インク
786 インク[sage] 投稿日:2010/10/30(土) 20:19:01.52 ID:cbI9HXND0
トラヤヌス作戦。
ガリア開放戦線で501の宮藤芳佳が接触した"らしい"人型ネウロイとの再度の接触を試みる‥‥。
こんな作戦はじめから成功するわけはない。
私の中でのこの作戦に対する素直な感想だ。
結果から言えばこの作戦は失敗した。人とネウロイの対話など土台無理な話だったのだ。
その宮藤とかいうウィッチもデタラメを言ったんじゃないか?とさえ思っていた。
作戦当日の朝から504、アルダーウィッチーズの面々は緊張していた。
赤ズボン隊の3人も珍しく口数が少ない。ジェンタイルとゴッドフリーも普段より落ち着きがないように見える。
竹井もいつもより笑顔が少ない。
この作戦の結果によっては人とネウロイの戦いに終止符がうてるかもしれない。
そんなことを言われれば緊張するなという方が無理な話だろう。
かくいう私も緊張していた。敵を倒すのではなく、説得する任務など初めてだったから。
もっとも、その説得をするのは竹井なのだが‥‥
788 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/30(土) 20:23:43.41 ID:PW0TRCPj0
504だっけ
789 インク[sage] 投稿日:2010/10/30(土) 20:23:45.87 ID:cbI9HXND0
しばらくすると発進の合図が来る。
わたしはバックアップとして後ろに待機することになっている。
各々が決意の面持ちで発進していく。
そして数刻後...
私「おい、おい! 大丈夫なのか!! 」
一体何が起こったのだ。接触は失敗したのか?
竹井「‥‥ちら、竹井‥‥っぱいした。くりかえ‥‥作戦‥失敗‥‥」
私「くそっ! ふざけるなよ!! 」
ドッリオ「おい、どこへ――」
私「助けに行くに決まっているだろう!! 」
791 インク[sage] 投稿日:2010/10/30(土) 20:28:30.99 ID:cbI9HXND0
その時の私は感情を爆発させていた。
何年ぶりか、怒り、焦り、そんなものがぐちゃぐちゃに混ざった感情だった。
駆けつけた私の目の前には、見るも無残な光景が広がっていた。
ウィッチの姿などどこにもない。多分あの戦艦に避難しているのだろうが‥‥
そんな中私の目に止まったのは、あの人型のネウロイだった。
私「貴様‥‥! 」
私は我を忘れ、そのネウロイに向かっていった。
しかし、そいつはこちらを向いて動かない。と、おもむろにそいつは胸部分の装甲を開き、
紅く光る宝石のような物体、"コア"を見せてきた。
私「なんだ、貴様。そいつを見せてどうするというのだ。」
ネウロイ「―――」
やつは何も答えない。
と、いうより伝達手段をもっていないのかもしれない。
792 インク[sage] 投稿日:2010/10/30(土) 20:33:19.75 ID:cbI9HXND0
そいつは装甲を開いたまま動かない。
私はそいつのすぐ近くまできていた。
私は無意識のまま右手をその宝石へと伸ばしていた。
この時、すでに私は魅入られていたのかもしれない。
――触れた。私の手の先に温かいような冷たいようなものがある。
私「ふざけるな!!」
右手を力の限り握る。
ネウロイ「―――!」
私「なにが対話だ! 私たちの仲間を何千何万と殺しておいて、いまさら対話だと‥‥?
聞き入れてくれるとでも思ったのか? そうだとしたら、ネウロイというのも相当な馬鹿なんだな! 」
ネウロイ「―――!!――!」
苦しがっている、ようにみえる。心臓を握られるとこんな感じになるのだろうか。
しかし所詮こいつは人の形をした何か。人にはそんなことはできない。
私「貴様はわざわざ弱点をさらけ出し、こちらに抵抗の意志はないとしたかったのかもしれない。
だが、無意味だ。それは降伏でもなければ囮でもない。ただの自殺行為だ!」
『ならばどうする。』
私「‥‥! 」
793 インク[sage] 投稿日:2010/10/30(土) 20:38:30.14 ID:cbI9HXND0
突如声が聴こえる。その声はネウロイから聞こえたようでもあるし、私の頭の中から聞こえたのかもしれない。
『憎いか?』
私「‥‥ああ、憎いね。お前らを皆殺しにしてやりたい。」
『ならば、叶えてやろう』
突如右手が熱くなる。離せない。なにかが私の中に入り込んでくる。
私の意識はそこで途絶えた。
794 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/30(土) 20:40:48.97 ID:5m73vKHp0
ついにネウロイの核心にせまる俺があらわれたか
795 インク[sage] 投稿日:2010/10/30(土) 20:43:53.61 ID:cbI9HXND0
修羅。まさにその言葉が似合う。
先程までウィッチが掴んでいた紅い宝石は、その右肩に光り輝いている。
全身をまるでインクでもこぼしたように漆黒で染め上げた人型の『何か』。
ネウロイとウィッチ、両方の力を得た『何か』はすべてを『壊す』ために動き始めた。
『全テヲ壊す』
まずは、眼下に広がる鉄の塊を破壊しよう。『何か』は左手をかざす。
すると、その左手が紅く光り始め、超音波のような音を発し始める。
同時に紅い光が収束し始め、光の玉を形成しはじめた。
光の玉は一瞬で人の頭ほどに大きくなった。直後、その光は無数の槍となり海に浮かぶ鉄の塊に降り注ぐ。
まるでケーキに刺すフォークのように、その槍が鉄に穴をあけていく。その光景はまるで血の雨が降り注ぐようでもあった。
あっというまに辺り一帯の船を沈めると、『何か』は頭上の雲を見つめる。
『壊しテヤる』
