小説 ドキドキ!プリキュア

登録日:2024/09/29 Sun 00:00:00シャル/ケル
更新日:2025/07/03 Thu 18:09:48でランス/ダビ
所要時間:きゅぴらっぱ~!(約 11 分で読めます)





届かないから、想うのをやめるんですか?

やめられないですよね?

それが、『愛』です。


小説 ドキドキ!プリキュア』とは、アニメ『ドキドキ!プリキュア』のノベライズ作品。
2024年9月17日発売。
  • 著: 山口亮太
  • 原作: 東堂いづみ
  • イラスト: 高橋晃




◆概要

講談社キャラクター文庫レーベルのプリキュア小説シリーズ第7弾。
同レーベルからの完全新作は『小説 仮面ライダージオウ』以来3年ぶりで、プリキュアシリーズに限定すると『小説 ふたりはプリキュア マックスハート』以来実に7年ぶり。

元は本編でシリーズ構成を担当していた著者の山口氏がエイプリルフール企画として出したアフターストーリーで、尺の都合で登場できなかったキャラが設定などをリファインされて登場している。
その後、本当に小説化することが決まったものの、山口氏が二度の大病を患ったこともあり途中で筆が止まってしまい、そのままフェードアウトしてしまうところだった。しかし、TVシリーズから10周年を記念して再度小説化企画が持ち上がり、今回の刊行にこぎ着けた。
そのため時系列としては2014年にあたり、現代の感覚で読み進めると若干違和感を覚えるかも知れない。

各章のサブタイトルに「仮にTVシリーズが続いていた場合の」話数が記載されているところから大まかな時系列が読み取れる仕様になっており、小説媒体ということである程度規制を外しているところはあるものの、ストーリー展開はTVシリーズ同様にギャグ・シリアスがバランスよく集められている。
また本編では四葉財閥による情報統制などリアル寄りの描写が多かったが、本作ではそんな世界観でプリキュアという存在が表になったり異世界と繋がったりしたらどうなるか、という点をかなり綿密に描いており、
  • 各国の諜報機関がマナ達プリキュアを監視する
  • 日本政府が対ジコチュー特別捜査チームを発足させ、プリキュアに協力する公安の刑事が登場
  • 国連に加盟するために奔走するトランプ王国改めトランプ共和国
  • ジコチュー側に協力する人間が現れ、ジコチューが人間の技術を活用して暗躍を始める
など、リアリティのある描写や展開が多い。
小説プリキュアシリーズは、良くも悪くも女児向けから離れてTV本編では出来ない心理描写などが多かったが、今作ではそれらとは別ベクトルにスロットルを上げており、結果本編の雰囲気はそのままに大人も楽しめる内容となっている。

当然ながらTVシリーズのネタバレを多数含む上、本編の最終回から直接続く話という作りになっているため、可能ならば先にTVシリーズを全話見てから読むことをオススメする。



/!\ ※この先ネタバレ注意※ /!\



◆あらすじ

最後の戦いから1年。マナ、六花、真琴、ありすの4人はすっかり日常を取り戻していた。マナと六花の中学校に入学してきたレジーナがお騒がせなのは変わらないけれど、亜久里も一緒に楽しく過ごす平穏な日々。
そんなある日、あの決戦で葬ったはずのジコチューが突然現れて……!
マナたちの中学校生活最後の夏は、再び決戦に……!胸のキュンキュンは、まだまだ止まらない!

(本作の裏表紙より)


◆登場人物

◆メインメンバー

最終回後なので世界中にプリキュアとしての正体を知られている状態。それ故に見知らぬ人からの凸などに悩まされるなんて場面も。

本編主人公。
相変わらずの圧倒的ヒーロー気質だが、今作ではまたも大きな困難が彼女を襲う。
レジーナへの視点がなんか母親チック。また3年生になった時点での偏差値は62とのこと。
映画でプッツンしてしまった事については本人内心反省していたらしい。いやどんなメンタルしてんですか。


小説発売日が誕生日のマナのツバメ。本作の実質的な主人公兼語り手。
語彙力が中学3年生のそれではなく、時折R-18小説を読んでいるかのようなワードが飛び出す。
高校受験の年ということで受験勉強にも忙しいのだが、とある事情から全く勉強に手がつかなくなり模試の志望校判定がCランクになるという最大の危機に直面する。


