第2話「わたしにできること」


次の日から、俺は宮藤が元の世界に帰れる方法を探すために奔走し始めた。
たとえ怪しい書物でも何かヒントがあるかも、と思い図書館を調べた。
しかし、魔法に関する書物なんて真面目なものは一切なかった。
そりゃそうだ、ファンタジーをマトモに研究するやつはいないからな…

しかし、違う方向性からヒントは得られそうだった。

俺「パラレルワールド…?」

俺「そうか、そういう扱いになるんだな。じゃあこの本と…これも借りてくか」

思わぬ収穫が手に入り、喜んでいた俺は同時にあることに気がついた。

俺「そうか…もし方法が見つかれば、宮藤はあっちに帰るんだよな」

当たり前だ、元々あっちの世界の住人なんだし。
仲間や家族に会えないのも寂しいだろう。
俺は、この生活に忙しいながらも楽しさを感じていたのだ。
そんなことを考えていたのを悟られまいと、普段より明るく玄関のドアを開けた。

945 :パラレルワールド[]:2010/11/27(土) 17:41:35.00 ID:Ei4u+a7P0
俺「ただいまー!今日はいい情報が手に入ったぞー!」

宮藤「あ、おかえりなさい」カチカチ

そこには、すっかりパソコンにはまった宮藤がいた。

俺「…ずっとやってたのか?」

宮藤「はい!あ、このゲーム面白いんですよ!」

そう言って、笑いながらアレコレ説明してくれる宮藤。
俺の悩みを1発で吹っ飛ばしてくれた。

俺「全く…悩んでた俺が馬鹿みたいだな」

宮藤「?」

そうだ、今を楽しもう。
いつ終わるかわからない生活だけど、くよくよしてたって仕方が無い

俺「で、宮藤。情報収集はどうした…?」

宮藤「いやぁついゲームが楽しくて…」

俺「まぁ今まで見たこともないだろうからな、ほどほどにな?」

甘いだろうか?
でも、こんなに楽しそうな宮藤を目の前にして「禁止!!」なんて言えるわけがない。
何となくわかるはずだ。

946 :パラレルワールド[]:2010/11/27(土) 17:46:08.01 ID:Ei4u+a7P0

宮藤「じゃあご飯にしましょう!」

俺「お、今日もうまそうだなー」

あれからすっかり現代に馴染み、炊飯器やガスコンロ。果ては洗濯機まで使い方を覚えた。

俺・宮「いただきます」

俺「うん、うまい。これは良いお嫁さんになるな」

宮藤「もう、何言ってるんですか///」

叶わぬ願いだろう。
だけど、この一時でもいいからその夢を見たい。

食事を終え、俺は今日発見したパラレルワールドについて説明し始めた。

俺「パラレルワールド…つまり、平行世界ってやつだな」

宮藤「なんですかそれ?」

そうだな…例えばの話だが、宮藤は”この世界”では俺に見つけられて俺と暮らしてるわけだ
だが、”宮藤が俺に見つけられなかった世界”も存在するんだ。
エヴェレットの多世界解釈や、超ひも理論など物理学の世界でも論じられている。
ま、SFの平行世界と物理学のとはちょっと違うんだがな…

947 :パラレルワールド[]:2010/11/27(土) 17:49:05.13 ID:Ei4u+a7P0

要するに”宮藤の元いた世界”は存在するわけだ。
つまり、宮藤がこの世界に来たように、何らかの方法であっちの世界に干渉する方法もあるはずなんだ。

宮藤「よくわからないです…」プスプス

俺「しまった、少し難しかったか」

無理もない、まだ中学生程度の年齢なんだから。
過去は今ほど教育も充実してないだろう。

俺「まぁ方法はこれから見つけるから安心するには早いが、1歩前進ってところかな」

宮藤「私も頑張ります!」

―――――――――――――――――――――――

そして日曜日。
俺はとある服屋に来ていた。
御用達のユニ○ロである。

ウィーン

店「いらっしゃいませー」

950 :パラレルワールド[]:2010/11/27(土) 17:51:34.14 ID:Ei4u+a7P0

さて、あれぐらいの背丈だから…
このシャツでいいかな。
ズボンも買わないといけないけど、前試しに俺の履かせたら
「なんかもっさりしてて動きにくいです、いやです!」とか言うし…
ま、なるべく動きやすそうなの買っていくか。
あとはコートとマフラーと…

