私「……これで今日の掃除は終わりっと」
手に持った箒を、半回転させ穂の方を上にする。
塵一つ落ちていないと思われる廊下を見て満足。掃除しないと味わえない。
今日は朝からかなりゴタゴタしていてミーナの資料を手伝ったり、朝食を作ったりしたが掃除は時間通りに終わった。
私「さて、どうしたものかな」
今日はこれから特に何もすることが無い。
寝るにはまだ早すぎるし、訓練も丁度終わったころだろう。
私「草むしりは昨日やった。風呂掃除もやった。ハンガーの整理もやった」
後はなにが残っているか、考えても出てこない。
それくらい雑用は私の日課になっていた。
雑用は嫌いではないので苦ではない。居候の身だしそれくらいはやらないと。
私「……ルッキーニ達の部屋にでも行くか」
今の時間帯に二人がいるかわからないが、とりあえず箒を直しに自室へと向かうことにした。
私「あれは……」
ルッキーニ達の部屋へ向かう途中ミーナがいた。
何やら悩んでいるようで頬に手を当てている。
私「どうしたミーナ」
ミーナ「あら私さん。ちょっと困ったことになって……」
私「困ったこと?」
ミーナ「台所で私さん料理作ってたわよね。その時なにか気付かなかった?」
私「確かに作っていたが……」
今日の朝食を作った時のことを思い返す。
確か目玉焼きとトーストにしようとして、塩と胡椒を目玉焼きに――。
私「……そういえば丁度使いきったんだったな」
ミーナ「そうなの。その他にバター、醤油、バニラエッセンス……」
私「確かに困ったな。調味料が無いと料理が味気ない……ってそんなになかったのか」
どうしてだれも気付かなかったんだ。私も人のこと言えないが。
ミーナ「わたし達だけでなく、基地で働いている人にとって食事は楽しみの一つだと思うわ」
私「そうだな、私が買いだしに行ってこようか」
することが無くて暇を持て余すよりはいいだろう。
申し出にミーナは嬉しそうな表情をする。かなり困っていたようだ。
ミーナ「感謝するわ。ちょっと待ってて、車の鍵とメモを持ってくるから」
背を向け部屋へと戻っていく。
廊下に明るい声が響く。
ミーナと逆方向からルッキーニがこっちに手を振りながら走ってきた。
毎度ながらデジャブを感じる様な気がするのは何故だ。
私「おいおいそんなに走ると危ないぞ」
ルッキーニ「大丈夫大丈夫!」
飛びついて来たルッキーニを受け止める。
今回は受け止める準備ができていたので倒れずに済んだ。
私「あ、そうだルッキーニ」
ルッキーニ「何ナニ?」
私「今からローマまで買い物に行く予定なんだが」
ルッキーニ「行く!」
最後まで言っていないのに勢いよく右手を上げた。
以前したローマに連れていくという約束も、色々あって守れていないので丁度いい。
ミーナ「お待たせしたわ。あら、ルッキーニさん」
振り向くとミーナが手に車のカギとメモ帳を持って立っていた。
近頃気配を察知する能力が落ちている気がする。
ルッキーニ「ミーナ隊長! あたしも買い物に行く!」
ミーナ「うーん……。ルッキーニさんは今日は確か訓練は午後からじゃなかったかしら?」
ルッキーニ「うげっ……」
ルッキーニはがっくりと肩を落とす。
黒いオーラが背中から見えるような気がする。
しかし今約束を守らなければ、次はいつになるかわからない。
私「それだがな、今度の休日に私がルッキーニの訓練をするってことで埋め合わせできないか?」
ミーナ「わたしは構わないわ。多分美緒もいいと言うだろうけど、大丈夫?」
私「何がだ?」
ミーナ「私さん基地に来てから訓練してないみたいようだし……」
舞台裏では色々やっているが内緒だ。
私「問題ない。それに実際訓練するのはルッキーニだからな」
ルッキーニの頭に手を置く。
いつの間に生やしたのか使い魔の耳が手に当った。
ミーナ「それなら大丈夫かしら」
私「それでいいか?」
ルッキーニ「うん!」
八重歯を見せながらルッキーニが笑う。なんとなく私まで嬉しくなってしまう。
私「それじゃあ私達は他のメンバーに他にいるものないか聞いてくる」
私が歩こうとするとルッキーニが背中に飛びついてきた。
