エピソード
貧困からの脱却
かつて、人類に害を及ぼす火山として忌み嫌われた山に、ひとつの奇跡が起こった。
人々はこれを「ゴルドの奇跡」と呼ぶ。
今回は我々ゴルド村取材班が独自に入手した資料を基に、いかにしてその奇跡が起こったのか、その実態を明らかにしていきたいと思う。
人々はこれを「ゴルドの奇跡」と呼ぶ。
今回は我々ゴルド村取材班が独自に入手した資料を基に、いかにしてその奇跡が起こったのか、その実態を明らかにしていきたいと思う。
昔、神聖ロダール王国のはずれに位置する片田舎の小国に、ゴルド村という寂れた村があり、その村を統治する独自国家が存在したとされる。
現在この国は残っていないため歴史を辿ることに苦心したが、長年の調査の末、この国の王国期の一部を手に入れることに我々は成功した。
現在この国は残っていないため歴史を辿ることに苦心したが、長年の調査の末、この国の王国期の一部を手に入れることに我々は成功した。
この王国記の中でも、ゴルド村は土地がやせているのか作物がろくに採れず、更に離れ小島であることも手伝ってか、代々その地に住む者を除いては人もあまり寄り付かない有り様であったという記述が見られる。
極めつけは島の北西にある火山であり、その山頂は常に噴火の予兆を感じさせ、村人にとって恐怖の対象以外の何物でもなかったと思われる。
極めつけは島の北西にある火山であり、その山頂は常に噴火の予兆を感じさせ、村人にとって恐怖の対象以外の何物でもなかったと思われる。
だが王国記を記している王子は、ゴルド村の状況をあまり悲観していなかったらしい。
それどころか、とても前向きにこう記している。
それどころか、とても前向きにこう記している。
「民よ!あの山こそ村を、ひいては国を豊かにする鍵であるぞ!」
当時の人々からすれば、まるで意味のわからない言動であっただろうと推測できる。
だがその王国記には、さらに以下のように綴られていた。
だがその王国記には、さらに以下のように綴られていた。
「ゴルド山には、金が眠っている。私はその金を探し当て、民に富を与えることをここに約束する!」
王子の信念
ゴルド村を統治する小国の王子は、ゴルド山には金が眠っているとし、発掘調査を開始したと王国記の中に記している。
彼は日頃の言動が豪胆であったため、大雑把な性格と思われがちであった。
しかし、その実は勤勉家で、細かいことにも地道に前向きに取り組む姿勢は並のものではなかったらしい。
(それを王国記の中で「私ほど額に汗して自ら民のために動く実直な王子は他にはいないだろう」と記し自画自賛してしまう所がまた彼らしい)
彼は日頃の言動が豪胆であったため、大雑把な性格と思われがちであった。
しかし、その実は勤勉家で、細かいことにも地道に前向きに取り組む姿勢は並のものではなかったらしい。
(それを王国記の中で「私ほど額に汗して自ら民のために動く実直な王子は他にはいないだろう」と記し自画自賛してしまう所がまた彼らしい)
彼は持ち前の探求心をもって、山の地質について徹底した研究を続け、ゴルド山に眠る金の存在を信じていたという。
たとえ小国といえど一国の王子であれば、山の発掘の采配は振るえど、自ら作業に従事するなど想像し難い。
だが彼は「民と苦楽を共にせずして何が王家か」との発言を残しているように、先頭に立って金の発掘に挑んだという。
(その直後に書かれている「今日は30キロの採掘道具を一日中振り回してやったわ!」という話はさすがに眉唾ものだが)
村が貧しくとも人が残っているのは少なからず、民衆がかの王子の憎めない人となりに惹かれているという部分もあったのであろう。
たとえ小国といえど一国の王子であれば、山の発掘の采配は振るえど、自ら作業に従事するなど想像し難い。
だが彼は「民と苦楽を共にせずして何が王家か」との発言を残しているように、先頭に立って金の発掘に挑んだという。
(その直後に書かれている「今日は30キロの採掘道具を一日中振り回してやったわ!」という話はさすがに眉唾ものだが)
村が貧しくとも人が残っているのは少なからず、民衆がかの王子の憎めない人となりに惹かれているという部分もあったのであろう。
しかし、掘れども掘れども金は出てこず、次第に発掘の士気も下がっていったという。
