59.俺「ストライクウィッチーズ・・・フヒヒwww」 675~695
長い時間、闇の中を彷徨っていた。歩けども歩けども、何処かに辿り着く気がしない。
また厭な夢っぽいな・・・・最近、夢を見ることが多いな。この世界に来て夢を見る回数が増えたかもしれない。
そういや夢って眠りが浅いときに見るんだよな。じっちゃんがそんなこと言ってたっけ。
ということは最近の俺は眠りが浅かったのか。まあ、色々あったからなァ・・・・
こんな時、バルクホルンさんなら「のん気なことを考えてる場合か!」とか言ってきそうだ。
辺りを見回しても誰もいないけど。まあ、誰もいないのは当たり前か。俺はもう死んでいるんだ。
ここはおそらく、あの世へ向かう道か何かかもしれない。
しかし、思ったより何もないもんだな。大きな川とかは見当たらないし、人らしきものは・・・・一人いる。
ただ、普通の人と違って体の回りに赤色のモヤがかかっていた。そして、姿形が俺にそっくりだ。
死神・・・・なのか? いつの間に傍に立っていたんだ? さっきまで誰もいなかったはずだ。
『やっと目覚めることができた・・・・』
俺「あんた・・誰?」
『・・? 何言ってるんだよ? 俺はお前自身だ。ただし、お前の中に眠っている俺だけどな』
俺「俺の中に眠っている・・・・獣?」
『ああ、そうだ。あの時は酷いことをしてくれたよな。もう少しで眠りから覚めれそうだったのに・・・・』
俺「あの時って兄さんとやり合った時のことか? 冗談じゃない。
あのままお前が起きてしまったら兄さんを殺してたかもしれないじゃないか」
『甘いヤツだな。まあ、こうして覚醒することができたんだ。昔のことを責める必要もないか。
それにしても、この世界の魔法力とやらには驚かされたもんだ。修羅の業があそこまで発揮されるとは思わなかった』
俺「どういうことだ?」
『なんだ・・気付いてないのか? 弾を投げた時のあの異常なまでの威力や業のキレ、それだけじゃない。
機械の脚でネウロイを蹴りつけたというのに機体には傷一つ無かったこと。
・・・・無名流は人間離れした業じゃあるが、だからと言ってあんな真似はできない』
俺「それってつまり、魔法力の恩恵ってことなのか?」
『そういうことだよ。芳佳の治癒魔法みたいなもんかな。
どんな相手にも必ず勝つという無名流の真髄らしい能力だな。今なら神様とかに喧嘩を売っても勝てるんじゃないか?』
俺「とんでもないことを言うよなァ・・まるで俺が好戦的みたいじゃないか」
『本当のことだろ。ネウロイと戦ってるときの笑み、あれがなんだったのか覚えてないのか?』
俺「・・・・何が言いたいんだよ?」
『・・・・歓喜の笑みだよあれは。修羅の血を継ぐ者に相応しい・・ね』
歓喜? そんなわけがない。あんなに戦うことを拒んでいた俺が戦いに喜びを感じるなんて・・・・
俺が飛び出してきたのも皆を守る為・・・・いや、そんな使命感も途中から無くなっていたかもしれない。
どうして戦っているのか、その理由すらも既に無くなっていた。
俺「うわっ・・・・」
途端に黒一色の景色が真っ白に染まっていく。そして、温かいものに包まれる感覚がした。
『皆が待っている・・・・お前もそろそろ目覚めるんだ・・・・』
俺「待っているって・・俺は死んだんじゃないのか!?」
俺の呼びかけにもう一人の俺は答えることもなく、かき消えていった。
俺「待ってくれよ! お前は何をしに俺の夢に出て来たんだよ!?」
――修羅の子は修羅にしかなれない。
◇ ◇ ◇
目を覚ますと、芳佳が俺に治癒魔法をかけているのが見えた。
その顔から相当疲れているのが分かる。俺を治療する前にも皆に魔法力を使っていたんだろう。
俺「ありがとう芳佳。でももういいよ」
芳佳「お・・俺さん!」
魔法を止めた途端、芳佳が倒れこんだので抱きとめた。
芳佳「す、すみません・・」
俺「いや、俺の方こそごめんよ。こんな無茶させて・・・・」
バルクホルン「無茶をしたのはお前もだろうが」
俺「えっ・・?」
よく見ると、芳佳だけじゃない。皆いた。坂本さんの姿が見えないけど・・・・
俺「坂本さんは?」
バルクホルン「安心しろ、少佐は隣のベッドだ。それよりもだ」
ズカズカと、今にも床に穴が開くんじゃないかと思えるような足取りでバルクホルンさんはこちらに詰め寄ってくると、
バルクホルン「なんて馬鹿な真似をした! 勇猛果敢なのは軍人として結構なことだ!