ルッキーニ「さ、いこっ!」
私「はいはい」
いつものことなので気にせず、私はルッキーニの指さす方向へと歩きはじめた。
ハンガー
ルッキーニの指した方向をひたすら歩くと、ハンガーにたどり着いた。
中を覗いてみると
シャーリーが何やらストライカーユニットを弄っている。
ハンガーにはいい思い出が無い気がするのは何故だろう。
ルッキーニ「シャーリー!」
シャーリー「ん? どうしたんだ二人して」
手に持っていたスパナを工具箱になおすとこちらに近づいてきた。
私「今から二人で買い物に行くんだが何か欲しいものは無いか?」
シャーリー「デートかーとうとう二人もそんな仲か」
私「違う」
同性だし。そもそも私人間ですらないし。
ルッキーニ「えー違うの?」
ルッキーニは残念そうな声を出す。
シャーリー「まあ二人だけで買いものに行くんだ。ある意味デートだとあたしは思うぞ」
私「そんなものか?」
シャーリー「そんなもんだ」
シャーリーは私に向かってウィンクをした。
つまりこれはあれか、言えってことか。
私「……じゃあ、デートなんだろうな多分」
シャーリー「だってさ。よかったなルッキーニ」
ルッキーニ「うん!」
ルッキーニが私の背中ではしゃぐ。
そして首に抱きついてくる。悪い気はしない。
シャーリー「あたしはマイナスドライバーを頼む。この間ゴタゴタしてた時に落してかけちゃってさ」
私「わかった。無かったら他のを買ってこよう」
シャーリー「ルッキーニあまり私に迷惑かけるなよ?」
ルッキーニ「わかってるわかってる! 次に聞きに行くよー」
シャーリーに見送られながら、わたし達は他のメンバーを探しに向かった。
エイラ・サーニャの部屋
次にやってきたのはエイラ達の部屋。
昨晩は私が夜間哨戒をしたので、二人は今起きているはずだ。
……どうも私は働きすぎのような気がしてきた。
私「ルッキーニ、ノックしてくれ。お前をかかえるので両手がふさがってる」
ルッキーニ「わかった」
肩から体を乗り出して扉を3回ノックする。
???「あいてるゾ」
すぐにわかるような、特徴的な返事が部屋の中から返ってきた。
しゃがんでルッキーニがドアノブを回せるようにする。
扉を開くと、エイラとサーニャはベッドの上に二人で寝転がっていた。
エイラ「私とルッキーニじゃないか。珍しいなわたし達の部屋に来るナンテ」
サーニャ「私さん昨日はありがとうございました」
私「気にしなくていい。それよりも今から出かけてくるんだが、欲しいものは無いか?」
ルッキーニ「あたしが一緒に行くんだー」
ルッキーニが肩から体を乗り出す。
エイラ「んー……欲しいものカ」
寝ころんだまま腕組みをしてエイラは悩む。
エイラ「特に思いつかないんダナ。サーニャは何かあるカ?」
サーニャ「えっと、わたしも今は……」
ルッキーニ「ホントに無いの?」
エイラ「無いナ」
サーニャ「無い……かな?」
私「じゃあ何か適当に買ってこよう。それでいいか?」
エイラ「わたしは構わないゾ」
サーニャ「ありがとうございます」
私「わかった、長く使えそうなのを買って帰ろう」
ルッキーニ「じゃあ次いこっか」
エイラ「あ、ちょっとマッタ!」
二人のリクエストを聞いて部屋から出ようとすると、エイラが私達を呼びとめる。
エイラはどこからともなくカードを取り出した。
エイラ「二人とも占ってやるヨ」
ベッドの上に手際よくカードを並べていく。
エイラ「ルッキーニどれがイイ?」
ルッキーニ「えっとねえっとね」
うーんと唸りながらベッドの上に並べられたカードを睨みつける。
そして一枚のカードを指さした。
ルッキーニ「これ!」
エイラ「これダナ?」
ルッキーニの選んだカードを捲り、ふむふむと納得したように頷く。
ルッキーニ「ねー自分だけで納得してないで教えてよー」
エイラ「わかったワカッタ。今日はいいことがあるみたいダナ。珍しいものがもらえたりするかもしれないゾ」
ルッキーニ「やったー!」
私の背から降りるとルッキーニは両手を上げてジャンプする。
そんなにうれしいものなのだろうか。占いだぞ?当るかどうかわからないんだぞ?
