横須賀線

登録日:2010/01/07 Thu 23:22:53
更新日:2025/03/22 Sat 11:41:41
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横須賀線(よこすかせん)とは、神奈川県の大船駅から久里浜駅までを結ぶ、JR東日本の鉄道路線のことである。

独立した線路は上述の区間だけだが、実際は
  • 東京品川: 東海道本線の別線(地下線、東京トンネル)
  • 品川〜鶴見: 東海道本線の貨物支線(通称・品鶴線)
  • 鶴見〜大船: 東海道本線
を経由して久里浜方面と結ぶ運転系統を指すことが殆どであり、当項目でもそのように扱う。

ラインカラーは青で、路線記号は[JO]
駅ナンバリングと路線記号は総武線快速と通しになっている。


目次


概要

軍港である横須賀港へのアクセス路線として1889年に開業し、1944年までに久里浜まで全線が開業した。
古くから軍港や別荘が沿線にあることからクロスシートやトイレ、グリーン車を連結した車両が運行されているが、近郊形車両を使用しながら全線が電車特定区間に指定された特殊な路線でもある。
車体の塗装はクリーム色のツートンである「スカ色」と呼ばれ、ミカンとお茶の葉をイメージした東海道線「湘南色」との対照で、「白砂青松を表現した色」とされる。

大半の列車は総武快速線または湘南新宿ラインに直通する。横浜から大船の間は東海道線通過駅の補完も果たしている。

現在では全線独立した線路を走行するが、1980年9月までは東京~大船間で東海道線と線路を共有していた。
国鉄時代の通勤5方面作戦の一環で東海道線との分離および総武快速線への直通運転が開始され、これらの計画は両線の列車番号(東海道線が○○○○M、横須賀線が○○○○S)を取ってSM分離と呼ばれている。決していかがわしい意味ではない
同時に総武線との直通運転が始まっているが、こちらはSF直結と言われている。これも総武線の列車番号に○○○○Fと振られていたためである。

東京~逗子間では15両または11両で運行されるが、逗子~久里浜間は最長で11両までしか入れない。
これは逗子以南、特に田浦と横須賀が“横須賀名物”の1つとされているトンネル多発地帯にあり、ホームが短いため。

増結編成4両が逗子発着・11両の基本編成が逗子以南まで運転する。
……だがしかし、朝の一部の下りだけは逆(後ろの11両が逗子止まり)になるので、慣れないうちは過信せず行先表示を確認しよう。
地方民はたいてい「短い11両編成です」の放送で「どこが短いんじゃ!!」とツッコミを入れる。

また、横須賀線の増結編成は下り側に4両で入るが、東海道線は逆の上り側に5両で入る。
これは逗子駅の下り側にある留置場の問題で、4両編成にしないと16編成を留置できないことや、東京側に連結しようとすると機回しが必要になるので発車本数を増やせないという都合がある。
そのせいで湘南新宿ラインと総武快速線の列車でグリーン車の位置がずれるという、地味にめんどくさい状況になっていたり。

アナウンスを聞き忘れてて電車が到着した瞬間大移動は誰もが通る道。


運行形態

駅一覧

【凡例】
●:停車
┃:通過

駅名の※は信号場





駅名





























総武快速線
△直通△
       




東 京 JO 19
新 橋 JO 18
品 川 JO 17




(※目黒川) 湘南新宿ライン
△直通△
(※蛇窪)
西大井 JO 16
武蔵小杉 JO 15
新川崎 JO 14
(鶴 見)




横 浜 JO 13



保土ケ谷 JO 12
東戸塚 JO 11
戸 塚 JO 10
大 船 JO 09






北鎌倉 JO 08 東海道線
▽直通▽
鎌 倉 JO 07
逗 子 JO 06
東逗子 JO 05  
田 浦 JO 04
横須賀 JO 03
衣 笠 JO 02
久里浜 JO 01

湘南新宿ライン直通の普通列車は逗子まで運転する為、全区間を横須賀線の線路で運転している。
また、湘南新宿ライン直通の快速・特別快速は全列車が東海道線直通だが、蛇窪信号場~戸塚間は横須賀線を走行するため、保土ケ谷と東戸塚はホームのある線路を通過する。
戸塚駅で大船方面のポイントを通過して東海道線に転線するため、大船駅では東海道線ホームに到着する。

