アットウィキロゴ

クロダイ

登録日:2026/10/12 Mon 16:36:56
更新日:2026/10/12 Mon 17:27:14NEW!
所要時間:約 5 分で読めます




クロダイ(黒鯛、学名:Acanthopagrus schlegelii)は、タイ科の海水魚である。



【特徴】

形態

全身が黒く腹部は白い。左右に平たく側扁し体高が高いタイ型の体形をしている。
マダイに比べると口が前に突き出しており狐顔である。
大型個体は全長60cmを超える。

分布

東アジアの沿岸や内湾に広く生息する。
淡水の混じる環境を好み、川を遡ることもある。

食性

水中の小動物のほか海藻なども食べる。
食性の幅が広く、いわゆる「悪食」な魚として知られている。
海は広いといえども、悪食扱いされているのはクロダイとイタチザメくらい。 

性転換

雄性先熟の性転換を行うことが知られている。
すなわち、クロダイの若齢個体はすべてオスで、さらに成長すると一部の個体(全部ではない)がメスに性転換して卵を産むようになる。
魚類では性転換は複数の種で知られているが、雄性先熟の性転換を行う種は少数派である。

呼び名

釣り界隈では「チヌ」の呼び方が一般的。チヌと言っても戦車ではない。

成長に合わせて呼び名が変わる出世魚でもあり、関東ではチンチン→カイズ→クロダイの順に呼び名が変わる。



【釣り】

波止や磯の釣りでは非常に人気の高い対象魚であり、クロダイを釣り上げるために様々な工夫がこらされている。

付けエサは定番のオキアミやサナギのほか、クロダイの生息域にいる動物ということでアサリやイガイなどの貝類、カニやエビにヤドカリやフナムシといった甲殻類などなどが使われる。
ちなみにカニやエビの小型個体は釣具店で購入できることが多いが、ヤドカリやフナムシとなるとたいてい現地採集が必要になってくる。

さらに動物質のエサのみならず、スイカやミカン、缶詰のスイートコーンをエサに使った釣り方まで編み出されているから驚きである。
本来は海の中にない果物などで釣りが成立する理由は、クロダイの食性の広さに加えて、好奇心が強く見慣れないものにも寄ってくる性質が挙げられる。
植物性のエサはエサ取りの外道に強いという利点もある。

昔の人もクロダイ釣りは海釣りの中で別格という認識があったらしく、江戸時代の庄内藩の釣り*1でもクロダイは最高の対象魚であったらしい。



【鑑賞】

水族館ではよく展示されている。

家庭では飼育難易度はともかくサイズがネックになり、最低でも60cm、できれば90cm以上の水槽がほしい。
悪食なので口に入る大きさの生き物は食べられてしまう可能性が高い。
寿命も長いので、飼育環境を長期間維持するところまで考えるとアクアリウムでも本格派志向のお魚といえるかもしれない。
野外採集のしかたや必要な設備などに関しては、汽水魚(魚類)の項目も参照いただきたい。


【食べる】

白身魚であり、タイの仲間なのでマダイなどと同様に刺身や寿司や焼き魚や煮魚などなどの料理で食べられる。

ただし食用魚としての評価は高くはない。とくにマダイと比べて
  • 色が黒いのでおめでたさに欠ける
  • 生息域の水質や食餌により、磯臭さが感じられる個体がいる
ことが低評価の原因となっている。
とはいえ、そのために魚屋さんでは安く買えることも多い。
磯の香りを前提とするなら、薬味を効かせたり香味野菜と一緒に調理したりするとよい。

旬は産卵期前後の春や秋とされる。
冷蔵庫がなかった時代は、夏場に淡水で活かしておくことで鮮度保持を図ることができたので重宝されていた。



【近縁種】

キチヌ(A. latus)

クロダイと同属の魚。
体形はクロダイと同様だが体色はより明るい銀灰色をしている。
腹鰭と臀鰭および尾鰭の下部が黄色く、和名はこの特徴に由来する。
釣り界隈では「キビレ」と呼ばれることが多い。
食用魚、釣りの対象魚としての評価はクロダイに準ずる。

その他のクロダイ属の魚

ミナミクロダイ(A. sivicoluss)、ナンヨウチヌ(A. pacificus)、オキナワキチヌ(A. chinshira)などの種類があり、地元で食用にされている。

ヘダイ(Sparus sarba)

クロダイに似ているが別種。
口は突き出さず顔つきは丸みを帯びている。
体色は明るい銀白色で、体全体に複数の褐色の縦縞(頭から尾に向かって走る縞模様)がある。
全長は最大で40cmになる。
身は白身でくさみがなくとても美味なのだが、マダイに比べてサイズが小さいためか安く買えることが多い。



【創作世界でのクロダイ】

『釣りバカ日誌』など魚釣りを扱う作品ではしばしば登場するがあくまで釣りの対象魚としての描写がメインであり、クロダイモチーフのキャラクターがいるかというとあんまりいない気がする。

『鉄鍋のジャン!』では主人公・秋山醤の作った料理の中にクロダイの蒸し物が存在する。
作中ではメスのクロダイを使って「骨の周囲にあえて生の部分を残すような蒸し方をすることで旨味を封じ込める」という調理を行い、さらにオスのクロダイの白子を使ったタレをつけることでクロダイの旨味を存分に楽しめる料理として提供、通好みの逸品として評価されている。


【余談】

クロダイの種小名"schlegelii"は動物学者ヘルマン・シュレーゲルへの献名、オキナワキチヌの種小名"chinshira"は沖縄で同種を指す方言「チンシラー」に由来する。





追記・修正は、大チヌを披露しようと思ってたらチンチンが出てしまった人にお願いします。

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

最終更新:2026年10月12日 17:27

*1 庄内藩の立地は現在の山形県鶴岡市、酒田市のエリアに該当する。同藩では藩士の心身の鍛錬になるとして磯釣りが奨励されていた