俺「ふむふむ……へーへー……ほうほう……」

 ありがちなセリフを呟きながら彼は転属先のロマーニャ基地へと飛んでいた。手には上官から手渡された紙がばさばさと音を立てている。カンガルーの耳としっぽが揺れている。

俺「ロケット弾の弾あったかな」

 そこには転属部隊の使用する兵器などか詳しく書かれていた。一通り読み終わったのか彼はやたら大きい袖に紙を無造作に突っ込む。

俺「いい天気だ……こんな空だったのかな?」

 一人ぼそりと呟く。思い出すのは一人の女性。
 彼女が飛んだ空を自分は飛んでいる。役立たずと言われようと彼はそれが嬉しかった。



俺「そろそろかな。流石に疲れた……」   

 両手を下にぶらりと垂らしてため息をつく。
 基地についたら自己紹介をして寝よう。そう思っていたのに。

 キュウウウウン

俺「!?」

 後ろを振り向くと点でしか見えないが、間違いなく居る。

俺「ネウロイッ……」

 彼は苦虫をかみつぶしたような顔をした。
 支援、輸送が主な仕事なので彼は自分で使える武器を一切持っていない。
 ここ暫くは出ないという話だったので、上官も彼を一人で向かわせたのだ。

俺「困った、非常に困った。本当に空気を読むのか読まないのかわからないな」

 相手もそこまで速くは無いが、こちらのストライカーユニットは速度は出ない。じき追いつかれるだろう。


俺「全く……誰かがいないと戦えない自分が嫌になるな。特にこういう時は」

 段々とネウロイの姿がはっきりしてきた。見た目は普通の飛行機型のようだ。

 ビシュゥゥン!

 赤いビームが彼の横を掠めた。どうやら相手の射程距離に入ったようだ。

俺「ウィッチ達ももう気付いてるだろう……多分」

 後ろを向きながら、放たれるビームを躱す。シールドもまともに貼れない彼には避けることで精いっぱいだ。
 同士撃ちさせようにも単体では無理、武器は無し、シールドも貼れない。ならすることは一つ。

俺「俺少尉、これより味方との合流地点まで退却する」

 逃げる。彼の501での初陣は、逃走で幕を閉じた。



 俺がネウロイと接触直後

バルクホルン「多分こっちが今日来る予定とかいう男のウィッチ方面のネウロイだが……なぜ攻撃しないんだ?」

ハルトマン「武器落としたんじゃないかな?それか元々持ってなかったりして」

 そんな馬鹿な、とバルクホルンが言う。

ペリーヌ「そうですわ宮藤さんじゃあるまいし」

 メガネを上げながらペリーヌは呟く。

宮藤「わ、わたしはそんなことしません! ……多分」

 今回出撃したのはこの4人。そのほかの面子はもう一方のネウロイへと向かっている。

バルクホルン「しかし男のウィッチか……ミーナがいっていたが本当にそうなのか?」

宮藤「どうかしたんですか?」

ハルトマン「トゥルーデ気になるのかなー?」

バルクホルン「違う! 普通男のウィッチは数が少なく、それで相当強いはずなんだが……」

ペリーヌ「だが?」

バルクホルン「まさか戦闘をしないウィッチがいるとは思わなかった……見えたぞ」


 4人の視線の先には逃げ回る人間と、それを追いかけるようにビームを放つネウロイの姿があった。

ペリーヌ「あまり攻撃は激しくありませんわね」

バルクホルン「そのようだ。早く倒してアイツを助けるぞ!」

2人「「はいっ!」」 

ハルトマン「りょうかーい」



俺「はぁ……はぁ……はぁー」

 遠くから人が近づいてくるのが見える。肩で息をしながら、安堵のため息をついた。もちろんその間も避けるのを忘れない。

俺「何とか生き残った……」


 ネウロイも彼よりあの4人のほうを危険と判断したのか、彼へ向かわせるビームの本数を減らした。


 4人へ向かったビームがシールドで弾かれる。

俺「おお……」

バルクホルン「そこのウィッチ、武器はどうした!?」

俺「自分のは持ってません」

バルクホルン「何い!?」

ハルトマン「うわ当った」

ペリーヌ「本当にいるなんて……」

宮藤「き、きっと落としたんですよ」

 フォローが彼の胸に突き刺さった。

俺「とにかく現在自分は攻撃手段を持ってません。なので後方で待機させていただきます」

 ネウロイの攻撃をすりぬけながら彼は四人の後ろへ。

バルクホルン「言いたいことは多々あるが……まずは目の前のネウロイだ!」

 そういって4人は攻撃を仕掛ける。

 銃撃音、風を切り裂く音、青い閃光、勇ましい声と共にネウロイを攻撃する。
 ネウロイのビームが来たかと思えば一際大きなシールドがそれを阻む。4人しかいないのに確実にネウロイへ攻撃をしていた。が――


バルクホルン「こいつ……硬い!」

ハルトマン「再生もとんでもないよ!」

 一旦離れた二人はその硬さと再生力に驚いた。コアの位置も、そこまで大きくないため見つかるだろうと思っていたが甘かった。 
 残る二人が撃ったそばから修復している。場所によってはそもそも装甲がはがれていない。

俺「お二人共」

 いつの間にか二人の後ろには彼がいた。驚いてバルクホルンは危うくビームに当りそうになる。

バルクホルン「お、脅かすな!」

俺「失礼しました。ところであなたたちの中で一番力が強いのはどちらでしょうか」

 ハルトマンがシールドを貼りながらバルクホルンを指さす。丁度攻撃していた二人も戻ってきた。

俺「なら多分これを使える……と思います」

 彼は袖に手を突っ込みごそごそと探り始め、何かを掴んだ。

俺「よっと」

 彼はそれを片手で持ってみせる。

バルクホルン「こ、これは……」

 この武器にバルクホルンは見覚えがあった。かつてジェットストライカーに乗った時に背負った武器。

俺「50ミリカノン砲です」

ハルトマン「ちょ、ちょっとそれって!」

宮藤「ジェットストライカーの!」

ペリーヌ「何であなたが持ってるんですの!? というよりどうやって片手で!……いいえよく考えたらどこにそんなものしまってあったんですの!?」 

俺「色々巡って自分のところへとやってきました。今この武器は少し特殊な状態で、ぶっちゃけると今なら魔力が無い人でも撃てます」

 暫くシールドを貼りながらバルクホルンはカノンを見つめていた。

バルクホルン「……問題は無いんだろうな」

俺「保証します。あと先ほど見えたんですが、コアは先端部分です」

 カノン砲を受け取るとネウロイの先端部分に狙いを定め

 ……ドンッ!

 あっけなく戦いは終わった。



バルクホルン「武器を感謝する」

 カノン砲を手渡す。
 彼は長い砲身を袖に突っ込むと、みるみるうちにあの長いカノン砲が袖へと消えていった。

ハルトマン「ねえそれどうなってんの?」

 袖を見ながらハルトマンが彼の周りをくるくると回る。
 その様子を信じられないものを見るように宮藤とペリーヌは呆然としている。

俺「えーと自分の固有魔法で、狭い範囲に自分が自由に入れたり出したり空間を作れるんですね。袖の空間に触れれば大体のものは入れられます。人間とかは条件がありますけど」

 ふと彼は思い出したのか尋ねる。

俺「あなた達はこの先の501戦闘航空団の方々ですよね?」

 4人は頷く。

俺「今日から転属となりました俺少尉です。よろしくお願いします」
最終更新:2013年02月02日 13:08