WizardryⅤ 災渦の中心

登録日:2024/10/04 Fri 22:18:01
更新日:2025/03/17 Mon 05:00:27
所要時間:約 22 分で読めます




WizardryⅤ 災渦の中心(Heart of the Maelstrom)は、1988年に米国のSir-Tech社からAppleⅡ用ソフトウェアとして発売された、3DダンジョンRPG。ウィザードリィシリーズ第5作。
後に、PCESFCPSなど、様々な機種に移植されている。


■概要

本作はデヴィッド・W・ブラッドリー(David W. Bradley)が開発を担当し、それによってゲームシステムは大きく刷新された(後述)。
第1作の制作者であるロバート・ウッドヘッドとアンドリュー・グリーンバーグのうち、ウッドヘッドは前作を最後に制作から退いており、グリーンバーグも本作限りで制作を退いた。
そして6作目以降、ウィザードリィというゲームはブラッドリーの手で大きく変革してゆくことになり、本作はその過渡期、ターニングポイントという位置づけにある。

家庭用ゲーム機移植に先駆けて日本のPCへの移植もされたが、PC-8801/9801版ではFC版で好評を得ていた末弥純がPC版の時点でグラフィックを担当しており、FM TOWNS版も覇王大系リューナイト星方武侠アウトロースターを手掛けた伊東岳彦が(幡池裕行名義で)担当している。FM TOWNS版はBGMも流れるのだが、そちらの音楽担当は後にサクラ大戦シリーズを手掛ける田中公平(本作がゲームの初仕事のようである)とFC版の羽田健太郎に負けず劣らずの作曲家で、この豪華なスタッフから日本語移植には全力を挙げるべきビッグタイトルだとみなされていたことがうかがえる。

なお、「災渦の中心」はSFC版での邦訳サブタイトル。『ニューエイジオブリルガミン』では「災の中心」と表記されている。いずれも、原題のMaelstromを指す。


■あらすじ

数年前、勇敢な冒険者たちによって恐るべき龍エル'ケブレスの元から「リルガミンの宝珠」を持ち帰るという冒険が成し遂げられた。
その宝珠はリルガミンの健全な繁栄を守ってきたとされるが、どういう原理でそれを行っているのかは誰にもわからず、ただこの宝珠がなければ地震や神罰や疫病が国を覆ってしまうということだけが知られていた。
その後、宝珠は神秘のグループ「ブラザーフッド教団」に託され、守られることで、リルガミンには再び平和と繁栄がもたらされた。

しかし今、リルガミンは再び災厄に脅かされるようになった。
その災厄の原因は、ブラザーフット教団の真下、地下深くに発生した超自然の魔法の渦だった。4つの自然の力のバランスが壊され、その裂け目が結びついて災いの渦の中心部(Heart of the Maelstrom)に横たわっているのだという。それは次第に大きくなっており、やがて世界全てを飲み込み崩壊させてしまうことまで予測された。

この危機的状況を解決出来るのは、自然界と魔法界のバランスを維持し、監視する超人的な魔術師「ゲートキーパー」ただ1人。
だが彼は、ブラザーフッド教団の裏切り者、世界の破滅を目論む魔女「ソーン」によって、まさにその災渦の中心へと突き落とされていた。
世界を守るためには、ソーンを打ち負かし、ゲートキーパーを救い出さなければならない。

決断を下すのは、冒険者であるあなた自身。
あなたには「災渦の中心」に挑む勇気はあるか?


■ゲームシステム

迷宮の構造

1階層が20×20の正方形で収まらなくなっている。
地下1階の時点で30×30くらいの広さがあり、しかも地下2階以降へ進むにはその隅々まで探索しなければならない。
複数の区画に分断され、別の階層からの移動によってでしかたどり着けないような場所が作られている階層もあったりする。
鍵がかかっていて開かない扉もあるが、正規の鍵を使って開く扉だけでなく、宝箱と同じように盗賊や忍者にこじ開けてもらう扉も多い。
キーアイテムがそれを必要とする階層とは別の階層にあることなど当たり前、上下の移動も頻繁に行うことになる。

