バルクホルン「今日もいい天気だ……ネウロイが来るには絶好の天気だな」

 そう言ってはぁとため息をつく。いい天気の日はネウロイが襲来しやすい。

バルクホルン「さて無駄だろうが一応……」

 同居人の魔窟を見る。どうせいつも通りだらしなく眠っているのだろう。

バルクホルン「んなッ!?」

ハルトマン「……おはよ」

 そこには横になりながらもきっちりと目を覚ましているハルトマンがいた。

バルクホルン「ど、どうしたエーリカ具合でも悪いのか?」

ハルトマン「何その言い方~わたしが起きてたら悪い?」ニヤニヤ 

バルクホルン「い、いやそういう訳じゃないぞ? わたしとしては喜ばしいことだ」

 そこでバルクホルンはハルトマンに隈ができていることに気付いた。
 普段……というよりも出会ってから一度も隈など見たことが無いので、非常に目立つ。

バルクホルン「……まさか寝てないのか?」 

ハルトマン「わたしが寝ないわけないじゃん。おかしいのはトゥルーデのほうじゃない?」

バルクホルン「何をいうわたしは……」


ウゥゥゥゥゥゥゥゥゥー!


 ネウロイの襲来を告げるサイレンが響き渡る。

バルクホルン「今日は早いぞ行くぞハルトマン!」

ハルトマン「う、うん」

 ハルトマンは少し困った表情をしつつもバルクホルンに引きずられて行った。





ミーナ「もうわかってると思うけどネウロイがあらわれました。数は小型が5機、エイラ
さんとサーニャさんはさっき帰ってきたばかりあので待機。今回はバルクホルン大尉、ハルトマン中尉、宮藤軍曹、リネット曹長、俺少尉で向かってください」

バルクホルン「了解!」

宮藤「了解しました!」

リーネ「了解です!」

俺「了解」

 4人が次々立ち上がる中、ハルトマンはワンテンポ遅れて立ち上がる。

ハルトマン「了解……」

 どこか様子がおかしいと気付いたのかミーナがハルトマンに声をかける。

ミーナ「大丈夫?」

ハルトマン「あ、大丈夫だよ。ただミヤフジの朝ごはん食べれないから残念だな~と思っ

てさ」

宮藤「帰ったら美味しい朝ごはん作りますよ! だから頑張りましょう!」タッタッタ

 そう言って宮藤は既に向かった3人を追いかけて行った。

ミーナ「だそうよ。頑張ってね」

ハルトマン「ミヤフジー約束守れよー」タッタッタ










海上


バルクホルン「……近頃ネウロイの多様化が進んでいるな」

宮藤「そうですね、何の変哲もないと思ったら凄く硬かったり」

リーネ「この間わたしが戦った方ではコアがでたらめに動いたりしてました」

バルクホルン「やはり奴らも進化してきているのだろうか……おいハルトマン!」

ハルトマン「うぇ!? な、何?」

バルクホルン「話くらいきちんと聞けとあれほど……俺は聞いていたか?」

俺「一応は」

バルクホルン「一応ってお前……」

宮藤「あ、見えました!」

 報告通り5人の前に小型ネウロイが5機が向かってきている。

俺「……形も普通ですね。ただ前回みたいなこともあるでしょうし、注意していきましょう」

バルクホルン「お前は戦わんだろう。この辺でわたしたちに任せておけ」

俺「おっしゃる通りで」

バルクホルン「ふん……行くぞ!」

宮藤「ま、待ってくださーい!」

リーネ「は、速い……」

 ハルトマンは一度ちらりと俺の方を見ると、そのまま前線へと向かっていった。




宮藤「攻撃はそう激しくありませんね」ダダダダダ

キュウウウン!

リーネ「結構硬いですが、集中すれば大したことないみたいです」ドンっ!

バルクホルン「撃墜数を増やすために現れたようなものだな!」ダダダダダ!

ハルトマン「ちゃっちゃと終わらせちゃおう俺も暇そうにしてるし!」ダダダ……

 突然ハルトマンの武器から弾が止まる。

ハルトマン「うわやっば!」

バルクホルン「どうした!」

ハルトマン「前の時から銃弾補充してなかった!」

 昨日の夜、そのことを俺に頼もうと思っていたのにアレが原因ですっかり忘れていた。

バルクホルン「全く……お前らしくないな」ダダダダ

宮藤「まあそんな日もありますよ」シュン

リーネ「はやく俺さんのところへ!」ドンっ!