「四葉財閥」のお嬢様にしてマナ・六花の幼馴染。
本編では泰然自若としている描写が多かったが、幼少期のエピソードに補完が入ったり家族のことで感情的になったりと、彼女もまだ中学生の少女であることを思い起こさせるような描写が多い。
そして今作では、誰もが予想しえなかった最大の苦難が彼女を襲うこととなる。
それと武神ぶりには磨きがかかっている


今や世界的歌姫になったまこぴー。
彼女の問題は本編内であらかた解決したため脇役的な立ち位置。
ただ、六花を除く他のメンバーが多かれ少なかれ危機に直面するため、本作では実質的な六花の相方のような活躍を見せる。
また本編では滅んだトランプ王国や王女のことで長く張りつめていたが、今作では肩の荷が下りたため若干性格に変化が生じている。
学業の成績はあまりよろしくないようだが、トランプ人は言語力に関しては凄まじい能力を持つため真琴もあらゆる言語を流暢に喋れるとか。


王女の転生した片割れ。
本編では歳の割に大人びた言動が目立ったが、本作ではそうした要素を踏まえつつ「大人びた言動の子供」という描かれ方をされている。
姉であるレジーナの破天荒な行動にお説教する日々が続いているが、一方で友人関係や前世であるアン王女のことで悩んだときは彼女の言葉が解決の糸口になったりと、姉妹としては相互に影響しあって良い方向に進んでいる。

未だに正式に誕生日が確定していなかったが、本作で本編の誕生日会の放映された12月1日が誕生日ということになった。
なお、茉莉が彼女を拾った日は5月30日とのこと。


王女の転生したもう片割れ。
本編ラストで大貝中学校の中学1年生に転入しており、亜久里よりも姉ということになっている。
相変わらずワガママだが、時系列が経つごとに破天荒ぶりはそのままながら芯が通った性格に成長していく。
敵対時に使用していたワープ能力は未だに保持しているようで、本作でも多用される。

ちなみに気になる学力の方だが、元々の知識量が壊滅的な上に本人のモチベーションもあって落第レベルだった。
ただし50話でありすから諭されて以降、図書館で数々の本を読み漁るなど知識を増やし学力を向上させようと努める様子が見られる。
また早乙女純とは何だかんだで付き合いがあるらしく、亜久里の運動会では黒学ランで応援団長代理している亜久里に対抗して
わざわざ純を呼び出し、大貝第一中学校のお古の白学ランを借りて応援合戦をしている。


◆新キャラクター

  • ゴーマ
TV本編ではシルエットだけ明かされていた未登場ジコチュー幹部の一人。
マゼンタ色の(薄紫のメッシュあり)ソフトモヒカンの髪型で、ピンク色のパジャマみたいな上下のライダースーツを着ている細身の青年。
トランプ王国侵攻時にプリキュアによって封印されていたが、ルストとともに何者かによって復活した。
対応する罪は傲慢。
対応する悪魔はルシファー


  • ルスト
TV本編ではシルエットだけ明かされていた未登場ジコチュー幹部の一人。
ミントグリーンの辮髪にミラー加工されたサングラスをかけ、ラメ入りの紫のスーツを羽織り、片腕がメカのような形になっている大男。
強欲担当のマーモがグラマー美人だったので、色欲担当も……と思いきや、まさかのゴツい大男だったことに驚愕した読者多数。まあ初期設定がレジーナに流用された兼ね合いもあるのだろうが。
なぜか初対面時に六花にナンパしてきた。
対応する罪は色欲。
対応する悪魔はアスタロト


  • 白銀の騎士
ゴーマ&ルストと共に現れた謎の人物。何かの思惑がありジコチュー勢に協力する。
ジコチューに自身の協力と共に、様々な人間の技術を提供しており、

◇闇の鼓動に逆位相の波長を当てて打ち消す機械を作成し、妖精たちにジコチューの気配を探り辛くする。
◇四葉財閥から人工コミューンのデータを奪って改良を加え、変身能力を獲得。
◇トランプ王国に住む妖精を食べる生物の糸を紡績技術で加工し、妖精の力を奪う糸を撃ちだすガントレットでプリキュアの力を封じる。
◇後継者問題に揺れる四葉財閥の隙を付き、四葉重工を掌握。そしてジコチュー殲滅ドローン『ニュー・ワールド・オーダー』を発表することで、年端も行かない少女達に世界の平和を任せてしまっているという社会の罪悪感を味方につけ、プリキュアの存在意義を奪う。

……と、徹底的に人間界の技術でプリキュアメタを幾重にも張り、マナ達を追い詰める強敵中の強敵。
果たしてその正体は……?