迷宮の中には潜ることの出来る水たまりが何箇所かあり、潜る深さによって得られる効果が違う。回復拠点に出来るものもあればモンスターに襲われるものもあり、能力値が変化したり状態異常を引き起こすものもある。ただし、無理をして深く潜ると溺れて死ぬ。それでも、水たまりの底にたどり着くと重要アイテムを得られるなど何らかのイベントが起こることが多いため、冒険者は泳ぎも鍛えなければならない。鍛えておけば地上の城の堀にテレポートしても大丈夫、ということにはならないが

職業

Ⅳまでのナンバリングとは違った調整がされている。また、転職アイテムは存在しないので、転職するためには特定の泉でちまちま調整する必要がある。
  • 戦士:今までと同じくプレートメイルや大きい盾を装備できる。但し攻撃面では最強の武器が森の精の弓となり、専用の近接剣を得た君主の後塵を拝することになった。
  • 僧侶:胸当ての代わりに出てきた侍系の鎧*1や盾を装備できなくなり弱体化。序盤にアイスファントムやゴーレムといった手ごわい雑魚と遭遇するのもあり、前衛を務めるのが難しくなってしまった。
  • 魔法使い:ローブや帽子系しか装備できないのは相変わらず。但し今作は善専用のエメラルドローブと悪専用のスカーレットローブ(いずれもローブ+3相当)が出たせいで中立の魔法使いが辛くなった(素のローブしか無い)。
  • 盗賊:後衛からでも「隠れる」→「奇襲」という行動が追加されたのに加え、弓を装備できるようになり戦闘中にやれる事が増えた。今作の最強の弓である森の精の弓を使えるのはデカい。
  • 司教:装備が僧侶とだいたい同じ。
  • 侍:普通のフルプレートや大きな盾を装備できなくなった。但し最強クラスの金色の鎧と魔封じの盾は装備できるので、最終的な防御力はそれなりにある。一方で村正が出ず、代わりに廉価版の村正の刀が出てきたので攻撃力はやや弱体化。
  • 君主:戦士と防具は同じ。そして最高クラスの鎧が専用の君主の聖衣ではなく戦士系装備可能の金色の鎧になったが、代わりに専用剣のオーディンソードを手に入れ火力が頼もしくなった。
  • 忍者:侍と装備の傾向が同じになる。手裏剣が消えた。

NPC

迷宮にはモンスターだけでなく、その中で生活している人物もおり、冒険を進めるうちに彼らNPCと遭遇することになる。
NPCとは会話して情報を得たり、アイテムを売買したり、あるいは交換したり、あるいはスリ取ったり気に入らなければ殺したり……
あるNPCから聞いた情報を元に、別のNPCから新たな情報を得られるなど、こちらも複雑なつながりがある。
冒険を成し遂げるためには、NPCとの付き合いは不可欠である。ただし、NPCにも性格が設定されており、善と悪では会話が成り立たない。そういう時は本作で新登場した、NPCを魅了する僧侶系呪文「カツ」の出番である。
なお、どのNPCにも戦いを仕掛けることが出来るのだが、ゲームクリアのために必要なNPCもいるため、殺したNPCは地上のカント寺院で蘇生させることが出来る。蘇生は確実に成功してNPCは迷宮に戻ってくれるのだが、当然殺されたことを恨んでおり以後まともに会話出来なくなってしまう。カツを連発すれば即座に友好的に戻れるが。

戦闘

武器に射程の概念が追加され、槍のような柄の長い武器は敵の前衛を超えて後衛を攻撃したり、今まで武器攻撃出来なかったパーティーの後衛(4人目以降)も前衛を超えて敵の前衛を攻撃出来るようになった。弓のような飛び道具であれば、どの位置からでも全ての敵を狙えるようになる。その一方で、敵の中にはパーティーの後衛を直接攻撃出来るものもいるため、後衛といえど防具の装備は要求される。
盗賊や忍者であれば、一旦物陰に隠れてから奇襲攻撃を行うことで後衛からでも射程の短い武器で攻撃出来る。ただし、隠れるのに失敗したり奇襲攻撃で姿が見つかってしまうこともあり、その場合は改めて隠れなければならない。
敵の攻撃に状態異常が追加されているのは相変わらずだが、本作では「装備している鎧を破壊される」という追加効果が新登場。最強の鎧であろうと容易くガラクタにされる。

