選出。
G1馬や後にG1馬となる8頭が集まり「史上最高」と呼ばれる豪華メンバーが一堂に会し、当日は4番人気の支持を集める。
ハナを譲り先団につけると外を回り、最終コーナーで先頭に立つ場面もあったが余力は無く、ヒシミラクルやツルマルボーイに交わされるも粘り切り、シンボリクリスエスやネオユニヴァースに先着する3着と好走。
その後休養し、秋の京都大賞典では宝塚記念を制したヒシミラクルを2番人気に押し込めての1番人気に支持される。
スタートから先頭に立つが、ヒシミラクルに後ろからぴったりマークされる展開に。スローペースの逃げを打ち先頭のまま最終コーナーに入ると仕掛けてきたヒシミラクルを突き放し、1998年セイウンスカイ以来の逃げ切り勝ちとなる重賞3勝目を挙げる。
ただ、タップダンスシチーに府中2000mは向いていないという佐々木師の見立てにより天皇賞(秋)への出走は見送っている。

選んだ次走はジャパンカップ。
仏G1・サンクルー大賞連覇に香港ヴァーズ勝ち馬のアンジュガブリエルやBCターフを制したジョハー、豪G1コックスプレートを制したフィールズオブオマーなど外国馬9頭に、迎え撃つ日本勢はシンボリクリスエスやネオユニヴァースなど9頭というハイレベルな顔ぶれ18頭が出揃った。
当日は4番人気で、前日からの雨が影響して重馬場での開催。
1枠1番の最内枠からスタートし次第飛ばし、後続との差を広げていく。第2コーナー時点で4~5馬身ほどのリードをつけても差を広げ、向こう正面から第3コーナーに入るとその差は10馬身にも及ぶ、まさしく「大逃げ」を打った。
その差をキープしたまま直線に入ると、上がり3ハロンを37秒4の末脚で駆け抜ける。一方の後続は、最速の上がりを記録したネオユニヴァースでさえ37秒0。故に差はほぼ縮まらず、2着につけた差は驚異の9馬身

2400!逃げ切るとはこういうことだ!
見せてくれた仮柵沿い!タップダンスシチーです!
(フジテレビ・塩原恒夫アナ)

タップダンスシチー! 広い府中を一人旅!
(ラジオNIKKEI・小林雅已アナ)

G1競走初制覇。それも、同じく乾坤一擲の大逃げを打ったカツラギエース以来19年ぶりの逃げ切り勝ちにして、1998年ジャパンカップでエルコンドルパサーエアグルーヴにつけた2馬身半の最大着差記録を大きく塗り替えた上、JRAG1史上最大着差を更新。
また(株)友駿ホースクラブは1986年阪神3歳Sのゴールドシチー以来17年振りのG1制覇、鞍上の佐藤哲三も1996年朝日杯3歳Sのマイネルマックス以来7年振りのG1制覇、さらに佐々木晶三厩舎は開業10年目にして初のG1制覇となった。
有馬記念はシンボリクリスエスに次ぐ2番人気に支持されたが、ラストランとなるシンボリクリスエスがお返しとばかりに2着に9馬身をつける圧勝の後方で8着と敗北。

7歳

有馬記念後は休養し、復帰戦は前年制した金鯱賞。出走12頭のうち9頭が重賞馬、さらに三冠牝馬スティルインラブを含む4頭がG1制覇という超豪華メンバーでの開催であった。
スタートからぶっ飛ばす2頭に続く3番手につけると、向こう正面から第3コーナーにかけて捲って進出。最終コーナーを先頭で通過し、後続もアタマ差凌いで勝利。
金鯱賞初の連覇にして、走破タイム1分57秒5は1998年に衝撃の大差逃げ切りで制したサイレンススズカの1分57秒8を上回るレースレコードであった。

続く次走は宝塚記念。ファン投票では6位だったが、当日の人気は3.5倍の1番人気。
前半1000mを58.5秒というハイペースで飛ばす先頭を3番手で追走。第3コーナー手前でペースを落としたローエングリンらを交わして早めのスパートをかけ先頭に立つと、後続を2馬身差突き放して入線。G1競走2勝目を挙げた。
7歳馬による宝塚記念制覇は「老雄」スピードシンボリ以来2頭目であり、走破タイム2分11秒1は、1994年のビワハヤヒデが記録した2分11秒2を超えるレースレコードとなった。

宝塚記念後は放牧に出される。その次走は10月3日に開催される世界最高峰のG1、凱旋門賞
前年のジャパンカップを制した時点で挑戦が検討されており、金鯱賞をレコード勝ちしたことで正式に出走が決定している。
日本国内で十分に調整してから出国し挑む予定……だった。
しかし追い切りも追え、あとは出国するだけという段階で、タップダンスシチーが収まるハズだったカーゴ便が故障。その上代替機も用意できず、次の便が29日発ということもあり、調整が上手くできないと判断し出走を断念。
……と思われたが、ファンの強い要望もあって方針を転換。29日の便で出国し挑戦することが発表された。
これを受けて陣営は予定を再構築。29日に最終追い切りを行い、10月1日に日本を出国、その日の午後にフランスに到着という超スピード日程の強行軍であった。
体重も宝塚記念から3kg減と輸送の疲労は見られず、また鞍上の佐藤も「JCや宝塚の時のほうがしんどそうな馬場だったし大丈夫」と、不安は見られなかった。
この年は有力馬の回避もあり大混戦の様相を呈し、7番人気の支持を集めた。