品鶴線区間でトラブル発生時、稀に一部列車が東海道線(川崎)経由で運転される。
また、反対に東海道線の鶴見~品川間でトラブルが発生した時にも、東海道線の列車が品鶴線経由で運転される事もある。
……どちらの場合も本数は大幅に減るが。
その場合、横浜と品川の渡り線で転線する。


列車種別

  • 普通
各駅に停車するが、湘南新宿ライン→宇都宮線直通列車は宇都宮線内快速となる列車もある。
かつて成田空港発着の電車は「エアポート成田」と案内されていたが、停車駅自体は全く変わらない&特急との違いを明確にするため、2018年3月17日ダイヤ改正で廃止された。
また、総武快速線から直通する快速は、横須賀線内では普通種別に変わる。

  • 快速
  • 特別快速
いずれも湘南新宿ライン・東海道線直通で、西大井・新川崎・保土ケ谷・東戸塚の4駅を通過する。
大船駅では東海道線ホームから発着する。


車両

一般形車両には全てグリーン車が連結されている。

現行

  • E235系1000番台
E217系の代替として2020年12月に登場。
基本的な仕様は山手線用の同形式に準じているが、一部車両がトイレ付きとなったほか、LCD画面の大型化や袖仕切り形状の変更などのマイナーチェンジがされている。普通車は武蔵小杉駅付近の混雑が酷いこともあり、全車ロングシートとなった。
グリーン車は全座席に電源コンセントが付いた他、無料Wi-Fiが使用できる。

  • E231系・E233系
湘南新宿ライン用の車両で逗子まで乗り入れる。間合い運用として大船〜逗子間の区間列車に使われることも。

  • E259系
特急「成田エクスプレス」で使用。
基本的に2編成を連結した12両で運転されるが、一部列車は東京駅で横浜・大船方面の列車と新宿・池袋方面の列車が分割されるため、6両での運転もある。

  • E653系
特急「鎌倉」用。
勝田車両センター所属の波動編成で、元は羽越本線の「いなほ」で使用されていた。
グリーン車がとんでもなく豪華。

過去

  • 113系
普通列車用。定期列車の運用は1999年に終了したが、その後も千葉地区の車両がイベント向けの臨時列車として入線していた。
ちなみに、スカ色の塗り分け位置は当初湘南色と同じ位置だったが、クリーム色が強すぎるとの指摘を受け現在のものに修正された経緯がある。
更に言えば間違えてスカ色と同じ塗り分けの湘南色となった車両もあった。

  • 215系
ライナー列車のほか、湘南新宿ラインの普通列車としても使用されていた。

  • 183系
幕張車両センター所属の編成がおはようライナー/ホームライナーに使用されていた。

  • 485系
定期列車ではなく、週末・休日など行楽シーズンに鎌倉への臨時列車や団臨として使用されていた。

  • 205系
休日に設定されていた横浜線根岸線からの直通列車で使用されていた。
2008年に湘南新宿ラインの増発に伴い撤退した。

  • E257系5500番台
かつてはホリデー快速→特急「鎌倉」に使用されていたが、2024年3月改正から「鎌倉」はE653系に譲り撤退。以降もそれ以外の臨時列車で入線する例がある。
これ以外では種車でもある500番台がおはようライナー/ホームライナーに使用され、東京からホームライナーで来ておはようライナーで戻る運用だった。
10両前後が当たり前のような東京駅朝夕ラッシュ帯に、まさかの5両編成で登場していた。

  • E217系
113系置き換えのために1994年に登場。普通車は9~11号車がセミクロスシートでその他はロングシートである。
2008年から2012年にかけて更新工事が実施され、帯の色が明るくなった。
E235系の導入に伴い廃車が進められ、2025年3月に引退。


過去の過去

かなり初期から電化された長距離路線だったため、ここ専用の特異な列車が走ることが多かった。
  • 客車列車時代
1889年の開業から1925年の電化までは他と同じく蒸気機関車、以後は電車がそろうまでは電気機関車(ED50など)が客車を引いていた。
蒸機時代は普通の二軸客車だったが、電機時代は客車(ナハ22000など)に電気暖房の設備がつけられたりしていたなど特別仕様はこの頃からあった。

