カルストンライトオ(競走馬)

登録日:2024/08/09 (金) 3:00:00
更新日:2024/08/28 Wed 16:34:00
所要時間:約 10 分で読めます





カルストンライトオ(Calstone Light O)とは、かつて日本で生産・調教された元競走馬・種牡馬。
新潟千直のレコードホルダーにして、ダービージョッキー大西直宏にサニーブライアン以来となる中央GⅠの栄冠を捧げた光速の短距離王である。
メディアミックス『ウマ娘 プリティーダービー』におけるカルストンライトオについては当該項目を参照されたし。






データ

生誕:1998年5月3日
死没:2024年2月7日(26歳没)
父:ウォーニング
母:オオシマルチア
母父:クリスタルグリッターズ
調教師:大根田裕之(栗東)
生産者:大島牧場
馬主:清水貞光
主戦騎手:熊沢重文→大西直宏
生涯成績:36戦9勝(国内35戦9勝、海外1戦0勝)[9-4-7-16]
獲得賞金:4億2204万4000円
主な勝鞍:スプリンターズステークス(’04年・GⅠ)、アイビスサマーダッシュ(’02,’04年・GⅢ)

清水オーナーの実子にキタサンブラックを管理した清水久詞調教師がいる。

冠名の「カルストン」は清水オーナーが本業(建築会社の代表取締役)で使用する軽石(軽「ストーン」)に由来。
また、当初は「カルストンライトオー」にするはずだったが、文字数制限に引っかかった事で「カルストンライト」という独特の名前が与えられた。
ちなみに清水オーナー率いるカルストン軍団だが、カルストンライトオ以外に「オー」が入り切らなかった馬が少なくとも10頭*1存在する。
冠名が長いとこういうときに苦労するということなのか、はたまた馬名文字数制限が短すぎる*2のか。



血統背景

ウォーニングはイギリス生まれのマイラーでハーリド・ビン・アブドゥッラー殿下*3所有馬。
殿下所有のバンステッドマナースタッドで種牡馬入りし、一定の活躍後に日本に輸入され、英日両国で短距離戦を中心に*4活躍馬を輩出した。
ちなみにこのウォーニング、昨今では極めて衰退した(オブラート)ゴドルフィンバルブの直系子孫であり、その中でも唯一現代競馬血統史に蹄跡を残すマッチェム系の筆頭格……すなわち初代ビッグ・レッド御大の直系子孫に当たる。マイラーとしての実績もさることながら、その血統希少性をも評価されてのスタッドインだったことは想像に難くない。

オオシマルチアはどこにでもいる一般通過条件牝馬だが、かつて小岩井農場が導入した基礎牝馬の1頭ボニーナンシーの系譜に連なる旧き名血の継承者。
母父クリスタルグリッターズはアメリカ生産・フランス調教馬。イスパーン賞連覇の実績を誇る名馬であり、種牡馬としても仏日両国で活躍馬を輩出した。日本における筆頭産駒は97世代の菊花賞馬マチカネフクキタルとダートの大御所アブクマポーロ

血統及び父と母父の実績から推察するに、「ウォーニングの快速にクリスタルグリッターズのスタミナと距離適性を追加する」といった狙いの配合だったのではなかろうか。
スタミナと距離適性は追加できましたか……?(小声)





戦歴

デビュー〜3歳時—快速自慢の善戦マン—

デビューはやや遅く、00年11月5日の新馬戦。小池隆生騎手を鞍上に4馬身差つける圧勝で初出走初勝利を飾ると、続く条件戦かえで賞も6馬身差とちぎり捨てて一気に波に乗る。
勢いそのままに朝日杯3歳ステークス*5で重賞初挑戦……はいいもののメジロベイリー*6の10着に撃沈。
明けて01年は葵ステークス*7を勝ってオープン昇格こそ果たしたものの、短距離オープンを勝ったり負けたりと善戦街道をうろうろ。1400m以上?ダメみたいですね(無慈悲)
アイビスサマーダッシュやセントウルステークスで3着と短距離重賞戦線でも好走はしてたので、「スピードは凄いし勝つ時は勝つんだけどなー」みたいな、なんともムズムズするというか、もどかしいというか、あとひと押し足りないというか、そんなシーズンであった。
ちなみにこの頃は主に熊沢重文騎手が手綱を取っていた。

