「バル! バル! バル!」
これがッ! これがッ!
これが『バオー』だッ!
そいつに触れることは死を意味するッ!
武 装 現 象ッ!
「ウ ォ オ オ オ オ ム !」
『
ジョジョの奇妙な冒険』で知られる荒木飛呂彦氏による週刊少年ジャンプ連載作品『バオー来訪者』の主人公。
名前の由来は作者によると当時話題となっていた
バイオテクノロジーなどの「
バイオ」から来ている。
後に『
ドラクエ6』において同名のモンスターが登場しているが、無関係と思われる。
英語表記は「BAOH The Visitor」。
連載期間が1984年45号から1985年11号までの全17話という短期間な事から打ち切り扱いされる事もあるが、
当初より短期集中連載が想定されていたと言われ、その濃密で凄まじい作劇は多くの読者や漫画家に衝撃を与えた。
本作以前に『魔少年ビーティー』を連載していたもののまだまだ無名だった荒木氏の知名度向上に大きく寄与し、
『バオー来訪者』後、『ゴージャス☆アイリン』の読み切りを経て、ついに『
ジョジョの奇妙な冒険』
が連載される事になる。
バオーとは主人公の
橋沢育朗(※
「育郎」ではない)が変身した姿である。
両親と共にドライブ旅行中に交通事故に遭い、意識不明のまま病院へ搬送されるが、
途中「秘密組織ドレス」に拉致され、生物兵器の実験体として脳にバオーを埋め込まれてしまう。
その後、仮死状態で研究所に移送される途中、ヒロインである予知能力を持つ少女・スミレの偶然の行動によって助けられ、
以降はその予知能力を狙われるスミレと共にドレスの刺客から追われる事となる。
一般人を巻き込む事も厭わないドレスのやり口に、育朗は「脅威の
来訪者」としてドレスに立ち向かう事を決意、
物語終盤では分子を振動させ塵にまで分解せしめる恐ろしい能力を持つドレス最強の超能力者・ウォーケンから、
自らの好敵手に相応しい
「来訪者」として迎えられる。
ドレスの刺客にさらわれたスミレを救出すべく、育朗は立ちはだかるウォーケンとの死闘を繰り広げ、
辛くもスミレを助け出す事に成功するも、超能力の制御を失って暴走するウォーケンを食い止めるべく単身戦いを続け、
最後はウォーケンを撃破しながらも、ドレスの秘密研究所の自爆に巻き込まれてしまい、海底で眠りに就く。
一人助かったスミレは予知能力で「彼と同じ17歳になった時に再会する」という映像を見ており、希望を感じさせるラストを迎えている。
なお、続編を熱望する声は多く、格闘小説『
餓狼伝』で知られる夢枕獏氏も
「続編は描かれなければならない」とのコメントを寄せているが、
荒木氏は
「自分の中では終わった話」として続編を描くつもりは無く、本作全体を
「カッコイイけど悲しいお話」と評している。
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バオーとは |
正確には変身した育朗を指す言葉ではなく、彼の体内に寄生する40mmほどの寄生虫の名称である。
本体は芋虫のような姿をしており、胴体から体長に匹敵するほどの長さを持つ触角が生えているのが特徴。
バオーの宿主はヒトである必要はなく、作中では育朗以外にもバオーに寄生された犬が登場している。
この生物の生みの親であるドレスの研究者・霞の目博士の弁によれば、
バオーを自由に利用する事が可能になれば核爆弾級の戦力に匹敵し、ドレスは医学および軍事的な面で世界的優位に立てるという。
ただし新生物故にまだまだ不明な点も多いようで、事前の説明と本編での育朗のケースとで相反するような描写も行われている。
バオーは宿主の肉体へ進入した後、血管を通って脳に寄生し、寄生した日数にしたがって宿主に対する影響力を強めていく。
百数十日で成虫になると宿主に産卵、孵った幼虫は宿主の身体を突き破り、新たな宿主へ寄生する。 *1
また、宿主の肺呼吸が停止すると宿主共々仮死状態となり、その場合宿主の肉体は再び目覚めるまで老化する事は無いし、バオー本体も成長しない。
宿主が生命の危機に瀕すると体内に分泌されたアドレナリンをバオーが感知し、宿主の精神を支配下に置く
(ただし、劇中では育朗が戦っている自分を次第に知覚していくような描写がある)。
次に血管を使い宿主の全身に分泌液をめぐらせ、 宿主の骨・筋肉・腱を何倍にも強化し、強靭な肉体と様々な特殊能力を付与する。