ひとしきり喜んだ後、再びルッキーニは私の背中に戻った。
エイラ「次は私ダナ。ほら、えらんだ選んダ」
あまり占いは信じていないので、適当に一枚を選ぶ。
エイラ「もうちょっと悩むくらいしろよナ。……へぇ」
確認して何も言わずにエイラはカードを再びどこかへと直す。
って結果はどうなったんだ。
私「結果は?」
エイラ「適当にやってたから教えなくてもいいと思ってナ」
目を細めてエイラがニヤニヤと笑う。
サーニャ「エイラ教えてあげなよ」
エイラ「う……こ、今度からはちゃんと選んでくれヨナ」
やはり力関係はサーニャの方が上か。
いつかこの関係を利用することもあるかもしれないな。
エイラ「小さな夢がかなうかもしれないんダナ。アンラッキーアイテムはスコップダ」
えらく細部までわかるんだと思うが、占いのことだし気にしないことにする。
ルッキーニ「よかったね私」
私「まあ、当るも八卦当たらぬも八卦だ」
エイラ「ちゃんと信用しろヨー」
頬を膨らませるエイラに、軽く頬をついてやる。
私「当ったら信用してやるよ」
ルッキーニを担ぎ直すとドアノブに手をかける。
サーニャ「気を付けて行ってくださいね」
エイラ「当るから楽しみにしとケー」
二人の声を背に受けつつ、次のメンバーを探しに部屋の外へと出た。
外
私「結構時間食ったな」
トラックに背を預けながら必要なものが書いたメモを見る。
あれこれ歩き回るうちにもう昼前になってしまった。
どこか適当な場所で何か買って食べて行くのもいいかもしれない。
私「後はミーナだけなんだが……」
ルッキーニ「ミーナ隊長遅いね」
隊長として見送る必要があるらしい。
ルッキーニは荷台に乗って立ち上がったり寝転んだりしている。
出発するのを今か今かと心待ちにしている。
私「来たか」
魔力がこちらに向かってきている。これはミーナの魔力だ。
ルッキーニ「ホントだ」
視線の先からミーナが曲がり角から現れた。
やろうと思えばちゃんと機能するネウロイの能力にこっそりと安心する。
ミーナ「遅れてしまってごめんなさい」
私「いやそっちも多忙だろうし、わざわざ見送りなんていらないのに」
ミーナ「そうもいかないわ。だって、わたしの欲しいものだって言ってないのよ?」
クスクスとミーナは笑う。
が、同時に何やら寒気が背中を走ったような気がする。
笑顔とはそもそも攻撃的な――
ミーナ「それで、わたしが欲しいのは……」
そっと近づいて、私の耳元でぼそりと呟いた。
ミーナ「とある階の一番最後のガラスを誰かがぶち破ってくれちゃって代わりのガラスが欲しいなって」
呼吸もせずに一気に言いきった。
ばれている。以前私が壊したのがばれている。
私「わ、わかった。あ、あと新しいペンでも買ってこよう」
ミーナ「あらそこまではいらないわよ?」
私「き、気にしないでくれそれじゃあ行ってくる」
逃げるように運転席に乗り込むと、エンジンをかけて発進させる。
ルッキーニ「いってきまーす!」
ミーナ「気をつけてねー」
ちらりとサイドミラーでミーナを見る。
普段と変わらない笑顔だったが、戦闘時以外は恐らく敵わないだろうと私は思った。
欲しい物リスト
宮藤 医学書 リーネ 紅茶の葉 ペリーヌ 花の種
エーリカ 絵本かお菓子 バルクホルン 妹用の服 坂本 竹刀(無ければ適当な本)
シャーリー マイナスドライバー エイラ 何か適当に サーニャ エイラと同じ
ミーナ 窓ガラス 私 ??? ルッキーニ ???
最終更新:2013年02月02日 14:26