  • 四葉ヒロミチ
ありすの5歳年上の兄。
普段は「渋谷ヒロミ」という芸名でスポーツ冒険家として活動している。
その実績は驚くもので、エベレストの冬季単独登頂を成功させ、自転車で世界を一周し、太平洋をヨットで横断したとか。
幼少期のありすが起こしたある事件がきっかけでマナ達と知り合った。

彼の存在はTV本編では一切言及されていないが、小説によって後付けされたキャラではなく、TV本編の放映当時から設定としては存在している。
もともとはマナの初恋の相手という重要な立ち位置のキャラになる予定であったが、制作が進むうちにマナに特定の恋愛相手を作るのはやめようという流れになり、彼のTV本編への登場がなくなってしまったという経緯がある。
本作ではマナではなく、真琴が彼に初恋をするという展開に変更されている。


  • 水谷警部
警視庁公安部の警察官。正式な肩書は『警視庁公安部外事課第9係係長』で階級は警部。
眼鏡をかけたおじさんで仕立ての良い背広を着ているが、サラリーマンには見えない鋭い眼光の持ち主。
国家としてプリキュア……もといマナ達に協力を求めてくる。自特捜が発足後は、彼が窓口になった。

とても胡散臭くいかにもお役所的な言動をする事や、民間人には公に出動要請できないため、ジコチューの出現情報や予想される被害だけ伝えてあくまでマナ達の自発的な行動を促すなど、典型的な大人なやり口から六花からは快く思われていない。
しかし一方で逐一有益な情報を提供してくれる・マナ達がやりやすいように現場や周囲の対策してくれるなど、仕事そのものは非常に協力的かつ優秀であり、
落ち込んでいる妖精たちに棒つきキャンディをあげたり、子供が怯えていたら言葉と微笑みで勇気づけるなど、胡散臭くはあるが(少なくとも)悪人ではない。

言うまでもなく元ネタはあの人だろう。
また余談になるが、あのドラマではシーズン15の最終回にて、ドキプリのイラストがきっかけとなって矛盾に気が付くという展開がある。


  • 倉田明宏
四葉重工の専務。髪がボサボサで丸メガネをかけ、冷たい目をしている。
TV放送時点からちょくちょくネタが挟まっていた『デジモンセイバーズ』からのスターシステムキャラ。
名前も文章から読み取れるビジュアルの情報から見てもほぼそのまんまで、つまり役回りもそういうことである。倉田ァァァ!!
元ネタの劇中では時空振動爆弾を使って逃走を図った結果、時空の壁の崩壊に飲まれて生死不明になったことから、もしかすると昨今流行りの異世界転生かもしれない。


  • 山下先生
3年生になった六花達の新しい担任教師。
ゴマシオ頭の丸刈りで、極太眉毛がトレードマーク。
微妙にダメ教師臭が漂っていた本編の城戸先生と対照的に、生徒に親身で評判も良い。
また保健の先生に沢井先生もいるらしい。

元ネタは『太陽を盗んだ男』で城戸のライバルとなる山下満州男警部と、ヒロインの沢井零子。


  • 2 キュアデュース
  • 4 キュアケイト
  • 6 キュアサイス
真琴/キュアソードの先輩プリキュア。ゴーマ&ルストと刺し違えた3人として一応TV本編にもモブキャラとして登場している。
本編ラストで復活こそできたが、戦闘能力は失われているため、現役プリキュアのマナ達に後を託す。
なお、デュースは何故か広島弁で喋る。*1


  • 謎のプリキュア
プリキュア公式により本作発売1ヶ月前にシルエットが公開された謎のプリキュア。
どう見てもレジーナそっくりだが、その正体は……。


◆その他

ジコチュートリオの2人。
ゴーマ&ルストとともに再びプリキュア(&レジーナ)と敵対する、
2人ともそれなりにやる気はあるが、ベールはジャネジーを失ってネズミ化しているため扱いが軽い。


  • リーヴァ
  • グーラ
別働隊の2人。
本編にてベールの策謀で消滅したが、ゴーマたちが集めたジャネジーで復活。
マーモやベールと同じくルスト&ゴーマと合流し、再びプリキュアと対峙する。


