48.俺「ストライクウィッチーズじゃねえの?」 292~303
俺「・・・・ここはどこなんだ?」
目を覚ますとだだっ広い草原のど真ん中にいることに気付いた。
確か自分は、浜辺に置いてあったボロい木の小舟で寝ていたはずだ。
そのボロい小舟は傍らで横たわっている。
寝ている間に流されてしまった、としても小舟が独りでにこんな所まで上がってくるはずがない。
俺「腹減ったな・・・・」
とりあえず食う物を求めて歩くことにした。
ここ最近、ろくに食べてないので死ぬほど腹が減っている。
◇ ◇ ◇
歩き続けること二時間、浜辺に差し掛かった。
海の向こうへと向かうように巨大な建物があり、まるで要塞のようにも思える。
この建物だけでなく、途中の景色を見てもそれが日本のものとは思えない。
どうやらここは外国のようだ。
建物の様式からして、ヨーロッパ辺りなのかもしれない。
俺「あそこに行くと何か食べさせてもらえるかもな・・・・」
しかし、限界を迎えていた俺の身体は一歩たりとも歩くことができず、砂浜に倒れてしまった。
視界が暗転し、意識を手放した。
ここで死ぬのかな、まあそれでもいいか。
とか、そんなことを考えながら。
◇ ◇ ◇
俺「んー・・・・」
瞼越しに眩しさを感じ、目を覚ました。
だるさを感じつつも、上体を起こす。
どうやらベッドの上のようだ。誰かに運ばれてきたのかな。
エーリカ「あ、起きた」
俺を取り囲むように、ベッドの周りに女が七人も立っている。
しかも、全員がズボンの類を穿いていない、下着(?)が剥き出しの状態。
突然の異様な光景に、思わず後ずさった。
俺をここまで運んできたのはこの人たちかな。
ミーナ「おはようございます」
俺「お、おはようございます?」
いきなり声を掛けられ、間の抜けた返事が出てしまった。
更に、腹から大きな音が響く。
俺「なんか、食わせてくれないかな・・・・腹減った・・・・」
◇ ◇ ◇
俺「ふぅ~、ごちそうさまっ」
お辞儀をすると、小柄な少女が目を輝かせてこちらを見ている。
俺と同じ、日本人のような顔立ちの少女だ。
俺「ん? どしたの?」
芳佳「い、今のって『お辞儀』ですよね?」
俺「そうだけど、なんか間違ったかな・・・・?」
芳佳「なんとなく思ってたんですけど、あなたも扶桑の人だったんですね!」
ふそう? ああ、日本のことだっけ。
じっちゃんから、中国の伝説で日本をそう呼んでいたとかなんか忘れたけど聞いたことがあるな。
でも、どうしてわざわざ別名で呼んでいるんだ。今時扶桑なんて、通じないよな。
俺「扶桑って日本で合ってるんだよな?」
芳佳「『にほん』ってなんですか?」
全く予想外の答えが返ってきた。
日本の出身かと思えばその国の名前すらも知らないという。
芳佳「扶桑はずうっと昔から扶桑ですよ。
『にほん』って国は聞いたことないけど、外国にもお辞儀の習慣があるなんて感激です!」
その一言で周りが急に静かになる。
なんかマズいこと言ったかな・・・・
ミーナ「扶桑を知らないの?」
坂本「ふむう、何かありそうだな。ちょっと待ってろ」
眼帯の人はそう言って部屋を出ていく。
暫く経って、大きな紙筒を持って戻ってきた。
大きな机の類が部屋に無かったので、地べたにその紙筒を広げていく。
世界地図だった。
見覚えのある形・・・・ではあるけど微妙に違う。
アメリカ大陸とかの形がデタラメだし、地名も聞いたことないような名前が振られている。
坂本「お前のいう『にほん』は何処か、教えてくれ」
俺は迷わずに地図の右側に位置する島を指した。
ローマ字で『FUSO』と書かれている場所を。
坂本「そこは扶桑だ」
その一言で確信した。
信じられないことだけど、俺は別の世界に来ちまったんだ。
◇ ◇ ◇
坂本「異世界だと?」
バルクホルン「信じられんな・・・・」
俺「俺だって信じられないさ。異世界なんて空想上の話でしかなかったし」
『ふそう』と日本の話の後も、色々な話をしたがどれも辻褄が合わなかった。
今が何年なのかとか、魔法の存在、それから『ネウロイ』ってヤツの話も聞かされた。
どうやらネウロイってのはこの世界の常識的なことらしくて、それを知らなかったってことでやっと俺が異世界の人間だということが向こうにも認識されたようだ。
ミーナ「有り得ない話じゃないわね。ネウロイもこの世界の住人ではないし」
バルクホルン「まさか貴様、ネウロイではないだろうな!?」
その人はそう言いながら、腰に携えた銃を取り出してきた。
そしてその銃口がこちらに向く。
俺「待ってくれ待ってくれ! 俺は本当にネウロイなんて知らないしあんたらに敵意なんてないよ!」