呪文

魔術師呪文と僧侶呪文の2系統あるが、いずれも呪文のラインナップは大きく変わっている。
レベルが変化したもの、削除されたもの、新規追加されたもの、様々である。イベントアイテムによって習得するものもある。
このあたりはWizardryの呪文を参照。

冒険

全体的に、「広大な迷宮を探索し、住人とのコミュニケーションを交えて冒険達成のための手がかりを集め、障害となる敵は様々な戦術を考えて撃退する」という、ウィザードリィの原点であるテーブルトークRPGに近づけたデザインになっている。特に盗賊の存在が重要になり、宝箱を開ける以外にも様々な仕事をこなすことを求められる。
そしてこの流れは、ウッドヘッドに続いてグリーンバーグも退きブラッドリー単身で開発することになる6作目以降はさらに加速してゆくことになる。


■登場キャラクター

NPCの概念が実装されたことで、今までの作品とは比べ物にならないくらい登場キャラクターは増えている。

  • グブリ・ゲドック(G'bli Gedook)
ブラザーフッド教団の僧侶。冒険者たちが最初に出会うことになるであろうNPC。しかし、彼に会うこと自体がちょっとした冒険である。
冒険の背景、関係者や重要なキーワード、冒険者たちがなすべきこと、様々なことを語ってくれる。
教団の寺院にいる僧侶だが、治療は行ってくれない。内部データ的には中立の僧侶などというあり得ない存在だからか?

  • 笑うヤカン(The Laughing Kettle)
黄金で満たされた小さな釜。側面にはニヤリとした笑顔が描かれており、冒険者たちに金をねだる。
ちなみに原語版やPC-8801/9801版での彼のグラフィックは「財宝の山」。SFC移植の際にようやく「ニヤリ笑いの釜」の姿が新規に描かれた。
いわゆる、金で情報を売ってくれる情報屋。中にはゲームクリアに関わる極めて重要な情報もある。
その一方、大量の状態異常を引き起こす通常攻撃と5レベルまでの魔術師&僧侶呪文に石化のブレスで攻め立て、ACがとてつもなく低く呪文は絶対に通じないという恐るべき強敵にもなる。それに打ち勝った際に得られる経験値もまた桁違いであるため、ある程度の実力を身に着けた冒険者たちは戦闘で殺してはカント寺院で生き返らせるというループにはまり込んでいるようである。もっとも、ドロップアイテムもなく蘇生費用を賄えるほどの金を得られるわけでもないので、経験値目的にしても他を当たった方が良いのだが。

  • アイロノーズ(Ironose)
商魂たくましい、ドワーフの行商人。
彼を相手に、NPCとのアイテム売買を初体験することになるだろう。品揃えはボルタック商店と大差ない(しかも識別されていない)上、迷宮のNPCの例に漏れず「安く買って高く売る」価格設定なのであまり手を出していいものではないが、冒険のキーアイテムとなる鍵を売っている。
実はグブリ・ゲドックも笑うヤカンも、プレイヤーが正解を知ってさえいれば、NPCから情報を聞いていなくても冒険の謎解きは正解を入力するだけでクリア出来るので、彼らに会うのは必須ではない。が、アイロノーズについてはキーアイテムを入手するために必ず会わなければならないNPCとなっている。

  • スパークのアヒル(The Duck of Sparks)
霊コンサルタントを自称する、アヒルの魔術師。宝箱に取り憑いている幽霊を退散させる秘薬の調合法を教えてくれる。当然、コンサルタント料は取られるが。
秘薬の調合は、本作に多数ある「素材や部品からなる多数の選択肢に対して、そのうちの一部を選択するor選択肢を正しい順序で選んでゆく」謎解きのうちの1つ。これらは往々にして、失敗するとダメージや状態異常を受けたり下の階層へボッシュートされるなど重いペナルティがあるので、手がかりもなしに当てずっぽうで試みていいものではない。
また、本作で初めて目にするであろう水たまり「ブッバの健康温泉」近辺で出会えるだけに、水泳についての情報も得られる。