途端、猛スピードで黒い塊――『何か』は雲に突撃していった。
797 インク[sage] 投稿日:2010/10/30(土) 20:48:54.30 ID:cbI9HXND0
雲の中には別の黒い塊たちがひしめき合っていた。
その黒い塊たちは一斉に『何か』のほうを向く。
それよりも一瞬早く、『何か』は紅い槍を飛ばす。
こちらも、いとも簡単に穴をあけていくが、先程の鉄とは違い、そのまま落ちたりはしない。
その穴を急速に塞いでいく黒。同時に幾十もの黒たちは一斉に雄叫びを上げる。
一瞬の静寂のあと、その黒たちは紅い槍を飛ばしてくる。
それは『何か』の発した槍よりも長く太い槍だった。
その槍と同時に『何か』は猛スピードでひとつの黒に近づく。
先ほどと同じように赤い光を集め始める『何か』。違うのはその形が丸ではなく、剣の形だったこと。
黒の目の前まで――その黒に目があるかは定かではないが――来ると、おもむろに右手をはらう。
いつの間にか身長の3~4倍にまで伸びた赤い光が黒を通りすぎる。
一つが二つに、二つが四つに。右手を振るうごとに黒は増えていく。
その黒が幾十にもなったとき、他の黒たちが新しい紅い槍を飛ばしてくる。
その紅が貫いたのは先程まで仲間だったであろう黒の破片だけだった。
その破片はやがて、白い雪のような物に変わっていった。
では、黒たちが敵とみなした『何か』はどこへ行ったのか。
その答えは考えるまでもなく、そこにあった黒たちが何十も増えたといえばわかる。
辺りには、雪化粧をし始めた山のような光景が広がっていた。
799 インク[sage] 投稿日:2010/10/30(土) 20:53:44.01 ID:cbI9HXND0
『壊シ足りなイ』
『何か』のその願いに答えるように、雲からあたらしく黒たちが降りてくる。
今度は先程までと違い大型から小型にまで様々な形をしている。
だがその形を説明する暇など無い。その黒たちはその形をどんどん変えているのだ。
紅き剣によって。
まるで弾丸のようなスピードで縦横無尽に動き回り、剣を振るう『何か』。
動く暇さえ与えられない黒たちが無残にも海へ落ちていく。
黒が紅を持って黒を切る。
それが淡々と雲の中で起きていた。
やがて紅い光を持った黒い弾丸は動きを止めた。
辺りにはもはや黒は居ない。
いつの間にか空を埋め尽くしていた雲も姿を消し、遠くの方に見えるだけだった。
先程より幾分か小さく見える。
800 インク[sage] 投稿日:2010/10/30(土) 20:58:17.68 ID:cbI9HXND0
『はハハハはハッハはっハハはっはははハッハははッハハははっハ
ヨわイヨわいよワスギる!! コンナもノなノカ!!』
その咆哮は誰にも届かない。内に眠る"私"にも。
『――コワシたリナイ』
『何か』の願いはまだ潤っていなかった。
だが回りにはもう黒は居ない――
『―――』
左手に光を集める。
その光は丸とも、剣とも言えない形を形成した。
その光は左手に導かれ、右肩へ行き着いた。
801 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/10/30(土) 21:01:16.72 ID:aUBXep+80
これはいい中2
803 インク[sage] 投稿日:2010/10/30(土) 21:03:36.74 ID:cbI9HXND0
私は落ちていた。
一体何が起こったんだ? この痛みは? 何も理解出来ないまま私は無限の青に落ちていった。
トラヤヌス作戦は、失敗した。
805 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/30(土) 21:06:16.84 ID:ThjRTQKOO
セリフの工夫いいな
支援
806 インク[sage] 投稿日:2010/10/30(土) 21:08:09.73 ID:cbI9HXND0
数日後、私は保護された。近くの海岸に打ち上げていたらしい。
一体何があったのかは定かではないが、
ヴェネツィア上空に出現したネウロイの巣は、急速に収縮しはじめ、オストマルクへ移動していった。
ネウロイとの対話、という点で見れば今回の作戦は失敗したが、ヴェネツィアを奪還できたことに変わりはない。
504、アルダーウィッチーズは多大な被害を受けた。私を始めとする多くの隊員が負傷。
しばらくの間は療養になるとのこと。その間のヴェネツィア防衛は、501など周辺の航空団に協力を仰ぐらしい。
私は魔法力を大量に消費していた。「上がり」手前ではあったとはいえまだまだ現役、だと思っていたのだが、
もはやそうも言ってられないほど魔力を消耗してしまった。
これから先は今まで以上に文官として働くことになるのだろう。
807 インク[sage] 投稿日:2010/10/30(土) 21:09:55.58 ID:cbI9HXND0
あのとき、私の身に何が起こったのか。本脳が拒否しているのだろうか。
思い出そうとしても思い出せない。
私はいったい――何をしたのだろうか。
808 インク[sage] 投稿日:2010/10/30(土) 21:11:28.37 ID:cbI9HXND0
数ヵ月後、501も壊滅的な被害を受けたと報告があった。
"501の悪夢"。
ウィッチの姿や能力をコピーするネウロイが現れたとか何とか。
その事件自体は二人のウィッチによって解決したと聞いた。
その数日後。
私は本部へ収集された。
私「ストライクウィッチーズ?」
-インクの弾丸-
終わり
809 インク[sage] 投稿日:2010/10/30(土) 21:12:47.99 ID:cbI9HXND0
実験と称して短編を書いてみました。
このあと
トビウオⅡに続きます。
地の文難しすぎワロタ
最終更新:2013年01月28日 01:16