しかし、前日まで良好だった状態は当日の輸送でテンションが上がったことで一気に悪化し、パドックでは悪癖・タップダンスが炸裂。
ちなみに当時厩舎未開業だった矢作芳人調教師*3がフランスに滞在しており、入厩してきたタップダンスシチーを見て「入厩したばかりというのに、しっかりと常足で落ち着いて歩いている」「これならやってくれるかも!」と考えていたのだが、当日のパドックでタップダンスを炸裂させるその姿に「昨日の馬とは別馬な印象」を抱いたという。
本番では先行策を取り直線で逃げ馬に並びかけるも失速し、Bago*4の17着と惨敗。

帰国後は有馬記念を目標とし、当レースをラストランとすることが発表されたが、本番4日前に引退を撤回。
ゼンノロブロイやコスモバルクに次ぐ3番人気の支持を集め、スタート直後から単騎の逃げを展開し最終コーナーを後続との差を広げながら通過。しかし直線でゼンノロブロイに交わされ、未だ破られていないレースレコードと共にテイエムオペラオー以来2頭目の秋古馬三冠の達成を半馬身後ろから見届ける2着につけた。

8歳

初戦は3連覇のかかる金鯱賞。単勝1.4倍の1番人気の支持を集める。大外枠からハナを奪いスローペースの逃げを打つと、後続を2馬身半突き放して優勝。
1956年~58年鳴尾記念を3連覇したセカイオー以来47年ぶり2頭目となるJRAサラ系平地同一重賞3連覇を達成*5。またこの勝利により獲得賞金が10億円を突破し、テイエムオペラオー、スペシャルウィークに次ぐ賞金獲得額は史上3位につけた。

しかしその後は精細を欠き、宝塚記念7着の後秋古馬王道G1を連戦するも全て着外に敗れ、競走馬を引退した。
有馬記念後には引退式が執り行われ、ジャパンカップを制した「1」のゼッケン姿が披露された。

【引退後】

引退後はブリーダーズスタリオンステーションで種牡馬入りしたが、地方重賞馬が2頭のみ*6と目立った活躍をする産駒があまりにも少なく、わずか6年で種牡馬を引退。
種牡馬を引退した後は去勢されて乗用馬に用途変更となり、ノーザンファーム天栄でスタッフの乗馬訓練用の練習馬となった。
その後一時的に行方不明になったことからちょっとした騒ぎになっていたが、現在では茨城県にある個人所有の牧場で余生を過ごしている。

【創作作品での登場】

2023年2月『ぱかライブVol.26 2周年記念ウマ娘冬の陣!』にて発表。「シチー」冠(友駿ホースクラブ)からは2人目の実装となった。
大金や名声のために走ると豪語し「巨大な城を建てる」と豪語しているが、彼女が何より叶えたい"ロマン"のために必要なことらしい。
ちなみにアメリカから来た留学生で、金鯱賞3連覇という経歴からか、耳飾りのデザインが鯱になっている。
リニューアルされたキービジュアルにも中央左、デアリングタクトの隣に勝負服姿で登場している。

2023年3月20日に実装されたシンボリクリスエスの育成ストーリーにて登場し、勝負服モデルも実装済みと判明。
キャラ設定及びCVも同時に公開されている。

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最終更新:2024年03月10日 01:09

*1 四位洋文、熊沢重文、幸英明、松田大作、中舘英二、安藤勝己、川原正一、武豊、オリビエ・ペリエ、勝浦正樹

*2 この年は東京競馬場リニューアル記念と改称しての開催

*3 つば付き帽子をトレードマークに、海外遠征にも積極的に挑む国際派トレーナーであることから「帽子の男」「世界の矢作」とも称される関西の名伯楽。主な管理馬は無敗の三冠馬コントレイル、日本馬初のBC制覇を成し遂げたラヴズオンリーユー&マルシュロレーヌ、日本馬初のサウジカップ制覇を成し遂げた「令和のツインターボ」パンサラッサ、牝馬初の春秋グランプリ連覇を達成したリスグラシューなど。

*4 バゴ。2007年菊花賞馬ビッグウィークや、秋華賞やグランプリ3連覇の牝馬クロノジェネシスなどの父

*5 2023年現在ではセカイオーやタップダンスシチーのほか、2005年~07年函館記念のエリモハリアー、07~09年オールカマーのマツリダゴッホ、13~15年阪神大賞典のゴールドシップ、15~17年ステイヤーズステークスのアルバートの6頭のみ

*6 ちなみにその内の一頭タッチデュール(笠松競馬でジュニアクラウン等重賞4勝)は、引退後2023年現在は自身の母やメイショウドトウ号らと共にノーザンレイクで余生を過ごしている。