4〜5歳時—直進!直進!!チョクシーン!!!からのドボン—

02年は春をほぼ全休し、6月から始動。武幸四郎騎手に乗り替わっての初戦は13着轟沈。1600万に降級したが、大西直宏騎手にスイッチしての次走は力の差を見せつけ快勝。オープン2戦を挟み夏の新潟千直・アイビスサマーダッシュに再挑戦を図る。
スタート直後1ハロンこそ12秒とそう早いものでもなかったが、外枠発走の有利*8と右ヨレ癖防止にスタートから目一杯外ラチに寄せたのも奏功し、気合をつけられた2ハロン目から超加速。
なんと一気にハロンラップを9秒8に縮める爆速激進を開始すると、3ハロン目は10秒2と僅かに息を入れたうちに入るのかこれは、4ハロン目で9秒6というトンデモラップを叩き出しさらにかっ飛ばす。
さすがにラストハロンは12秒1と失速したが、それでも前年覇者メジロダーリングを0.2秒上回る異次元のレコード*953秒7を叩き出して重賞初制覇を飾った。
これで勢いに乗れるかと思いきやそうは問屋が卸さず、セントウルSを含む2戦してどちらも3着とまたまた善戦街道に逆戻り。
とどめに年内最終戦となったスワンステークスは距離適性に加えて脚部不安も相まってか13着に轟沈し、そのまま長期休養へ。

明けて03年は夏いっぱいを全休しセントウルSから始動……かーらーのー12着轟沈。久々のGⅠチャレンジとなったスプリンターズステークスはデュランダルの神速抜刀の前に13着轟沈。オープン2戦挟んで年末のCBC賞は10着撃沈。
どうにかオープンを1勝できはしたが、重賞戦線においてはこれまでの力戦が嘘のような直死ーンを披露。何があったし。
「アイビスSDでコーナーの曲がり方忘れた」というのはさすがに与太だろ……与太だよね?

6歳時—復活の直線番長、そして戴冠—

半年の休養を経て04年は6月下旬始動。復帰戦を2着、函館スプリントステークスを3着とまずまずのラインでまとめ、アイビスSDへ。内枠発走ながらまたしても外ラチいっぱいをぶち抜くとそのまま逃げ切り、久々の美酒を浴びる。
そしてその勢いのまま、運命のスプリンターズSへ。

第38回スプリンターズステークス

当年のスプリンターズSは豪州から2頭、香港から1頭が参戦。ただし和芝適性への疑問符がついたか、3頭揃ってあまり人気は出なかった。
当のカルストンライトオは重賞2勝馬でこそあったが「ぶっちゃけ千二でも長いんでねーの?」と囁かれ、デュランダルやサニングデールといった強豪の存在もあり5番人気の伏兵扱い。
どちらかといえば坂にあまり強くないカルストンライトオにとって中山はいささか不利な舞台、さらに速度を削がれる不良馬場と、楽な戦場では断じてなかった。
とはいえ前年に同距離の不良馬場(京都競馬場のアンドロメダステークス)を勝っているなど、買える要素がないわけでもなかった。デュランダルやサニングデールを差し置いてまで突っ込むほどか?というとそうでもなかったが。

ともあれ、「運命を大きく変える究極の70秒(フジテレビ実況・アオシマバクシンオ青嶋達也アナ。以下実況抜粋はすべて同アナ実況から)」スプリンターズステークスの開幕である。
「不良馬場ならいくらデュランダルでも末脚が鈍る」と踏んだ大西騎手は初手からグイグイ押して先手を取ってハナを奪い、そのまま逃げ態勢をとる。
とはいえ彼の勝利を望んでいる者はいても確信している者はほぼいなかっただろう。何なら青嶋アナからして「どこまで逃げられるかというところ!」と断じたくらい。まあ直線番長と不毀の聖剣ならそりゃ後者を本命に選ぶでしょうね。
内ラチ沿いをキープし逃げ込みを図るカルストンライトオ。残り400を切って後続もスパートに入る。だがしかし差が詰まらない。それどころか──

むしろリードを開いている!!*10

さあラチ沿いに!大西直宏ダービージョッキー、カルストンライトオ逃がす逃がす!カルストンライトオ逃がす!!

4角での再加速により後続を突き放し、独走態勢に入るカルストンライトオ。
後続馬群からデュランダルが直線一気の鋭い末脚を発揮し、先行集団からはシーイズトウショウが伸びてくる。横に広がっての大混戦を後目に──

しかしこれは!行ってしまうぞ!行ってしまうぞ!!

カルストンライトオが逃げるぞ!!

2番手外からデュランダルだが、前とは離された!!

カルストンライトオォォォォォォ!!!!