店「8500円になります、女物ですがよろしいですか?」

俺が着るわけねーだろ。

俺「はい」

こうして、無事服を購入することができた。
早速帰って、試着させる。

宮藤「わぁー、ありがとうございます!」

俺のセンスがいいのではなく、素材がいいからだろう。
今風の格好をした宮藤はすごく可愛かった。

宮藤「やっぱりこのズボンは何か…」

俺「我慢しなさい!」

宮藤「はーい」ショボン

俺「じゃあ、行こうか」

宮藤「どこにですか?」

952 :パラレルワールド[]:2010/11/27(土) 17:55:30.88 ID:Ei4u+a7P0

俺「まだろくに外に出てなかっただろう?街を軽く案内するよ」

宮藤「やったー!わーい!」

そんなに喜んでくれると、朝から服買いに行った甲斐があるってもんだよ
どうするかな…まぁ適当に連れて行って…帰りは外食でもいいかな…

宮藤「さ、早く行きましょうよ」

俺「わかったわかった」

俺「ほら」スッ

無言で手を差し出す。
伝わらないようだ。

俺「手だよ、手。…迷子になったら困るからな」

宮藤「エヘヘ…暖かいです」ギュッ

俺「うるさい!早く行くぞ!」

宮藤「怒らないでくださいよー」

953 :パラレルワールド[]:2010/11/27(土) 17:57:27.80 ID:Ei4u+a7P0

―――――――――――――――――――――――

1日中遊び倒した俺達は、最後のファミレスから出た。

俺「ふー、うまかったな」

宮藤「今度ハンバーグ作ってみますね!」

ファミレスのハンバーグ定食がよほど美味しかったようだ。
今度…か。

俺「なぁ宮藤」

宮藤「なんですか?」

俺「今、楽しいか?」

宮藤「もちろん楽しいですよ。ちょっと寂しい気もしますけど…俺さんのおかげです」

俺「そうか…ならいいや」

宮藤「なんですかもう!はっきりいってくださいよー」

俺「食べ物のこととなると、急に元気になるから食いしん坊だって言いたいんだよ」

宮藤「ひどいです!」プンプン

俺「そう拗ねるなって…」

954 :パラレルワールド[]:2010/11/27(土) 17:59:12.54 ID:Ei4u+a7P0

そうか、楽しいなら良かった。
俺もすごく楽しかったよ。
でもな…そろそろお別れみたいだ。
やっぱり、そんな夢みたいなこと許してもらえるわけなかったんだ。
こんなにもあっさり見つかるなんて思いもしなかった。


このまま見つからないってことにすれば、まだこの時間は続くんじゃないか?
宮藤も楽しそうだし、いいんじゃないか?
定番だな、悪魔の囁きなんて。
まぁ、既に決意したし準備もしてあるから遅いがな。


簡単に説明しておくと、魔力の込められたものを媒体にして世界を移動するみたいだ。
その際、魔法陣が必要みたいだが…
何故宮藤はこの世界に飛ばされたんだろうか?
それはわからないが「偶然もまた必然である」という言葉もあるぐらいだ。
きっと、何か理由があったんだろう。

955 :パラレルワールド[]:2010/11/27(土) 18:02:15.24 ID:Ei4u+a7P0

宮藤「ただいまー」

俺「ただいま、宮藤は何気に初ただいまじゃないか?」

宮藤「ほんとですね!うれしいなー」

俺「さて、もうこんな時間か…風呂入って寝るか」

宮藤「はい!」

風呂から上がり、寝ようとしているところに宮藤が待ち構えていた。

宮藤「あの…今日一緒に寝ませんか?」

宮藤「その、ソファじゃ寒いだろうし、暖房もないし…」

何かを予期したのだろうか?
全く変なところで勘が鋭いやつだ。
ま、最後ぐらい良い思いしたってバチは当たらんだろう。

俺「いいぞ」

宮藤「じゃ、じゃあどうぞ…」

俺「久しぶりだなー、お、暖かいな」

宮藤「暖めておきました…」エヘヘ

957 :パラレルワールド[]:2010/11/27(土) 18:03:42.39 ID:Ei4u+a7P0

俺「ありがとうな、寒くないか?」

宮藤「はい、今日は1人じゃないですから」

宮藤「ねぇ、俺さん。もしかして帰る方法が見つかっちゃいましたか?」

俺「なっ!なんでそれを…」

宮藤「バレバレですよ、あんな風に無理に明るく振舞ったり、時折寂しそうにしたり」

俺「そうか…黙って別れようかと思ったがバレてたとはな」

宮藤「俺さん、私…」

俺「言うな。いいか?宮藤はこの世界の住人じゃない。それにお前には待ってる人達もいるだろう?」

俺「だから、今日でお別れだ。じきに儀式が発動するから、お前はそのリングを持っていれば帰れるはずだ。」

宮藤「俺さん…今までありがとうございました。」

宮藤「わたし…俺さんのこと…ぐすっ」

宮藤「ぜったい忘れません…ひっく」ポロポロ

俺「あーあ、やだな。俺涙脆いから、絶対貰い泣きするんだよ」グシグシ

袖で顔をこすっても、涙は止まらない。
声も震えてきた。
だけど、ここで弱音は吐けない。
だってこれが最後なんだから。

958 :パラレルワールド[]:2010/11/27(土) 18:05:26.59 ID:Ei4u+a7P0

俺「こちらこそ、今までありがとうな」

宮藤「はい、またどこかで…」

フォォォォォォォォォォン キィィィィィン

魔法陣が光り始め、リングが共鳴している。

俺「じゃあな」

宮藤「はい」

そういうと、宮藤はおもむろに顔を近づけてきた。
そして、何か唇に柔らかいものが触れたな…そう感じた瞬間。世界は反転した。

次回予告

無事儀式を発動させ、帰れることになった宮藤。

別れ際に残るあの感触は…?

そして、宮藤は無事元の世界に辿り着けるのか…?

最終更新:2013年02月02日 13:15