自身の研究結果を信じる王子は、そこで身銭を切って、発掘を行う者たちに食べ物と飲み物を与え士気を保ち、金の探索を継続したといわれている。
この行動は彼が度々王国記に記している、
「王家の財は即ち、国を形作る民の財でもある」という考えに基づいており、決して独善的に私服を肥やさず、国にいる人々すべてに富は分配するという思いからきているものに間違いないだろう。
実際、発掘に協力している民衆は、王子が金を決して独占することはないと信じているからこそ、いつ終わるかもわからぬ探索に従事できたのだと思われる。
自身の研究結果を信じる王子は、そこで身銭を切って、発掘を行う者たちに食べ物と飲み物を与え士気を保ち、金の探索を継続したといわれている。
この行動は彼が度々王国記に記している、
「王家の財は即ち、国を形作る民の財でもある」という考えに基づいており、決して独善的に私服を肥やさず、国にいる人々すべてに富は分配するという思いからきているものに間違いないだろう。
実際、発掘に協力している民衆は、王子が金を決して独占することはないと信じているからこそ、いつ終わるかもわからぬ探索に従事できたのだと思われる。
奇跡の瞬間
王国記はしばらく、発掘の失敗を繰り返しているという記述が続く。
しかしそのような中でも、王子が諦めたり、挫けたりする言葉が一切出てこない。
それどころか彼は恐ろしいくらい冷静に、うまくいかない原因を分析している。
彼は改めて掘り起こした土の質を調査し、発掘場所の修正を絶えず繰り返すことで、より金の出そうな場所を選定し直していく様を克明に記録しているのだ。
これらの採掘に関する知識と技術は今現在でも有用であり、彼の先進的な目は改めて評価されている。
そして、その発掘作業がいよいよ実を結び始める。
しかしそのような中でも、王子が諦めたり、挫けたりする言葉が一切出てこない。
それどころか彼は恐ろしいくらい冷静に、うまくいかない原因を分析している。
彼は改めて掘り起こした土の質を調査し、発掘場所の修正を絶えず繰り返すことで、より金の出そうな場所を選定し直していく様を克明に記録しているのだ。
これらの採掘に関する知識と技術は今現在でも有用であり、彼の先進的な目は改めて評価されている。
そして、その発掘作業がいよいよ実を結び始める。
ある日、採掘していた地表に徐々に変化が表れ始めたという。
それまで混じりけ無しの土しかなかった足元に、黄金色の粉末が混ざるようになり、ついに金の鉱脈を見つけたことを確信した王子は、
今までよりもう一段も二弾も気合を入れて、自ら採掘道具を振るい続けたという。
(ここまでくると自身の持つ採掘道具は優に50キロを越えていたと王子は記している)
これより先は王国記の記述をそのまま引用した方がより臨場感が伝わると判断し、以下に抜粋する。
それまで混じりけ無しの土しかなかった足元に、黄金色の粉末が混ざるようになり、ついに金の鉱脈を見つけたことを確信した王子は、
今までよりもう一段も二弾も気合を入れて、自ら採掘道具を振るい続けたという。
(ここまでくると自身の持つ採掘道具は優に50キロを越えていたと王子は記している)
これより先は王国記の記述をそのまま引用した方がより臨場感が伝わると判断し、以下に抜粋する。
「…そして私の姿に感じ入る者があったのか民の地面を掘る作業にも、より力が入っていくのを感じた。
我らが王家と民衆という枠を超えて、強い絆で結ばれた瞬間である。そして我らの思いに根負けしたのか、ついに今までとは異なる固い感触が私の採掘道具を貫いた…」
我らが王家と民衆という枠を超えて、強い絆で結ばれた瞬間である。そして我らの思いに根負けしたのか、ついに今までとは異なる固い感触が私の採掘道具を貫いた…」
何とも王子らしい大仰な記述だが、ここからは彼の行動をまとめた記述に切り替えることにする。
地面の感触が変わってから、彼はそれまでとは打って変わって慎重な手つきになり、固い感触のあった周りの土を徐々に払いのけていく。
その先に、彼はついに金を発見したという。
地面の感触が変わってから、彼はそれまでとは打って変わって慎重な手つきになり、固い感触のあった周りの土を徐々に払いのけていく。
その先に、彼はついに金を発見したという。