エピソード
剣聖の最期
――シグルス、剣聖の墓前にて
剣聖と謳われたあなたが命を落とすなどと、誰が想像できたでしょう。
神聖ロダール王国がその版図を広げるさなか、敵国の魔術師を打ち倒し、その栄誉で「剣聖」と呼ばれるようになったあなたは、国民を守るためにその命を投げ出した。
この事実を皆はどう受け入れるでしょうか。
でも、常に国を想い、その未来を守ることを使命としていたあなたにとって、この結末はそう悪いものではない……そういうことなのでしょうね。
魔獣の強大な力に圧倒され、致命傷を負ったあなたは、私にこうおっしゃいましたね。
神聖ロダール王国がその版図を広げるさなか、敵国の魔術師を打ち倒し、その栄誉で「剣聖」と呼ばれるようになったあなたは、国民を守るためにその命を投げ出した。
この事実を皆はどう受け入れるでしょうか。
でも、常に国を想い、その未来を守ることを使命としていたあなたにとって、この結末はそう悪いものではない……そういうことなのでしょうね。
魔獣の強大な力に圧倒され、致命傷を負ったあなたは、私にこうおっしゃいましたね。
「俺と共に魔物を貫け!」
その言葉通りに槍を振るえるほど、私の覚悟は強くありませんでした。
かつて魔物に殺されそうになった私を救い、今日この時まで教え導いてきてくださったあなたを、どうしてこの手で刺し貫けましょうか。
今から思えば、私のこのような意思の弱さを、あなたは常々心配していらっしゃったんでしょうね。
あなたの墓標を前にしても、あの時自分がこうしていれば、自分がもっと強ければ、あなたを死なせてしまうことはなかったのに……そんなことばかり考えてしまっているのです。
かつて魔物に殺されそうになった私を救い、今日この時まで教え導いてきてくださったあなたを、どうしてこの手で刺し貫けましょうか。
今から思えば、私のこのような意思の弱さを、あなたは常々心配していらっしゃったんでしょうね。
あなたの墓標を前にしても、あの時自分がこうしていれば、自分がもっと強ければ、あなたを死なせてしまうことはなかったのに……そんなことばかり考えてしまっているのです。
剣聖に至るまで
あなたから、私に出会う前の来歴を聞かされた際には正直驚いたことを覚えています。
あなた、過去の自分のことを「田舎のお山の大将だった」と、笑って話していらっしゃいました。
私にはあなたが魔獣との一騎打ちに勝った程度のことで、そのような驕りを持っていたなどとは、今でもまったく想像ができません。
私の知るあなたは、自分の実力を正確に把握し、敵を侮ることは決してない……そんな騎士なのですから。
あなた、過去の自分のことを「田舎のお山の大将だった」と、笑って話していらっしゃいました。
私にはあなたが魔獣との一騎打ちに勝った程度のことで、そのような驕りを持っていたなどとは、今でもまったく想像ができません。
私の知るあなたは、自分の実力を正確に把握し、敵を侮ることは決してない……そんな騎士なのですから。
あなたが話してくださった敵国の魔術師に完敗し、命からがら逃げかえったことなど、今でも嘘だったのでは、と思っているくらいです。
ですが、そこからあなたが自身のあり方を見つめ、各地を巡って剣の腕を磨いたこと。
そして、ついにはかつて完敗した魔術師を倒し、剣聖といわれるまでに至ったことをあなたから聞き、胸を熱くしていたことを今でも覚えております。
これは、あなたが真実を語っていたからこそなのでしょう。
ですが、そこからあなたが自身のあり方を見つめ、各地を巡って剣の腕を磨いたこと。
そして、ついにはかつて完敗した魔術師を倒し、剣聖といわれるまでに至ったことをあなたから聞き、胸を熱くしていたことを今でも覚えております。
これは、あなたが真実を語っていたからこそなのでしょう。
あなたから聞いた魔術師との戦いの話、そしてあなたが編み出した技の数々を、私は多くの人に語り継いでいきたいと思っております。
あなたが修行の末に編み出した剣術。
その技の冴えの一端でも、私が受け継ぐことができているでしょうか…?
あなたが修行の末に編み出した剣術。
その技の冴えの一端でも、私が受け継ぐことができているでしょうか…?