  • 戦前・戦中の電車時代
1930年から電車運転が始まったが、当初は山手線など近郊用で使用されていた電車を使用し、モハ30・31などは最新型だったものの、付随車には木造車体の物や
貴賓車*1に至っては客車に引き通し線をつけただけのナイロフ20550等まで存在するなどかなり雑多だった。
1935年にここ専用のモハ32系列が配備されるようになり、貴賓車も電車のクロ49に変更。これらにはセミクロスシート(それまでの電車はほぼ全部ロングシート*2)が装備され、
長距離向けの構造になり、ロングシート車はモハ30改造のモハユニ30がしばらく荷物・郵便輸送用に残されていたものの、1935年にモハユニ44が投入されたことで総武線に回され完全セミクロスシートになっている。
こうして日本で珍しい長距離電車王国になっていた横須賀線は、1938年に国有鉄道で電車の二等車廃止*3の際にも特例で存続され(1944年に横須賀線でも二等車廃止になったが海軍将校の要望で数か月ほどで復活)、関西などで使用していた二等車(クロハ69など)が転属してきた。

  • 戦後の電車時代
1950年になると戦前から電車が発達してた関西にある国有鉄道の路線からモハ42・43・クハ58などが投入され、それまで関東では見られない大型で立派な電車が走るようになったものの、同時期には東海道本線には横須賀線を上回る長距離に特化した電車の80系が投入されており、電車の発達に伴い他に比べての違いが小さくなってきた横須賀線は翌年投入の70系電車を最後に「ここならではの車輛」が走ることはほとんどなくなってしまった。


駅解説

東海道線と併走する東京~品川間は当該項目を参照。
総武快速線から地下で直通するため、東京と新橋はまともにGPSが入らないことでも知られている。

東海道新幹線山手線京浜東北線・東海道線(上野東京ライン)・京急線乗り換え。
ここから地上に出るため、駅メモなどの位置情報ゲームがまともにプレイできるようになる。

  • JO 16 西大井
湘南新宿ライン埼京線(大崎・新宿方面)乗り換え。
東海道線との分離化に伴う品鶴線の旅客化に合わせて、地元の品川区民の要望で誕生した駅である。

  • JO 15 武蔵小杉
南武線相鉄線直通東急東横線目黒線乗り換え。
川崎市中原区の中心駅で川崎の副都心の一つ。
詳しいことは該当記事を参照。

  • JO 14 新川崎
SM分離で開業した新駅その1。
貨物列車が間近に見られる為、鉄ヲタ御用達の撮影スポットだったりする。
少し歩けば南武線鹿島田駅と連絡可能。
当初は「新鹿島田」となる予定だったが、地元民以外からは分かりにくいとの理由と川崎駅の代替の意味もあって新川崎とされた。
しかし乗換駅ではないのが影響して、川崎駅の代替の地位は武蔵小杉駅に奪われてしまった。

  • (新鶴見信号場…武蔵野貨物線、南武貨物線の分岐点)

  • (鶴見…横須賀線系統と東海道本線、東海道貨物線の分岐駅だが両者ともに全て通過)

東海道線・根岸線・横浜線・京急線・東急東横線・相鉄線・みなとみらい線横浜市営地下鉄ブルーライン乗り換え。
工事やら乗り入れ路線やらでかなりカオスな駅。

  • JO 12 保土ケ谷
地名の由来が「女性のアソコ(ホト)の形に似た谷」じゃないかと言われている。
保土ケ谷区の端にある駅で、保土ケ谷の中心へのアクセスは相鉄星川駅の方が良好。
東口のバスターミナルは国道1号線を跨いだ反対側にあるため、駅舎にBT行きの歩道橋が繋がっている。

  • JO 11 東戸塚
SM分離で開業した新駅その2。東海道貨物線横浜羽沢駅方面との分岐駅である。
実は大正時代に一度開業が決まっていたが、その後関東大震災や第二次世界大戦等が起きたために1980年まで開業できなかった歴史がある。
駅前はショッピングモールがあるなど割りと賑わっている。

  • JO 10 戸塚
横浜市営地下鉄ブルーライン乗り換え。
戸塚区自体は「横浜のチベット」と揶揄されることもあるが、駅自体は巨大商業施設と合体しているなど豪華な方。
ちなみに神奈川県民なら一度はお世話になるであろう書店の有隣堂が地下、駅ビル(東急プラザ)、駅近く(モディ)と3箇所もある。
この駅は東海道線と対面乗換えが可能な構造で、乗り換える人が多い。