「ドレス」ではこの変身を 「バオー武装現象(アームド・フェノメノン)」と称している。
寄生している日数が進むに従って徐々に武装現象を発現させていく。
なお、武装現象の表記は劇中で一定していない。
これらは「高い格調・強烈な描写・長くて覚えにくい名前」という事で、連載当時はよく他の漫画などのネタに使われた。
武装現象中のバオーは宿主の頭部に独自の「触角」を発現させ、 対象をすべて「におい」で感知する。
これにより視覚・聴覚・嗅覚などの全感覚を賄う。
原作漫画ではその部分だけが金色に輝く髪の毛の変化したものとして描写されているが、
OVA版では真紅の結晶状に変化しており、さながら第三の目のような描写となっている。
バオーはこの「触角」で自身が嫌悪する敵意や悪意などの負の感情が持つ「におい」を放つ者を攻撃対象として認識している。
これにより攻撃目標として認識された者を無力化する事はバオーにとっては「においを止める」行為に過ぎない。
また、そのにおいもいくつか嗅ぎ分けて理解しており「生きる事を止められた者の悲しいにおい」、
「邪悪なにおい」などを嗅ぎ分け、とりわけバオーが嫌いなのはドレスの刺客達の「邪悪なにおい」である
(逆に殺意などが全く無い相手には隙があり、そこを突かれて催眠術で操られた第三者に暗殺されかける場面がある)。
戦闘を通じて敵味方の区別をにおいから学ぶ学習能力も備え、味方を守ったりなどの行動をとり、生物としての進化を遂げていく。
当初は育朗の意思と分離したまま本能的に戦うのみだったが、育朗自身がドレスに立ち向かう事を決意すると共に、
バオーの力を自意識の制御下に置き戦えるようになると、それまで意思の無かった目に意思の籠った瞳が表れるようになった。
主な能力は以下の通りで、放たれれば防御された事例がほぼ無いという所謂 必殺技である。
上述した通り武装現象中は育朗の意識がない為こうした武装現象名を叫ぶ事は無く地の文にてその名が挙げられ、OVAでもその多くは字幕で処理されている。
体外に排出されると強力な酸に変わる体液を主に掌から放出して金属などを溶解する事ができる。
作中の解説では強力な酸によって自らの体組織も溶解しているが、酸を出すと同時に特殊な「カス」を作り出しており、
このカスが新たな皮膚となって溶解部分を再生するため、事実上ダメージは無いとされている。
育朗の力が増大してきた結果、武装現象への変化無しに発動させる事に成功している。
前腕側部の皮膚組織を突出・硬質・鋭利化して刃物状にする。
『ジョジョ』の カーズが使う「輝彩滑刀」と似ているが、あちらとは異なり常識の範囲内で硬質化した皮膚なので固い金属などは切れない。
切り離して飛ばす事も可能で、「セイバー オフ!」と掛け声を上げている(育朗がバオーの力を制御できるようになってから披露された為)。
- バオー・シューティングビースス・スティンガー・フェノメノン
毛髪を硬質化して射出する。標的に刺さり、一定温度に達すると発火する。
金属も貫く硬さと鋭さを持ち、サイボーグであるドルドの金属製の顔にすら刺さった挙句、
死にこそしなかったものの追撃の発火でその顔面は悲惨な有様になった。
体細胞から発生される電気を直列にして放出する。
デンキウナギと同様の原理だが、バオーの筋肉細胞は一つ一つが強力なため、60000ボルトの高圧電流となる。
直接放電する以外にもレーザー砲への電力供給を行ったりしている。
その他、治癒能力・代謝能力の活性化により、宿主の体の一部が切断されても貼り合わせるだけで元通りに接合したり、
瀕死の生物に血を飲ませる事でその命を救う事ができるようになる。
また、変身中は冒頭の台詞のような「ウォォォム」「バルバル」といった咆哮のような鳴き声のみを発し、
宿主本来の音声・言語を発音する事は基本的に無い。
ナレーションでも基本的に「バオーは思った」など育朗ではなく「バオー」として扱われているため、
どの程度までその行動に宿主本人の意志が反映されているのかは定かではない
(もちろんスミレを守って助けようとするのは、育朗の意志に基づいた行動ではあろうが)。
また劇中ではバオーの思考について「悲しみ」や「憐憫」といったワードが飛び出す事もあり、
バオー本来の感性か育朗の影響下はやはり不明ながら、感情を理解する素振りも見せている。
そして最終的には前述通り、バオー虫と育朗の意識の合一した「バオー」として行動するようになった。
