エピソード
ダラ砂漠の謎の塔
筆は真実を明らかにする人類の宝である。
私はこれまで、世界の様々な事件や事象に関する調査内容とその結果を記事にし、発表してきた。
その実績は、人々が新たな事実を知り、生きていく上の力を得ることに繋がっていると我ながら自負している。
今回の調査報告も、多くの人の世の出来事に対する関心を高め、知識を深めるものとなるに違いない。
もっとも、この行動の根底には私自身の、物事に関する見識を新たに広げたいという欲求が一番にあることは予め伝えておく。
私はこれまで、世界の様々な事件や事象に関する調査内容とその結果を記事にし、発表してきた。
その実績は、人々が新たな事実を知り、生きていく上の力を得ることに繋がっていると我ながら自負している。
今回の調査報告も、多くの人の世の出来事に対する関心を高め、知識を深めるものとなるに違いない。
もっとも、この行動の根底には私自身の、物事に関する見識を新たに広げたいという欲求が一番にあることは予め伝えておく。
さて、今回の調査対象はダラ砂漠に存在するという塔だ。
とはいうものの、実はその塔がどこにあるのかは不明である。
これは決して私が調査を怠っているわけではなく噂だけが独り歩きし、誰もその塔の所在は掴めていない。
ではなぜ、建っている場所もわからない、いうなればその存在自体が確かでないこの塔は、噂だけが先行しているのか。
何か人を惹きつける内容を、その塔がはらんでいるに違いない。まずはそれを明らかにしなければ。
その真相に辿り着いた時、私はまたひとつ、新たな知識の普及に一役買えるのかもしれない。いや、なんとしても一役買って見せる。
とはいうものの、実はその塔がどこにあるのかは不明である。
これは決して私が調査を怠っているわけではなく噂だけが独り歩きし、誰もその塔の所在は掴めていない。
ではなぜ、建っている場所もわからない、いうなればその存在自体が確かでないこの塔は、噂だけが先行しているのか。
何か人を惹きつける内容を、その塔がはらんでいるに違いない。まずはそれを明らかにしなければ。
その真相に辿り着いた時、私はまたひとつ、新たな知識の普及に一役買えるのかもしれない。いや、なんとしても一役買って見せる。
今回は、実際その塔に関わったという旅人と学者が取材に応じてくれることが決まり、調査が進むこととなった。
しかし、取材の約束を取り付けるまで随分と苦労したものだ。
それも先述のふたりが、やたら協力することに対し
打診当初は消極的だったことが起因している。
よっぽど他人に漏らしたくない有益な情報を持っているということか。今から話を聞くのが楽しみだ。
しかし、取材の約束を取り付けるまで随分と苦労したものだ。
それも先述のふたりが、やたら協力することに対し
打診当初は消極的だったことが起因している。
よっぽど他人に漏らしたくない有益な情報を持っているということか。今から話を聞くのが楽しみだ。
ところで、調査を進めるに当たり、私はまだ見ぬその名も無き塔に、掴み処の無い虚ろな存在という意味を込めて、名前を付けようと思う。
「蜃気楼の砂塔」と。
「蜃気楼の砂塔」と。
~「グランゼリア奇談」記録者の独白より抜粋~
親友の行方
最初は何てことない旅路だったんだ。俺は親友とダラ砂漠を歩いてた。
確かに歩くにしては天候の厳しいことで有名な場所だが、俺たちがそこを旅するのは何も初めてじゃない。
いつも通り港を目指して、自分たちの体力と進む方角に気を付けながら歩いてただけさ。
確かに歩くにしては天候の厳しいことで有名な場所だが、俺たちがそこを旅するのは何も初めてじゃない。
いつも通り港を目指して、自分たちの体力と進む方角に気を付けながら歩いてただけさ。
けど、途中で砂嵐に巻き込まれて俺たちは遭難。親友は足を怪我しちまってな。そんなあいつを支えながら嵐を抜けようとしたんだが、一向に砂漠の出口が見えやしない。
そうこうしているうちに親友の足の傷が悪化してきて、ついに歩けなくなっちまった。
俺がその時持っていた物で、休める場所を何とか作ろうと考えていた時だった。不意に親友が呟いたんだ。
そうこうしているうちに親友の足の傷が悪化してきて、ついに歩けなくなっちまった。
俺がその時持っていた物で、休める場所を何とか作ろうと考えていた時だった。不意に親友が呟いたんだ。
「目の前に塔があるじゃないか。あそこで休めばいい」
砂嵐は激しく前なんてよく見えたもんじゃないが、そもそも砂漠の中に塔が建っているわけがない。
当然、俺には塔が見えず、あいつが怪我による衰弱のせいで幻を見ていると、その時は思ったんだ。
だが、あいつには何かが見えてるようで、それまで歩けなかったのに、前方の一点を見つめて突然足を進め始めやがった。
そして俺に対して言うんだ。
「早く一緒に行こう」てな。
俺はあいつを落ち着かせようと歩み寄ろうとした。
でもその刹那、あいつは目の前から急にいなくなっちまった。
当然、俺には塔が見えず、あいつが怪我による衰弱のせいで幻を見ていると、その時は思ったんだ。
だが、あいつには何かが見えてるようで、それまで歩けなかったのに、前方の一点を見つめて突然足を進め始めやがった。
そして俺に対して言うんだ。
「早く一緒に行こう」てな。
俺はあいつを落ち着かせようと歩み寄ろうとした。
でもその刹那、あいつは目の前から急にいなくなっちまった。
嘘じゃない。すぐ先が崖で、そこから落ちたとか、砂嵐に巻き込まれて見えなくなったとかじゃないんだ。
確かにあいつの体は何かに吸い込まれるように、いきなりスゥっと消えちまったんだよ。
確かにあいつの体は何かに吸い込まれるように、いきなりスゥっと消えちまったんだよ。
~「グランゼリア奇談」旅人の証言より抜粋~