仮面ライダーレーザー


「あれ。乗せられちゃった?」

平成ライダーシリーズ 第18作、『仮面ライダーエグゼイド』に登場する仮面ライダー
モチーフから間違えやすいが競走者のレーサー(Racer)ではなく、かといって光線のレーザー(Laser)でも剃刀のレイザー(Razor)でもなく、
「Lazer」という綴りになっている。

変身者は九条貴利矢(くじょう きりや、演:小野塚勇人)。
彼も医師ではあるが相手は生きている患者でなく、病死者の死因となった病気の解明・研究を専門としている監察医。
ライダーとして戦う目的も「ゲーム病」の病原体であるバグスターウィルスそのものの解明にある。
劇中初期から登場のライダーでは唯一電脳救命センターとは無関係の人物であり(彼自身は監察医務院に所属)、
そのためか赤いジャケットの下はアロハシャツでサングラスも常備と、およそ医者らしくないチャラい風体で出歩いている。
変身ベルトのゲーマドライバーも、開発者である幻夢コーポレーション社長の檀黎斗に直談判する形で入手した。
どこか人を食った態度が常の底を見せない性格で、平然と嘘を吐く事も少なくない。
嘘つき(=相手を口車に乗せる)かつバイクに変形するライダーであるためか
「ノリノリで行っちゃうぜ」「乗せられちゃった?」「お前に乗った」など、「乗る」という言い回しを好んでいる。
俺に乗せられてみる?

作中では監察医としての権限をもって物語の根本の謎に切り込んでいく、探偵的な役割を担っている。
実際に調査・研究能力は優秀で、彼の突き止めた事実が展開に大きな影響を与えていった
(その過程で結構重大なミスリードもばらまいたが)。*1

+ 中盤のネタバレ注意
調査の中でかつてバグスターウイルスによる最初の事件「ゼロデイ」の責任を被せられ収監された黎斗の父・檀正宗と面会、
ついにバグスター誕生の秘密とゼロデイの真実を突き止めた貴利矢だが、黒幕である檀黎斗はこれに黙ってはいなかった。
黎斗が新たに変身した仮面ライダーゲンム ソンビゲーマーレベルXに貴利矢は破れ、ライダーゲージを0にされてしまう。
永夢に激励の言葉と自分のゲーマドライバーを託し、ゲームオーバーとなって消滅していった。*2

複数のフォームチェンジすら持っているライダーが、1クール目のラストという早すぎるタイミングでの退場となった。
ギスギスした関係の本作のライダー達の中で、貴利矢は永夢とようやく歩み寄り分かり合ってくれた直後の退場であり、
また平成1期の夏場のそれのごとき半ばギャグ回のような展開を挟んだクリスマス回の前半からの、
敵の新形態登場、その餌食で死亡という後半の落差が凄まじく、彼の退場はあまりにも衝撃的なものとなった。
しかしここを境にドクターライダー間の対立は軟化し、段々と歩み寄りを見せ始める事になる。
このレーザー退場&ゾンビゲーマー登場から加速度的に物語が盛り上がり面白くなるとも評価されている。

実は貴利矢はゼロデイの真実のみならず、既に黎斗とバグスターを止めるための方策の研究をも密かに始めていた。
それが遺伝子を書き換え能力を無効化・初期化するリプログラミングであり、その研究データは彼の遺品に残されていた。
これを元に3人のライダー達が作り出したマキシマムゲーマーの力が、ゲンムゾンビゲーマーを完全に打ち破る事になる。
最終的には貴利矢の残した力と結束が、見事に野望を打ち砕いたのである。

変身時の掛け声は全レベル共通で「○速(○にはレベルの数字が入る)」で、
ガシャット装填後出現するパネルを他のライダーが手で触れる所をハイキックで蹴り飛ばすのが特徴。

+ 各形態解説
  • バイクゲーマー レベル1
妨害ありのレースゲーム『爆走バイク』のライダーガシャットで変身する初期フォーム。
本作のライダー共通の形態だが、レーザーは他のライダーのレベル1と違いガシャコンウエポンはなく、2つの車輪で攻撃する。
後述のようにレベル2が単独での戦闘に向かないため、レベル1のまま応戦する事もしばしばある。
貴利矢の性格もあってレベル1ライダーの中でも特に愛嬌のある動きを見せる。

  • バイクゲーマー レベル2
爆走!独走!激走!暴走!爆走バイク!