ミーナ「落ち着いてトゥルーデ」
バルクホルン「・・・・分かった」
俺に向いていた銃口が下ろされるのを見て、ほっとする。
俺「ただ小舟で寝てただけなんだ。目が覚めたら全然違う場所にいて、最初は寝ている間に漂着してしまったものだと思ってたんだけど」
坂本「それで、歩き続けているうちに浜辺で倒れてしまったってわけか」
俺「そうだなァ」
ペリーヌ「随分と暢気に構えてますわね。危機感とかないのかしら?」
呆れながらそう言われた。
危機感か。指摘されるまでそんなこと全然考えてなかった。
俺「正直なところないよ、このまま何処かに消え去ってしまいたいと思ってたし。
意外なことになって驚きもしたけど、これはこれでいいかなって思ってる」
ペリーヌ「随分と変わったことを言いますのね」
リーネ「ペ、ペリーヌさん、失礼ですよ・・・・」
俺「はは、よく言われてたよ『変わり者』って。気にすることないさ」
リーネ「あ・・・・は、はいっ」
俺「そういえばまだ名前を聞いていなかった。俺の名前は『俺』って言うんだ。姓は、ない」
それから、全員の名前も教えてもらった。
ちっこいのが芳佳で大人しそうなのがリーネ。
眼鏡を掛けているのがペリーヌで眼帯の人が坂本さん、赤毛の人がミーナさん。
金髪なのがエーリカで、怖そうな人がバルクホルンさんだな。
今はワケあっていないけど、あと四人いるらしい。
どうやら皆軍人のようで、ここは戦争の最前線らしい。
軍人なのに女性ばかりだということに疑問を感じていたが、この世界では魔力を持つ女性が立場が上なのだそうだ。
ミーナ「それで、あなたはどうするのかしら?」
俺「暫くここに置いてもらえないかな。さっきの飯、美味かったし」
バルクホルン「貴様、さっきの話を聞いてなかったのか?
ここは戦地だ。一般人を食わせていくような余裕などないぞ!」
ミーナ「落ち着いてトゥルーデ。
そうね・・・・男の人だから戦力としては望めないけど、雑用係としてなら置けないこともなさそうね」
雑用か・・・・戦ったりするよりはマシだよな。
料理とか掃除とかかな。やったことないけどやりながら慣れればいいよな。
俺のそういう思いは次の一言であっけなく崩れ去った。
坂本「いや、十分な戦力になり得るぞ」
俺「へ?」
坂本「私の魔眼で見通してみたが、俺からは魔力が感じられる。
訓練次第では私たちを凌ぐ戦力になるやもしれないな」
坂本さんの言葉に全員が驚きの表情を見せる。
俺には実感がないことなんだけど、この世界では常識を覆すことになるからな。
ペリーヌ「しかし、彼は男性では」
坂本「異世界間を移動した程なんだ。原理は分からないが、魔力があっても不思議ではないだろう。
どうだ俺、私たちと共に戦ってくれるか?」
ミーナ「無理強いはしないわ、あなたがどうしたいのか聞かせて頂戴」
戦いは嫌だ。俺は自分の手が血に染まっていくのが怖い。
俺がこの世界に来るようなことになってしまったのも、それから逃れるためだったんだ。
でも、なんだか期待されているようだし、ここは肯いておいたほうがいいのかもしれない。
適当にヘマすれば、そのうち戦力から外されるだろうし。
そうしたら雑用係に落ち着くかな・・・・
俺「それじゃあ、力になれるか分かんないけどよろしく」
坂本「引き受けてくれるか! 頼もしいな! はっはっは!」
ミーナ「それでは、普通ならウィッチは階級は軍曹から始めてもらいますが・・・・
俺さんは男性なので軍曹の下の伍長に任命しようと思いますがよろしいかしら?」
俺「特に拘らないよ。さっきみたいな美味いものが食わせてもらえるなら他には何もいらないな。
あれ作ったのって誰なんだ?」
二人が慎ましやかに名乗り出た。芳佳とリーネだっけ。
俺「本当に美味かったよ。また作ってくれ」
リーネ「は、はいっ!」
芳佳「ありがとうございますっ!」
二人とも微妙に顔が熱っぽいような。
二人を褒めていると、バルクホルンさん・・・・だっけ、彼女に睨まれた。
なんだか嫌われてるなァ。
ミーナ「それじゃあ、今日はもう遅いし、明日の朝のブリーフィングで改めて俺さんの紹介をしましょう。
まだ会ってない人もいることだし、色々と手続きも必要なので。今日はこの部屋でごゆっくり、ね」
俺「うん、ありがとう」
そういうと、ぞろぞろと皆俺に一言かけて部屋を出て行く。
俺の他に、誰もいなくなった。
ベッドに寝転んでこれからのことを考えた。
成行きで戦うことになったけど、まあ、それはどうにかできそうだから置いといて。
ここの人たちは皆良い人そうだ。
ここで過ごしていくと昔のことなんて忘れることができそうだな・・・・
最終更新:2013年02月02日 13:57