また、上記の通り本作で「バオー」と呼ばれるのはほぼ育朗(および彼に寄生しているバオー虫)なのだが、
それ以外にもドレスの実験生物としてバオー虫に寄生された「バオー犬」と呼ばれるキャラクターが登場している。
こちらは戦闘実験と称して虎と戦わさせられ頭部を半分えぐり取られるも、それによって武装現象を発現させて虎を撃破。
そのままドレスの幹部達にも襲いかかったためレーザーで全身を焼かれ、破壊された脳から飛び出したバオー虫を焼却されて死亡した。
バオーとは何か、バオーはどのような能力を持っているのか、バオーにはどんな弱点があるのかを読者に説明するための存在であるが、
ドレスによって一方的に弄ばれて命を奪われた哀れな犠牲者であり、育朗とスミレの境遇を端的に現した、重要なキャラクターと言えよう。
ジョジョファンからすると「この頃から犬に厳しい作風だったんだな」と感慨深くなるシーンかも知れない
なお、バオー犬も鳴き声は「バルバル」になっていた。
バオー虫共通の鳴き声とすると、バオー同士のコミュニケートに使えたのだろうか。
バオー対バオーは実現しなかったため、そのあたりは不明のままである。
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外部出演 |
作品単独としてのゲームは製作されていないが、
2013年8月29日に発売されたPS3用格ゲー『ジョジョの奇妙な冒険 オールスターバトル』にて、
DLC追加キャラクターとして本名の橋沢育朗名義で参戦している。
原作での地の文やOVA版での字幕で処理されていた技の名前はアニメ版ジョジョのナレーターを担当している 大川透氏が叫び、
育朗の心の声も同様に ナレーションが担当している。
(ナレーション)バオーは相手の髪の毛の発するにおいを触角で感じ…
そのにおいが大嫌いだった
仗助「今おれのこの頭のことなんつった!」
残念ながら『ジョジョの奇妙な冒険 アイズオブヘブン』では唯一リストラされてしまった。
きちんとしたストーリーがあるゲームの中に『ジョジョ』以外からの出演は難しかったか。
しかし『オールスターバトルR』では無事に復活した。
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「ドレス!宣戦布告だ!行くぞ!お前たちのところにッ!
僕はおまえらにとって脅威の来訪者となるだろう!」
(以上、Wikipedia及びピクシブ百科事典より一部引用・改変)
MUGENにおけるバオー
Gogetacris氏による、『
JUS』風
ドットを用いた
MUGEN1.0以降専用の
ちびキャラが存在。
ボイスは内山氏のものを用いており、大川氏のナレーションも混ざっている。
電撃を放ったり、電力を帯びた岩を投げ付けたり、念力で相手を拘束して叩き付けるなどの技を駆使して戦う。
AIもデフォルトで搭載済み。
この他、Jorge Diaz氏による上記のものの改変版が某所にて公開されている。
出場大会
*1
この重大な問題は作中で最後まで解決されておらず、
スミレの予知通りに数年後に再会できたとしても、
しばらくして育朗は死に、寄生虫バオーが大量発生する危険が残されている。
さらにその問題を対処できそうな秘密組織ドレスは滅亡しており、処置できる者も居なさそうなのである。
また、作者の「カッコイイけど悲しいお話」というコメントもバッドエンドを示唆しているようにも取れ、
これをなんとかするためには続編を描いて新展開に持って行くしか無い。
『バオー来訪者』の続編が望まれているのはこうした理由もあるのだ。
ただ将来の希望に満ち溢れたスミレと、その姿を見た義母が「将来この子、きっと幸せになるわ」と呟く場面で幕を下ろすため、
『バオー来訪者』はハッピーエンドで終わっているという事は誤解無きよう。
なお、この設定はOVAでは削除されている。
やはり救いが無さ過ぎるという事もあるかもしれないが、OVA版では本筋に絡まない設定や描写の統廃合が図られてあり、
例えばEDにおける義母の存在などもOVAではカットされ、あくまで育朗とスミレの関係、育朗=バオーとドレスの戦いに焦点を絞っている。
そのため、やはり「二人はいずれ再会して幸せになる」という事を明確にするための判断と考えるべきであろう。
最終更新:2024年12月14日 08:44