『エグゼイド』における基本形態と言える「レベル2」…なのだが、なんと人型ではなく強制的にバイクになってしまう
黄色のボディに顔部分がヘッドライトになっているのがお茶目な外見。
自律走行も可能だが全力を出すには他人に乗ってもらわなければならず、かなり不自由な形態。
一応エグゼイドのバイク扱いになっている。その為、劇場作品『平成ジェネレーションズ』シリーズでエグゼイドが客演する際、
彼のバイク役としてサブライダーでありながら皆勤賞だったりする(バイク単体だと瞳が無くなるのだが、ちゃんと瞳が入っている)。
なお、バイクになるライダーには前例があるのだが、こちらはちゃんと実車が作られている。
前例と違って自力では殆ど動けない(かつ実写の)正真正銘バイクそのものになる仮面ライダーとして話題を呼んだ。

  • チャンバラバイクゲーマー レベル3
ギリ・ギリ・ギリ・ギリ!チャンバラ!

チャンバラゲーム『ギリギリチャンバラ』ガシャットを追加装填しレベルアップした形態。
追加パーツで手足が装着され、ようやくまともな戦闘ができるようになる。
ガシャットラベルやカットインには明朝体風の英字フォントが使用されており、本編では数少ない和風演出という事もあって一際異彩を放つ。

「やっと人型になれた…」

武器は二振りの鎌から合体して弓になるガシャコンスパロー。チャンバラ関係ないじゃんとは言わないお約束。
檀黎斗に敗北した後はギリギリチャンバラガシャットは奪われ、
これ見よがしにガシャコンスパローをゾンビゲーマーの主武装にされるという露骨な嫌がらせに使われる事になる。

  • ハンターバイクゲーマー レベル5
『ドラゴナイトハンターZ』ガシャットの協力プレイでレベルアップした形態。
この形態でも人型で、腕にドラゴナイトブレードとドラゴナイトガン、両足にドラゴナイトクローが装着される。
協力プレイでの変身のみで、単独でフルドラゴンを使用した事は無いが、これは恐らくストーリー上の都合と、
「玩具で再現できない」という販促上の都合が重なったためと思われる。
また、玩具では「ハンターゲーマ」を2セット買わないとレーザーに装備する分がない。悪いな貴利矢、このゲーマは3人用なんだ。
これと流出した商品カタログにこれ以降のレーザーの商品展開がなかったことからリタイアを察した人もいたという

+ 後半のネタバレ注意
  • 仮面ライダーレーザーターボ バイクゲーマー レベル0

「ゼロ速…!」

檀正宗=仮面ライダークロノスの手によりバグスターとして復活させられた九条貴利矢が、
飛彩が回収したゲーマドライバーと2本目の爆走バイクガシャットで変身した姿。
敵対中はキャラクターセレクトのパネル蹴りはヤクザキックで行う。

最初から普通の等身の人型であり、これまでのレベル3以降のレーザーから装甲を取り払ったようなシンプルな姿。
アンダースーツのラインが銀色になっている。
レベル0特有の能力であるアンチバグスターエリアを常時展開しており、これにより付近のバグスターウイルスの力を抑制して正宗を守護する。
正宗から与えられたプロトガシャットでプロトコンバットゲーマーやプロトスポーツゲーマーにレベルアップし戦う。
また爆走バイクガシャットで自分とは別個体のレベル2形態のバイク型のレーザーを呼び出す事もでき、これに自身が乗る事ができる。
プロトスポーツゲーマーになっているとバイクがチャリ着てバイクに乗ったわけのわからない状態に
また本人がバグスター化しているため、瞬間移動などの能力も使えるようになっている。

インフレが進んだ物語後半の登場でスペック上の戦闘能力は見劣りするが、バグスターに対してはその能力によって、
ライダー達に対してもかつてとは正反対の行動を見せる変貌で戸惑わせ全力を発揮させず、互角以上の戦いを見せる。

