悪夢の蜃気楼(遊戯王OCG)

登録日:2024/12/31 Tue 01:02:02
更新日:2025/05/11 Sun 20:28:24
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《悪夢の蜃気楼》とは遊戯王OCGに登場するカードの1枚。

概要

《悪夢の蜃気楼》
永続魔法
相手のスタンバイフェイズ時に1度、自分の手札が4枚になるまでデッキからカードをドローする。
この効果でドローした場合、次の自分のスタンバイフェイズ時に1度、
ドローした枚数分だけ自分の手札をランダムに捨てる。

永続魔法
①相手のスタンバイフェイズに発動する。自分は手札が4枚になるまでドローする。
②このカードの①の効果でドローした場合、次の自分スタンバイフェイズに発動する。
ドローした枚数分だけ自分の手札をランダムに捨てる。
※最新の書式に合わせて書き直された遊戯王マスターデュエル版のテキスト

2002年3月21日発売の2期最後のパックである「Pharaonic Guardian -王家の守護者-」に収録されたカードで、レアリティはノーマル。
最後に収録されたのが7期の「BEGINNER'S EDITION 2」であり、OCG版には9期以降に行われたテキスト整備後のカードがなく、マスターデュエルのみの存在となっている。*1
OCGのテキストからは若干分かりにくいが、手札を捨てる効果はドローする効果に付随する残存効果ではなく、ドローする効果とは別に発動する効果となっている。

永続魔法であり発動した時点では何も起こらない。
相手のスタンバイフェイズに自分の手札が4枚以下なら手札が4枚になるようにドローする。
手札が0枚であれば、最大4枚ドローすることができる。
そんな甘い話ばかりのはずはなく、このカードの効果によってドローした場合に次のスタンバイフェイズにドローした枚数分捨てることになる。
つまり、このカードの効果によって実質的に手札は増えることはない。
捨てる手札はランダムに選ばれるので、欲しいカードが残ってくれるかは運次第となってしまう。
そのため手札交換カードとして見ても扱いにくい部類に入る。

カードの名前から察するに自分の手札が増えるという蜃気楼を見て、それが使えるようになる自分のメインフェイズの手前である自分のスタンバイフェイズに蜃気楼のように消えていくというデザインなのだろう。
欲しいカードがスタンバイフェイズに捨てられてしまった場合には、正に悪夢と言えるかもしれない。
エラッタ前の《キラー・スネーク》であれば手札の枚数を水増しできるため、捨てる際に本命のカードの身代わりになってくれる可能性がある上に、捨てられた場合は即座に回収することができるため相性が良い。
だが、本命のカードが残ってくれるかは結局運次第であり、コンボを使用したとしても安定しない。

単体で見ると癖の強い手札交換カードに過ぎないが、カードの特性をよく見てみると別の姿が見えてくる。
注目する特性としては永続魔法であることと、ドローする効果と手札を捨てる効果はそれぞれ別の効果となっており、効果の発動タイミングも別々になっていること。
つまり、相手のスタンバイフェイズから自分のスタンバイフェイズまでの間に何らかの方法で《悪夢の蜃気楼》をフィールドから切り離すか、無効化してしまえば手札を捨てる必要がなくなる。
フィールドから除去する前提であれば、《悪夢の蜃気楼》の除去に1枚使うとしても2:4交換であり2枚分のアドバンテージを得ている。
コンボ前提とはなるがドローソースとして使用することができる。
除去するためのコンボパーツとして使用されたのは汎用性の高い《サイクロン》であったため、《悪夢の蜃気楼》のコンボのために単体で役に立たないカードを入れて構築を歪める必要はなかった。
無効化するために使われたコンボパーツは《王宮の勅命》であり、これも汎用性が高い。
しかも、この時の《王宮の勅命》はエラッタ前であり自分のスタンバイフェイズに任意で自壊させることができた。
ドロー効果の後に《王宮の勅命》を発動し自分のスタンバイフェイズに《悪夢の蜃気楼》の手札を捨てる効果を無効化した後に、《王宮の勅命》の維持コストを払わずに自壊させることで最大2:8交換まで実現できた。*2

また、《悪夢の蜃気楼》を発動することによる副次的な効果として、相手の《大嵐》や《ハーピィの羽根帚》などのこのカードを巻き込む除去の使用を牽制することができる。
除去に《悪夢の蜃気楼》を巻き込んでしまうと、実質的に友情コンボとなってしまい相手にハンドアドバンテージを与えてしまう。

前述のコンボが発覚した後はドローソースとして活用されるようになり、2003年1月1日の制限改定にて制限カードに指定され、2005年3月1日の制限改定で禁止カードに指定された。
その後は一度も禁止カードから緩和されていない。
ちなみに、この当時のリミットレギュレーションでは二大汎用ドローソースである《強欲な壺》と《天使の施し》が片方禁止・片方制限というローテーションで動いていた。
最大4枚ドローでき、デメリットを踏み倒す手段も存在していたこのカードはあちらより危険と判断されたのだろう。
凶悪ドローソースとして使用されていた《第六感》も同時に禁止カードに指定されている。

禁止カードになってから長い年月が経ったが、(エラッタなしを前提とするなら)禁止解除の可能性はまずあり得ないと言える。
現在では相手ターン中に《悪夢の蜃気楼》をフィールドから退かす手段はごまんと存在する。
手札から捨てられたら発動する効果及び、墓地で発動する効果も禁止カードに指定された時より比にならないぐらい増加している。

