エピソード
とある老魔女の物語
ロダール大陸には、古くよりある国民的人気の童話が存在する。
その名は「魔女が棲む家」。
物語は、ある森の一軒家に棲む老魔女が近所の村の子供たちとともに事件などを魔術で解決していくというもので、発表直後より大きな人気を博し、現在に至るまで多くの子供たちに読まれている。
中でも、老魔女が子供たちにせがまれて使う数々の魔術は人気の要因のひとつであり、幼少期にこの物語を読んだことで魔術師を志すことになったという者も多い。
また、物語は単なる魔術による事件解決物語にとどまらず、世界に対するものの見方、善悪の捉え方、価値観などの真理的なものも分かりやすく描かれており、子供たちへの情操教育にも多大な効果があるとされ、文学的にも今もなお高く評価されている。
その名は「魔女が棲む家」。
物語は、ある森の一軒家に棲む老魔女が近所の村の子供たちとともに事件などを魔術で解決していくというもので、発表直後より大きな人気を博し、現在に至るまで多くの子供たちに読まれている。
中でも、老魔女が子供たちにせがまれて使う数々の魔術は人気の要因のひとつであり、幼少期にこの物語を読んだことで魔術師を志すことになったという者も多い。
また、物語は単なる魔術による事件解決物語にとどまらず、世界に対するものの見方、善悪の捉え方、価値観などの真理的なものも分かりやすく描かれており、子供たちへの情操教育にも多大な効果があるとされ、文学的にも今もなお高く評価されている。
著者はサメール村出身のサレアという女性で、その著書は生涯でこの1冊のみである。
夢魔
老魔女レーヴァはじっと私の話を聞いた後に、こう言った。
「ホホウ…お前のお父さんが眠ったまま起きないとねえ。それはおそらく“夢魔”ってヤツの仕業だろうさ」
「“夢魔”…?」
わたしは、初めて聞く言葉にきょとんとして聞き返した。
「ああそうさ。夢の中に入って、悪さをする精霊のことさ。お父さんの目を覚まさせてやるには、夢の中に入って、そいつを退治しなきゃいけないよ」
あまりの話に呆然としてたわたしを、レーヴァはおかしそうに眺めた。
「でも、その前に話を聞こうかね。お前のお父さんは何か悩みとか抱えてなかったかい?」
「悩み…?」
「まあ、実際に夢の中に入って、事情が探るほうが手っ取り早いかもねえ。」
レーヴァは、椅子からゆっくりと腰を上げた。
「じゃあ、行こうかい」
「行くって…?」
「お前さんの家に決まってるじゃないか。お父さんを起こすんだろ?」
「う…うん、わかった。でも、お父さんが悩みなんて…。わたしの前ではそんな様子なかったのに…」
「まあ、娘のお前さんの前じゃ、気弱な姿は見せられないだろうねえ」
レーヴァはちょっと顔をしかめたが、すぐに元の表情を見せた。
「でも、忘れちゃいけない。お前のお父さんだって1人の人間さ。確かにお前さんとちがって大人だけど、だからって悩みがないわけじゃない。
大人なんてもんはちょっと手足が伸びて、やれること、やらなきゃならないことが増えたってだけさ。
基本的にはお前さんとそうかわらんよ」
わたしは彼女の言葉になんと答えていいのか、分からなかった。
その様子を見たレーヴァは、おかしそうに笑った。
「ま、アタシからしてみたら、お前さんも、お前さんのお父さんも、変わらぬ赤子みたいなもんだけどねぇ。ヒャッヒャッヒャッ」
「ホホウ…お前のお父さんが眠ったまま起きないとねえ。それはおそらく“夢魔”ってヤツの仕業だろうさ」
「“夢魔”…?」
わたしは、初めて聞く言葉にきょとんとして聞き返した。
「ああそうさ。夢の中に入って、悪さをする精霊のことさ。お父さんの目を覚まさせてやるには、夢の中に入って、そいつを退治しなきゃいけないよ」
あまりの話に呆然としてたわたしを、レーヴァはおかしそうに眺めた。
「でも、その前に話を聞こうかね。お前のお父さんは何か悩みとか抱えてなかったかい?」
「悩み…?」
「まあ、実際に夢の中に入って、事情が探るほうが手っ取り早いかもねえ。」
レーヴァは、椅子からゆっくりと腰を上げた。
「じゃあ、行こうかい」
「行くって…?」
「お前さんの家に決まってるじゃないか。お父さんを起こすんだろ?」
「う…うん、わかった。でも、お父さんが悩みなんて…。わたしの前ではそんな様子なかったのに…」
「まあ、娘のお前さんの前じゃ、気弱な姿は見せられないだろうねえ」
レーヴァはちょっと顔をしかめたが、すぐに元の表情を見せた。
「でも、忘れちゃいけない。お前のお父さんだって1人の人間さ。確かにお前さんとちがって大人だけど、だからって悩みがないわけじゃない。
大人なんてもんはちょっと手足が伸びて、やれること、やらなきゃならないことが増えたってだけさ。
基本的にはお前さんとそうかわらんよ」
わたしは彼女の言葉になんと答えていいのか、分からなかった。
その様子を見たレーヴァは、おかしそうに笑った。
「ま、アタシからしてみたら、お前さんも、お前さんのお父さんも、変わらぬ赤子みたいなもんだけどねぇ。ヒャッヒャッヒャッ」
---------『魔女が棲む家』4章「夢魔」より抜粋