  • イーラ
ジコチュートリオの一人。
彼だけ全くプリキュア達と敵対する気がなく大好きな六花の下に一人現れて敵の情報をこっそり提供するなど些か個人的な都合が強いがプリキュアに協力する。


  • ジョナサン・クロンダイク
トランプ共和国大統領。そのため本編では専ら「大統領」と呼ばれる。
旧トランプ王国宮殿を改装して共和国の官邸にしたとか。なお、別名はオカダハウスというらしい。
少し抜けてのんびりした気質は変わっておらず、六花からは本当に彼が国の元首でいいのか不安視されているが、終盤でしっかり元首としての気概を見せてくれる。


  • ビッグ・フォーチュン
元トランプ国王。本作で本名が明かされた。
ちょっと世間知らずなところもあるが、レジーナや亜久里にはかなり気を使っており、保護者行事に積極的に参加するなど親として努力している。
特に料理の腕は、レジーナがマズい料理は絶対に口にしない&マナの祖父である宗吉にスパルタで鍛えられたおかげで、驚くほどに上達した。
ちなみに容姿はあんまり変わっていないので周囲からは「王様」と呼ばれているらしい。


◆用語

  • 自特捜
警視庁公安部がトランプ共和国の識者に協力を仰いで発足させた、対ジコチュー組織。
正式名称は『自我肥大化生物対策特別捜査チーム』。『自我肥大化生物』は警視庁が決定したジコチューの名称。
公安部の水谷警部が窓口を務めており、マナ達プリキュアはここが後ろ盾となることで民間人扱いのまま現場への介入が無制限となった。
その他科学捜査や国家権限での犯人の確保、全国的な組織網でジコチューの発生を感知しマナ達への連絡、何かあった際には自衛官扱いでの各種補償など、様々な方法でプリキュア達をサポートしている。

  • ニュー・ワールド・オーダー
四葉重工が発表したジコチュー殲滅用ドローン兵器。
監視カメラと人工知能の組み合わせによりジコチューの出現場所をいち早く感知し、駆除することが出来る。
性能は飛行可能かつ、ロイヤルクリスタルを解析して作った人工ロイヤルクリスタルによる浄化機能が装備。
また人間を検査し『ジコチュー係数』と呼ばれる数値を出して、高いものには警告を与える機能もついている。

幹線道路などに導入されているNシステム*2のデータを転用出来るため、低コストかつスピーディ、さらに無償での導入が謳われている。
そのため発表後は非常に速いスピードで全国へ普及し、ジコチュー対策が大幅に進むことになった。
一方ジコチューであっても人の心を『駆除』することへの懸念や、過剰な監視社会が進むなど問題も多く抱えている。


◆余談

  • 著者である山口亮太のライター35年の節目の作品ということで、本作には様々な「イースターエッグ」が隠されているとのこと。上述の倉田の登場も恐らくその一つだろう。

  • 本作には実在の地名が登場するが、横浜武蔵小杉・中野など何故か東京から見て西側方面に偏っている。つまり大貝町も必然的にそちら側にあることになり、何となく元ネタの街が想像できるかもしれない。
    • 定期的にプリキュアシリーズで登場する横浜だが、『デジモンセイバーズ』も横浜が舞台。つまり両作のクロスオーバーが出来る場所だったりする。
    • 作中における横浜スタジアムの野球の試合の観客数が少なめだが、実はちゃんと史実通りである*3。これも先述のように舞台が2014年ころであるための描写と言えるが、それから10年が経過し、毎試合満員が当たり前のようになった2024年の横浜スタジアムと比べるとまさに隔世の感があるといえる。

  • 小説プリキュアシリーズは一度絶版になりかけるなど今までは売上が芳しくなかったようだが、本作は早速重版が決定するレベルで売れまくっており、実物の文庫本版は品薄が続いている。
    • ただしこれは先の不振が響いてあまり出荷されなかったためである。正に予想外の爆売れである。

  • また、本作を記念して、プリキュアメンバー+レジーナ役の声優6名が集まって本作の朗読なども含んだ発売記念番組が制作されることが告知されている。


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最終更新:2025年07月03日 18:09

*1 一応トランプ王国の方言ではあるらしい。

*2 高速道路についてる速度計測器(スピード違反確認機器)。いわゆるオービスのこと。

*3 2014年当時の横浜DeNAベイスターズはDeNAが親会社になって3年目で、まだTBS時代の横浜ベイスターズに対する良くないイメージも残っていた