だが、今回のお前の行動は褒められたものではない! あれはただの猪突猛進だ!
第一、どうしてあんなに戦いを拒んでいたお前があの場に来た!?」
まるで機関銃のように、のべつ幕無しに捲くし立ててきた。
バルクホルン「戦いたがらなかったお前が・・どうしてこんなに傷ついた・・・・
何故こんな怪我を・・・・」
バルクホルンさんは途端に俯きだし、肩を震わせだした。
俺「もしかして・・泣いてるのか?」
バルクホルン「なっ! ちっ、違う! これはあれだ! そうだ、雨で顔が濡れただけだ!」
エーリカ「今日はいい天気だな~」
エイラ「いや、建物の中にいたら天気トカ関係ないんじゃないカ?」
バルクホルンさんが泣くのなんて
初めて見た。いつも気丈に振舞っているこの人が涙を見せるなんて・・・・
俺はよっぽどのことをしちまったらしい。俺にできることは・・・・
俺「バルクホルンさん、ちょっとしゃがみ込んで」
バルクホルン「なんだ? ・・・・わっ・・」
手が届く高さまで来たその頭を撫でる。
バルクホルン「おっ、おい! 上官の頭を撫でるとは何事か! 上官不敬罪だぞ!」
俺「こんなことしか思いつかなかったんだ。心配かけてごめん・・・・ありがとう」
バルクホルン「・・・・もう二度とこんな無茶はするなよ」
俺「うん・・・・」
ミーナ「いい雰囲気になってるところ悪いけど、お話いいかしら? 俺さん?」
俺「あ、ミーナさん・・・・」
命令違反の話、だよなァ。自室禁錮と飛行停止を破った上に上官命令の無視。ただでは済まないか。
でも、あの時どんな罰でも受けると言ったんだ、覚悟はできている。
ミーナ「今回の独断専行は一切咎めないことにしました」
俺「え?」
全く予想外なことを言われて思わずポカンとなってしまった。
お咎め無し? なんで?
ミーナ「あなたのお陰で全員無事に帰還できたし、こんな大怪我をしているのに罰を科すなんて酷なことできないわ。
でも、二度とあんな無茶な真似はしちゃ駄目よ? あなたも大切な家族なんだから」
俺「家族・・・・」
俺には兄さんとじっちゃんという家族がいた。だが、それは世界を隔ててしまい、会うことももうない。
俺は孤独になってしまった。何も知らない世界で頼れる人もなく、そのままのたれ死ぬはずだった。
だが、皆が俺の頼りになってくれた。素性もよく分からない俺に普通に接してくれ、飯を食わせてくれた上に住むところもくれた。
俺はいつしか、皆を家族のように思っていた。だから、皆が俺を家族だと言ってくれたことが嬉しい。
・・・・ただ・・俺は皆の家族でいていいのか?
――修羅の子は修羅にしかなれない。
夢から覚める前に聞こえたあの言葉が脳裏に響く。
俺「ありがとう。でも、俺は皆の家族にはなれない」
エーリカ「なーに辛気臭いこと言ってんだよー。俺がどう思っていようとも私たちは――」
俺「俺は皆と違う。皆は誰かを守りたいって気持ちで戦っているだろ?
