501基地廊下
あれから数日、特に何も変わりは無く、普段と変わらない生活が続いている。
今日も私は朝から食事や洗濯を済ませ、そして掃除といういつもの仕事をこなしていた。
ウィッチたちも普段と変わらず訓練をしていたが、これまた普段通りやってきたネウロイの撃退に先ほど向かった。
数が普通よりは多いので全員で向かったようだ。
私「どうやらまだみたいだな」
今回ネウ子が用意したのは小型を11機。
特殊能力も再生能力も持っていない、ただの観察用(しかもウィッチ1人1人を)のネウロイだ。
本気で戦うならあいつは戦艦クラスを3機4機軽々と作り出せる。
私「……ふぅ」
ため息をつく。
疲れたからなのか、それともまだ彼女達と戦わなくていいのかという安堵からなのかはわからない。
私「このままずっとだったら良いのにな……」
通信兵も整備兵も誰もいない廊下で呟く。
私「終わったか」
ネウ子のネウロイの反応が消えた。
本気でなかったのも大きいが、ウィッチ達も成長してきているのもあるだろう。
予想していたよりもずっと決着が早く着いた。
これはネウ子もうかうかしていたらやられるかもしれない。
私(まあ、その時は私もいるけど)
掃除を中断して食堂へ向かう。
帰ってきたら休めるように、飲み物でも作っておこうか。
ペリーヌとリーネは多分紅茶でいいはず、宮藤と坂本は扶桑茶で……残りは聞かないとな。
私「……ん?」
唐突に嫌な気配を感じた。
私「誰だ……これは……」
巣の方向に1つ、ウィッチ達の方へ向かうのを1つ感じた。
ネウ子でも友人でも無い。全く感じたことのない反応。
コアの大きさからして巣の本体ではないようだが、大型ということはわかる。
ネウロイはどうやらウィッチーズたち目がけて飛んでいるようだ。
このままだと多分あと十数分で接敵する。
大型だが特殊能力は恐らくない。再生速度も普通より早い程度だと思う。
私「……大丈夫だろう」
2、3人といった少人数ならまだしも、今は11人全員がいる。
そしてその11人は全員が各国のエースというほぼ無敵部隊だ。一人例外がいるけど。
負けるわけがない。
そう思うが、思いたいがどうしても胸騒ぎが消えない。
私「っ!?」
3つに反応が増えた。
全て大型という訳ではないが、何かがおかしい。
私(ウィッチ達がやられても私はそれでいいはずだろう!? 決めたはずだろう!?)
脳内で何度も叫んでも、足は今にも駆けだそうとしている。
私(みるだけだ、ウィッチ達がやられるところを見に行くだけ!)
心の中は違うとわかっている。しかし言い訳せずにはいられなかった。
私は持っていた箒を投げ捨てると、ウィッチ達のいる海域へと向かった。
20分後海上
足を強化して海を駆ける。
ハンガーに行ってユニットを履く時間も惜しかった。
私「……今のところはウィッチが優勢か」
私が海を走り始めたころに1機、先ほどまた1機倒されたのがわかった。
残ったのは最初に感じた大型ネウロイ。
私「見えっ……!?」
視線の先には11人のウィッチ達と、巨大なネウロイ。
ネウロイは戦闘機や戦艦といった形を取っておらず、生物の鳥のような形をしている。
私「なんだアレは……」
今までに200オーバーのネウロイを倒してきたが、あんなネウロイを見るのは
初めてだった。
それにあんな形のネウロイを作る奴に出会ったことが無い。
やはり何かがおかしい。
それでも流石エース集団といったところか、不気味なネウロイを臆することなく戦っている。
必死なのかどうやら私に気付いていないようだが、下手に集中力を乱されても困るので丁度いい。
ビキィ!