現在の遊戯王は手札誘発環境であるため、自分のターンの展開に手札を使い果たしてしまっても、《悪夢の蜃気楼》で手札誘発を引きに行くことができてしまう。
現在の遊戯王は非常に高速化しているため先攻盤面を作った上で、《悪夢の蜃気楼》でドローした手札誘発による追加の妨害で相手を封じ込められれば、次のターンに勝つことができる。
つまり、《悪夢の蜃気楼》がフィールドから退かせずデメリットが直撃したとしてもほぼ関係ない場面すらある。

永続魔法故に除去されやすい点も大抵は妨害カードで止められるうえ、性質上スタンバイフェイズまでに除去できないと意味がないため、後攻1ターン目の場合対策札も、速攻魔法などやや限られている。
仮にカードの都合でこのカードだけ守れなかったとしても損するのは実質このカード分だけである。
現代ではコンボを全く意識せずとも問題なく使えてしまうため、凶悪さは登場当時より増していると言える。


アニメでの登場

「自分のスタンバイフェイズ前に除去してしまえば手札を捨てずに済むぞ。さあ手札5枚でデュエル続行じゃ。」

遊戯王デュエルモンスターズではアニメオリジナルのKCグランプリ編でマスク・ザ・ロック(武藤双六)が使用した。
《悪夢の蜃気楼》の効果でドローした直後に《非常食》のコストとして墓地へ送ってコンボしている。
KCグランプリ編はOCGを意識した実戦的な戦術が登場しており、これもその内の1つと言える。

遊戯王デュエルモンスターズGXでは遊城十代が《非常食》と合わせて度々使用している。
当時の融合召喚は非常に手札消耗が激しく、現実でも使われたコンボだったため都合が良かったのだろう。
しかし、《悪夢の蜃気楼》が禁止カードに指定された後には使用されなくなった。

両者とも《悪夢の蜃気楼》を除去するカードに《非常食》を使用している。
アニメ世界ではライフアドバンテージがOCG以上に重要視されているのと、《サイクロン》でただ自分のカードを破壊するよりは、《非常食》ならライフ回復もあるため演出的には良いためだろうか。
ちなみに現実では《非常食》が《悪夢の蜃気楼》とのコンボ以外の用途に乏しかったため、あまり使用されていなかった。*3


余談

このカードの根本的な問題点としてはメリットが大きいにもかかわらずデメリットを踏み倒せてしまう事にある。
もっと言うならばメリットが先払いのため、デメリットを受けるまでの間にタイムラグがありその間に何らかのズルをする猶予が生まれてしまっているということである。
デメリットが後払いになるのであれば、その間にデメリットを実質的になかったことにするような立ち回りができ、それ以前にその間に勝ってしまえばデメリットを受けるタイミングすらなくなる。
そして現代においては手札誘発や墓地リソースの点から無理にデメリット踏み倒しコンボを狙う必要すらないのは上記の通り。

例えば《命削りの宝札》のエンドフェイズに手札を全て捨ててしまうデメリットであれば、魔法・罠カード中心で固めることで捨てるカードをゼロにすることは難しくはない。
上記のコンボで登場したエラッタ前の《王宮の勅命》はコストの支払いを行わないことで自分で破壊できたため、コンボせずとも1枚のカード内に全てが用意されてしまっていた。
他所のカードゲームにはなるが追加ターンを得る代わりに、追加ターン終了後にゲームに負ける《無双竜機ボルバルザーク》は、勝てるタイミングで出せばいいだけの話になっていたので近い性質を持っていると言えるか。
逆にデメリットが先払いでメリットを得られるまでのタイムラグがあるカードは、メリットを受けるまでの間はデメリットを被った状況で戦わないといけない上に、ちゃんとメリットを得られるかが不安定になりやすく評価が低くなりやすい傾向がある。
環境が高速化すればするほど前述の傾向が強くなるため、デメリットが後払いの効果のメリットの調整は日に日に難しくなって行くのかもしれない。
そうでなくともカードゲームプレイヤーは隙あればコストを踏み倒そうとする生き物ではあるし。

もっとも憶測に過ぎない話ではあるが、《悪夢の蜃気楼》が登場した当時はOCGが黎明期であり色々やってみようとした結果、効果の抜け穴に気づかなかった可能性がある。
実際にレアリティはノーマルでの収録となっておりかつ、プレイヤー側もすぐには前述した使い方に気づかなかった。

9期に登場したテーマであるDDの契約書はメリットをデメリットの発生前に受けられる上に、テーマ内にデメリットを実質的に踏み倒せるカードが存在している。
そのため、意図的にデメリットを踏み倒すのを目的としたテーマデザインとなっている。


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最終更新:2025年05月11日 20:28

*1 ただしあくまでもOCGとマスターデュエルは別のゲームであるため半公式ぐらいの立ち位置となる。

*2 厳密には次のスタンバイフェイズに《悪夢の蜃気楼》を除去できないと手札を捨てることになる。除去できた場合は3:8交換の5枚分のアドバンテージになる。

*3 一応《非常食》はコストで《悪夢の蜃気楼》を墓地へ送れるため確実性という点では利点がある。