  • ルビーウォーロック(The Ruby Warlock)
アル中の魔術師。かつては宝石の名を冠するにふさわしい優れた魔術師だったらしいが、酒に溺れて転落人生を歩むことになったようである。
初対面においては、迷宮の道を塞ぐような位置に陣取り、酒を渡さなければ先へは進ませないというストッパーとしての彼の姿を見ることになるだろう。酒を渡せば会話が出来るようになり、以後は酒を渡した者が話しかけるだけで通してくれるようになる(改めて酒を入手する必要はない)。
なお、蒸留酒(Spirits)が好みのようだが、霊(Spirits)について冒険者たちが困っているなら上述のスパークのアヒルのことを紹介してくれる。
……実は、彼自身にその自覚はないが、冒険者が解き明かすべき謎に関する重大な情報を握っている。別のNPCから「彼が知っている」ことを知り、彼に問いかける必要があるのだ。

  • 酒場「龍の酒瓶亭」のドワーフたち
  • 伝説の盗賊長屋の盗賊たち
  • 婦人用化粧室のロイヤルレディたち
  • 霊魂の巣穴の幽霊たち
これらの場所を訪れると出会えるNPC。客や住人、利用者として3~5人がそこにいるのだが、そのうちの1人と出会う。
酒を奢ったり、情報料を払ったり、婦人用化粧室に侵入したことに対する口止め料を払ったりすることで、そのNPCが持っている情報を聞くことが出来る。
金で情報を得るわけだが、出会い頭に要求してくるこの支払いを拒否すると交渉する間もなく戦闘になってしまう。しかし、その場合は出会ったNPCは即座に逃げ出し、実際に戦うのはその階層の雑魚モンスターで、NPCを直接殺すことは出来ない。
ちなみに、3人の幽霊たちの名前はアンディ(Andy)、デイヴィ(Davy)、ロビー(Robby)……お察しください。

  • ロード・ハインマイティ(Lord Hienmitey)
ブラザーフッド教団とは無関係の、地下にある「カマ・カジ寺院」の僧侶。『ニューエイジオブリルガミン』では「ロード・ハイマンティ」と表記されている。
大きな白い歯をむき出した、ヨタヨタ歩く肥満体という容姿で、その外見に違わぬ生臭坊主である。一応、金を払えば治療は行ってくれるが、会話をしている最中にも冒険者の懐から金やアイテムを盗もうとする、僧侶というより盗賊のような人物である。そればかりか、冒険のキーアイテムになっている杖を持ってこれば自分の杖と交換するなどと語るが、バカ正直にキーアイテムの杖を渡そうものならただの杖(金にもならない初期装備)をよこした挙げ句、モンスターと共に襲いかかってくる。
NPCがいつも冒険者を手助けしてくれるとは限らないということを示す、最初の事例になるだろう。
ちなみにSFC版で末弥純が新規に描いた固有グラフィックは『ニューエイジオブリルガミン』の#4において冒険者たちの姿として流用されているのだが、こいつのグラフィックがあてがわれている冒険者にあの「ティルトウェイト」がいる。

  • ルーン(The Loon)
時間を支配する予言者。彼の墓の前で、時間を操作することで出会える。
墓が作られているものの、実際には彼は全ての時を超越した不老不死の世界に住んでいる。そこで永遠の時を生き、あらゆる知識を目にすることで予言者として振る舞っているという、ゲートキーパー並に人間離れした存在である。
当然、今回の異変についてもよく把握しているようで、彼の元を訪れた冒険者たちに助言を行ってくれる。三軸の門に関する話は難解だが、終盤に探求すべき謎、取るべき行動を的確に語っているので忘れないように。

  • マンフレッティ(Manfretti)
迷宮の地下5階に、半生をかけて巨大な娯楽の殿堂を築き上げた魔術師。上述のロイヤルレディは彼と共に店を作った同志で、さらなる楽しみを追い求めて旅立った彼を今も待ち続けている。
……が、実は既に死亡しており、彼の幽霊(Manfretti's Ghost)が迷宮の深層を徘徊している。そのため、NPCとして出会うことはない。
モンスターとしては同じ階層の他のモンスターに比べて明らかに見劣りしており、呪文抵抗が極めて高く後列を直接攻撃してくるくらいしか特徴がない。直接攻撃を受けたところで状態異常は一切起こらずダメージも大したことはないし、呪文を使ってくることもない。
マーフィーズゴーストを引き連れていることがあり、そのコンビはまるで友人関係のように見えてくるが、店から旅立った彼の身に何が起こったのかは結局不明なままである。

