エピソード
奇跡の花
グランゼリアのどこかに、どんな病気もケガもたちどころに治してしまう花がある。
その名を「ファルニアの花」というらしい。
海沿いの岩場でしか育たず、10年に一度、満月の夜にだけ花を咲かせるという。
その花は咲いたその瞬間に独特な養分を放ち、万病に効く力を発揮すると伝わる。
その名を「ファルニアの花」というらしい。
海沿いの岩場でしか育たず、10年に一度、満月の夜にだけ花を咲かせるという。
その花は咲いたその瞬間に独特な養分を放ち、万病に効く力を発揮すると伝わる。
力の源は満月によって照らされた花の輝きであるとか、茎に含まれる養分である等諸説いわれている。
だが、花が開くのはその一晩のみで、朝になればその生命を使い果たし、枯れてしまうらしい。
伝説では、この花の美しさに嫉妬したある女神が、その力で決して咲かぬようにしてしまったのだが、女神の部下である神が花を憐れみ、こっそりと10年に一度だけ咲けるまじないをかけたのだという。
これはあくまで伝説上の話で、その真偽は定かではない。
だが、花が開くのはその一晩のみで、朝になればその生命を使い果たし、枯れてしまうらしい。
伝説では、この花の美しさに嫉妬したある女神が、その力で決して咲かぬようにしてしまったのだが、女神の部下である神が花を憐れみ、こっそりと10年に一度だけ咲けるまじないをかけたのだという。
これはあくまで伝説上の話で、その真偽は定かではない。
10年に一度しか起こらない奇跡。その奇跡の瞬間に自分の望みを託すため、数多くの者がこの花を探し求めたという逸話がある。
かけがえのない命を救おうとする者。絆を守ろうとした者。自分の権威のために利用しようとした者。
そして後世のために研鑽を積もうとした者。
思惑はそれぞれ異なるが、いずれもこの花の不思議な力に魅せられ、己の力をその探索に注いだという点については共通している。
今回はその逸話の数々を紹介していこう。
かけがえのない命を救おうとする者。絆を守ろうとした者。自分の権威のために利用しようとした者。
そして後世のために研鑽を積もうとした者。
思惑はそれぞれ異なるが、いずれもこの花の不思議な力に魅せられ、己の力をその探索に注いだという点については共通している。
今回はその逸話の数々を紹介していこう。
賢者と少年
昔、ある賢者が修行の旅として、各地をめぐっていた。
彼は神から連なる世界の成り立ちや、そこから考える人の幸福への道標などを説き、その教えを施された信仰心厚い人々からお礼をもらうことで旅を続けていたという。
彼は神から連なる世界の成り立ちや、そこから考える人の幸福への道標などを説き、その教えを施された信仰心厚い人々からお礼をもらうことで旅を続けていたという。
そんなある時、彼は立ち寄った貧しい村で原因不明の病に苦しむ少年と巡り合う。
その少年に残された時間は、あとわずかであった。
賢者は自分の教えで少年を救おうとするが、その教えは病に効く薬にはまったくならなかったという。
賢者はこれまで自分の教えによって多くの人の心を救ってきたという自負があったが、その時ばかりは己の無力さに絶望する。
その少年に残された時間は、あとわずかであった。
賢者は自分の教えで少年を救おうとするが、その教えは病に効く薬にはまったくならなかったという。
賢者はこれまで自分の教えによって多くの人の心を救ってきたという自負があったが、その時ばかりは己の無力さに絶望する。
彼はなんとかその少年を救いたいと思い、病を治す方法を調べるために昼夜問わず奔走。
そして、どんな病でも治すことのできる10年に一度の限られた満月の夜に咲く花の噂を彼は聞きつける。
その花の咲く時は、賢者が情報を入手したその日の夜であることが判明し、彼は疲れた体を引きずって方々を回りその花を探す。
そして彼は日没前に、ある崖の際にその花を見つけそれが咲く時を待った。