  • JO 09 大船
東海道線・根岸線・湘南モノレール乗り換え。
横浜市と鎌倉市の境界に位置する…というか本当に境界をまたいでいる駅。登記上は鎌倉市大船だが、駅から見える小さな川が境で、北口は横浜市栄区に存在する。鎌倉車両センター最寄駅でもある。

  • JO 08 北鎌倉
未だに構内踏切がある。実は円覚寺の境内にあり、落ち着いた雰囲気のある駅。
周辺の高校に通う学生のために朝は臨時改札が設けられている。

  • JO 07 鎌倉
江ノ島電鉄線乗り換え。
観光地だけあって改札が町の規模にくらべめちゃくちゃに広い。
かつては横須賀鎮守府に勤務する海軍将校が多く家を構えていたため、彼らの通勤でも賑わった。中には通勤時に出会う上官にいちいち敬礼するのが嫌で鎌倉住まいを辞めた将校も居たらしい。

  • JO 06 逗子
少し離れているが京急逗子線逗子・葉山駅に連絡可能。
全列車の半分くらいは逗子止まりだが、15両編成の久里浜行き列車はここで切り離しを行う。
また、増結の4両だけで逗子~久里浜間を往復する編成もある。都合よく久里浜行きがない場合は逗子行きに乗り、逗子で4両編成に乗り換えても良いだろう。
当駅から京急神武寺との間に連絡線があり、総合車両製作所横浜事業所と接続する。
他社で製造された京急・京成関係の車両もここから入線する。

  • JO 05 東逗子
1947年に地元の要望で作られた。神武寺と鷹取山への最寄り駅。

  • JO 04 田浦
前述の事情から11両編成のうち1号車と2号車久里浜寄りのドアはトンネル内にあり、通称「田浦スイッチ」によってドアカットされ開かない。
かつてはここから米軍向けの燃料輸送用の貨物線が分離していた。

  • JO 03 横須賀
一応JRにおける横須賀市の代表駅らしいが、街の規模は京急横須賀中央駅はおろか、汐入駅周辺にも負けているという駅。
むしろ京急バスの運行拠点の役割の方が目立っていると言ってもいい。

かつて米軍向けの貨物輸送に使われていた留置線もあり、今でもたまに保守用のモーターカーや臨時列車が止まっている。
正確には旧横須賀中心部(要するに軍用エリア)であり、今でも海上自衛隊横須賀基地の最寄駅である。
駅のすぐ前にあるヴェルニー公園から運が良ければ「いずも」や南極観測船「しらせ」が見える。

終点では無いのに構内踏切も存在しない平屋式の珍しい駅。
かつては終着駅だったのもあるが、傷痍軍人の利用を考えて戦前の建物ではあるがバリアフリー構造としたのも理由。
2番線のホームは頭端式のため、イベント開催時等に車両が展示されることも多い。
因みにここから久里浜駅までは単線区間となっている。単線なのは第二次世界大戦中に突貫工事で作ったため。

  • JO 02 衣笠
周辺の発展度は横須賀駅よりも上で、近くに商店街やスーパーマーケットがある。
なので横須賀市内にある横須賀線の駅では最大の乗降客数を誇る。桜の名所である衣笠山公園などへの最寄駅。
なお衣笠駅と横須賀駅の間は線内でも屈指のトンネル密度であり、3〜5分程度ではあるが圏外になるエリアすらある。この区間での携帯電話の操作は控えておこう。

  • JO 01 久里浜
終着駅。駅の隣に留置線がある。
京急久里浜線・京急久里浜駅が近く乗換え可能。
かつては乗務員訓練用として105系が留置してあったが、現在は209系に置き換えられている。
久里浜港の最寄駅でもあり、東京湾フェリーを経由して内房線浜金谷駅に行くことができる。
ちなみに駅前にはお店が少ない。用がある方は京急久里浜駅の方へ。


追記・修正は横須賀線のグリーン車に乗りながらお願いします。

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  • JO
最終更新:2025年03月22日 11:41

*1 横須賀鎮守府や近隣の勤め先を利用する皇族の通勤通学用

*2 ただし、明治・大正期は客車でも二等以上は開放感のあるロングシートというのがざらで、私鉄ですでに長距離電車を走らせていた南海鉄道なども特等・並等共にロングシートであったため、一概に「ロングシート=近郊用」というわけではない。

*3 戦前の電車に一等は存在しないので事実上モノクラス化