  • ビッグマックス(Big Max)
マンフレッティの店の用心棒。店内をうろつく雑魚モンスター「ロイヤルガード」のそっくりさんで、彼らの隊長格というところか。
店に入るにはチケットが必要で、彼から購入したチケットを渡すことで店への入口が出現する。そのため、ただでさえ強い彼を殺したところで店へ押し入ることは出来ない。
マンフレッティの店はNPCが多い情報収集の場ではあるが冒険のキーアイテムはなく、地下5階を経由しなくても地下6階へたどり着くことは可能(何ならそこから地下5階に上がることも出来る)なので、店に入れなくなったところでクリア出来なくなるわけではないのだが、かえって手間が増えてしまうので素直に彼からチケットを購入しよう。渡した後で返される半券が、以後は事実上のフリーパスになる。
死んでしまいますよ!

  • スナッチ(The Snatch)
マンフレッティの店に入り浸る盗賊。回転床と落とし穴が仕掛けられた「狂乱の部屋」の奥で出会える。
スパークのアヒルに変な杖を売りつけてその隙に彼が大切にしているというものを盗んだ(が、しょうもないものだったらしく水たまりに捨てた)り、ルーンの持つすごそうな懐中時計を盗もうとしたら突然爆発が起こって奇妙な場所へ飛ばされたり、と迷宮の中で随分盗賊らしいことをしている。彼の元を訪れた冒険者たちもカモでしかなく、隙を見て金やアイテムを盗もうとする。snatch(ひったくり)の通り名は伊達ではない。
しかし、懐中時計に関する情報は重要である。ルーンに会うために冒険者たちは懐中時計を作る必要があるのだが、うまく作れないと製作装置が放電を起こして冒険者たちは灰になってしまうのだ。
伝説の盗賊長屋の盗賊たちよりも深層で活動しているだけに彼の戦利品は豪華なもので、取引相手としては悪くない。盗賊用の剣を渡すと、引き換えに戦士用の腕甲を譲ってくれたりもする。

  • イビルアイズ(Evil Eyes)
  • マッドストンパー(The Mad Stomper)
  • マイティヨグ(The Mighty Yog)
呪いを得意とする悪の魔術師イビルアイズと、その被害者たち。

マッドストンパーは、かつては某国の王子だったようだが彼を妬む者から依頼を受けたイビルアイズによって、単眼の醜い怪物に姿を変えられてしまった。それだけでなく、足の裏に常に痒みを生じさせられているため、ひたすら足踏みするようになってしまった。これがマッドストンパー(狂ったように足を踏み鳴らす者)の名の由来である。
そしてこの呪いは、彼が1分間足踏みせずにいることで解けるらしいが、耐えられるわけもなく彼は今日も迷宮に足音を響かせている。
痒みが和らぐということで水たまりで泳ぐのを趣味としており、そこでスナッチが捨てたスパークのアヒルの大切なものを拾い上げている。

マイティヨグは様々なからくりを発明する優れた頭脳の持ち主で、その発明品の1つに氷の王が住まうクリスタルの城へ航行するフェリーがある。
ところが、氷の王はフェリーの乗船料を踏み倒し、それに腹を立てたヨグはフェリーを分解して使えなくした。すると氷の王は怒り(逆恨みも良いところだが)、イビルアイズに命じてヨグをイエティめいた白い大猿に変身させ、さらにガラスシリンダーに閉じ込めて眠りにつかせた(どうやら、コールドスリープらしい)。
分解されたフェリーを再び組み立てるための手順はとても簡単だ!