空にひときわ大きな音が響いた。
どうやらネウロイのコアが見えたようだ。コアがころころ移動していたらしいが、ようやく止まったらしい。
様々な角度からウィッチ達が攻撃をしかけようと接近する。
私「っ!? 全員離れろ!」
聞えているかわからないがありったけの声で叫ぶ。
一瞬だったが、コアから攻撃の際に出る反応を感じた。
翼部分が全て紅く染まり、四方八方にビームが発射される。
どうやらエイラが私と同じようなことを言ったようで、何とか当る前にシールドを張ったり回避することが出来たようだ。
私「……!?」
無事に思えたがよく見ると一人のユニットの片足から煙が出ている。あのビームが掠ったのだろう。
私「あれは……ルッキーニか!?」
私が彼女を見間違えるはずが無い。
信じたくないがルッキーニのユニットから煙が出ていた。
ネウロイもそれに気付いているのか、ビームをルッキーニに集中的に浴びせている。
ほかのウィッチ達が援護に行こうにも、未だに攻撃は激しく避けたりシールドを張ったりするのに精いっぱいのようだ。
こんなことならユニットを履いてくればよかった。シールドを張る程度ならばれることも無かっただろうに。
心の中で後悔しながら戦いを見守る。
少しずつだが、ルッキーニのシールドが押され始めた。更にユニットから出る煙の量が増す。
そして――
ボンッ!
爆発音と共に、ユニットが限界を迎えた。
海へと落下するルッキーニ。
するとネウロイは突然攻撃を止め、ウィッチ達から距離を離す。
キュウウウウウン!
耳を劈く鳴き声と共に、ネウロイはルッキーニ目がけて突進を始めた!
嘴が鈍く光る。
私「アレで突き刺すつもりか!」
ウィッチ達が助けようと近づこうとするが、再びルッキーニ以外のウィッチ達にビームを撃ち始めた。
これでは近づくことも出来ない。
このままでは間違いなく死んでしまう。
私(あ……ああ……うああああああああああああ!)
目の前が真っ白に染まって気が付くと――
腕の中にはルッキーニがいる。
ああ、やっぱりこうなった。
こうなるなら最初からやっておけという話だ。
ホントこういう時の決断の遅さは相変わらず変わっていない。
ルッキーニ「え……?」
不思議そうにルッキーニが見上げる。
私「無事か?」
ルッキーニ「え、な、なんで!?」
私「体、どこも痛くないか?」
ルッキーニ「う、うん……でも、あたしさっきまで……」
ルッキーニが視線を横にやる。
ルッキーニ「うわぁ!?」
驚くのも無理は無い。目の前にネウロイの顔があるのだから。
私「ああ、ちょっと待ってろ……」
腹部に刺さった嘴を、右手で力任せにへし折った。
私「直ぐに終わらせる」
ルッキーニ「わ、私! お腹!お腹が!」
泣きそうな顔でルッキーニが叫ぶ。
私「気にするな」
嘴を失い叫んでいるネウロイの眉間へと一気に近づく。
そして右手をそっと眉間に当てた。
私「……終わりだ」
ガギン!