そして、どんな病でも治すことのできる10年に一度の限られた満月の夜に咲く花の噂を彼は聞きつける。
その花の咲く時は、賢者が情報を入手したその日の夜であることが判明し、彼は疲れた体を引きずって方々を回りその花を探す。
そして彼は日没前に、ある崖の際にその花を見つけそれが咲く時を待った。
やがて満月がその花の頭上に上がると、花は月光に照らされ輝き始める。
そこからしばらくの後、花は月光とは異なる一際美しい光を放ち見事に咲いたとされる。
賢者はその瞬間を逃さず、花の光がこぼれ落ちたところを用意した入れ物に封じ、少年の元へ持ち帰ったという。
賢者によって持ち帰られた花の光の入った入れ物を少年の前で開くと、光は少年の身体へ吸い込まれ、たちどころに病が治ったと伝わっている。
そこからしばらくの後、花は月光とは異なる一際美しい光を放ち見事に咲いたとされる。
賢者はその瞬間を逃さず、花の光がこぼれ落ちたところを用意した入れ物に封じ、少年の元へ持ち帰ったという。
賢者によって持ち帰られた花の光の入った入れ物を少年の前で開くと、光は少年の身体へ吸い込まれ、たちどころに病が治ったと伝わっている。
花は選ぶ
ある時、ひとりの女性がどんな病でも治すという噂の花を探していた。
女性は、たったひとりの家族である自分の娘の病を花の力によって治したかったという。
彼女は女手ひとつで娘を育てていたが、暮らしは決して裕福ではなく、まともな治療や薬を娘に施してやるだけの財力を持ち合わせてはいなかった。
女性は、たったひとりの家族である自分の娘の病を花の力によって治したかったという。
彼女は女手ひとつで娘を育てていたが、暮らしは決して裕福ではなく、まともな治療や薬を娘に施してやるだけの財力を持ち合わせてはいなかった。
哀れな母親は苦労の末ようやくその花を見つける。
だがその横から彼女の暮らす国の王が現れ、花の力を自分に渡すよう王の権威で脅したという。
王がその花を求める理由は、その日の朝に自分の足を挫き、今夜これから始まる舞踏会に間に合わせるためすぐに足を治したいというものであった。
王の言い分は母親にとって、到底花を譲る理由に足らない。
だがその横から彼女の暮らす国の王が現れ、花の力を自分に渡すよう王の権威で脅したという。
王がその花を求める理由は、その日の朝に自分の足を挫き、今夜これから始まる舞踏会に間に合わせるためすぐに足を治したいというものであった。
王の言い分は母親にとって、到底花を譲る理由に足らない。
彼女は、もし花の力を使うなら、その代わりに娘の病を治せるよう施しをしてほしいと王に頼む。
しかし、王はもとより貧しい民衆の言葉に耳を貸す性分ではなく、ただただ花の力を独り占めしようと母親を無理やり花のそばから引き離そうとする。
そうこうしているうちに満月が花の頭上に上がり、花は輝きを放ちながら開き始める。
しかし、王はもとより貧しい民衆の言葉に耳を貸す性分ではなく、ただただ花の力を独り占めしようと母親を無理やり花のそばから引き離そうとする。
そうこうしているうちに満月が花の頭上に上がり、花は輝きを放ちながら開き始める。
すると花から放たれた光は、それを手に入れようとした王やその部下たちをすり抜け、一直線に女性の住まう街へと飛んでいったという。
母親が急いで街へ戻ると、そこには元気になった愛する娘が待っていたといわれている。
王はその母子の温かい絆を見て自分の行いを恥じ、それ以降は貧しい民の話にも耳を傾ける立派な君主になったらしい。
花は治療を授ける者を選ぶ意思を持つのだろうか。
母親が急いで街へ戻ると、そこには元気になった愛する娘が待っていたといわれている。
王はその母子の温かい絆を見て自分の行いを恥じ、それ以降は貧しい民の話にも耳を傾ける立派な君主になったらしい。
花は治療を授ける者を選ぶ意思を持つのだろうか。