レベル2と違い人型をしており単独戦闘も可能のため、現在は事実上この姿がレーザーの基本形態のような扱いとなっている。

実は貴利矢には当初は復活の予定はなく、退場後の人気の高さから脚本の展開を変更して復活を果たしたという経緯がある。
そのためレーザーターボも撮影用スーツは有り合わせを寄せ集めた急造であり、設定画すら存在しない。
ゲンムこと檀黎斗も復活予定はあったものの展開が予定から大幅に変更されており、
檀正宗に至っては当初は退場直前の貴利矢と面会した一回きりのゲストの予定だった。
その三人がOVで映像作品としての『エグゼイド』最終章を飾ったのは何とも象徴的である。

  • 仮面ライダーレーザーX
これまでのレーザーと違い、バグルドライバーⅡにギリギリチャンバラガシャットを使い変身した形態。
形状はチャンバラバイクゲーマーとほぼ同じだが、カラーリングが青と黒の禍々しいものに変化している。
バグルドライバーⅡは本来バグスターか完全な抗体を持った人間にしか変身には使えない代物で、
元人間のバグスターという半端な存在の貴利矢は使用時に大きな負担がかかる。

ちなみにバグルドライバーⅡ(ガシャコンバグヴァイザーⅡ)は作中で複数が存在しているが、
この個体は当初はブラックパラド=仮面ライダーアナザーパラドクスが武器として使用していたもので、
それを檀黎斗が回収、使用した後に復活した檀正宗がクロノスの変身用に使い、
それを最終的に貴利矢が変身に使うという、かなり複雑な経緯を辿った代物である。


MUGENにおける仮面ライダーレーザー

Jaki氏により製作されたものが存在する。
通常時はデフォルメ体型の「バイクゲーマーレベル1」で格闘するが、
特定の動作でバイク型の「バイクゲーマーレベル2」に変身する。
レベル2ではガード・ジャンプ・しゃがみが出来ないものの、
高い機動力と各動作に付与される飛び道具無敵による差し込みが強い。

デフォルトAIは積極的にレベル2を発動し、縦横無尽にステージを走り回る。
特に中~遠距離で単発の飛び道具を多用する敵に相性が良好。
同氏の製作キャラの対戦相手として登場


「真実を伝える事が正しいとは限らない……
 真実が人の人生を狂わせる事だってあるんだよ!」

出場大会



*1
かつて永夢が幼少時に事故にあった際の執刀医であり、現在はCRを統括する衛生省の衛生大臣官房審議官を務める、日向恭太郎に対してのもの。
永夢の命の恩人であり夢のきっかけにもなった彼に対し「永夢が適合手術なしに変身できるのは、幼少時の手術中に彼が何かしたからではないか」
と疑いをかける展開があった。
またこの事から彼の属する衛生省そのものがゼロデイやバグスター誕生の黒幕なのではないかと疑う視聴者もおり、
貴利矢の退場後、後半になり主題がゼロデイから仮面ライダークロニクルに移ってもこれらの疑念を引きずる者が結構いた。
結果的に言えば日向審議官は全くの無罪であり、衛生省もやや高圧的な態度はあるものの本件については潔白であった。
視聴者も疑念に見事に乗せられてしまった形である。
小説版で永夢が慕うのも当然の聖人と呼ぶべき彼の人徳を知った読者は「疑ってごめんなさい」と謝罪したという。

*2
敗北から消滅までの間には遺言を残す程度の時間があったのだが、
貴利矢は自分が消された原因である突き止めた具体的な真実を永夢に伝えようとせずに、抽象的な激励に留めていた。
ここは一見ツッコミ所だが、後の展開を考えると、ここで永夢に真実を知られれば、その時点で対抗策が消失し全てが詰みになりかねないのである。
貴利矢も当然その事は承知のはずであり、永夢に助け起こされている状況では伝えるわけにはいかなかった…というのが真相と見られる。
つまりあの場では寄り添っている永夢が邪魔なのが皮肉ではある。
──が、彼の言葉はしっかりと永夢の心に刻み込まれ、黎斗や後に現れた新たな脅威へ対抗する原動力の一つにもなったのもまた事実である。


最終更新:2023年01月31日 16:41