バルクホルン「俺、聞えたな!?」

俺「了解。銃弾を用意して待ってます」ゴソゴソ



ハルトマン「ごめん俺、迷惑かけちゃって」

俺「問題ありません。この為に自分はいるんです」

ハルトマン「それでね、俺。昨日のことなんだけど……」


バルクホルン「何やってるんだあの二人」ダダダダ

リーネ「まああそこは射程範囲外でしょうし多分大丈夫じゃないかと……」

宮藤「あと3機です!」

 その時、三機のうち一機の形が変形し、急速に離れている二人に接近する。 
 あまりに突然のことだったので3人の反応が遅れた。俺の位置からはハルトマンで前が
よく見えていない。

バルクホルン「何っ!?」

宮藤「二人とも逃げて!」




ハルトマン「っ! 俺危ない!」

 ハルトマンは俺を突き飛ばし、ネウロイに対してシールドを張る。
 しかし一瞬だけ、俺を突き飛ばした分だけハルトマンが遅れた。

 キュウウウウン!

 黒い装甲から現れた赤い模様、そこから幾筋ものビームが放たれる。
 一本目、回避。二本目、ストライカーユニットに被弾。バランスが崩れたところにビームが脇腹に被弾――。
 幸運にもそれ以外は命中はしなかったが、ハルトマンは落下する。
 落下するのが早いか気付くのが早いか、俺はすぐにハルトマンへ向かって移動する。


バルクホルン「ハルトマァァァァン!」

宮藤「バルクホルンさん危ないっ!」キキィン!

リーネ「わたしたちはネウロイを片づけましょう!」

バルクホルン「……くっ。俺! ハルトマンは任せた! 宮藤も隙を見つけ次第ハルトマ

ンの治療へむかえ!」





 海面スレスレで俺はハルトマンをキャッチすることができた。常に速くは無いが瞬間的に加速できることが幸いした。
 脇腹から血が見える。傷は浅くは無い。

俺「ハルトマン中尉!」

ハルトマン「あ、あはは……やっちゃった……バチ、当っちゃったなあ……。こういうの

、きらい、なのに……」

 ハルトマンは自嘲気味に笑った。

俺「聞いてください中尉!」

ハルトマン「ごめんね……、俺のこと知らずに……きかれたく、ないこととか……」

俺「そんなことは今はどうでもいいんです! 話を――」

ハルトマン「ほんと……ごめ……」

俺「……っ話を聞け! エーリカ・ハルトマン!」

 四方に彼の怒声が響き渡った。

俺「そんなことは後でたっぷり聞いてやる! だから許可を出せ!」

ハルトマン「許……可……?」

俺「今から貴女を袖に入れて基地まで運ぶ! 袖の中なら今の状態で基地まで輸送できる
! しかし人を入れるには許可が必要だ! だから許可を出せ! まだ間にあう!」

ハルトマン「……」

 ハルトマンは無言でコクリと彼に向って頷く。
 彼はハルトマンの手を掴むと袖の入り口に当てる。一瞬にしてハルトマンの姿は消えた





 俺の上から白い物がパラパラと落ちてきた。戦闘が終わったようだ。
 戦い終わった三人が彼へ接近する。

バルクホルン「俺、ハルトマンはどうした!?」

宮藤「は、速く治療しないと……」

俺「とりあえずは、大丈夫です」

バルクホルン「どういうことだ!」

俺「ハルトマン中尉は今、自分の袖の中に保存されている状態です」

リーネ「保存?」

俺「つまり墜落した時そのままの状態で眠っている様なものです」

バルクホルン「助かるのか!?」

俺「傷はかなり深かったですが……出血が少ない状態で保存できたことと、ミヤフジ軍曹
が治癒の能力を使えるということで、基地で治療を受ければ問題ありません。激しいのは
出血だけで内臓のダメージは余りないようです」

 三人が胸をなでおろした。

俺「……ミヤフジ軍曹」

宮藤「は、はい」

俺「できれば貴女も袖に入って頂きたいのですが」

宮藤「わ、わたしもですか?」

俺「自分の袖の中は魔力の渦みたいなものです。なので袖の中に入れば一時的にですが魔力が得られます」

バルクホルン「入れば出てきたときに魔力の量が一時的にあがっているということか」

俺「はい。これからミヤフジ軍曹は治療をしてもらわなければなりません。万が一すぐに

魔力切れということがない様に……」

リーネ「一時的にってどのくらいですか?」

俺「大体5分ほどですね……それに追加して普段の魔力ですからそれなりには」

宮藤「わかりました袖に入ります!」

俺「では許可を。許可がなければ袖に入れることはできません」

バルクホルン「万能かと思ったがそうでもないんだな」

宮藤「わ、わかりました。わたしを袖に入れることを許可します」

俺「では失礼して……」

 俺は右手で宮藤の手を取ると袖の入り口へ当てる。先ほどのハルトマンと同じように一

瞬にして消えた。

バルクホルン「さて……戻るぞ。帰ったらまずは報告に行かないとな」

リーネ「了解です!」

俺「……自分は医務室に行きます」

 基地へ戻る三人。俺の左手にはハルトマンの血がついていた。
最終更新:2013年02月02日 13:09