それらの呪いを施したイビルアイズは、多くの恨みを買っているためか呪文を封じる罠を通過した後で姿を見せるという用心深い人物。ヨグの封印を解くアイテムを所持しているが当然金で売ってくれるわけがなく、しかも殺してでもうばいとることも出来ない。となると、残された手段は……
一方、悪の魔術師であるもののその呼び名の通り死すべき瞳に見えざるものを見る瞳を持ち、助力を乞う者に対しては代償を支払う限りは悪意なく応じてくれる。冒険者たちも、金を払えば透視術によって捜し物の在り処を示してもらえたりする。
戦って殺すことは可能だが、殺したところで被害者たちの呪いが解けることはない。呪いが解けて別人になったらNPCとしてはロストするも同然なので仕方ないが。

  • トランプのロード
スペードのロード(The Lord of Spades)、ハートのロード(The Lord of Hearts)、ダイヤのロード(The Lord of Diamonds)、クラブのロード(The Lord of Clubs)の4名。
容姿はトランプのキングそのままで、それぞれ地、水、火、風の元素のロードとして4元素の力がこの世界へ入ってくる「三軸の門」を護衛している。彼らからそれぞれの元素のことを深く学び、迷宮内に散らばっているトランプのカードを渡すことで災渦の中心への道が開かれる。
なお、力ずくでの強行突破を考えても無駄である。裏ボスかと思いたくなるほどの強大な敵として立ちはだかるだけでなく、たとえ勝ったとしても悪魔がはびこる地下777階の地獄へ落とされてしまうのだ。

漫画版では容姿が全くの別物になっており、人間の騎士の姿をしている。

  • ゲートキーパー(The GateKeeper)
自然界と魔法界のバランスを維持し、監視する超人的な魔術師。
そのために上述の三軸の門を守護していることから、ゲートキーパーの名で呼ばれている。
ハルバードを手にした老騎士のような容姿だが、本当の名前や、それどころか人間であるかどうかすら不確かな、謎に満ちた存在である。
いずれにせよ、災渦の中心へと突き落とされ冒険者たちによる救出を待つ身になっている。が、数多の試練を乗り越えてようやく救出したと思ったら、それを黙って見過ごすわけがなかったソーンの手によって天空の虚無の中に葬り去られてしまうことになる。

  • ソーン(The S O R N)
ブラザーフッド教団の女僧侶。しかし、その内には世界の破滅を目論む邪心を秘めており、教団を裏切ってゲートキーパーを災渦の中心へと突き落とし、世界に流れ込む力のバランスを崩壊させることでこの世界を破壊し、新たな宇宙を創り出すつもりでいる。
当初の容姿は「2本の角を生やし、凶悪な表情で両手を構える巨乳の女悪魔」というもので、PC-8801/9801用ソフトとして移植された際にもそれを踏襲したデザインをグラフィック担当の末弥純によって描かれたが、SFC移植の際にそれとは全く別の「ローブと頭巾に身を包んだ静謐な雰囲気の女司祭」というデザインが新規に描かれた。ただ、まがまがしい怒鳴り声で冒険者を「この、ヌルヌルのヒキガエルめ!!」と罵倒するのはどの機種でも共通しており、彼女の本性は前者のグラフィックがよく表している。FM TOWNS版は何とトップレス(一応、ほとばしる光の粒子がうまく隠しているようだが)。
本作のラスボスとして戦うことになるのだが、魔法の盾によって武器攻撃も魔法もことごとく無効化するため、冒険者たちだけではソーンを倒すことは出来ない。魔法の盾を無力化するには、この世で唯一ゲートキーパーが習得している神の魔法「アブリエル」が必要なのである。しかし、ゲートキーパーはまさにこの直前に、ソーンの手で異空間へと消し飛ばされてしまっている。では、どうすれば……?

+ 彼女の魔法の盾を打ち破る、唯一の『希望』…それはまさに意外な代物だった。
ソーンの魔法の盾を打ち破るには、ソーンによって異空間へと飛ばされてしまったゲートキーパーを、ソーンとの戦闘中に何としてでも救助しなければならないのだが。
その「救助する方法」というのが