へヴィパイクの音と共に、ネウロイは全身を白い破片にしながら落ちていく。
その中にコアを発見し、指先からビームを撃ち破壊した。
ルッキーニ「……」
ルッキーニは何も言わない。多分、頭の中で整理ができていないのだろう。
ミーナ「私さん……」
振り向くと10人が信じられない物を見るような顔で私を見ていた。
ミーナ「私さん……貴女は……」
私「……そうだ。私はネウロイ、お前達人間の敵だ」
私の言葉にバルクホルンが銃を構える。
バルクホルン「わたしたちを騙したのか!」
私「そうだ」
バルクホルン「貴様!」
撃とうとするのをシャーリーが止める。
シャーリー「ルッキーニがいるんだぞ!?」
バルクホルン「……ッ」
にらみながらバルクホルンは銃を下ろした。
こちらとしてはルッキーニを人質に取る気はないが、まあいいとしよう。
宮藤「嘘……ですよね?」
私「本当だ。見ただろうお前も」
宮藤「だって、私さんわたしに色々と教えてくれたじゃないですか!」
右手を上げ宮藤にビームを撃ちこむ。
もちろんシールドに阻まれたが。
私「これでもか? 何度も言うが私はお前達の敵だ」
ルッキーニ「待ってよ!」
腕の中でルッキーニが叫ぶ。
ルッキーニ「なんで敵ならあたしのこと助けたの!? あのまま放っておけばよかったんじゃないの!?」
私「それは……」
その時、巣の方で止まっていたネウロイの反応が大きくなった。何かあったのかもしれない。
しかし、私は彼女達と決別しなければならない。
決断をしなければならない。
私は――
私「……」
彼女達と決別することを選んだ。
ルッキーニの顔を引き寄せ、唇にキスをする。
私「……」
ルッキーニ「ん”ー!?」
柔らかくて甘い味がするような気がするが、今はそんなことを感じている余裕はない。
これは予想外だったようで全員呆然とした顔で私達を見ている。
数十秒ほどのキスをして、ルッキーニはぐったりとしている。
……今思うと、コレするだけなら別にキスじゃなくてもよかったような。
私「シャーリー」
シャーリー「あ、ああ」
私「ルッキーニを返そう。こっちに来てくれ」
顔を赤く染めながら近づくシャーリーに気絶したルッキーニを渡す。
私「……馴染むな案外」
シャーリーがルッキーニを抱えて、ある程度離れたのを確認すると、右手を上げシールドを展開する。
何層にも重なったシールドが目の前に現れた。
坂本「そ、それは!?」
私「ルッキーニの魔力だが、あらかた奪わせて貰った。もう飛ぶことも出来ないだろうさ」
もう戦う必要もなくなったな、と小声で言ったが多分聞えたやつはいないだろう。
私「……さっきの戦いをみてわかったと思うが、お前たちじゃ私に勝てないだろう」
実際やったらどうなるかはわからない。まだ未知の部分が多いのでハッキリとしない。
私「だが、私も一応恩は感じている。……一カ月だ」
人差し指を立てて見せる。
私「一カ月待とう。その間にストライクウィッチーズを解散することだ。国に戻るのも他の部隊に行くのも自由だ」
10人に背を向け、ネウロイユニットに力を込める。
私「……その間、私は巣のネウロイに言って決して攻撃を仕掛けないようにしよう。ただし、そちらから攻撃を仕掛けた場合は容赦なく反撃をさせてもらう」
後ろを振り返ることはせず、私は巣に帰ることにした。
ネウロイの巣
巣に到着する前、初めて見る人型ネウロイがどこかへ飛んでいくのが見えた。
多分、あれがあの鳥のネウロイの本体なのだろう。
私「ネウ子ーいるかー」
中央にたどり着くとネウ子を呼ぶ。
ネウ子(お帰りー……ああ、キミはこっちを選んだんだね)
何故か手にお盆と湯のみを持ったネウ子が現れた。
あのネウロイに出したのだろうか。
私「……まあな」
ネウ子(もう少しだけ自分の欲望に正直に生きればいいのに、律儀だねキミは)
私「……そんなことより、さっきのネウロイは誰だ?」
ネウ子(あーアレがボクたちの指揮官役。もうちょっかい掛けないようにって、しつこく言ったからもう来ないよ)
私「そうか、それならいいんだ」
約束しておいて別のネウロイが攻めてきたらどうしようもない。
私の顔をネウ子は覗き込む。
ネウ子(わたしはキミに従う。どんな結末だろうとね)
私「……悪いな」
ネウ子(んもー! ボクとキミの仲じゃないか!)
バンバンとネウ子は私の背を叩く。
いつもなら迷惑だが、今は少し嬉しい。
私「それにしても、なんというかウィッチ達は律儀だな。後ろ向いてたのに攻撃しないとは」
ネウ子(えっ? 気付いてないの?)
私「何がだ?」
首をかしげて訊ねる。ネウ子は信じられないといった表情をしている(と思う)
ネウ子(だってキミさ)
どこからともなくネウ子が取り出した鏡で、私は言葉を失った。
ネウ子(ものすごい泣いてるんだもん)
最終更新:2013年02月02日 14:27