でも、俺は違うんだ。俺は戦うことに歓喜を覚えるようなヤツだ・・・・
見ていただろ? 俺がネウロイと戦っているとき笑っていたのを」
聞くまでもない。あの場では俺とネウロイだけしか戦っていなかったのだから皆見ていたはずだ。
無名流の業は勿論のこと、俺が笑っていたことも。
俺からも、皆の表情が凍りつくのが見えていた。
芳佳「で、でも、普段の俺さんは誰にでも優しくて、戦うことが嫌いで――」
俺「偽ってたんだ。偽っていれば無名の名を忘れられると思ったんだ。
でも、やっぱり名は捨てられなかった。この体に修羅の血が流れているから」
芳佳「しゅら・・・・?」
俺「俺の手は簡単に人が殺せるんだ」
バルクホルン「お、おい! それは秘密じゃ――」
俺「ごめん、約束を持ちかけた張本人が破ってしまうってのもなんだけど、もう黙っておく必要もないと思ったんだ」
エーリカ「約束って、例の二人だけの秘密の・・?」
俺「うん。話してしまってもいいかな、バルクホルンさん?」
バルクホルン「・・・・ああ、お前がそう思うのなら私からは何も言うことはない」
俺「ありがとう」
それから、俺は皆に説明した。
無名流という人殺しの業のこと、俺がそこから逃げてきたこと、今回のネウロイが使ってきた業も無名流の業だということを。
ミーナ「ということは、最後にネウロイを崩したあれも無名流の業、なのかしら?」
俺「うん、全身全霊の力を右の拳に込めて、衝撃波を発生させたんだ。こう、押し当てた拳を瞬間的に振動させて・・・・
そして、それをネウロイに叩き込んで内側に衝撃を与えた。あの装甲の堅さと回復の早さに勝つにはそれしかないって思った」
エイラ「ソンナことができるノカ!」
俺「俺にはできる。ただ、あれは奥義みたいなもんだからそれなりの代償はある。それがこの右腕だよ」
ギプスに覆われた右腕を指差した。
バルクホルン「そういえば先生が粉砕骨折と言っていたな・・・・」
俺「ああ、あいつを倒すのにそれだけの代償が必要だったんだ。
・・・・あれが人殺しの業なんだ。いや、あんな奥義なんか使わなくても人は殺せる、簡単に。
そして、ただ強いヤツとやり合いたい、そう望むのが俺の本性だ。そんな俺が皆の家族でいる資格なんて・・・・ない」
すっかり重い空気になり、誰もが沈黙した。でも、その沈黙はあっさりと破られた。
ペリーヌ「あなたに人を殺すことなんてできませんわ。だって、弱虫さんですもの」
芳佳「ペ、ペリーヌさん・・」
ペリーヌは厳しい表情で俺を見つめていたが、やがて表情を和らげると
ペリーヌ「でも、ただの弱虫さんじゃありませんわ。優しい弱虫さんってとこかしら・・・・
その・・少佐を助けて下さったこと・・・・か、感謝しますわ」
最後は目を反らされたがそう言ってくれた。
リーネ「私もあの時の俺さんを見てちょっと怖かったんですが、私たちは俺さんが優しいって知っていますから。
人を殺せる手を持ってるとしても、俺さんは絶対人を殺したりしませんよ」
怖かったと言いながらも、屈託の無い笑顔を浮かべるリーネ。
俺「・・二人ともありがとう。その言葉が聞けただけでも救われたよ」
リーネ「二人だけじゃありませんよ。皆、そう思っています。家族ですから」
リーネの言葉に、皆が笑顔を浮かべた。
俺「俺が・・・・皆の家族でいいのか・・な?」
坂本「よくないわけがない!」
いつの間にか、坂本さんが皆の後ろに立っていた。胸部に包帯が巻かれている。
ミーナ「少佐! あなたも深手を負ったのだから寝ていないと!」
坂本「なぁに、宮藤の魔法のお陰でかなり回復した。それより俺、話は全て隣で聞かせてもらった!
人殺しの業『無名流』・・・・お前はそれに後ろめたさを感じているみたいだな。
だが、私たちはその業に助けられたんだ。こういう時はもっと胸を張れ!
それに、修羅の血がどうだとか人殺しの業が使えようが私たちには関係のないことだ!」
俺「坂本さん・・・・」
バルクホルン「そうだ、お前がどれだけ拒もうが皆はもう家族だと思っているんだ。異論は認めんぞ!」
俺「そ、それは上官命令・・かな」
バルクホルン「ああ、そうだ」
俺「・・ははは・・・・そこまで言われちゃあなァ・・・・ありがとう」
俺が無名流の話を皆に黙っていたのは、単に思い出さないようにする為だけではなかった。
不安だったんだ。人殺しの業を使えるということで皆から恐れられ、拒まれることが。
でも、俺のそんな不安とは裏腹に、皆俺を受け入れてくれた。人殺しの業なんか関係ないと。
バルクホルン「って、おい! 涙を拭け!」
俺「え?」
泣いていた、いつの間にか。指摘されるまで気付かなかった。
俺「い、いや・・これは雨が降ってきて――」
ルッキーニ「え~、俺のうそつき~。いい天気だよ今日は!」