「魔術師系の召喚呪文であるソコルディか、僧侶系の召喚呪文のバモルディを使用し、異空間へと飛ばされてしまったゲートキーパーを『召喚』する」

という、まさに誰もが思いつきもしなかったとんでもない代物。
とは言え最初のターンで戦力増強の為にソコルディかバモルディを使った結果、いきなりゲートキーパーが仲間に加わって唖然としたプレイヤーは多いのではないだろうか。
ゲートキーパーは召喚直後に究極魔法アブリエルを使用し、ソーンの魔法の盾を無力化してくれるだけでなく、その後も呪文で援護射撃をしてくれる。
なおクリア後はパーティーの誰かにアブリエルの呪文を習得させる事が出来るので、以降はゲートキーパーを召喚しなくても直接ソーンの魔法の盾を無力化する事が可能。

漫画版ではローリィが放ったアブリエルによってゲートキーパーが召喚され、ゲートキーパーからの降伏勧告を拒絶して災渦の力で抵抗しようとするが、ゲートキーパーが救助された事で最早制御不可能になってしまった災渦の力に飲み込まれ、恐怖のあまり絶叫しながら自爆するという壮絶な最期を遂げた。

  • ララ・ムームー(LaLa Moo-Moo)
本作の裏ボス。エジプト人だなどという噂話が聞けたりするが、その姿はトーガを羽織ったラマ。というか雑魚モンスター「トーガ・ラマ」のそっくりさん。
それでもグブリ・ゲドックが「ララを賛美せよ!」などと唱えたりするあたり、ブラザーフッド教団の聖獣のようである。
地獄の奥底からたどり着ける、ある種意外な場所で卑小な存在……冒険者たちを待ち受けており、力を求める彼らの前に圧倒的な強さを示してくる。
通常攻撃は麻痺・石化・鎧破壊・能力値ドレイン・レベルドレインを引き起こし、全ての魔術師呪文と僧侶呪文を使うだけでなく毒のブレスまで吐いてくる。大量のHPと自動回復、低いACと高い呪文抵抗も持っており、ラスボスのソーンはおろか、地獄の三強(アークデビル、ダークロード、ネザーデーモン)にも勝てるくらいの実力がなければ、ララ・ムームーに勝つことは出来ないだろう。
一応、そいつ等と違って後ろに雑魚悪魔を引き連れてはこないし、実は首切りを行ってこない(僧侶の即死呪文は使うが)といった有情な面もあり、あくまで冒険者たちに試練を与える聖なる者という扱いなのだろう。
見事勝つことが出来れば大量の経験値と共に、ソーンや三強が分担して隠し持っている本作最高のレアアイテム(最強の剣、最強の刀、最強の弓、最強の鎧)がドロップするチャンスを得られる。

……が、かつて村正やら手裏剣やらを血眼になって探し回った古参のWizフリークにとっては、「固定エンカウントで現れ」「レアアイテムを大量にばらまく」こいつの存在は安直なボーナスキャラにしか見えなかったようで、当時はかなり不評だった。
もっとも、ウィザードリィを探索重視のゲームに変革(テーブルトークRPGへの原点回帰)したブラッドリーの意図するところは、その「古参のWizフリーク」などというレア物目当てに本筋そっちのけでダンジョン大虐殺に明け暮れるプレイヤーに対する当てつけだったのかもしれないが。


なお、本作のNPCやモンスターのうち一部は『ニューエイジオブリルガミン』の#4アレンジ版において、周回プレイを繰り返すことによって追加される召喚モンスターとして登場する。
特にラスボスのソーンは、ワードナが魔女と結婚するエンディングを迎えた際にワードナが浮気などという真似に走らないように魔女から派遣されたとっておきの見張りとして追加され、ラスボス性能のままゲーム開始直後に召喚出来る
一方でゲートキーパーについては、かつて日本で刊行されたウィザードリィ小説の中に「#4の真のエンディングにおいて世界の真理にたどり着いたワードナが、時代を経て#5のゲートキーパーになった」という物語を描いた作品があったのだが、このアレンジ版でワードナがゲートキーパーを召喚してみせたことで否定されることになってしまった。シリーズ5作がリルガミンの下に一本化された『リルガミンサーガ』『ニューエイジオブリルガミン』設定では、#5の方が#4の過去の話になるのでこういう扱いになったのであろう。


追記・修正はウィザードリィの神々の挨拶を受けてからお願いします。


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最終更新:2025年03月17日 05:00

*1 原語版ではスケイルメイル