2着デュランダルを4馬身差(同レースにおける最大着差タイ記録)に突き放す圧巻の逃げ切り勝ちで、念願のGⅠタイトルを掴み取った。
鞍上大西騎手はサニーブライアンでの日本ダービー以来となる中央GⅠ制覇*11。清水オーナーにとっても所有馬のGⅠ初制覇となった。

念願のGⅠ獲ったしこのままイケイケや!とばかり年末の香港スプリントに殴り込むが、調整ミスなのか18kgもデブったのが災いしたのか、香港無双サイレントウィットネスの前に14着轟沈。「日本馬は香港スプリントを勝てない法則」の健在を日本競馬ファンに知らしめ、この年を終えた。

7歳時—さらば直線番長—

05年は阪急杯で始動し2着。初挑戦の高松宮記念はアドマイヤマックスの4着。4ヶ月の休養を挟み、連覇を賭けて挑んだアイビスSDは内枠と重斤量が災いし4着。
同じく連覇を賭けたスプリンターズSはサイレントウィットネスに再度叩きのめされ10着撃沈。これ以降出走することなく、同年11月2日付で競走馬登録抹消、ひっそりとターフを去った。

引退後

06年からレックススタッドにて種牡馬入りし、10年11月に橋本牧場へ移動。
主流血統にかすりもしないこともあってか肌馬にも恵まれず、細々と種付けしつつ20年いっぱいで種牡馬を引退。
地方重賞馬を3頭輩出した程度と後継にも恵まれなかったが、地味にこの3頭は全兄弟だったりする。
種牡馬引退後は日西牧場にて繋養され余生を過ごしていたが、24年2月7日早朝に老衰のため死去。26歳没。



余談

なぜか芝GⅠ勝利はすべて逃げ馬な大西騎手*12主戦が共通点の逃げ馬サニーブライアンがスタミナと折り合いに長けた中長距離型だったのに対し、こちらは「スピード至上主義その他ガン無視」である。
時に「千二ですら長い」とさえ言われたが、実際千二ですら戦績があまり安定してないあたりもうお察しとしか……というか千二の重賞未勝利からよくスプリンターズS勝てたな。
1400m以降となるともう完璧に未勝利である。どこぞの驀進王より極端なんだが。

2019年にはNHKのテレビ番組『チコちゃんに叱られる!』にて、「チーターの次に速い、世界で2番目に足が速い動物は?」というVTRにてプロングホーンが紹介されたのだが、その際にカルストンライトオが日本競馬史上最速の馬として比較対象にあげられた。





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最終更新:2024年08月28日 16:34

*1 カルストンオースオ、カルストンキングオ、カルストングラスオ、カルストンソロンオ、カルストンダイナオ、カルストンテイクオ、カルストントップオ、カルストンハードオ、カルストンヒットオ、カルストンペースオ。それぞれの血統などに関しては各自調べていただきたい

*2 アルファベット表記だと18文字である。なのでマチカネ軍団のタンホイザとかフクキタルは英字表記登録時にめっちゃ難儀した。なお馬名関連の協約に参加する以前の古の名馬には、ニホンピロムーテーのようにその制限ぶっちぎったのも普通にいる。参加してないのに遵守する必要ないだろと言われればそれはそう

*3 80年代欧州最強馬筆頭候補ダンシングブレーヴノーザンダンサー系が生み出した究極生物フランケル、史上初となる凱旋門賞とBCターフ同一年制覇の無双女帝エネイブルらを筆頭に、まさに綺羅星の如き名馬たちを見出し世に送り出したスーパーオーナーブリーダー。サウジ王族としては傍系のため実業家に転身後、英国を拠点に活躍した。2021年1月12日逝去、85歳没

*4 4000mの仏GⅠ・カドラン賞を獲ったギヴノーティスという変わり種もいる

*5 現在の朝日杯フューチュリティステークス

*6 メジロブライトの半弟でメジロ牧場最後のGⅠ馬。メジロ軍団唯一のサンデーサイレンス産駒活躍馬としても知られる。朝日杯勝利後は脚部不安による長期療養を強いられ、1年以上経ってなんとか復帰したもののわずか2戦で屈腱炎を患い引退

*7 同名重賞の前身レース。番組改正に伴い2018年より新設重賞として昇格後、22年よりGⅢに格付けされた

*8 アイビスSDは新潟競馬場のホームストレッチ側直線コースをフル活用して開催される。そのため観客席側……すなわち外ラチ側は普段のレースではよほどのことがない限り馬が走らず、ほぼ最高の状態のままなのだ。つまり外ラチいっぱいの最高条件の芝にアクセスしやすい外枠寄りになればなるほど有利、というわけ。ただし、当時はまだ開催2回目でありこの特徴に気づいていた人は少なかったと思われる。

*9 なおこの走破タイム及びハロン間ラップのレコードは2024年現在、22年に亘って保持されている。

*10 「どこまで逃げられるかというところ!」からここまでわずか数秒。千二にみっちり高密度の実況を詰め込む青嶋アナの滑舌と早口と語彙が光る。それを距離不問で発揮してくれればなおいいんですけどね……

*11 GⅠ級にまで対象を広げれば’00年のジャパンダートダービーをマイネルコンバットで獲っている。地味に日本競馬史上初の「芝ダートダブルダービージョッキー」だったりするのだ。

*12 全体としては差し・追込が得意で、曰く「逃げはいつ捕まるか不安で心臓に悪い」だそうな。福島競馬場での「まくり一発」が現役時代の十八番でもあった。