エーリカ「ていうか、なんでトゥルーデと同じ言い訳・・・・」
バルクホルン「雨でも何でもいいからとっとと拭け、みっともないぞ!」
バルクホルンさんはポケットからハンカチを取り出すと、俺の目から零れた涙を拭き取ってくれた。
俺「ありが――」
ありがとう、そう言い切る前に体の力が一気に抜け、起きていた俺の上体はベッドに倒れこんだ。
バルクホルン「俺!?」
芳佳「い、今すぐ治療を!」
その時、重く、盛大に、そして何とも間抜けな音が鳴り響いた。
俺「は・・腹・・・・減った・・・・」
◇ ◇ ◇
バルクホルン「俺、食事を持ってきたぞ」
俺「待ちかねたよ。・・・・美味そう、いや、絶対美味いなこりゃ」
皆の提案で私が俺の食事の世話をすることになった。さっき涙を拭いてやったことが様になっていたからだそうだ。
ハルトマンやリベリアンが言ってもからかいにしか聞こえなかったが、宮藤も言ってたので本当のことらしい。
お姉さんみたいだったと・・・・勿論悪い気はしない。いや、むしろ喜ばしいことなのだ。
俺「そんじゃ、いただきますっ」
バルクホルン「待て」
俺が食べようとしていたのを止めた。私の役目は食事の世話をすることなのだ。食事を持ってくるだけで終わりではない。
つまり、ここが姉としての腕の見せ所だ。意地でもアレに持ち込まなければならない。
バルクホルン「一人で食べれるのか? その、腕は動かせるのか?」
俺「ん? ああ、左は動かせるよ、肉を抉られただけだから」
バルクホルン「抉られただけって・・相当なことじゃないのか」
俺「まあ、先生の治療のお陰でだいぶ良くなったけどね・・・・まだ痛むけど」
バルクホルン「そ、そうか! それなら私が食べさせ――」
俺「ん? 何か言った?」
俺は匙を咥えながらきょとんとした様子でそう言った。
いつの間に・・・・目を離さなかったにも関わらず、そこまでの動作が全く見えなかった。
・・・・いや、驚いている場合じゃない!
バルクホルン「おまえというやつは・・・・」
俺「え? なに、どうした――」
俺の手から匙を奪い取る。
俺「あっ、何すんだよ。ひでぇなァ」
バルクホルン「うるさい! 前々から思っていたが、お前はどうして人の言葉を最後まで聞こうとしない!?
学校で『人の話は最後まで聞きましょう』と習わなかったのか!?」
俺「うぅ・・説教かよ。勘弁してくれよ、腹減ってんのに・・・・」
バルクホルン「まあいい! この話は後回しにするとして、私が食べさせてやるからお前は口を開けていろ!
異論は認めん!」
俺「わ・・わかったよ・・・・」
よし、無理やり過ぎるかもしれないが何とか持ち込めたぞ・・『はい、あーん』に・・・・
あとは食べさせるだけ、何も難しいことはない。このスープを掬って、俺の口に運ぶだけだ・・・・
・・・・くっ、案外難しいものだ。いざやるとなると、恥ずかしく思える・・・・手が震えてきた・・・・
俺「熱ッ」
匙は俺の口から大きく反れて頬に当たり、中のスープが俺の頬に掛かってしまった。
バルクホルン「す、すまない! 私としたことが・・今度は・・・・」
頬の汚れを拭き取ってやり、再びスープを掬う。つ、次こそは・・・・
俺「ええっと、バルクホルンさん?」
バルクホルン「な、なんだ!?」
俺「そんなに力まなくても・・・・表情もまるで虎が獲物を狙ってるみたいだったしさ」
バルクホルン「わ、私は別にそんなつもりじゃ・・・・」
俺「へへへ、分かってるって。まあ、早く食わせてほしいな。いつまでも焦らされるのも・・・・」
バルクホルン「分かった分かった! では、行くぞ?」
呼吸を整え、意識を落ち着かせる。
うろたえるな、ゲルトルート・バルクホルン。貴様はカールスラント軍人である以前に、この世に生ける弟、妹たちの姉なのだ。
そして、目の前の男もその弟なのだ。弟の世話を姉がするということに恥じる必要はない。
貴様の仕事はなんだ? そうだ、俺の食事の世話だ。
私がやらなくて誰がやる? これは私にしかできないことだ。
バルクホルン「よし! 待たせたな・・・・」
どういうことだ? 確かに私の手には匙が握られている。だが、皿にはもう何も残ってはいない。
俺「いやァ、えらく待たされるもんだから勝手に食ったよ」
そういう俺の左手には米粒がこびり付いており、口の周りにクッキリとスープを飲み干した跡が残っていた。
バルクホルン「き・・・・貴様ァあああああッ!」
それから小一時間、テーブルマナーについて説教した。
坂本「・・・・隣で私が寝ているということを忘れてやしないだろうか?」
ペリーヌ「み、耳が痛みますわ・・・・」←もっさんの分の食事を持ってきた
最終更新:2013年02月02日 14:00