エピソード
島の巨大樹
ミガル島には港から一目できる巨大樹が存在する。
その名はジャイアント・ツリー。
この樹を見るために島を訪れる観光客もおり、樹をミニチュア化したオブジェはお土産として人気があるという。
その名はジャイアント・ツリー。
この樹を見るために島を訪れる観光客もおり、樹をミニチュア化したオブジェはお土産として人気があるという。
島の象徴ともいえるこの巨大樹を、より近くで見ようとする者は後を絶たない。だが、樹の根元まで行くには、険しい山脈を越え、さらに妖精たちが棲まうといわれている森を抜けねばならず、辿り着けた者はほとんどいないとされる。
そのため、誰もが目にし、島民にも観光客にも親しまれているジャイアント・ツリーの性質は、その近くでの調査がままならないため、ほとんど明らかになっていない。
そのため、誰もが目にし、島民にも観光客にも親しまれているジャイアント・ツリーの性質は、その近くでの調査がままならないため、ほとんど明らかになっていない。
運よく樹の根元まで辿り着けた者も何人か入るがその証言は曖昧で、樹の生態を研究する資料としては要領を得ないものばかりである。
そんな曖昧さの中にも、証言をまとめるといくつか共通する体験者の経験事項が出てきたという。
その共通点は、ジャイアント・ツリーへの辿り着き方、樹の根元での体験、そしてそこからの帰還方法といった部分に現れる。
そんな曖昧さの中にも、証言をまとめるといくつか共通する体験者の経験事項が出てきたという。
その共通点は、ジャイアント・ツリーへの辿り着き方、樹の根元での体験、そしてそこからの帰還方法といった部分に現れる。
まず、樹への辿り着き方の共通点だが、これは山道を歩き続けるうちに気を失い、次に目が覚めると巨大樹の根元にいることに気付くという内容である。
共通点としての気を失う、という部分は巨大樹の何らかの魔術的な作用が働いているのであろうか。
一方、気の失い方は人それぞれで、歩いているうちに方角を見失い体力が尽きた者、ケガをして動けなくなった者など共通点はない。
その中でも特に、ケガをした後にそこへ辿り着いた者の話は興味深いものがあった。
共通点としての気を失う、という部分は巨大樹の何らかの魔術的な作用が働いているのであろうか。
一方、気の失い方は人それぞれで、歩いているうちに方角を見失い体力が尽きた者、ケガをして動けなくなった者など共通点はない。
その中でも特に、ケガをした後にそこへ辿り着いた者の話は興味深いものがあった。
巨大樹の神秘
ある時ひとりの男が、巨大樹を目指して歩いていた。
彼は山道で負った足のケガで動けなくなったところで気を失う。
その後、痛みに耐えられず目を覚ますと、自身が優しく暖かい光に包まれた空間で横たわっていることに気付いたという。
そこは巨大樹の根元で緑に囲まれており、居心地の良い空間だったと、男は帰還後に証言している。
彼はまどろんだ意識の中で、巨大な幹と葉を視界に入れながら再び意識を失った。
次に目が覚めた時は、痛みや疲労がすっかり抜けた状態で山道の入り口、つまりジャイアント・ツリーを目指し始めた最初の場所に戻っていたと、彼は証言を結んでいる。
彼は山道で負った足のケガで動けなくなったところで気を失う。
その後、痛みに耐えられず目を覚ますと、自身が優しく暖かい光に包まれた空間で横たわっていることに気付いたという。
そこは巨大樹の根元で緑に囲まれており、居心地の良い空間だったと、男は帰還後に証言している。
彼はまどろんだ意識の中で、巨大な幹と葉を視界に入れながら再び意識を失った。
次に目が覚めた時は、痛みや疲労がすっかり抜けた状態で山道の入り口、つまりジャイアント・ツリーを目指し始めた最初の場所に戻っていたと、彼は証言を結んでいる。
他の者の証言でも、巨大樹の根元で優しい光に包まれた後、自分が山を登り始めた地点に戻っていたというものは共通していて、彼らは「巨大樹の加護によって救われた」と口を揃えたという。
彼らは自分達を照らした光を、体を癒してくれる巨大樹の加護だと信じているらしい。
その光については、小人が空を飛んでいるのが光っていたという者や、小さな虫が光り輝いていたという者もおり、正体は明らかにされていない。
いずれにせよ彼らの証言は、巨大樹に不思議な力が宿っていると考えられる要因となっている。
このような体験談が語られる中「樹に人を助けたりするような意思があるはずがない」と唱える学者が出現する。
彼らは自分達を照らした光を、体を癒してくれる巨大樹の加護だと信じているらしい。
その光については、小人が空を飛んでいるのが光っていたという者や、小さな虫が光り輝いていたという者もおり、正体は明らかにされていない。
いずれにせよ彼らの証言は、巨大樹に不思議な力が宿っていると考えられる要因となっている。
このような体験談が語られる中「樹に人を助けたりするような意思があるはずがない」と唱える学者が出現する。
その学者の説は「仮に樹が魔力を宿しているとしても、それを自分の意思で使うなどとは荒唐無稽な話だ」というものであったとされる。
学者は自らその樹を調査し、自分の学説を証明しようとした。
だが、彼はジャイアント・ツリーへの道を上手く切り開くことができず、その手前にある森で遭難してしまう。
彼の消息は一時途絶えることになったが数日後、突如ミガル港に戻ってきたという。
学者は自らその樹を調査し、自分の学説を証明しようとした。
だが、彼はジャイアント・ツリーへの道を上手く切り開くことができず、その手前にある森で遭難してしまう。
彼の消息は一時途絶えることになったが数日後、突如ミガル港に戻ってきたという。
帰還した学者は、森で遭難した際に空飛ぶ光と遭遇し、巨大樹の根元に導かれたと供述したらしい。
その体験以降、彼はその樹が魔力と意思を併せ持つことを肯定する論に転じたとされる。
人々がジャイアント・ツリーへの道のりについて尋ねると、学者はただ「妖精が運んでくれた」という証言を繰り返し、それ以外のことは口にしなかったという。
その体験以降、彼はその樹が魔力と意思を併せ持つことを肯定する論に転じたとされる。
人々がジャイアント・ツリーへの道のりについて尋ねると、学者はただ「妖精が運んでくれた」という証言を繰り返し、それ以外のことは口にしなかったという。